大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第128号)

更新日:2009年8月5日

(答申第128号)子ども家庭センター関係文書公開請求拒否事案

(答申日 平成18年11月22日)

1 公開請求された行政文書(公開請求書の記載)

(ア)妻○、子○、○、○と子ども家庭センターとの間であった経緯の分る文書

(イ)健康福祉部と○との間であった経緯の分る文書

2 実施機関の決定

 (1)実施機関

    大阪府知事(担当課:健康福祉部児童家庭室家庭支援課

(2)決定内容

   公開請求拒否決定

   (理由)

   本件請求は、特定の個人と子ども家庭センター及び健康福祉部との間であったやりとりの経緯が分かる行政文書の公開を求めるものであり、当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、大阪府情報公開条例第9条第1号に該当する情報を公開することになるため。

3 異議申立て

(1)申立ての趣旨

公開請求拒否決定処分の取消しを求める。

(2)理由

   事実を知りたい。

4 大阪府情報公開審査会の答申

(1)答申の結論

実施機関の判断は妥当である。

(2)理由(要旨)

ア 条例第9条第1号について

本号は、

(ア) 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

(イ) 特定の個人が識別され得るもののうち、

(ウ) 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

イ 条例第12条について

本条は、公開請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで第8条及び第9条に規定する適用除外事項によって保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に公開請求に係る行政文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨を定めたものである。

本条は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで適用除外事項に該当する情報を公開することとなる場合にのみ例外的に適用できるのであって、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねない。本条の運用にあたっては、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによって生じる権利利益の侵害や事務執行の支障等を各適用除外事項に照らして具体的かつ客観的に判断する必要があると解されるところである。

ウ 本件請求に係る行政文書の存否を答えることにより明らかとなる情報とその条例第9条第1号該当性について

本件請求は、「妻○、子○、○、○と子ども家庭センターとの間であった経緯のわかる文書。健康福祉部と○との間であった経緯のわかる文書」を求めるものである。

本件請求に係る行政文書は、特定個人が子ども家庭センター又は健康福祉部と何らかの関わりをもった場合に実施機関において作成されるものであり、本件行政文書があるとして公開・非公開の決定を行うだけで、特定個人が子ども家庭センター又はその所管部局である健康福祉部と何らかの関わりをもったという事実が明らかとなる。

このような情報は、児童に関する家庭その他からの相談を受けるとともに、当該児童の施設入所等の措置を行うという子ども家庭センターの業務内容からすると、特定の児童に関して相談機関に相談しなければならないような深刻な問題が生じていることを推測させる情報であり、特定個人の私生活に関する情報の中でもとりわけ機微にわたるものであって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるから、(1)ア、イ及びウの各要件に該当することは明らかである。

したがって、本件請求に係る行政文書が、存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるものであり、実施機関が、条例第12条の規定に基づき本件請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。

大阪府情報公開審査会答申(全文)

第一 審査会の結論

  実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 異議申立人は、平成18年3月22日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、「妻○、子○、○、○と子ども家庭センターとの間であった経緯の分る文書。健康福祉部と○との間であった経緯の分る文書。」についての公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関は、同年3月31日、本件請求に対し、条例第13条第2項の規定により、本件請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく本件請求を拒否する旨の公開請求拒否決定(以下「本件決定」という。)を行い、次のとおり理由を付して異議申立人に通知した。

(公開請求を拒否する理由)

本件請求は、特定の個人と子ども家庭センター及び健康福祉部との間であったやりとりの経緯が分かる文書を求めるものである。本件請求が存在しているか否かを答えることは、特定の個人と子ども家庭センター等との間で、何らかのやりとりがあったという情報を明らかにするものであって、個人のプライバシーに関する情報を公にすることとなる。

したがって、大阪府情報公開条例第9条第1号及び第12条の規定により、当該行政文書の存在を明らかにしないで、本件請求を拒否する。

3 同年5月8日、異議申立人は、本件決定を不服として、実施機関に対し、行政不服審査法第6条の規定により、異議申立てを行った。

第三 異議申立ての趣旨

本件決定の取り消しを求める。

第四 異議申立人の主張

  異議申立人の主張は次のとおりである。

  事実を知りたい。

第五 実施機関の主張要旨

  実施機関の主張は概ね次のとおりである。

1 子ども家庭センターの業務について

   児童福祉法第11条第1項では、児童福祉法の施行に関し、都道府県が行う業務を規定している。また、同法第12条では都道府県に児童相談所(大阪府では「子ども家庭センター」という。)の設置義務が規定されている。

児童福祉法に基づき、子ども家庭センターでは、18歳未満の子ども及び家族からの様々な相談に応じているが、主に以下の業務を行っている。

8a) 児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること。

(b) 児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。

(c) 児童及びその保護者につき、調査又は判定に基づいて必要な指導を行うこと。

(d) 児童の一時保護を行うこと。

(e) 施設入所等の措置を行うこと。

   こうした業務を行う子ども家庭センターにおいて、児童や家庭に係る相談を子ども家庭センターの窓口や電話などで受け付けている。これらの相談は、児童福祉司や児童心理司等の職員が対応しており、その内容は児童記録にとりまとめられている。児童記録は、児童や家庭の状況を知り、それによって児童、保護者等にどのような援助が必要であるかを判断するためのものであり、次に掲げるものが記載されている。

