大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第142号)

更新日:2009年8月5日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第142号)

[府営住宅における動物飼育等関係文書部分公開決定(文書特定)異議申立事案]

(答申日 平成19年7月18日)

第一 審査会の結論

実施法人の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 平成18年9月5日、異議申立人は、大阪府住宅供給公社(以下「実施法人」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第19条の2の規定により、「過去6年間に渡っての犬猫・畑問題で行って来た事柄についての資料全て」についての法人文書公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 同年9月19日、実施法人は、本件請求に対応する法人文書として、(1)の文書(以下「本件部分公開文書」という。)を特定の上、(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)」を行い、公開しない理由を(3)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)法人文書の名称

ア A住宅畑作状況調査図面及び写真

イ 府営住宅の敷地について(お知らせ)の決裁書類(平成17年12月12日付)及び配付文書(平成17年12月付)

ウ 入居者指導用「住まいのしおり」の作成にかかる大阪府への監修依頼について(伺い)(平成18年2月23日付第511号)及び当該原稿に係る大阪府からの修正書類

(2)公開しないことと決定した部分

ア 写真のうち自動車及び自動二輪車のナンバープレートが識別される部分

イ 個人の肖像

(3)公開しない理由

本件法人文書(非公開部分)には、個人の肖像等が記録されており、これらは、個人のプライバシーに関する情報であって、特定の個人が識別され得るもののうち他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる。

3 異議申立人は、平成18年10月11日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施法人に異議申立てを行った。

三 異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、請求に該当する全ての文書の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 条例について

(1)条例の趣旨(第1条−目的−)

「行政文書及び法人文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、総合的な情報公開の推進し、その事により、府民の府政への参加のより一層の推進、府政の公平な運営の確保、もって府民の府政への信頼を深め、府民の福祉の増進に寄与することである。」

(2)条例公開文書の範囲(第2条の3−定義−)

「法人文書」とは、「実施法人の役員又は職員が職務上作成し又は取得したものであって、当該実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているものをいう」。つまり、情報開示を求める請求人の趣旨にそって当該実施法人は、公開しない事が出来る事を条例で規定したものに該当するもの以外は「全部公開」を原則として、“積極的に”開示請求に応じなければならない。

2 実施法人について

実施法人は、昭和40年11月1日府の全額出資により設立された指定出資法人である。また、平成17年4月1日より大阪府住宅管理センター(以下「旧住宅管理センター」という。)と統合し、旧住宅管理センターが府から受託していた入居者管理及び施設維持管理を引き続き府から受託している。

つまり、旧住宅管理センター時代から問題とされて来た犬猫問題と畑問題も、それぞれ対応する入居者管理及び施設維持管理の問題として実施法人は、包括的に引き継いでいる事となり「実施法人の義務」である。

この事は、旧住宅管理センター時代、入居時に書いた「誓約書」の文言である“犬猫の飼育の禁止”という項目を、今現在も継続して維持している事からも言える。

3 異議申立人の請求内容

「過去6年間に渡っての犬猫・畑問題で行って来た事柄についての資料全て。」つまり、過去6年間を振り返り、その期間(旧住宅管理センター時代も含む)に犬猫問題・畑問題に関して施された“全ての事柄”に対して及ぶ。

1(2)で示した基本原則「全部開示」に沿ったものである。

4 開示された法人文書

(1)A住宅畑作状況調査図面及び写真

(2)府営住宅の敷地について(お知らせ)の決裁書類(平成17年12月12日付)及び配付文書(平成17年12月付)

(3)入居者指導用「住まいのしおり」の作成にかかる大阪府への監修依頼について(伺い)(平成18年2月23日付第511号)及び「当該原稿に係る大阪府からの修正書類(部分公開決定)(平成18年9月27日付)」

以上が公開された法人文書の全てであり、(1)については、異議申立人が口頭により「当該A住宅の現状に関して再確認して下さい」との要請に応える形で実現した現地に赴いての調査・確認により作成された書類である。

5 実施法人の主張について

発見された当該「新たな書類」が公開対象である「法人文書」を規定する1(2)条例公開文書の範囲(第2条の3−定義−)の要件である

a 実施法人の役員又は職員が職務上作成し又は取得したものであり

b 実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているもの

という上記2点の要件を満たさないものであるという主張である。

つまり、上記a,bの要件を満たす文書が「法人文書」に当たり、それ以外の文書は公開の対象とならないという主張である。

また、実施法人は、入居者からの苦情・相談における管理センターの事務処理につき、

《1》 まず、それぞれの住宅の担当者が窓口・電話等にて応対した内容を必要に応じて控える。

《2》 応対内容が担当者において“処理出来ないような案件”であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付して行く。

