(4)家族の一員としての自分に気づく <自分でするってきもちいい>
単元名
○家での仕事を体験する(生活科)
○こうしたい、こうしよう[権利と責任](特別活動)
観 点
◎権利と責任 ○規範意識 ○自己肯定感 ○思いやり ○コミュニケーション力
ねらい
○ 自分や家族の生活を振り返ることを通して、生活は一人ひとりお互いに協力することによって成り立っていることを知る。
○ 展開例1では、実際に家での仕事を体験しながら、家族の役に立っている喜びを感じるとともに、家族の一員として主体的に家庭生活にかかわり、自らの役割を責任をもって果たそうとする態度と、家族への感謝の気持ちを育む。
○ 展開例2では、自分が人からされて困ることは人にもしないこと、すなわち社会のルールとして、権利を主張することは同時にそれに伴う責任を負うものであるということに気づく。まず家族や身近な人との関係を通して、そうした認識の基礎を育てていく。
展開例1
家での仕事を体験する
学習活動 | 指導者の働きかけ・留意点 | 予想される反応 |
1自分のしている仕事や、自分のできる仕事を発表する。 | ○ 発表されたものは、表にまとめる。 | ・もっと上手になりたいな。 ・他にできそうな仕事はないかな。 |
2自分の挑戦してみたい仕事を選び、計画を立てる。 | ○ 表の中から選び、同じ仕事でグループになるようにする。 ○ それぞれの仕事の流れやコツについては「マニュアル」としてまとめておくようにする。 | ・うまくできるかな。 ・家の人に聞いてみよう。 |
3グループに分かれて、仕事を体験する。 | ○ 仕事を体験するにあたっては、グループごとに、保護者等にゲストティーチャーとして入ってもらい、仕事についてのアドバイスを受ける。 | ・靴洗い、洗濯物たたみ、窓ふき、掃除、おかずづくり、おにぎりづくり、アイロンがけ、皿洗い など |
4体験した感想を交流する。 | ○ できてうれしかったことや、家族への思いが発表できるようにする。 | ・ハンカチのしわがきれいになって気持ちよかった。 ・毎日、食器を洗うって大変だな。今日から、自分でもやってみる。 |
学習活動 | 指導者の働きかけ・留意点 | 予想される反応 |
1.A「こうしたい」カードの説明 ○“権利”について説明 | *班で活動(4から5人)*A「こうしたい」カードとB「こうしよう」カードを用意(色別けした方がよい) ○このカードはみんなが「こうしたい・こうしてほしい」ということがかいてあります。だれでも自分を大切にしてもらうことができます。これを“権利”と言います。 | (*低学年には言葉が難しいのでわかりやすい言葉で説明のこと) ・昨日、クラスで話し合ったね。 |
2.B「こうしよう」カードの説明 ○“責任”について説明 | ○もう一つは「こうしよう・これはいけない」という守らないといけない約束ごと(ルール)です。これを“責任”と言います。 | ・めんどくさいね。 ・ぼくちゃんとやってるよ。 ・守らない子がいるよ。 |
3.ルールの説明 (トランプの要領で) ※別のルールでも可能 ※Aのカードを何度使ってもいいことにしてもいい。 | ○A「こうしたい」カードを順番に分けて配る。 ○真ん中にB「こうしよう」カードを裏向きに重ねる。 ○B「こうしよう」カードを順番にめくり、それに関係するA「こうしたい」カードをもっている人がいれば、Bをもらえる。A・Bのカードをペアで出していく。(繰り返す) ※配付札と置き札が逆でもいい。 ※1枚のBカードに、何枚かのAカードが対応する場合もある。カードをとれる理由を話させる。 | ・このカードで、「こうしよう」カードが取れるよ。 ・このカードで何度も取れたから、大切なことなのかな。 ・守らないといけないことって多いね。 |
4.ふりかえり ○“権利と“責任が一体の関係にあることを気づくようにする | ○A「こうしたい」カード(権利)に対して、どんなB「こうしよう」カード(責任)を選んだかな。どうして? ○思ったことを出し合う。 ○ふだん、「こうしたい」ということができているか。 ○また、「こうしよう」ということができているか。 | ・「こうしよう」カードだけ見たらめんどうに思ったけど、やるの当たり前だね。 ・やりたいだけで、守ることを忘れたら無茶苦茶になるね。 |
(参照)[人権学習ハンドブック(3)「権利と責任」中川喜代子著、大阪市・大阪市人権啓発推進協議会発行/人権学習ブックレット(3)「権利と責任」中川喜代子著、明石書店]
<参考>
『児童の権利条約』第13条では「子どもは自由な方法でいろいろな情報や考えを伝える権利、知る権利をもっています。ただし、ほかの人の権利をじゃましたり、だれかを傷つけてはいけません」という意味の内容が規定されている。
権利と責任は、法的にも、日常生活でも、コインの裏表のような一体の関係としてとらえる必要がある。例えば、ペットを飼うにはきちんと世話をすること、図書室で本を使ったら元の場所に戻すこと、花火をする時は周りの迷惑にならない場所でやり火の後始末をちゃんとすること、車を運転するには免許をもち保険に加入すること等、当たり前のこととして理解できるようにする。
