職場における人権を考える場合、セクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラと言う)が考えられます。セクハラが起こる背景には、男女がおかれている性の扱われ方の違いや、上司と部下の力関係があり、その立場の間での対立があります。そこには性の違いによる感覚の違いへの理解がたりないことや、上司の力の乱用が考えられます。
そこで、セクハラがなぜ起こるのか、また被害者はなぜNOと言えないのかを立場の対立という観点から分析することで、その背景をふまえた解決策を考えます。
〔職場におけるセクハラの定義〕
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(2006(平成18)年法律第82号)2007(平成19)年4月1日に改正」より抜粋
●コミュニケーションを考える
話をするということ、よく聴くこと、さらに相手に話を聴いてもらえないという状況を体験することで、傾聴するということを中心としたコミュニケーションのあり方を考えましょう。
○アクティビティ:ペア・コミュニケーション
●職場の上司からのセクハラを考える
職場のセクハラは、男女のおかれている性の扱われ方の違いや、上司と部下の力関係が大きく影響していることを考えます。加害者はなぜ加害者となり、被害者はなぜNOと言えないかをグループで話し合いをします。
○アクティビティ:課長、それはセクハラです
【発展編】
●相談を受けることを考える
相談を受けるときの注意点として、話しやすい場合、話しにくい場合、そして相談を受けても相談者の訴えを聴くのがつらいときがあります。どのような場面でそうなるかを考えます。
〔準備するもの〕
プリント「上司からの誘い」(参加人数分)
ワークシート「上司からの誘い」分析表(グループ数 *A3に拡大したもの、または模造紙に内容を転記して使う)
資料「セクハラとは」(参加人数分)*必要に応じて配る
サインペン(グループ数)
ホワイトボードと専用ペン(黒板も可)
●ペア・コミュニケーション
1. 2人一組で、「ペア・コミュニケーション」を行ってみましょう。
ペアになります。相手の方はいましたか。今からペアで話し合ってください。まずは、握手から始めます。時間は2分間です。
▶ペアで話し合う
はい、2分たちました。ありがとうございました。うまく話し合えましたか。
<テーマの例>
・ 今日の朝のごはんのメニュー
・ 私の好きなタレント/俳優
・ 私の好きなところ
あなたにお勧め一番の場所
・今日の調子
・最近嬉しかったこと
・気になるニュース
※ ウォーミングアップの段階なので、あまり価値観やプライバシーにかかわるテーマにしないほうがよいでしょう
2. では、パートナーを変えてください。新しい方とペアになります。では、また、握手から始めます。
▶相手を変えてペアで話し合う
うまく話すことよりも、うまく聴き合うことを意識したコミュニケーションのトレーニングです。では、2分間、楽しく聴き合ってください。
3. 片方が後ろ向きになって座ってください。後ろ向きの方に話しかけます。時間は2分間です。
▶ペアで話し合う
話しやすかったですか。コミュニケーションをとることができましたか。もし、話し相手が上司だったらどのような気持ちになるでしょうか。
4. お互いが90度に向きに合って座ってください。
▶90度の位置関係、または向き合って? の会話
2分間話をしてください。もう一人はその話に大きくうなずいたり、相づちを入れて話し手が話をしやすいようにします。
▶ペアで話し合う
次に話し手を交代して、2分間同じようにします。
話しをする側は自分の思っていることを十分話すことができましたか。
*場合によっては、パートナーを変えながら行ってもよい
〜ファシリテーターからの一言〜
職場や家族で話すときにはどうでしょうか。例えば職場では、パソコンを打ったり、資料を見たまま話を聞いていませんか。例えば、家族が話しかけても生返事しかしない、目線が合わないまま応えていませんか。
話を聴こうとする時は、身体と心を相手に向けて話しを聴きたいものです。それが傾聴です。
●課長、それはセクハラです
1. ▶5〜6人のグループになり、机を囲んで座ってもらう
グループで、ワークシートを使って考えましょう。
▶ プリント「上司からの誘い」を配布する
2. 今日のテーマは「職場の上司からのセクハラを考える」です。セクハラは「職場において行われる性的な言動」によって個人としての尊厳が不当に傷つけられることです。「業績優秀で何度も表彰を受けてきた」と言っているA課長から女性社員Bさんは2次会や個人面談時に誘われますが、A課長とBさんのやりとりを分析しましょう。