という手順により行われていると主張している。

壱の手順をふむ事によりaの要件が満たされ、《2》の手順をふむ事によりbの要件が満たされるという対応した関係にある事から、《1》・《2》の手順について見て行くことにする。

(1)《1》の手順について

実施法人は、《1》の手順において担当者が記したものであると明言している事から、発見された「新たな書類」は対応するaの「実施法人の役員又は職員が職務上作成し又は取得したもの」という要件を満たす事となる。

(2)《2》の手順について

ア 発見された当該「新たな書類」が“犬猫問題”に関する内容である事。

イ 本件の犬猫問題・畑問題の場合、旧住宅管理センター時代から数えて丸6年以上もの期間に渡り、異議申立人が管理センター・府に対して請願して来た事項であり、未だに解決出来ていない事柄である。当該実施法人関係者もその旨を訴え、以後解決までの間検討し続けると言っていた事柄である事。

この事から、簡単に担当者が“処理出来ないような案件”であるといえる。

ウ 大阪府住宅供給公社就業規則(以下「就業規則」という。)第9条(服務心得)に定める規則に従い、第10条(禁止行為)である公社の秩序又は職場の規律をみだすこと(四号)、その他公社の信用を傷付ける行為をすること(五号)等の禁止事項遵守の要請から、実施法人自ら明記している《2》の手順の真摯な履行が“処理出来ないような案件”である場合に求められる事。

エ 実施法人自ら明記している《2》の手順が、「応対内容が担当者において“処理出来ないような案件”であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付して行く。」である事。

上記ア〜エの事柄により、本件発見された「新たな書類」は、実施法人の明記する「《2》の手順」の要件を満たし、この事により対応するbの「実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているもの」を満たし、公開対象である「法人文書」に該当する事となる。

ただ、実施法人は本件発見された「新たな書類」は、組織として検討していくための対応記録も作成されていない“個人の段階でとどまっている”「法人文書」に該当しないものと主張しているので、以下に検討する。

実施法人が主張する“個人の段階でとどまっている”というものは、“組織としての検討に付していく”段階に未だ入っていないものではなく、要件を具備しているにも係わらず、なされるべき作業をなされていない、ただそれだけの事である。単純に“任務懈怠”によるものである。

その理由として、当該実施法人の本件担当職員との会話の際に「言う事を聞かない人にはどうしようもないでしょ?どうするって言うのですか?」という疑問を異議申立人が逆に投げられた事があり、簡単に“処理出来ないような案件”である事を訴えるのであるなら、本来解決しない事柄であるのなら対応記録を作成し組織として検討すべきものである。

この事は就業規則に規定される“信用失墜行為”等であり又条例の趣旨である“積極的に情報を開示する事による信頼確保”等にも反する行為である。

条例の趣旨は行政の不作為を隠蔽するものではなく、府民が知る権利を下に行政を監視すべきものである。

6 結論

条例の趣旨は、1(1)でも述べたが、申立人の請求に積極的に応じる事による信頼の確保等であり、この事を保障する事により行政機関の恣意的隠蔽であるとか、本来行われなければならない行為に対する不作為等の行政機関の怠慢を発見・監視する事が出来るのである。

よって本件決定は条例の趣旨に反し不当である。

第五 実施法人の主張要旨

実施法人の主張は概ね次のとおりである。

1 実施法人の概要について

(1)実施法人の設立の目的について

実施法人は、住宅を必要とする勤労者に対し、住宅の積立分譲等の方法により居住環境の良好な集団住宅及びその用に供する宅地を供給し、もって住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与するとともに、秩序ある住宅市街地の開発に資することを目的として、地方住宅供給公社法に基づき、昭和40年11月1日府の全額出資により設立された指定出資法人である。

(2)実施法人の事業について

実施法人は、府下約2万3000戸の公社賃貸住宅の経営を中心に、宅地開発事業及び都市再生事業等を行っている。

また、平成17年4月1日には、旧住宅管理センターと統合し、旧住宅管理センターが府から受託していた府営住宅約13万8000戸の入居者管理及び施設維持管理を引き続き府から受託した。

なお、平成18年4月1日からは、大阪府営住宅条例第53条(管理の代行)により、府営住宅又は共同施設の管理に関する事務のうち、公営住宅法第三章の規定による管理(家賃の決定並びに家賃、敷金その他の金銭の請求、徴収及び減免に関することを除く。)を代行している。