取組例(幼稚園)
異年齢児とのかかわりで思いやりと責任が
未就園児との交流
一緒に走ったりする時、「ゆっくりしてあげないとこけてケガするかもしれない」と相手の気持ちに気づいたり、遊びのルールを4歳児なりに伝えようとする姿が見られるようになってきた。未就園児を前に「しっかりしなければ」というたくましい姿が、生活習慣面や社会性の芽生えとなっている。
4・5歳児の異年齢の交流
泡遊びでは、遊び方のわからない4歳児に道具を探してあげたり、石鹸を削ってあげて作り方を教える姿はとても一生懸命でやさしくほほえましく感じた。「もっと水少なくしたら」「この花は取っていいよ」「ピンクの泡、少しあげようか?」と見せ合いながら楽しんでいた。一緒に遊んだり、真似したり工夫して遊ぶ楽しさを感じながら互いに仲間意識が高まり、次の遊ぶ意欲へとつながっていった。
お泊まり保育(5歳児)を通して
自立する経験を通して、自信と感謝のきもちを
緊張していた子どもたちも、木立の中の爽やかな風や冷たい川の水に歓声をあげたり、アスレチックでぐらぐら揺れる橋を「こわいな、でも頑張るぞ」と自分を励まし渡る姿や、友だちと張り切って挑戦する姿が見られた。また、夜には、寂しくて泣いている友だちに寄り添い励ましている微笑ましい姿もあった。2日目の朝は、家族に手紙を書き、誕生から成長の過程で、さまざまな人に愛してもらったことへの感謝の気持ちを育てるようにした。
たった2日間ではあるが、家族と離れて一人で泊まれたことの満足感・達成感が自信となり、一人ひとりがひとまわり大きくなったように感じる。そして、丸一日生活をともにしてきたことで、友だちのようすがみえ、お互いの温かさを感じ心のつながりが深まってきたようだ。
親も子どもも一緒に育つ機会に
事前の保護者説明会では、「シャンプーはどうするのですか?」「持ち物は?」などの質問が出され、宿泊に対して不安をいだく人もいた。事後のアンケートでは、「子どもに手を掛け過ぎていた」「お泊まり保育を通し、自分のことを進んでするようになった」「心配をしていたが、友だちと一緒に頑張ることができ、参加させてよかった」「子どもの存在の大きさを知ることができ、家族の絆が強まった」等々嬉しい返事をいただき、保護者も子どもも互いに育ち合える機会となった。
やりきった自信が、次につながっていく
10月末のことである。ままごと遊びをしていた女児のグループが、大きなこたつ布団カバーを友だちと畳んでいると、A児が「お泊まり保育のシーツのたたみ方にしよう」と誘い、側にいたB児も「そうや、それがいいよ」とやりだした。子どもたちの中でこの経験が生活の中に生かされていることや、楽しい思い出になっていることに大変うれしく思った。
取組例(小学校)
やっぱり自分で作ったのはおいしいなあ
<家の仕事を体験する /保護者からの声>
昨日はお疲れさまでした。子どもたちが家のことをしなくなったと言われていますが、実はさせるとできることをいつの間にか大人たちがさせずに、それが「できない」という評価になり、ますます子どもたちができない環境を大人たちが作り出しているのではないかな?と思ってしまいました。これを機に、子どもたちにも大いにチャレンジさせてみたいと思います。
昨日はさっそく、おにぎり作りを夕食の時にして、きょうだいに食べさせてあげて、本人も食べた後に「やっぱり自分の作ったおにぎりはおいしいなぁ」と満足げでした。また、それを3歳の弟がマネしておにぎりを作り、同じ言葉を言って食べてました。
ほんまに大変なんやなあ
「わたしとかぞく」というテーマの学習では、導入で『ひと いのち』より「おとうさんのハンバーグ」を取り上げた。家族や子どもたちのために楽しんで料理する父親の姿を通して、家族の様子や家庭の出来事に興味関心を持ち、自分と家族の関わりに気づかせた。そこから、家族が協力して家事をすることで楽しい暮らしを作っていることに気づかせ、「お手伝い」ではなく、自分の仕事として自分にできることから家事を分担しようとする気持ちを持たせ、進んで生活をしていく生活態度に結びつけたいと願った。
自分たちにできる家の仕事は!?
家の仕事調べでは、一覧表を見て、母親に仕事が集中していることに今さらのように子どもたちは驚いていた。「どうしたらみんなで楽しく暮らせるかな?」「自分たちにできる家の仕事はどんなことがあるかな?」と、“いえのしごと大さくせん”へと展開していった。子どもたちが家の仕事をする中で、「どうして家の仕事はお母さんに集中しているのかな」という問題意識にも発展していくだろう。
後日、ある母親から「息子が帰ってくるなり、『お母さんの仕事ってほんまに大変なんやなあ。ぼくに何かすることある?』と言って、肩をもんでくれました。しばらくは子どもを怒らんとこうと思いました。学校に行かせて、こんなうれしかったことはありません」という話をしていただいた。
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教育庁 人権教育企画課 人権教育グループ
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