大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第153号)

更新日:2009年8月5日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第153号)

[学校法人設置等認可申請書部分公開決定異議申立事案]

(答申日 平成20年3月11日)

第一 審査会の結論

 実施機関は、本件異議申立ての対象となった部分公開決定において公開しないことと決定した部分(別紙2)のうち、次の1から5に掲げる部分を公開すべきである。

1 D校設置者変更認可申請書の教職員名簿及びE校設置認可申請書の教職員名簿に記録されている校医の氏名

2 E校設置認可申請書の平成16年6月24日付け不動産売買契約書に記録されている売主の名称、代表者名及び住所並びに創設費及び財源の総括表に記録されている校地に係る契約の相手方(売主)の名称

3 E校設置認可申請書の平成16年11月19日付け工事請負契約書に記録されている請負者の名称、代表者名及び住所並びに監理者の名称、代表者名及び住所

4 E校設置認可申請書の平成16年11月15日付け設計監理委託契約書に記録されている建築家(設計監理者)の名称、代表者名及び住所

5 E校設置認可申請書の校地・校舎図面に記録されている作成者(設計監理者)の名称

実施機関のその余の判断は妥当である。

 

第二 異議申立ての経過

1 異議申立人は、平成18年12月27日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「D校について私立学校法の規定に基づき実施機関に認可を申請した文書一式 (1)運営法人の学校法人Bへの変更の認可 (2)名称のF校への変更の認可」及び「学校法人Cが、E校(○○市○○区○○町○○−○○)の開設を実施機関に申請した文書一式」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関は、平成19年1月25日、本件請求に対応する行政文書として別紙1の文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、別紙2に記載の部分を除いて公開する旨の部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり公開しない理由を付して異議申立人に通知した。

(1)条例第8条第1項第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、学校法人の財務状況等の詳細な情報、学校運営に関する事項、法人代表者等の印影が記載されており、これらの情報を公にすると、取引の安全を損なうなど当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。

(2)条例第9条第1号に該当する。

本件行政文書(非公開部分)には、個人の氏名、住所、印影等が記載されており、これらの情報は個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められる。

3 異議申立人は、平成19年3月29日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

 

第三  異議申立ての趣旨

本件決定の取消しを求める。

 

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。

1 異議申立書における主張

(1)条例の前文では、条例における解釈及び運用の基本原則として、「情報の公開は、府民の府政への信頼を確保し、生活の向上をめざす基礎的な条件であり、民主主義の活性化のために不可欠なものである。府が保有する情報は、本来は府民のものであり、これを共有することにより、府民の生活と人権を守り、豊かな地域社会の形成に役立てるべきものであって、府は、その諸活動を府民に説明する責務が全うされるようにすることを求められている。このような精神のもとに、府の保有する情報は公開を原則とし、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護しつつ、行政文書等の公開を求める権利を明らかにし、併せて府が自ら進んで情報の公開を推進することにより、『知る権利』の保障と個人の尊厳の確保に資するとともに、地方自治の健全な発展に寄与するため、この条例を制定する。」と定めている。

情報公開を原則として認め、行政の透明性を確保することにより適正な権力の執行を担保することが、条例の趣旨であると考えられる。

(2)実施機関は、学校法人から受けた私立専修学校の開設、変更の申請書等のうち、その一部を条例第8号第1項第1号ないし第9条第1号に該当するとして非公開とした。しかしながら、以下に述べる理由から、非公開とした部分について再度検討願いたい。

(3)さいたま地方裁判所平成17年(行ウ)第29号公文書一部不開示処分取消及び公文書開示処分給付請求事件平成18年4月26日判決では、私立専修学校の専任教員の氏名に関する情報について、「私立専修学校の公共性及び公益性に関する法律上の規定が、直接的に個人情報の開示を定めたものではないとしても、先に述べたような私立専修学校の公共性及び公益性から要求される私立専修学校の教育活動の透明性の観点、本件情報のプライバシーの度合い、私立大学の教員氏名が『慣行として公にされている情報』として扱われていることの対比等からすれば、私立専修学校に関する情報のうち、少なくとも、専任教員の氏名に関する情報は一般に開示を相当とする情報に当たると解しても不合理ではない。」と判示している。被告の埼玉県知事は控訴せず、この判決は確定している。

(4)「公益法人の設立許可及び指導監督基準」では、公益法人の情報公開に関して、「公益法人は、次の業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、原則として、一般の閲覧に供すること。a 定款又は寄附行為 b 役員名簿 c (社団法人の場合)社員名簿 d 事業報告書 e 収支計算書 f 正味財産増減計算書 g 貸借対照表 h 財産目録 i 事業計画書 j 収支予算書」と規定している。

(5)学校法人Bと学校法人Cは、ホームページにおいて事業報告書を一般の閲覧に供しており、財産目録、貸借対照表などが公開されている。この事業報告書に記載されている情報は、条例第8号第1項第1号に該当しないと考えられる。

(6)彦根市情報公開審査会は、建築主の氏名、確認検査員の氏名並びに工事監理者の氏名及び資格登録番号は公開すべきであると答申している(平成19年1月30日付け「平成18年度答申第1号」)。

(7)校地の売主の情報は不動産登記簿に、校舎の設計者、工事監理者及び施工者の情報は建築計画概要書に記載されている。これらの情報は、条例第8号第1項第1号に該当しないと考えられる。

以上の理由により、本件決定の取消しを求める。

2 反論書における主張

(1)最高裁判所平成10年(行ヒ)第54号 公文書非公開決定処分取消請求事件 平成15年11月11日判決では、「個人に関する情報」の解釈として、

ア 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)の代表者に準ずる地位にある者以外の従業員の職務の遂行に関する情報は、その者の権限に基づく当該法人等のための契約の締結等に関する情報を除き、「個人に関する情報」に当たる。

