大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第150号)

更新日:2009年8月5日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第150号)

[公安委員会報告書不存在決定異議申立事案] 

 (答申日 平成19年12月20日)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 平成19年1月19日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府公安委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「平成○年、A署における警官拳銃自殺に関する報告書。平成○年、○県・○の警備に従事していたB機動隊員の自殺に係る報告書。」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2  同年1月31日、実施機関は、本件請求に対し、条例第13条第2項の規定により、不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり理由を付して異議申立人に通知した。

(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)

本件公開請求に係る行政文書については、作成又は取得していないため管理していない。

3 同年4月3日、異議申立人は、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨及び理由

1 異議申立ての趣旨

公開との決定を求める。

2 異議申立ての理由

本件決定に係る行政文書が存在しないという事は、当該実施機関の警察行政を管理する務めを果たしていないこととなり、本件決定は認めることができない為。 

第四 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 本件決定に対する意見

(1)公安委員会について

ア 実施機関は、国民の良識を代表する者によって構成される合議制の機関が警察の管理                                      を行うことで、警察の民主的運営と政治的中立性を確保することを目的として、都道府県知事の所轄の下に設置(警察法(昭和29年法律第162号)第38条第1項)されており、都道府県警察を管理し、また、法律の規定に基づきその権限に属せられた事務をつかさどることを、その任務としている。(警察法第38条第3項、第4項)

イ 「都道府県警察を管理」とは、都道府県警察は、警察法第36条第2項の規定により、

当該都道府県の区域につき、警察法第2条に規定する警察の責務に任ずることとなっているから、都道府県公安委員会は、都道府県の区域における警察事務のすべてについて、都道府県を管理する責任を負うこととなる。

また、「管理」の意義については、都道府県公安委員会の行う管理は、個々の事務執     行を含まず、大綱方針を定めてこれによる事前事後の監督を行うことを意味し、その監督は、内部的に警視総監又は当該道府県警察本部長を通じて行われるものであって、直接に他の警察職員を監督することはできないとされている。

なお、実施機関における大綱方針とは、大阪府公安委員会運営規則(平成13年公安委員会規則第3号)第2条第3項で、「警察法第47条第2項の大阪府警察の事務の準則その他当該事務を処理するに当たり準拠すべき基本的な方向又は方法を示すものとする。」と規定されている。

(2) 本件決定の妥当性について

ア 実施機関における報告について

本件請求は、「警察官の自殺に関する報告書」を求めるものであることから、実施機関の管理する大阪府警察からの報告について以下説明する。

(ア)警察法第38条第3項によるもの

本項は、「都道府県公安委員会は、都道府県警察を管理する。」と規定されており、管理するとは、上記(1)イで述べたとおり、大綱方針を定めてこれによる事前事後の監督を行うことを意味するものであり、直接、警察職員を監督するものではない。これは、管理機関たる公安委員会と運営機関たる警視庁及び道府県警察の組織権限の区別によるところである。

なお、公安委員会制度に期待されるものは市民によるコントロールであって職務執行の専門能率化ではなく、実施機関としては、警察の運営に当たっての準拠枠となる大綱方針を示し、それに大阪府警察を服さしめ、事前事後に監督することで必要かつ十分であり、これらの警察運営についての個別的又は具体的な指示を行うことは、公安委員会の性格に照らし、一般的には予定されていないと解されるところである。ただし、警察事務の執行が大綱方針に則していないため、又はその疑いがある場合に、具体的事態に応じ、個別的又は具体的に、当該大綱方針に則した是正のための措置を指示することや、当該指示を行う前提として事実を把握するための調査を行うよう指示することは、上級機関として大綱方針を示した立場からは当然に可能であると考えられる。

(イ)警察法第38条第4項によるもの

本項は、「第5条第3項の規定は、都道府県公安委員会の事務について準用する。」と規定されており、本項において準用する第5条第3項の事務とは、「法律(法律に基づく命令を含む。)の規定に基づきその権限に属された事務」となるが、国の機関である国家公安委員会に権限を与えることができるのは、法律(法律に基づく命令を含む。)であることに対して、都道府県の自主立法たる条例も都道府県公安委員会に権限を与えることができるのであるから、本項において準用する第5条第3項の事務には、条例の規定に基づきその権限に属された事務を含むこととなる。

