人権学習シリーズ ありのままのわたし 大切なあなた コラム2

更新日:2016年2月16日

コラム2 「出会い・共に楽しみ・表現し・ぶつかり合う」中で育つもの

まねっこ大好き!

 ある保育所での2歳児クラスのおやつの時間のエピソードです。先生がスプーンを配ると、ある子がスプーンでテーブルを「コン・コン・コン・コン」とたたき始めました。すると、同じテーブルについていた他の子どもたちも、まねっこをして「コン・コン・コン・コン!」。気がつくと、クラス中の子どもたちがそろって、「コン・コン・コン・コン!!」の大合奏。おやつとお茶が配り終えられ、「いただきます」のごあいさつをした後で、ある子が隣の子とコップをもって「カンパーイ!」。すると、周りの子どもたちも「カンパーイ!!」。気がつくと、保育室中で「カンパーイ!カンパーイ!」と、さながら、パーティ会場のような光景が繰り広げられました。
 こうした姿は、保育現場ではよく見られるエピソードです。幼児期前半の子どもたちは、友だちへの関心が急速に高まり、友だちのまねっこをすることも非常に多くなってきます。友だちと出会い、ともに楽しむことを大切にしたい時期です。

 

ぶつかり合いの中で「他者」に気づき、出会う

 友だちと出会い、ともに楽しむことは、「人っていいな」という気持ちを感じることにつながります。しかし同時に、人と一緒に活動することは、ぶつかり合いも生み出します。同じものを使いたい、自分が先にやりたいなど、子ども同士の思いがぶつかり合うことは、当然のこととして起こってきます。そして、このぶつかり合いが、子どもたちの育ちにとって大切なのです。
 子どもは、自分自身の視点を中心として周囲の世界を見ている、と言われています。これは「自己中心性」と言われますが、おとなの「自己中心的」とは異なるものであり、子どもの思考の発達的特質として捉える必要があります。そして、子どもは、さまざまな人と出会い、ぶつかり合う中で、自分とは異なる他者と出会い、次第に自己中心性を脱していきます。その中で、相手の立場に立って物事を考えることが可能になっていくのです。そうした意味で、他の人とのぶつかり合いは、子どもの発達にとって重要な経験なのです。
 

「思いを表現する」ことが基本

 こうしたぶつかり合いは、一人ひとりの子どもが「自分の思い」を出すことによって可能になります。そのためにおとなは、子どもが「思いを出す」ことを支える役割を果たしていく必要があります。また、子ども同士の思いがぶつかり合ったときに、お互いの思いをしっかりと受け止めつつ、相手の思いも少しずつ伝えていく「通訳」としての役割を果たしていくことも必要になってきます。少なくとも、トラブルを事前に止めてしまうことや、おとなの事情によって思いを出すことを叱責することは避けていけると良いですね。そのためにも、おとな同士(特に親同士)が、「子どもにとってぶつかり合うことは大切な経験だ」ということを共有し、ぶつかり合いを当然のこととして受け止めていける関係を作っていくことが大切だと思います。

「人は違って当たり前」と感じられる環境を

 また、こうしたさまざまな出会いの中で子どもたちは、自分とは違う他の人の特徴(例えば、肌の色が違う、外見から分かる障がいがある、など)に少しずつ気づき始めます。その時、子どもたちが「人は違って当たり前」であると気づけるようにしていくことが大切になります。そのためには、まずはおとな自身の反応が、「人は違って当たり前」という考え方に基づいたものになっているかどうかを確かめていきましょう。また、さまざまな違いが当たり前のこととして子どもの周りの環境に表わされているかどうか(例えば、保育所であれば、保育室の壁面構成、絵本、人形といったものが人々の多様性を表わしたものになっているかどうか)を振り返ってみましょう。「人は違って当たり前」と感じられる環境の中でこそ、子どもたちの多様性を認める感性が育っていくのです。

  

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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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