イ 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)の代表者若しくはこれに準ずる地位にあるものが当該法人等の職務として行う行為に関する情報又はその他の者が権限に基づいて当該法人等のために行う契約の締結等に関する情報その他の法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報は、「個人に関する情報」に当たらない。

ウ 国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報は、公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き、「個人に関する情報」に当たらない。

と判示している。

(2)学校法人の役員について、私立学校法第35条第1項では、「学校法人には、役員として、理事5人以上及び監事2人以上を置かなければならない。」と規定している。また、役員の選任については、私立学校法第38条で規定されており、理事となる者として、たとえば同条第1項第1号では、「当該学校法人の設置する私立学校の校長(学長及び園長を含む。)」と規定している。

学校法人の理事の職務について、私立学校法第37条第2項では、「理事(理事長を除く。)は、寄附行為の定めるところにより、学校法人を代表し、理事長を補佐して学校法人の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠けたときはその職務を行う。」と規定している。

したがって、学校法人の理事の情報は、上記(1)の最高裁判所の解釈bの「法人その他の団体の代表者若しくはこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務として行う行為に関する情報」に該当するため、開示されるべきである。

また、学校法人の監事の職務について、私立学校法第37条第3項第4号では「第1号又は第2号の規定による監査の結果、学校法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること」と規定しており、学校法人の不正行為に対して監事が所轄庁に報告することを義務付けている。したがって学校法人の監事も、「法人その他の団体の代表者若しくはこれに準ずる地位にある者」に該当すると考えられる。

(3)1(3)記載のとおり、さいたま地方裁判所の判決では、「専任教員の氏名に関する情報は、一般に開示を相当とする情報に当たると解しても不合理ではない。」と判示しており、この判決は確定している。

教育活動の透明性の観点から考えると、役員の情報は教員の情報以上に公にされるべきである。また、実施機関は、学校設置認可申請及び設置者変更認可申請時における採用予定の教員の氏名について、確定的なものと言えないから公開すべきでないとしているが、将来採用する予定の教員を審査して学校設置及び設置者変更の認可不認可を判断しているのであるから、その予定教員の氏名を公開すべきである。

(4)大学設置基準(昭和31年10月22日文部省令第28号)第2条では、「大学は、当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって、積極的に情報を提供するものとする。」と規定している。

これと同様に、専修学校設置基準(昭和51年1月10日文部省令第2号)第1条の3では、「専修学校は、当該専修学校における教育活動等の状況について、広く周知を図ることができる方法によつて、積極的に情報を提供するものとする。」と規定している。また、各種学校規定(昭和31年12月5日文部省令第31号)第2条の3では、「各種学校は、当該各種学校における教育活動等の状況について、広く周知を図ることができる方法によつて、積極的に情報を提供するものとする。」と規定している。

(5)このように、学校教育機関の公共性及び公益性から情報の積極的な提供が要求されるため、学校法人Bも学校法人Cも、役員に関する情報や業務及び財務等に関する資料をホームページに掲載して、公にしているものと考えられる(これらの情報を公にしても学校法人の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがないと学校法人が自ら判断したとも考えられる。)。

(6)校舎の設計者等の情報は建築計画概要書に記載されており、建築基準法第93条の2の規定により閲覧に供され、通常一般に入手し得る情報である。これらの情報を公開しても、法人の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害することはない。

内閣府情報公開・個人情報保護審査会「平成18年度答申(行情)第127号」、大阪府情報公開審査会答申「大公審第86号」及び彦根市情報公開審査会「平成18年度答申第1号」では、建築契約概要書に記載されている情報を公開すべきであると答申している。

(7)校地の売主の情報は不動産登記簿に記載されており、公開されている。最高裁判所平成15年(行ヒ)第295号公文書非公開決定処分取消等請求事件平成17年10月11日判決や、内閣府情報公開・個人情報保護審査会「平成18年度答申(独情)第3号」などにおいて、土地の所有者の移転の情報は非開示情報に該当しないとの判断がされている。

(なお、上記の内閣府情報公開・個人情報保護審査会の事例では、諮問庁の独立行政法人都市再生機構は所有者が不動産登記簿と一致しているかどうかは不明であると弁明したが、認められていない。)

(8)印影と、個人に係る性別、生年月日、現住所、電話番号、最終学歴、職歴、賞罰の情報については、大阪府情報公開審査会の判断を求めない。

 

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね以下のとおりである。

1 学校法人について

学校法人とは、私立学校法に基づき私立学校の設置を目的として設立される法人であり、学校教育法において、学校は、国、地方公共団体及び学校法人のみが設置することができると定められている。

また、準学校法人とは、私立学校法に基づき専修学校又は各種学校の設置のみを目的として設立される法人である。

なお、私立学校法第4条において私立大学及び私立高等専門学校を設置している学校法人の所轄庁は文部科学大臣とし、それ以外の私立学校を設置している学校法人及び準学校法人については、都道府県知事と定められている。

2 本件行政文書について

異議申立人の主張は、実施機関の行った部分公開決定処分の取消しであり、争いのある行政文書は、「D校設置者変更認可申請書」、「名称変更届(G校に係るもの)」及び「E校設置認可申請書」である。

(1)設置者変更認可申請書

学校を設置している設置者を変更するときに都道府県知事に申請するものである。これは、学校教育法第82条の8に、「国又は都道府県が設置する専修学校を除くほか、専修学校の設置廃止(高等課程、専門課程又は一般課程の設置廃止を含む。)、設置者の変更及び目的の変更は、市町村の設置する専修学校にあっては都道府県の教育委員会、私立の専修学校にあっては都道府県知事の認可を受けなければならない。」と定められている。添付する書類は、下記のとおりである。