都道府県公安委員会の権限が規定されている法令としては、警察法を根拠にするものとして、警察官の任免についての意見を述べ、懲戒、罷免に関し勧告をすることや、警察庁又は他の都道府県警察に対して援助の要求をすることがあり、その他、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)による風俗営業の許可及びその取消しや、行政処分時における聴聞を行うこと、道路交通法(昭和35年法律第105号)による運転免許を与え、また、その取消しをすることなどが権限に属せられた事務とされている。

(ウ)警察法第43条の2によるもの

本条は、第1項において、「都道府県警察の事務又は都道府県警察の職員の非違に関する監察について必要があると認めるときは、都道府県警察に対する警察法第38条第3項の規定に基づく指示を具体的又は個別的な事項にわたるものとすることができる。」としており、これを根拠に、実施機関においては、「監察の指示に関する定め」により必要な事項を定め、大阪府警察本部長に対して、指示することとしている。

これは、上記(イ)で述べたような、警察運営に関する専門的・技術的知識が必要とされる事務については、個別的又は具体的な指示を行うことは、一般的には予定されていないと解されているが、監察は、都道府県警察の事務のすべてについて行われるものとされており、専門的・技術的知識を要する事務に関しても行われることになるため、都道府県公安委員会の監察点検機能を強化するため、具体的又は個別的な事項にわたる監察の指示ができることを特に明確に規定し、この点について立法的な解決を図ったものである。

そして、本条第2項は、都道府県公安委員会が監察の指示を発した場合において、都道府県公安委員会が都道府県警察から報告を徴するにとどまらず、都道府県公安委 員会の指示に基づき監察を適正に実施しているかについて、委員を指名し、その指名された委員が、例えば、監察実施の現場に赴くなどの方法により、警察の行う監察の実施状況を調査、点検し、都道府県公安委員会の指示が適正に履行されているかどうかを確認し、指示の十全を期することとしたものである。

(エ)警察法第56条第3項によるもの

本項では、「警視総監又は警察本部長は、警察法第43条の2第1項の規定による指示がある場合のほか、都道府県警察の職員が次の各号のいずれかに該当する疑いがあると認める場合は、速やかに事実を調査し、当該職員が当該各号のいずれかに該当することが明らかになったときは、都道府県公安委員会に対し、都道府県公安委員会の定めによるところにより、その結果を報告しなければならない。

一 その職務を遂行するに当たって、法令又は条例の規定に違反した場合

二 前号に掲げるもののほか、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合

三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」

と規定されており、これを根拠に、都道府県警察から都道府県公安委員会への報告が行われる。

これは、不祥事案が確実に都道府県公安委員会に報告され、都道府県公安委員会の適切な管理の下にその適切な処理が行われるようにするとともに、都道府県公安委員会には都道府県警察の職員の懲戒・罷免に関し任命権者に必要な勧告をする権限が付与されているところ、この勧告権が十全に行使されることを担保するため、警視総監又は道府県警察本部長に対し懲戒事由に係る事案の都道府県公安委員会への報告を義務付けるものである。

「警察法第43条の2第1項の規定による指示がある場合」については、本項の報告義務の対象外とされている。これは、警察法第43条の2の規定により公安委員会が監察の指示をした場合は、当該指示に基づく監察自体が個別具体的な職員の不祥事案についての調査を含むとともに、その当然の結果として、当該公安委員会に対して報告義務が生ずることから、あえて本項で義務付けをする必要はないからである。また、本項は、不祥事案に係る報告を各公安委員会の定める手続等により統一的に運用するために設けられたものであるが、監察の指示に基づく調査の結果の報告については、指示の個別具体性に着目し、それぞれの場合に応じて機動的・弾力的に運用することが望ましいとされている。

本項第1号の「法令又は条例の規定」とは、警察法第38条第5号と同様に、              都道府県公安委員会規則を含まない趣旨である。また、第2号の「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」とは、法令、条例及び都道府県公安委員会規則若しくは職務上の命令によって課された義務に違反し、又は職務を怠った場合を指す。第3号の「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行」は、汚職、職権濫用等のほか、私行上の傷害行為など、個々の行為について健全な社会通念により個別に客観的に判断することとなる。

イ 本件請求に対応する行政文書の存否について

本件請求に係る行政文書は、いずれも、「平成○年、A署における警官拳銃自殺」と「平成○年、○県・○の警備に従事していたB機動隊員の自殺」と警察官の自殺の発生を前提として作成又は収受されるものであり、実施機関が本件請求に係る行政文書があるとして公開・非公開の決定を行うだけで、「平成○年、A署における警官拳銃自殺」及び「平成○年、○県・○の警備に従事していたB機動隊員の自殺」が発生したことを確認することができることとなる。また、これら本件請求に係る行政文書の存在を答えることにより明らかとなる情報は、当該所属の職員が自殺をしたという個人のプライバシーに関する情報であり、職員の氏名は含まれていないものの、自殺の発生年及び所属の情報が含まれていることから、関係者であれば容易に職員個人が特定され得る情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められ、条例第9条第1号に該当するプライバシー情報であることが認められる。

