権利を侵害している「社会のバリア」について考えます
平成28(2016)年4月から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行され、障がいを理由とする差別的取扱いの禁止と合理的配慮(必要な変更・調整)の提供が求められるようになりました。
日常生活において、障がいのある人が排除されたり権利を制限されたりする背景には、「社会のバリア」(法律上では「社会的障壁」)があります。
では、何が「社会のバリア」なのでしょうか?
このプログラムでは、具体的な場面を通して、なぜ権利侵害が起こっているのか、どうしたら現実にある「社会のバリア」と向き合っていけるのかを、「社会モデル」をキーワードに、他の参加者との対話を通して考え、学んでいきます。
「社会モデル」 社会のバリア(社会的障壁) 対話 合理的配慮
シート1(1枚*参加者是認に見えるように拡大します)、シート2(参加者数)
コラム1・コラム2(参加者数)、ふりかえりシート(参加者数)
模造紙(グループ数)、マーカー(グループに4から5本)、マグネット(グループ数×2から3個程度)
ホワイトボードと専用ペン・イレイザー(黒板でも構いません)
(5分) | 1 はじめの説明・導入・・・・・・・・・・・・・・・ | このプログラムのねらいの説明や、参加体験型学習への導入を行います。 |
(10分) | 2 どうやってここに来ましたか?・・・・・・・ | 参加者同士が知り合い、その後の学習への参加を促進します。 |
(20分) | 3 この人はどうして電車に乗れない?・・・ | 具体的な場面から、障がいを「社会モデル」の視点でとらえることを考えます。 |
(35分) | 4 あなたならどうする?・・・・・・・・・・・・・・ | 障がいに関わって葛藤を含む場面から、差別的な状況に対してどう行動するかを考えます。 |
(20分) | 5 こう考えました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | 各グループから考えたことを出し合って共有します。 |
(10分) | 6 ふりかえり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ | これまでの活動をふりかえり、社会モデルの基本的な考え方を再確認し、自分の行動の一歩を考えます。 |
時間 | 学習の進め方 | アドバイス | ||||
スタート | 1 はじめの説明・導入
平成28(2016)年4月に障害者差別解消法が施行され、障がいを理由とする差別的取り扱いの禁止と、合理的配慮(必要な変更や調整)の提供が求められるようになりました。 日常生活においては、障がいのある人が排除されたり権利を制限されたりしていることがあります。 これまで、障がいのある人に対しては「思いやり」をもって接し「手助けする」ことが大切だ、それこそが「人権を守る」ことだ、と思われてきたのではないでしょうか。 しかし、「障がい」についての考え方は以前と大きく変わってきています。障がいのある人の権利を守る動きの中で、障がいのある人をめぐるバリアの原因は社会の側にあるのではないかと考えられるようになりました。 今日は、具体的な場面を一緒に考えることで、現実にある「社会のバリア」にどう向き合い、どう行動していくかを考えたいと思います。
2)参加体験型学習の説明 そのために、今日は参加体験型学習で進めます。これは、皆さん同士で対話をしたり動いたりしながら、皆さんの中で学び合う学習です。 3)ルールの説明 最初に、参加体験型学習を進めるためのルールを確認しておきたいと思います。 ●参加…できる限り参加しましょう。ただし、参加は強制ではありませんので、パスもありです。 ●尊重…相手の話をよく聴きましょう。 ●守秘…この講座で聞いた個人的な話はここだけにします。 ●時間…時間も分け合いながら進めます。 | ・会場設営:4から5人のグループ
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5分経過 | 2 どうやってここに来ましたか?