(設置者変更認可申請添付書類)

ア 理事会(設立発起人会)、評議員会の決議録
イ 寄附行為(定款又は規則)
ウ 役員名簿
エ 財産目録
オ 新理事長(設置者)の履歴書、誓約書及び印鑑証明書
カ 校地校舎の権利関係を証する書類(登録簿謄本)
キ 施設の概要
ク 学級編成表
ケ 教職員編成表
コ 教職員名簿
サ 校地校舎図面(付近近況図、配置図、各階平面図、立面図)
シ 変更前2年の収支決算書及び変更後2年の収支予算書

(2)名称変更届

学校の名称(校名)を変更するときに都道府県知事に申請するものである。これは、学校教育法第82条の9に、「国又は都道府県が設置する専修学校を除くほか、専修学校の設置者は、その設置する専修学校の名称、位置又は学則を変更しようとするときその他政令で定める場合に該当するときは、市町村の設置する専修学校にあっては都道府県の教育委員会に、私立の専修学校にあっては都道府県知事に届け出なければならない。」と定められている。添付する書類は、「理事会・評議員会の決議録」である。

(3)学校設置認可申請書

学校を新たに設置するときに都道府県知事に申請するものである。これは、(1)と同様、学校教育法第82条の8に定められている。添付する書類は、下記のとおりである。

(学校設置認可申請書添付書類)

ア 設置趣意書
イ 設置要項
(ア)目的
(イ)名称
(ウ)課程、学科の名称、定員及び修業年限
(エ)位置
(オ)学則
(カ)経費及び維持方法
(キ)学校開設年月日
ウ 施設の概要
エ 校地・校舎図面(付近状況図、配置図、各階平面図、立面図)
オ 校具、教具、図書及び備品の明細表
カ 学級編成表
キ 教職員編成表
ク 教職員名簿
ケ 校長採用届
コ 収支予算書(設置後2年の収支予算書)
サ 創設費及び財源の総括表
シ 借入金償還計画書
ス 財産目録
セ 寄附行為(定款又は規則)
ソ 法人登記簿謄本
タ 理事会(設立発起人会)、評議員会等の決議録
チ 理事長(設立代表者)の履歴書、誓約書、印鑑証明書
ツ その他知事が必要と認める書類

3 本件決定の適法性について

(1)第8条第1項第1号に該当することについて

本件行政文書について、実施機関が公開しないことと決定した部分は別紙2のとおりであるが、このうち、条例第8条第1項第1号に該当すると判断したものは以下のとおりである。

法人代表者や事業を営む個人の印影については、当該印影が現に公表され、または公表することが慣行となっているなど特段の事情のない限り、一般的には専ら当該法人等が自ら管理すべき情報である。これを公にすることによって、印章偽造等の不正使用を誘発し、虚偽の契約書等の作成が容易になるなど、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、理事長、法人代表者、公認会計士の印影については、非公開とした。

「貸借対照表」、「資金収支計算書」、「人件費支出内訳表」、「消費収支計算書」、「補正予算書」の中科目以下の金額(但し、大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く。)については、当該学校法人の財務状況を全て公開することは、金融上、経営上の秘密などの経営ノウハウが明らかとなり、その結果ノウハウを利用されるなど競争に不利になり、学生の確保にも大きな影響を与えるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、経営内容が一定明らかとなる大科目(大科目により知り得る中科目以下の金額及び補助金に係る中科目以下の金額を含む。)については公開し、中科目以下の金額(ただし、大科目により知り得る中科目以下の金額及び補助金に係る中科目以下の金額は除く。)については、「競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当するものと判断し、非公開とした。

同様に、「固定資産明細表」、「基本金明細表」、「基本金組入額総括表」、「財産目録」及び「創設費及び財源の総括表」の金額に関する部分、「創設費及び財源の総括表」及び「財産目録」の運用財産及び負債に係る記載についても、金融上、経営上の秘密などの経営ノウハウが明らかとなり、その結果ノウハウを利用されるなど競争に不利になり、学生の確保にも大きな影響を与えるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、非公開とした。

「創設費及び財産の総括表」及び「財産目録」のうち、教育機器等に係る部分、また、「校具、教具、図書、及び備品の明細表」、「理事会決議録(平成14年11月14日付け)及び議案資料」及び「評議員会決議録(平成14年11月14日付け)及び議案資料」のうち、校地・校舎・機器・備品に係る部分については、教育に要する施設、機器備品等は当該学校法人の教育上のノウハウを知りうる情報であり、これらの情報を公にすることは、教育上のノウハウを利用されるなど競争に不利になり、学生の確保にも大きな影響を与えるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、非公開とした。

「借入金・支払利息明細表」、「理事会決議録(平成14年11月15日付け)」及び「評議員会決議録(平成14年11月15日付け)」、「不動産売買契約書(平成16年6月24日付け)」、「工事請負契約書(平成16年11月19日付け)」、「設計監理委託契約書(平成16年11月15日付け)」、「校地校舎図面(付近近況図、配置図、各階平面図、立面図)」のうち、当該取引事業者及び関係者の名称、金額に該当する部分があるものについては、当該学校法人及び取引事業者、関係者に係る金融上、経営上の秘密などの経営ノウハウが明らかとなり、その結果ノウハウを利用されるなど競争に不利になるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、非公開とした。

さらに、「設置者変更の理由」、「理事会決議録(平成14年11月14日付け、同月15日付け、平成18年7月20日付け)」、「評議員会決議録(平成14年11月14日付け、同月15日付け、平成18年7月20日付け)」のうち、学校経営に係る部分については、今後の学校経営に係る内容であり、これを公にすることは、経営上の秘密などの経営ノウハウが明らかとなり、その結果ノウハウを利用されるなど競争に不利になり、学生の確保にも大きな影響を与えるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、非公開とした。