しかしながら、本件決定に係る事案については、一般に広く購読されている新聞の多くが報道していることや、当然に、一般人も容易に知り得る状況にあることから、本件請求に係る行政文書の存否を答えたとしても、新たに条例第9条第1号に該当するプライバシー情報を公開することにはならないとして、本件請求に係る行政文書の特定を行ったところ、実施機関においては、上記ア(ア)から(エ)により、大阪府警察から報告された事実は認められなかったものであり、本件請求に対応する行政文書の存在も確認できなかったものである。

これらを総合的に判断して、実施機関においては、本件請求に係る事案については、事実の存在を知り得る状況にあるものの、本件請求に係る行政文書の存在が認められないことから、本件決定に至ったものである。

2 異議申立人の主張に対する反論について

異議申立人は、「行政文書が存在しないという事は、当該実施機関の警察行政を管理する務めを果たしていないこととなり、上記処分は認めることができない」旨主張するが、本件決定は、上記1で述べたとおり、実施機関は、法令や実施機関の定めにより大阪府警察を管理しているものの、本件請求に係る行政文書を現に管理していないことから、条例の規定に基づき行われたものであり、異議申立人の主張する実施機関の務めを果たしていないとする理由は、本件決定に対する理由としては、失当である。

3 結論

以上のとおり、本件決定は条例の趣旨を踏まえて行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第五 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件請求に係る行政文書は不存在である旨主張しているので、検討したところ、以下のとおりである。

(1)警察職員の人事管理に関する実施機関の権限等について

実施機関は、大阪府知事の所轄の下に設置される行政委員会であり、知事が議会の同意を得て任命する5人の委員で構成されている(警察法第38条第1項及び第2項)。

また、実施機関の任務は、大阪府警察を管理し、法律の規定に基づきその権限に属せられた事務をつかさどることとされている(警察法第38条第3項及び第4項)が、この場合の管理は、個々の事務執行を含まず、大綱方針を定めて、これによる事前事後の監督を行うことを意味し、その監督は、内部的に大阪府警察本部長を通じて行われるものであって、直接に大阪府警察本部長以外の警察職員を監督することはできないと解されている。

ただし、警察職員の人事管理に関しては、実施機関は、大阪府警察の職員の非違に関する監察について必要があると認めるときは、大阪府警察に対して具体的又は個別的な事項にわたる指示をすることができるものとされており(警察法第43条の2)、その実効性を担保するため、大阪府警察本部長は、その職員が、「職務を遂行するに当たって、法令又は条例の規定に違反した場合」、「職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」又は「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」のいずれかに該当する疑いがあると認める場合は、速やかに事実を調査し、当該職員が当該各号のいずれかに該当することが明らかになったときは、実施機関に対し、その結果を報告しなければならないこととされている(警察法第56条第3項)。

(2)本件請求に対応する行政文書の存否について

本件請求に対応する行政文書が存在しないことについて、審査会において、実施機関の説明を聴取したところ、一般に、警察職員の自殺事案については、監察の対象となる非違行為との関連が疑われる事案に限って、必要に応じて、警察本部から実施機関に報告されているところであり、本件請求に係る各自殺事案は、いずれも発生当時、報道機関で取り上げられた事案ではあるものの、非違行為との関連が疑われる事案ではなかったと思われ、実施機関への報告は行われていないとのことであった。

これらの説明については、(1)で述べた警察職員の人事管理に関する実施機関の権限等の状況からみて、特段、不合理、不自然な点は認められず、他に、実施機関が、本件請求に対応する事案について、大阪府警察から報告を受けていることを伺わせる状況も認められなかった。

また、異議申立人は、本件請求に対応する行政文書が存在しないということは、実施機関の警察行政を管理する務めを果たしていないこととなる旨主張するが、このような警察行政のあり方に関する主張は、本件請求に対応する行政文書が存在するか否かについての判断に影響を及ぼすものではない。

以上により、本件請求に対応する行政文書は存在しないと認められるから、本件決定は妥当である。

3 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

(主に調査審議を行った委員の氏名)

岡村周一、福井逸治、松田聰子、岩本洋子 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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