それではじゃんけんをして、聞き合ってください。ペアを変えて5分程度で5人の方と聞き合ってください。
はい、5分たちました。 3)感想の共有 どんなことを感じましたか? 1から2人に感想をお聞きし、みんなで感想の共有をしたいと思います。
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15分経過 | 3 この人はどうして電車に乗れない? (20分) 1)どうして電車に乗れないの?(3分) みなさんにここまでの交通手段を聞き合っていただきましたが、その交通手段から、障がいの「社会モデル」について考えていきたいと思います。
この絵には車いす利用者と電車が描かれています。この人は、このままでは電車に乗ることができません。では、「この人はどうして電車に乗れないのか」を考えてみてください。 時間は1分程度です。
2)発表(7分) 電車に乗れない理由について、共有の時間をとりたいと思います。 2から3人から発表してもらいます。挙手でお願いします。 他にありますか…。
3)「社会モデル」の説明(10分) 車いす利用者が電車に乗れない理由を発表していただきましたが、2つの視点があることに気付きます。 まず、「足が不自由だから」「自分で歩くことができないから」と、本人に理由があるとする視点があります。これだと、本人ががんばってリハビリすべきだということになります。このような視点を障がいの「医学モデル」といいます。
もう一つの視点は、「そもそも駅に階段しかないことが問題ではないか」と考えるものです。車いす利用者の他にも移動が困難な状態の人がいるのに、歩いて階段を上れる人しか使えない駅であることが問題だ、社会環境が整備されていないことに原因がある、という視点です。いわば「社会のバリア」が問題だということです。このような視点を障がいの「社会モデル」と言います。 障がい者をめぐる現実を考える時に、この「医学モデル」と「社会モデル」という視点はとても重要です。 もう一つ例を挙げます。 洋画には字幕がありますが、日本の映画には字幕がないのが普通ですね。聴覚障がいのある人は長年「字幕を付けてほしい」と運動してきましたが、まだ一部の映画館・一部の時間帯でしか字幕付きはありません。聴覚障がいのある人が日本の映画を楽しめないのは、「耳が聞こえないからだ」と考えるのが「医学モデル」、「字幕が用意されていないからだ」と考えるのが「社会モデル」というわけです。 かつては「医学モデル」の考え方が当たり前でした。しかし、世界で障がいのある人の権利を守る動きが広がる中で「社会モデル」の考え方が出てきて、人権問題として「障がい」をとらえる際の基本になりました。こうした中、障害者権利条約ができ、日本でもこの条約を締結するため障害者差別解消法ができました。障害者権利条約も障害者差別解消法も「社会モデル」の考え方に基づいたものです。 |
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35分経過 | 4 あなたならどうする? (35分) 1)移動と説明(5分) 1 移動(グループを作る) では、次の活動はグループで行いますので、近くの人と4から5人のグループになって座ってください。
2 説明 シート2には、障がいに関して具体的な場面が載っています。ケース1はマンションの住人(Aさん)からの相談、ケース2は聴覚障がいのある会社員(Cさん)からの相談、ケース3は発達障がいのある子どもの保護者(Dさん)からの相談です。 3つのケースを読んで、書かれている話し合いのポイントに沿ってグループで話し合ってください。 また、コラム1とコラム2をお配りしますので、必要に応じて話し合いの参考にしてください。
出された意見を模造紙に書いてください。意見を一致させる必要はありません。分かれた意見も書いていってください。 後で各グループから発表していただきます。 2)話し合いと模造紙への記入(30分) それでは、話し合った内容を模造紙に書き込んでください。それぞれが自由に書き込んでください。 模造紙は後で全体で共有します。
| ・ グループを作る時は、知り合い同士などで固まらないようにします。 ・余裕があれば、話し合いのポイントを板書しましょう。 ・ ケースごとの補足や留意点については、ファシリテーター用資料を参考にしてください。 事前にファシリテーター自身が各ケースについて考える際に読んだり、グループでの話し合いの状況を見ながら適宜紹介するなどしてください。 | ||||
70分経過 | 5 こう考えました
3)感想を出し合う(15分) それでは、自分の席に戻ってください。 他のグループの模造紙を見て、同じだったこと、違ったこと、自分のグループにはなかった視点など、いろいろ気付いたことがあったと思います。 他のグループの模造紙を見た感想なども含め、各グループの話し合いをさらに深めてください。
| ・ 車いす利用者や杖を使用される方など、移動への配慮が必要な方がいる場合は、必要に応じ机を動かしましょう。 | ||||
90分経過 | 6 ふりかえり
| ・ファシリテーターの体験なども加えて話すこともできます。 ・ 例えば、視覚障がい(弱視)のある人は、街で知らない人から(おそらく善意で)勝手に白杖を引っ張られると困惑してしまうそうです。また、スマートフォンを文字拡大して見ていたら、「障がい者のふりをしている」と誤解されることもあるそうです。 思込みで接するのでなく、相手の意思を確認する姿勢が大事です。(この場合、「弱視」への無理解がバリアになっています) |
シート1[PDFファイル/280KB] / シート2 [PDFファイル/480KB] ファシリテーター用資料 [PDFファイル/401KB] コラム1[PDFファイル/204KB] / コラム2 [PDFファイル/225KB] |
このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ
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