(3)組織・管理体制について

実施法人は、本社以外に、公社賃貸住宅及び府営住宅の日常管理の窓口となる管理センターを大阪市(中央管理センター)、豊中市(千里管理センター)、枚方市(枚方管理センター)、堺市(堺管理センター)、岸和田市(岸和田管理センター)の5か所に配置し、府民サービスに努めている。 

2 動物飼育・共同施設について

(1)府営住宅における動物飼育について

府営住宅における動物飼育については、公営住宅法・大阪府営住宅条例、大阪府営住宅条例施行規則において規制する規定はないが、府営住宅は集合住宅であり、住宅の構造も動物の飼育を想定しておらず、また飼育することによる臭い、毛の飛散、騒音(鳴き声)などが、他の入居者への迷惑行為につながるおそれがあることから自粛を求めている。

したがって、実施法人では、入居時に配付する「住まいのしおり」や定期広報誌「ふれあいだより(年4回発行)」などにより、動物を飼育しないよう啓発を行ってきたところである。

しかし一方、動物との共生によって生活に潤いや安らぎが生まれる効果もあることから、府において府営住宅における動物飼育について、入居者の同意(居住する世帯の8割以上)及び飼育の規則を定めるなど一定の条件を満たした場合に限り、団地住民の意思を尊重することとした「府営住宅内における動物飼育に関する取扱い要領」を策定し、平成17年6月27日より実施している。

(2)共同施設について

府営住宅敷地内の広場、緑地、通路等は、公営住宅法第2条第9号、同法施行規則第1条及び大阪府営住宅条例第2条第5号に規定する共同施設であり、入居者の共同の福祉のために必要な施設であることから、実施法人としては、前述の「住まいのしおり」に「個人の耕作や花壇などには使用しない」旨を記載し、「ふれあいだより」での同様の記事を掲載するなどの方法により、入居者に対して適正な管理を啓発している。

3 本件決定の妥当性について

(1)本件部分公開文書について

ア 「A住宅畑作状況調査図面及び写真」について

平成17年9月22日、同年10月25日及び同年11月15日に現地を調査した際に撮影した写真と、同年10月25日撮影時の場所・方向を示した図面及び畑作状況を示した図面である。

イ 「府営住宅の敷地について(お知らせ)の決裁文書(平成17年12月12日付)及び配付文書(平成17年12月付)」について

前記1の調査結果等から、A住宅の全戸に配付した文書及び決裁である。

ウ 「入居者指導用「住まいのしおり」の作成にかかる大阪府への監修依頼について(伺い)(平成18年2月23日付第511号)」及び「当該原稿に係る大阪府からの修正書類」について

入居者指導用パンフレット「住まいのしおり」の改訂に伴う府への監修の依頼決裁及び府から提出された修正内容をまとめた書類である。

(2)異議申立人の主張について

異議申立人は、実施法人が本件部分公開文書の開示を行った翌日の平成18年9月28日に堺管理センターを訪れ、本件請求に対し、本件文書に動物飼育に対応したものがないことを理由として、実施法人の動物飼育に対する対応が不作為である旨を主張した。

それに対し、対応した職員がA住宅の職員個人の対応控を確認し、過去に対応した内容について口頭で説明したところ、異議申立人は職員がその際使用した控が、本件決定にかかる対象文書である旨を主張し、平成18年10月11日付け異議申立てしたものである。

(3)本件決定の適法性について

異議申立人は、異議申立て理由で「不存在とされた文書が新たに発見されたため。」と主張しているので、この点について検討する。

ア 条例第2条第3項に規定される法人文書とは、「実施法人の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書等であって、当該実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているもの」をいい、「組織的に用いるもの」とは、作成又は取得した文書等が、職員個人の段階のものにとどまらず、業務上必要なものとして、当該職員個人において自由に廃棄等の処分ができないものをいい、組織的検討に付された時点以後のものと解される。

イ 入居者からの苦情・相談における管理センターの事務処理は、aまず、それぞれの住宅の担当者が窓口・電話等にて応対した内容を必要に応じて控える。b応対内容が担当者において処理できないような案件であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付していくという手順により行われている。

平成18年9月28日、堺管理センターの職員が異議申立人に対し説明を行った際に使用した控は、上記aの手順において担当者が記したものであり、条例に当てはめると、職員が作成したものであるが、未だ組織的な検討に付されていない個人の段階にとどまっているものであり、当該実施法人において組織的に用いるものとして管理しておらず、担当者の判断により自由に廃棄等の処分ができるものである。