(a) 相談受付(児童名、保護者名、住所、生年月日、相談要旨など)

(b) 調査(児童・家族の現況、生育暦、親族との関係、地域社会との関係など)

(c) 診断(心理診断、医学診断など)

(d) 指導、援助など

   児童記録には、以上のような情報が記載されており、条例第9条第1号に該当する特定の個人が識別され得るもののうち、一般に個人に知られたくないと望むことが適当であると認められるものである。なお、児童福祉法第61条においては、罰則付きで厳重な情報管理を求めている。

2 条例第12条の公開請求拒否決定の妥当性について

以下では、本件請求文書の存否を明らかにするだけで、適用除外事項の条例第9条第1号に該当する情報を公開することになるということを説明する。すなわち、本件請求文書の存否を明らかにするだけで、(a)特定の個人が識別され得る情報であって、(b)一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものに該当する情報を公開することになるということを述べる。

(a) 本件請求は、特定の個人名を示した上で子ども家庭センター及び健康福祉部との間であったやりとりの経緯が分かる文書の公開を求めるものである。これらの文書は、特定の個人が子ども家庭センター及び健康福祉部への相談等があったことを前提として取得されるものであることから、本件請求文書が存在しているか否かを答えることは、特定の個人の相談等の有無を答えることと同様の結果が生じることとなる。

(b) 特定の個人の子ども家庭センター及び健康福祉部への相談の有無は、個人の心身状況、家庭状況等に結びつく情報であって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものであることから、条例第9条第1号に該当する。

(a)及び(b)より、請求文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当し公開が禁止されている個人のプライバシーに関する情報を公開することになるので、条例第12条の規定により本件請求文書の存否を明らかにしないで公開請求を拒否したものである。

3 結論

以上のとおり、本件処分は、条例の趣旨を踏まえたものであり、何ら違法、不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。  

 

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けるとともに、第12条において、公開請求に係る文書の存否を答えるだけで、これら適用除外事項に該当する情報を明らかにすることになる場合には、当該公開請求を拒否することができる旨定めているのであり、実施機関は、請求された情報がこれらの規定に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 子ども家庭センター等について

実施機関においては、児童福祉法第12条の規定により都道府県に設置が義務づけられている児童相談所として、府内6ヵ所に子ども家庭センターを設置している。

子ども家庭センターでは、18歳未満の児童を対象に、主に以下の業務を行っている。

(a) 児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること。

(b) 児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。

(c) 児童及びその保護者につき、調査又は判定に基づいて必要な指導を行うこと。

(d) 児童の一時保護を行うこと。

(e) 施設入所等の措置を行うこと。

子ども家庭センターでは、窓口や電話などで児童福祉司や児童心理司等の職員が相談に対応しており、その内容は児童記録にとりまとめられている。児童記録は、児童や家庭の状況を知り、それによって児童、保護者等にどのような援助が必要であるかを判断するためのものであり、児童名、保護者名を含む相談受付、調査、診断、指導、援助などの情報が記載されている。

一方、健康福祉部は、実施機関において、社会福祉に関する事項、社会保障に関する事項及び保健衛生に関する事項を分掌するため設置された部であり、子ども家庭センターも所管していることから、子ども家庭センターで生じた事案に関して、直接府民と接触をもつことがある。  

3 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

実施機関は、本件請求に係る行政文書があるかどうかを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することになり、条例第12条に該当すると主張しているので、検討したところ、次のとおりである。

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(2)条例第12条について

本条は、公開請求に係る行政文書の存否を明らかにするだけで第8条及び第9条に規定する適用除外事項によって保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に公開請求に係る行政文書の存否自体を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨を定めたものである。

本条は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで適用除外事項に該当する情報を公開することとなる場合にのみ例外的に適用できるのであって、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねない。本条の運用にあたっては、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによって生じる権利利益の侵害や事務執行の支障等を各適用除外事項に照らして具体的かつ客観的に判断する必要があると解されるところである。

(3)本件請求に係る行政文書の存否を答えることにより明らかとなる情報とその条例第9条第1号該当性について

本件請求は、「妻○、子○、○、○と子ども家庭センターとの間であった経緯のわかる文書。健康福祉部と○との間であった経緯のわかる文書」を求めるものである。

本件請求に係る行政文書は、特定個人が子ども家庭センター又は健康福祉部と何らかの関わりをもった場合に実施機関において作成されるものであり、本件行政文書があるとして公開・非公開の決定を行うだけで、特定個人が子ども家庭センター又はその所管部局である健康福祉部と何らかの関わりをもったという事実が明らかとなる。

このような情報は、児童に関する家庭その他からの相談を受けるとともに、当該児童の施設入所等の措置を行うという子ども家庭センターの業務内容からすると、特定の児童に関して相談機関に相談しなければならないような深刻な問題が生じていることを推測させる情報であり、特定個人の私生活に関する情報の中でもとりわけ機微にわたるものであって、一般に他人に知られたくないと望むことが正当と認められるから、(1)ア、イ及びウの各要件に該当することは明らかである。

したがって、本件請求に係る行政文書が、存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるものであり、実施機関が、条例第12条の規定に基づき本件請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。

3 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

(主に調査審議を行った委員の氏名)

塚本美彌子、岡村周一、曽和俊文、松田聰子

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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