(2)第9条第1号に該当することについて

本件行政文書について、実施機関が公開しないことと決定した部分は別紙2のとおりであるが、このうち、条例第9条第1号に該当すると判断したものは以下のとおりである。

「理事会決議録」、「評議員会決議録」等には理事及び評議員の印影が含まれている。また、「役員名簿(理事長を除く)」については住所等が、「教職員名簿(校長を除く)」については氏名、生年月日、最終学歴等が、「E校授業時間割」については教員の氏名が記載されている。これらの情報については、個人のプライバシーに関する情報として保護する必要があり、非公開とした。

「校長採用届」及び「理事長の履歴書」については生年月日、住所、電話番号、学歴等が記載されており、「校長就任承諾書」については住所が記載されている。これらの情報については、個人のプライバシーに関する情報として保護する必要があり、非公開とした。また、同様に、「校長採用届」に係る文書のうち、破産宣告に関する証明及び後見登記等に関する証明について、「理事長の身分証明書」及び「理事長の印鑑証明書」は全部非公開とした。

4 異議申立人の提示する異議申立ての理由について

異議申立人の提示する異議申立ての理由に対しての見解は、以下のとおりである。

(1)専任教員の氏名に関する情報

教員については民間人であり、その氏名については個人情報にあたるため、従来から非公開としてきた。異議申立人は公開請求の根拠として、さいたま地方裁判所判決(平成17年(行ウ)第29号)を引用している。仮にその判決の立場に立ったとしても、その趣旨は、「専修学校の教員氏名は、学生に配布される履修案内や時間割表の記載、実際の教育の課程等で自ずから学生に伝わることは誰しも予見しているところであり、専修学校の教員において、その氏名が相当広範囲の第三者に伝わることをある程度予期していないということはできない。」ということであり、今回の学校設置認可申請及び設置者変更認可申請は認可を受けるために事前に将来採用する予定の教員を提示しているに過ぎないため、その内容は、確定的なものとは言えず、「その氏名が相当広範囲の第三者に伝わることをある程度予期して」いるとは言えない。

(2)財務関係書類に関する情報

ア 公益法人の情報公開に関して

異議申立人は、本件学校法人の財務関係資料については「公益法人の設立認可及び指導監督基準」に基づき、公開すべき情報に当たると主張するが、学校法人は私立学校法に規定される法人であり、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」の適用は受けない。学校法人については、私立学校法第47条において「学校法人は、(略)当該学校法人の設置する私立学校に在学する者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。」の適用を受けるものであり、私立学校法はあくまで利害関係人への閲覧にとどめている。しかし、これは、学校法人に対して最低限の義務を課したものであり、必ずしも利害関係人以外の者に対して閲覧に供することを禁止しているものではない。当該法人は最低限の義務以上の対応を自ら行っているだけであり、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」の適用を受け、行っているわけではない。

イ 当該法人の決算資料について

学校法人は、公教育の一翼を担うものとして、その設置・運営する学校を通じて、広く府民に教育サービスを提供する主体であり、教育活動の状況や経営状況などについての情報を積極的に公開するとともに、学生やその保護者などが学校を選ぶ際に、主体的で多様な選択を適切に行うことができるように情報公開に努める責務がある。

しかしながら、当該学校法人の財務状況を全て公開することは、金融上、経営上の秘密などの経営ノウハウが明らかとなり、その結果ノウハウを利用されるなど競争に不利になり、学生の確保にも大きな影響を与えるなど、競争上の地位その他正当な利益を害するものと考えられるため、経営内容が一定明らかとなる大科目(大科目により知り得る中科目以下の金額及び補助金に係る中科目以下の金額を含む。)については公開し、中科目以下の金額(ただし、大科目により知り得る中科目以下の金額は除く。)については、「競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの」に該当するものと判断し、非公開とした。

なお、当該法人は、財産目録等を含む事業報告書関係をホームページ上で掲載しているが、掲載されているのは平成17年度の決算書のみであり、本件請求の対象となった資料は、平成12年度、13年度の決算書関係及び平成14年度の補正予算書関係、平成14年度、15年度の予算書関係である。

(3)校地の取得及び校舎の建設に係る関係者の情報

ア 校舎の設計者等の情報

異議申立人は校舎の設計者等の情報は建築計画概要書に記載されており、これが閲覧できることから公開すべき文書であると主張するが、本件請求に係る校舎の設計者、工事監理者、施工者の情報については契約書の内容に記載されたもの、また、それに関連するものであり、一般的に契約書は双方の契約の意思を表したものであり、その内容は第三者に対して公開することを予期して作成されたものではない。このため、契約書に記載された校地の取得及び校舎の建設に係る関係者の情報を公開することは学校経営の競争上の地位や利益を害する恐れがある。

また、校舎の設計者等は事業者であり設計監理委託契約書等の内容と設計者等の情報を同時に公開することは設計者等の競争上の地位や利益を害する恐れがある。

これらのことから、条例第8条第1項第1号に該当すると判断し、非公開とした。

イ 校地の売主の情報

異議申立人は、校地の売主の情報は不動産登記に記載されていることから公開すべき文書であると主張するが、本件請求に係る校地の売主の情報については契約書の内容に記載されたものであり、上記に述べたとおり、一般的に契約書は双方の契約の意思を表したものであり、その内容は第三者に対して公開することを予期して作成されたものではない。このため、契約書に記載された情報を公開することは学校経営の競争上の地位や利益を害する恐れがある。