以上のことから、実施法人は、異議申立人が「不存在とされた文書が新たに発見されたため。」と主張するものについては、条例に定める法人文書ではなく、個人的な控であるため、公開の対象とはならないものと判断したものである。

したがって、本件決定においては、異議申立人の請求に対する法人文書を公開しており、異議申立人の主張には理由がない。 

また、異議申立人は、自身が丸6年以上もの期間に渡り請願してきた事項であるにもかかわらず、未だ解決されていないため、相談・苦情内容が“犬猫問題・畑問題”にかかわるものについては、全て「簡単に担当者が“処理できないような案件”」にあたると主張しているが、実施法人では、それぞれの相談・苦情については、個別に対応している。

ついては、異議申立人が請願する事項と「新たな書類」と主張するものに記載された案件とは別々に取り扱っており、また、当該案件については、適切に処理されていると判断しており、異議申立人の主張には、理由がない。

4 結論

以上のとおり、本件決定は、条例に基づき適正に行われたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

 1 条例の基本的な考え方について

法人文書公開制度は、府が設立した地方独立行政法人等の法人が、その設立目的及び組織形態から府の行政の一部を構成し、その諸活動を府民に対し説明する責務を自ら有すると考えられることから、当該法人が保有する法人文書について、府の行政機関が保有する行政文書と同様の公開請求を行うことができることとした制度である。その基本的な理念は、条例の前文及び第1条にあるように、府民の法人文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、公開することにより、個人や他の法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、実施法人の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第19条の3において、条例第8条第1項及び第9条に定める適用除外事項の規定を準用することとしたものであり、実施法人は、請求された情報が条例第2条第3項に規定する法人文書に記録されている場合には、条例第8条第1項及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された法人文書を公開しなければならないのである。

2 実施法人が行う府営住宅管理業務の実情について

弁明書及び審査会における実施法人の説明などにより、次のとおり認められる。

実施法人は、地方住宅供給公社法に基づき、昭和40年11月1日大阪府の全額出資により設立された府指定出資法人で、公社賃貸住宅の経営、宅地開発事業及び都市再生事業等の事業を行っている。平成17年4月1日には、旧住宅管理センターと統合し、旧住宅管理センターが府から受託していた府営住宅の入居者管理及び施設維持管理を引き続き府から受託しており、平成18年4月1日からは、大阪府営住宅条例第53条(管理の代行)により、府営住宅又は共同施設の管理に関する事務のうち、公営住宅法第三章の規定による管理(家賃の決定並びに家賃、敷金その他の金銭の請求、徴収及び減免に関することを除く。)を代行している。

実施法人は、公社賃貸住宅及び府営住宅の日常管理の窓口として、本社以外に、府内5箇所(中央・千里・枚方・堺・岸和田)に管理センターを配置している。

府営住宅における動物飼育については、公営住宅法、大阪府営住宅条例、大阪府営住宅条例施行規則において規制する規定はないが、府営住宅は集合住宅であり、住宅の構造上、動物飼育を想定しておらず、また、他の入居者への迷惑行為などにつながるおそれがあることから自粛を求めており、入居時に配付する「住まいのしおり」や定期広報誌「ふれあいだより(年4回発行)」などでも、動物を飼育しないよう啓発が行われてきたところである。

しかし一方では、動物との共生によって生活に潤いや安らぎが生まれる効果もあることから、大阪府において、府営住宅における動物飼育について、入居者の同意(居住する世帯の8割以上)及び飼育の規則を定めるなど一定の条件を満たした場合に限り、団地住民の意思を尊重して動物飼育を認めるとする「府営住宅内における動物飼育に関する取扱い要領」を定め、平成17年6月27日より実施されている。

また、府営住宅敷地内の広場、緑地、通路等は、公営住宅法第2条第9号、同法施行規則第1条及び大阪府営住宅条例第2条第5号に規定する共同施設であり、入居者の共同の福祉のために必要な施設であることから、実施法人では、「住まいのしおり」や「ふれあいだより」に「個人の耕作や花壇などには使用しない」旨を記載するなどの方法により、入居者に対して適正な管理の啓発が行われてきたところである。

入居者からの苦情や相談に対する実施法人の管理センターでの事務処理は、各担当者が窓口・電話等で応対した内容を必要に応じて控えており、そのうち、応対内容が担当者において処理できないような案件であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付していくという手順により行われている。

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由

異議申立人は、異議申立書において、本件異議申立ての趣旨として、「本件決定を取り消し、請求に該当する全ての文書の公開を求める。」と記載しているが、異議申立人から提出された反論書及び審査会における口頭意見陳述の内容からすると、本件部分公開文書の非公開部分の公開を求めているのではなく、本件部分公開文書以外に本件請求に対応する法人文書が存在する旨を主張し、その公開を求めていると判断されるので、以下においては、本件部分公開文書の非公開部分を非公開とした判断が妥当かどうかの検討は行わず、本件部分公開文書以外に本件請求に対応する法人文書が存在するどうかについて検討することとする。

(1)条例第2条第3項について

法人文書公開請求の対象となる「法人文書」の意義については、条例第2条第3項に「実施法人の役員又は職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面、写真及びスライド並びに電磁的記録であって、当該実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているもの」をいう旨規定されている。

「実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、当該実施法人が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した役員又は職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施法人の組織において業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものを意味する。

したがって、正式文書とは別に職員が自己の執務の便宜のために保有する複写物や個人的な検討段階のメモで未だ組織的な検討に付されていないものなど、個人で自由に廃棄しても組織上・職務上支障がない個人メモ等は、これに該当しないが、このような個人メモ等として作成又は取得されたものであっても、実施法人の組織において業務上必要なものとして利用・保存されるに至った場合は、職員個人の段階のものとはいえず、「組織的に用いるもの」に該当することになる。

(2)本件部分公開文書以外に本件請求に対応する法人文書があるかどうかについて

この点について、異議申立人は、平成18年9月28日に実施法人の堺管理センターを訪問し、職員から説明を受けた際に、職員が使用した文書(以下「本件職員使用文書」という。)が、本件請求に対応する法人文書に該当する旨主張している。これに対し、実施法人は、本件職員使用文書の存在は認めつつも、条例第2条第3項に規定する法人文書には該当しないと主張し、その理由を、次のように説明している。

実施法人においては、府営住宅の入居者から苦情や相談があった場合は、各管理センターにおいて担当者が応対した内容を必要に応じて控えることとしており、そのうち、応対内容が担当者において処理できないような案件であった場合は、担当課長に報告の上、対応記録を作成し、組織としての検討に付していくという手順によっている。

本件職員使用文書は、府営住宅の入居者からの動物飼育に対する苦情内容と実施法人の対応について、堺管理センターの職員が自己の執務の便宜のため記録したもので、課長などの一定の職にある者を含めた複数の職員による検討に付したり、組織として共用するなどの取扱いをしていない。

したがって、本件職員使用文書は、当該職員個人のメモに過ぎず、「実施法人の役員又は職員が組織的に用いるものとして、実施法人が管理しているもの」ではないが、異議申立人が、堺管理センターを訪れ、苦情を申し出た際、指導した事例があるのかなどと問われたため、最近の事例として紹介するに当たって、手元にあった本件職員使用文書を参照したものである。

審査会において、任意に本件職員使用文書の提示を受け、その内容を見分したところ、本件職員使用文書は、白紙の用紙に手書きされたものであること、苦情の内容とそれに対する公社の対応が記録されており苦情処理としては一応完結したものとなっていることが認められた。このような本件職員使用文書の内容及び2で述べた実施法人における府営住宅管理業務の実情からすると、本件職員使用文書は、当該職員個人のメモに過ぎず、法人文書に該当しないという上記の実施法人の説明について、特段不自然な点は認められなかった。

また、本件職員使用文書以外に、本件請求に対応する法人文書の存在も確認できなかった。

以上のことから、本件請求に対応する法人文書は、本件部分公開文書以外には存在しないと認められ、実施法人が、本件部分公開文書のみを対象として、本件決定を行ったことは妥当であると認められる。

なお、実施法人における府営住宅入居者からの苦情や相談に対する対応については、管理センターの各担当者がそれぞれの判断で必要に応じて個人のメモなどの記録を残すこととしており、担当者において処理できないような案件についてのみ対応記録を作成し、組織として検討するという手順がとられているが、本件の審査の過程で聴取したところによると、実際に対応記録が残されているのは、ごく少数の事案に限られていることが認められた。

しかしながら、府営住宅の管理は、府の業務の代行であり、実施法人としても、その執行状況について、府や府民に対する説明責任があること、また、府営住宅の入居者と管理代行者である実施法人との関係は継続的なものであり、入居者との信頼関係を維持する観点から、入居者からの苦情や相談については、その場で完結した事案など軽易なものを除き、組織として記録を作成し管理することが望ましいと考える。今後、実施法人においては、苦情処理に関する文書の作成や管理について、十分に配慮されるよう望むものである。

4 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

(主に調査審議を行った委員の氏名)

  岡村周一、曽和俊文、小松茂久、鈴木秀美

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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