また、校地の売主については、登記簿上、中間省略登記の可能性があり、必ずしも契約上の売主と登記簿上の前所有者が同じとは限らない。さらに、校地の売主は事業者であり、契約内容と売主の情報を同時に公開することは売主である事業者の競争上の地位や利益を害する恐れがある。

これらのことから、条例第8条第1項第1号に該当すると判断し、非公開とした。

4 結論

以上のとおり、本件についての実施機関の決定は、条例の非公開事由の要件に該当するものとして適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適正かつ妥当なものである。

 

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件行政文書について

本件行政文書は、「D校設置者変更認可申請書」、「名称変更届(G校に係るもの)」及び「E校設置認可申請書」であり、別紙1記載の文書からなっている。

異議申立人は、本件非公開部分のうち、印影、性別、生年月日、個人の現住所、電話番号、最終学歴、職歴、賞罰の情報については公開を求めていないとする一方、法人の役員に関する情報については公開を求めるとしていることから、「学校法人A役員名簿(新・旧)」に記載されている役員の住所及び職業等については、公開を求めていると考えられる。このことを踏まえ、異議申立人が、本件異議申立てにおいて公開を求めている情報(以下「本件係争情報」という。)を整理すると、次の(1)から(4)のとおりである。

なお、実施機関は、本件決定に係る通知書において、D校設置者変更認可申請書に添付されている「学校法人A役員名簿(新・旧)」に記録されている役員の氏名(理事長を除く。)について非公開とする旨の記載をし、異議申立人も、その公開を求めていると判断されるが、上記役員の氏名は、既に本件決定に基づく公開の実施の際に異議申立人に公開されており、実施機関に確認したところ、本件決定に係る通知書の記載を誤ったとのことであった。これらのことから、本件決定は、公開の実施の際に上記役員の氏名を公開するように変更されていると言うべきであり、当審査会としては、上記役員の氏名を本件係争情報から除外して判断することとし、実施機関において、速やかに、本件決定に係る通知書を訂正すべきものと考える。

(1)法人の学校運営に係る非公開情報

ア D校設置者変更認可申請書

(ア)「設置者変更の理由」に記録されている設置者変更の理由に係る具体的な記述の部分

(イ)平成14年11月15日開催の学校法人A理事会及び評議員会の決議録に記録されている設置者変更の理由及び方法に係る具体的な説明の部分

(ウ)平成14年11月14日開催の学校法人B理事会及び評議員会の決議録及び議案資料に記録されている経営引継の理由及び方法に係る具体的な説明の部分

イ 名称変更届(G校に係るもの)

平成18年7月20日開催の学校法人B理事会及び評議員会の決議録に記録されている第2号議案の名称及びその内容に係る記述の部分

(2)法人の取引先に係る非公開情報

ア D校設置者変更認可申請書

(ア)平成14年11月15日付け学校法人Aの理事会及び評議員会の決議録に記録されている取引先金融機関名
(イ)学校法人Aの創設費及び財源の総括表に記録されている負債の借入金の借入先
(ウ)学校法人Aの平成12、13年度借入金・支払利息明細表に記録されている借入先
(エ)学校法人Aの平成12、13年度財産目録の預金明細に記録されている取引先金融機関名

イ E校設置認可申請書

(ア)平成16年6月24日付け不動産売買契約書に記録されている売主の名称、代表者名及び住所
(イ)平成16年6月24日付け不動産売買契約書に記録されている立会人の名称等及び住所
(ウ)平成16年11月19日付け工事請負契約書に記録されている請負者の名称、代表者名及び住所
(エ)平成16年11月19日付け工事請負契約書に記録されている監理者の名称、代表者名及び住所
(オ)平成16年11月15日付け設計監理委託契約書に記録されている建築家(設計監理者)の名称、代表者名及び住所
(カ)校地・校舎図面に記録されている作成者(設計監理者)の名称
(キ)校地・校舎図面に記録されている測量事務所の名称、住所、電話番号、FAX番号、代表者名等
(ク)創設費及び財源の総括表に記録されている校地に係る契約の相手方(売主)の名称

(3)法人の財務状況に係る非公開情報

ア D校設置者変更認可申請書

(ア)平成14年11月14日付け学校法人Bの理事会及び評議員会の議案資料に記録されている校地、校舎、機器・備品の簿価及び評価の金額に関する部分

(イ)平成14年11月14日付け学校法人Bの理事会及び評議員会の議案資料である平成14年度の補正予算書に係る資金収支予算書及び消費収支予算書に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く)

(ウ)学校法人Aの創設費及び財源の総括表のうち「財産目録総括表」の会計別、財産区分別の内訳の金額、「資産」の校地・校舎の簿価、校具・教具・備品の明細(品名、数量、価格)、運用財産である預金(預金先を除く。)、現金(学校名を除く。)、土地、建物及びその他の運用財産(運用財産の種類を除く。)の明細、「負債」の借入金の明細(借入金種別、利率、金額及び備考)、その他の負債の明細(種類別、会計別の金額)並びに「平成10年度機器備品台帳」の表の項目名を除く全部

(エ)学校法人Bの財産目録(平成14年9月30日)に記録されている金額(資産総額、負債総額及び正味財産の総計を除く。)

(オ)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「貸借対照表」、「資金収支計算書」、「人件費支出内訳表」及び「消費収支計算書」に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く。)

(カ)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「固定資産明細表」に記録されている金額(差引期末残高の合計を除く)

(キ)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「借入金・支払利息明細表」の表の項目名を除く全部

(ク)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「基本金明細表」の表の項目名を除く全部(組入高の期末残高を除く。)

(ケ)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「基本金組入額総括表」の表の項目名を除く全部(組入済額の合計を除く。)

(コ)学校法人Aの平成12、13年度の決算書中「財産目録」の表題、表の項目名(財産の明細に相当するものを除く。)及び貸借対照表の大科目に該当する金額を除く全部

(サ)D校の平成15、16年度収支予算書に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く)及び積算基礎

(シ)学校法人Bの平成12年度決算報告書中「監査報告書」に記録されている引当金の算定方法に関する記述の部分

(ス)学校法人Bの平成12、13年度決算報告書中「資金収支計算書」、「資金収支内訳表」、「消費収支計算書」、「消費収支内訳表」及び「貸借対照表」に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く。)

(セ)学校法人Bの平成12、13年度決算報告書中「人件費支出内訳表」に記録されている金額(合計を除く)

(ソ)学校法人Bの平成12、13年度決算報告書中「固定資産明細表」に記録されている金額(差引期末残高の合計を除く)及び注釈

(タ)学校法人Bの平成12、13年度決算報告書中「借入金明細表」に記録されている金額

(チ)学校法人Bの平成12、13年度決算報告書中「基本金明細表」に記録されている金額(貸借対照表の大科目に該当する金額を除く。)

(ツ)学校法人Bの平成14年度補正予算書中「資金収支予算書」及び「消費収支予算書」に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く。)

(テ)学校法人Bの平成15、16年度予算書中「資金収支予算書」及び「消費収支予算書」に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く。)

イ 名称変更届(G校に係るもの)

G校の平成18、19年度収支予算書に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額、補助金に係る中科目以下の金額は除く)

ウ E校設置認可申請書

(ア)平成16年6月24日付け不動産売買契約書に記録されている売買代金の金額及び撤去物の明細
(イ)平成16年11月19日付け工事請負契約書に記録されている請負代金(内訳を含む。)及び支払金額
(ウ)平成16年11月15日付け設計監理委託契約書に記録されている設計監理報酬及び支払額の積算方法に係る部分
(エ)校具、教具、図書及び備品の明細表の表の項目名を除く全部
(オ)平成17、18年度収支予算書に記録されている中科目以下の金額(大科目により知り得る中科目以下の金額は除く。)
(カ)創設費及び財源の総括表に記録されている金額
(キ)学校法人Cの平成16年3月31日付け財産目録に記録されている金額(貸借対照表の大科目に該当する金額を除く。)

(4)役員及び教職員に係る非公開情報

ア D校設置者変更?可申請書

(ア)学校法人Aの役員名簿(新・旧)に記録されている役員の住所(理事長を除く)
(イ)学校法人Aの役員名簿(新・旧)に記録されている役員の職業(理事長、学校長、園長、名誉教授、弁護士、税理士及び公認会計士を除く)
(ウ)D校の教職員名簿に記録されている教職員の氏名(校長を除く)
(エ)D校の教職員名簿に記録されている校医の氏名

イ 名称変更届(G校に係るもの)

平成18年5月25日付け学校法人Bの理事会及び評議員会の決議録に記録されている職員の氏名

ウ E校設置認可申請書

(ア)教職員名簿に記録されている教職員の氏名(校長を除く)
(イ)教職員名簿に記録されている校医の氏名
(ウ)授業時間割に記録されている担任教員名

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)条例第8条第1項第1号について

事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが本号の趣旨である。

同号は、

ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体を除く。)その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報を除く。)

が記録された行政文書は公開しないことができる旨定めている。

本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果となると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害や社会的評価の不当な低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

(2)本件係争情報の条例第8条第1項第1号該当性について

本件係争情報のうち、条例第8条第1項第1号に該当するとして非公開とされた情報は、2の(1)から(3)までに列挙した情報である。いずれも、学校法人に関する情報であり、(1)アの要件に該当することは明らかである。

次に、これらの情報が(1)イの要件に該当するかどうかについて、検討する。

ア 法人の学校運営に係る非公開情報について

本項の情報については、審査会において内容を見分したところ、いずれも、当該学校法人における経営方針の決定に至る具体的な事情又は引き続き検討中の事案の内容が明らかとなる情報であると認められた。このような情報は、通常、法人内部で管理される情報であり、公にすると、団体の自治に対する不当な干渉となり、法人の正当な利益を害すると認められるから、(1)イの要件に該当する。

イ 法人の取引先に係る非公開情報について

本項の情報のうち、2(2)イの(ア)及び(ク)の情報については、土地又は法人の登記簿に記載されている情報であり、法務局において誰でも閲覧できるから、(1)イの要件に該当しないことが明らかである。

また、2(2)イの(ウ)、(エ)、(オ)及び(カ)の情報については、監理者及び設計監理者の法人代表者名を除いて、建築基準法第93条の2の規定に基づき一般の閲覧に供される建築計画概要書に記載されている情報であり、法人代表者名については法人登記簿に記載されている情報であるから、いずれも(1)イの要件に該当しないことが明らかである。

一方、本項の情報のうち、2(2)ア並びに2(2)イの(イ)及び(キ)の情報は、当該学校法人の公表されていない取引先が具体的に明らかとなる情報であり、公にすることにより、当該学校法人の取引上の秘密が明らかとなり、正当な利益を害すると認められるから、(1)イの要件に該当する。

ウ 法人の財務状況に係る非公開情報について

学校法人は、教育という公益性の高い事業を行うため、私立学校法に基づき設立される広義の公益法人であり、公的な補助の対象となることも多い。その全般的な財務状況や公的な補助に関する情報は、広く府民等の正当な関心の対象となるべきものであり、本件決定においても、既に、財務諸表の大科目に該当する数値や公的な補助に関する情報は、公開されている。

これに対し、本項の情報は、いずれも、学校法人の財務に関し、会計基準上、中科目以下に位置づけられる数値等の詳細な情報であり、公にすることにより、当該学校法人の財務状況や経営方針が相当程度明らかとなる。

また、本件各学校法人のうち、学校法人B及び学校法人Cは、それぞれのホームページに、平成17年度の「資金収支計算書」、「消費収支計算書」、「貸借対照表」及び「財産目録」を掲載し公表しているが、本件異議申立ての対象となっている平成12〜16年度の財務関係書類を公開している事実は認められない。

さらに、民法に基づいて設立される狭義の公益法人については、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」において、「財務等に関する資料について原則として一般の閲覧に供すること」と規定され、府においても、関係部局で各法人から提出された財務諸表を一般の閲覧に供する措置を講じているところであるが、この基準は、学校法人には適用されない。学校法人については、私立学校法第47条第2項の規定により、「財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書及び監査報告書を、法人の各事務所に備えて置き、当該学校法人の設置する学校に在学する者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない。」と規定され、利害関係人への開示は義務づけられているが、広く一般府民等への公開を義務づけた規定はなく、学校法人の財務諸表そのものを、利害関係人以外の一般府民等に公開するかどうかの判断は、当該学校法人に委ねられている。

これらのことを総合して判断すると、本項の情報は、いずれも、公にすることにより、本件各学校法人の経営上の秘密を明らかにすることとなり、正当な利益を害すると認められ、(1)イの要件に該当する。

以上のことから、本件係争情報中、条例第8条第1項第1号に該当するとして非公開とされた情報のうち、2(2)イの(ア)、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)及び(ク)の情報は、同号に該当しないため、公開すべきであり、それ以外の情報については、同号に該当するため、公開しないことができる。

(3)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたのが条例第9条第1号である。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、
イ 特定の個人が識別され得るもののうち、
ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるもの」とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(4)本件係争情報の条例第9条第1号該当性について

本件係争情報のうち、本件決定において、本号に該当するとして非公開とされた情報は、2(4)に列挙した情報である。いずれも、学校法人の役員名簿や議事録、私立学校の教職員名簿に記録された個人の氏名、住所又は職業に関する情報であり、(3)ア及びイの要件に該当することは明らかである。

次に、これらの情報が、(3)ウの要件に該当するかどうか検討する。

ア 2(4)ア(ア)の情報について

本項の情報は、学校法人の理事長を除く役員の個人の生活の本拠たる住所であり、このような個人の住所の情報は、公にすることにより、第三者による私生活への介入を容易にするものであって、社会通念上、他人に知られたくないと望む情報である。また、理事長以外の役員の住所については、法令の規定等により何人も閲覧できる情報でも、慣行上公表されている情報でもない。

以上のことから、本項の情報は、上記(3)ウの要件にも該当すると認められる。

なお、異議申立人は、最高裁判所平成10年(行ヒ)第54号公文書非公開決定処分取消請求事件の平成15年11月11日判決に基づき、学校法人の役員(理事及び監事)の情報は、「法人その他の団体の代表者若しくはこれに準ずる地位にある者が当該法人等の職務として行う行為に関する情報」に該当するため、開示されるべきであると主張するが、本項の情報は、役員の私生活の本拠である自宅の住所であり、役員が「職務として行う行為に関する情報」とは言えないから、異議申立人の上記主張は採用することができない。

また、異議申立人は、法人の役員に関する情報もホームページに掲載されており、公になっていると主張するが、ホームページに掲載されているのは現在の理事及び監事の氏名のみであり、過去の役員の氏名や現在の役員の住所は掲載されていないから、この点に関する主張もまた、採用することができない。

イ 2(4)ア(イ)の情報について

本項の情報は、学校法人Aの役員が、役員の職務とは別に有する職業に関する情報であり、このような情報は当該役員の役員としての職務に関する情報には該当しない。また、一般に、個人の職業に関する情報は、社会通念上、他人に知られたくないと望む情報であり、本項において非公開とされている職業については、法令の規定等により何人も閲覧できる情報でも、慣行上公表されている情報でもない。

以上のことから、本項の情報は、(3)ウの要件に該当すると認められる。

ウ 2(4)のア(ウ)、ウ(ア)及びウ(ウ)の情報について

本項の情報は、いずれも、私立の専門学校の教職員として採用が予定されていた個人の氏名であり、公にすることにより、特定の個人が、特定の学校に勤務する予定であったこと及びその職種が明らかとなる情報である。このような個人が就職を予定していた職業や勤務先に係る情報については、一般に、社会通念上、他人に知られることを望まないものであり、また、私立学校の教職員は、公務員ではなく、私立の専門学校の教職員について、その氏名を、一般に公開する慣行等も認められない。

この点に関し、異議申立人は、さいたま地方裁判所平成17年(行ウ)第29号公文書一部不開示処分取消及び公文書開示処分給付請求事件の平成18年4月26日判決を引用して、少なくとも専任教員の氏名を公開すべきであると主張しているが、当該事件は、埼玉県情報公開条例に関する下級審の判断事例である上、公開すべきとされた情報が、現に勤務している専任教員の氏名である点で、本件とは事案が異なる。

さらに、異議申立人は、実施機関が、採用予定の教員を審査して認可不認可を判断していることから、その採用予定教員の氏名を公開すべきであると主張するが、実施機関における審査資料となっていることから、直ちに、これを公開すべきであるということはできない。

以上のことから、本項の情報は、(3)ウの要件に該当すると認められる。

エ 2(4)のア(エ)及びウ(イ)の情報について

本項の情報は、いずれも、私立の専門学校の校医として委嘱する予定であった医師の氏名である。このような情報は、専ら個人の資格で事業活動に従事する専門職の当該職務に関する情報であり、医師の氏名については一般に診療所や病院などにおいて掲示されるなど、通常明らかにされていることから、社会通念上、他人に知られたくないと望む情報ではなく、(3)ウの要件に該当しないと認められる。

オ 2(4)イの情報について

  本項の情報は、いずれも、学校法人の理事会又は評議員会において発言した学校法人の職員の氏名であり、公にすることにより、特定の個人が、特定の学校法人に勤務していたことなどが明らかとなる情報である。このような個人の勤務先に関する情報は、一般に、社会通念上、他人に知られたくないと望む情報であり、また、学校法人の職員は、公務員ではなく、その氏名を一般に公開する慣行等も認めらない。

以上のことから、本項の情報は、(3)ウの要件に該当すると認められる。

4 結論

以上のとおりであるから、本件異議申立ては、本件非公開部分のうち「第一 審査会の結論」の1から5に掲げた部分の公開を求める部分について理由があり、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

 

(主に調査審議を行った委員の氏名)

岡村周一、曽和俊文、小松茂久、鈴木秀美


 

別紙1 行政文書の名称

1 D校設置者変更認可申請書(平成14年11月29日付け)

 (1)D校設置者変更認可申請書
 (2)設置者変更の理由
 (3)学則
 (4)第6条の教育課程・年間授業時間数一覧表
 (5)卒業証書の様式
 (6)学校法人A理事会決議録(平成14年11月15日付け)
 (7)学校法人A評議員会決議録(平成14年11月15日付け)
 (8)学校法人B理事会決議録(平成14年11月14日付け)及び議案資料
 (9)学校法人B評議員会決議録(平成14年11月14日付け)及び議案資料
 (10)学校法人A寄附行為
 (11)学校法人B寄附行為
 (12)学校法人A役員名簿(新・旧)
 (13)学校法人Aの創設費及び財源の総括表
 (14)学校法人B財産目録(平成14年9月30日)
 (15)学校法人B理事長の履歴書、身分証明書、印鑑証明書
 (16)全部事項証明書〔建物〕(□□市□□区□□丁目□□番地□□)
 (17)施設の概要(D校)
 (18)学級編成表(D校)
 (19)教職員編成表(D校)
 (20)教職員名簿(D校)
 (21)校地・校舎図面(付近状況図、配置図、立面図)
 (22)学校法人Aの決算報告書
  ア 貸借対照表(平成12年度、平成13年度)
  イ 資金収支計算書(平成12年度、平成13年度)
  ウ 人件費支出内訳表(平成12年度、平成13年度)
  エ 消費収支計算書(平成12年度、平成13年度)
  オ 固定資産明細表(平成12年度、平成13年度)
  カ 借入金・支払利息明細表(平成12年度、平成13年度)
  キ 基本金明細表(平成12年度、平成13年度)
  ク 基本金組入額総括表(平成12年度、平成13年度)
  ケ 財産目録(平成12年度、平成13年度)
 (23)D校収支予算書(平成15年度、平成16年度)
 (24)学校法人B決算報告書(平成12年度、平成13年度)
  ア 監査報告書(平成12年度、平成13年度)
  イ 資金収支計算書(平成12年度、平成13年度)
  ウ 資金収支内訳表(平成12年度、平成13年度)
  エ 消費収支計算書(平成12年度、平成13年度)
  オ 消費収支内訳表(平成12年度、平成13年度)
  カ 貸借対照表(平成12年度、平成13年度)
  キ 人件費支出内訳表(平成12年度、平成13年度)
  ク 固定資産明細表(平成12年度、平成13年度)
  ケ 借入金明細表(平成12年度、平成13年度)
  コ 基本金明細表(平成12年度、平成13年度)
 (25)学校法人B補正予算書(平成14年度)
  ア 資金収支予算書(平成14年度)
  イ 消費収支予算書(平成14年度)
 (26)学校法人B予算書(平成15年度、平成16年度)
  ア 資金収支予算書(平成15年度、平成16年度)
  イ 消費収支予算書(平成15年度、平成16年度)

 2 名称変更届
 (1)名称変更届(平成18年8月24日)
 (2)学校法人B理事会決議録(平成18年5月25日付け)
 (3)学校法人B評議員会決議録(平成18年5月25日付け)
 (4)学校法人B理事会決議録(平成18年7月20日付け)
 (5)学校法人B評議員会決議録(平成18年7月20日付け)
 (6)学則(F校)
 (7)第6条の教育課程・年間授業時間数一覧表
 (8)卒業証書の様式
 (9)平成18年度収支予算書
 (10)平成19年度収支予算書

 3 E校設置認可申請書
 (1)設置趣意書
 (2)設置要綱
   E校学則
 (3)施設の概要
  ア 全部事項証明書〔土地〕(△△市△△区△△町△△−△△)
  イ 不動産売買契約書(平成16年6月24日付け)
  ウ 工事請負契約書(平成16年11月19日付け)
  エ 設計管理委託契約書(平成16年11月15日付け)
 (4)校地、校舎図面(付近状況図、配置図、立面図)
 (5)校具、教具、図書及び備品の明細表
 (6)学級編成表
 (7)教職員編成表
 (8)教職員名簿
 (9)校長採用届
  ア 校長履歴書
  イ 破産宣告に関する証明
  ウ 後見登記等に関する証明
  エ 就任承諾書
 (10)E校収支予算書(平成17年度、平成18年度)
 (11)創設費及び財源の総括表
 (12)学校法人C財産目録(平成15年度)
 (13)学校法人C寄附行為
 (14)学校法人C現在事項全部証明書(××市××区××丁目××番地)
 (15)学校法人C理事会決議録(平成16年9月9日付け)
 (16)学校法人C評議員会決議録(平成16年9月9日付け)
 (17)学校法人C理事長の履歴書、身分証明書、印鑑証明書
 (18)E校授業時間割

別紙2 公開しないことと決定した部分  [Wordファイル/165KB]

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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