▶ 拡大した ワークシート「上司からの誘い」分析表 にサインペンで分析を書く
3. 分析ができたでしょうか。では、それぞれのグループで気づいたことを発表してください。
▶分析表を参考に発表する
4. はじめからセクハラをしようとしたのではなく、コミュニケーションをとろうとしたのかもしれませんが、いつの間にかこのように女性を性の対象としてとらえ、職場において女性を対等なパートナーと意識しないとセクハラがおきます。
今後は女性の登用が進んでいく中で、女性から男性へのハラスメントが増えていくことも考えられます。
5. 職場でセクハラが起こらないためにどのようなことが考えられるでしょう。心がけたい(行動したい)ことを話し合ってみましょう。
▶グループで話し合う
どんな案が出たでしょうか。グループで発表してください。
▶発表してもらう
【発展編】
●相談を受けることを考える
※相談員研修のときや、研修時間に余裕があるときは行いましよう
今回のセクハラに限らず、今までの体験でいろいろな事について相談をしたりされたり、ということがあったのではないかと思います。
あなたが相談を行ったときに、相談をして良かったと思ったときや、こんなことでは相談をしなければ良かった、と思ったときがあったと思います。反対に相談者から相談して良かったと感謝されたときや、反対に相談をするのではなかったと怒らせたときもあったのではないでしょうか。
それは、相談担当者のどのような言葉や態度からそのように感じたのか話し合ってください。
▶グループで話し合ってもらう
*資料「セクハラとは」を配り、説明してもよい
上司からの誘い
A課長は営業課の課長です。そこへ入社5年目の女性社員のBさんが総務課から異動で来ました。Bさんは営業のことは分かりません。1週間後に歓迎会が行われました。歓迎会の席でA課長は「この営業課は私が率いているので一目置かれている。自分は業績優秀で何度も表彰を受けてきたのだ。」とお酒がはいったせいもあるのでしょうが、繰り返し言っていました。 2次会の席で、A課長はBさんの横に座りました。BさんがA課長の好みのタイプだったのか、A課長は「君はかわいいなあ、僕のタイプだよ。君には一日でも早く営業について覚えてもらわないといけないな。僕は単身赴任だけど今度お酒を飲みに行かない? 嫌なら断ってもいいけど。」とBさんに何度も言いました。Bさんは、その時は自分の歓迎会の日でもあるし、お酒の席の話と受け流していました。 それから2日経って、会議室で個人面談が行われました。その席でA課長からBさんは「目標や頑張りたいこと、異動してきての戸惑いなど」を聴かれ答えました。一段落したところで、A課長から「ところで君の歓迎会のときの話だけど、本当に飲みにいかないか」と言われました。A課長に「今日はどう?」と言われたのでBさんは「今日は予定がありますので。」と断ったところ「嫌なら断ってもいいのだよ。君はほんと、かわいいよな。では来週の月曜はどう?」とまた誘われました。Bさんは、A課長が「自分は業績優秀で何度も表彰を受けてきたのだ」など繰り返し言っていたのを聞いていたので「やり手の課長を怒らせたら後が怖い」と思い、月曜に飲みに行くことに同意をしました。 その後すぐに、Bさんは、A課長から飲みに行くことを誘われたことなど、一連のことを日ごろ仕事のことでお世話になっている先輩のCさんに相談しました。 |
プリント「上司からの誘い」 / [PDFファイル/378KB]
「上司からの誘い」分析表
A課長の気持 背景 | A課長、Bさんの行動 | Bさんの気持・背景 |
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1 日も早い戦力化 Bさんに早く職場の雰囲気に慣れてもらおう | Bさんが営業課へ異動、1週間後に歓迎会 A課長は自分の優秀さを繰り返し話す 2次会で、A 課長はBさんの横に座る A課長が2次会で好みのタイプだ、単身赴任だと言いながらBさんを飲み会に誘った A課長は、嫌なら断っても良いけど、とはいう Bさんは受け流した A課長との個人面談で、Bさんは素直に話をした 個人面談終了後、突如に今日飲みに行かないかと誘われたがBさんは、今日予定があると言って断る A課長は断っても良いのだよ、と言うが、君はほんと、かわいいな、来週の月曜はどうだ、と誘う。Bさんは嫌だと思いながら同意した Bさんは飲みに誘われたことなどを先輩のC さんに相談した | 営業の雰囲気に早く慣れよう 戦力になって売り上げ目標達成 |
セクハラとは
2007年4月1日に施行された「改正 男女雇用機会均等法」第11条では、セクシュアル・ハラスメント対策として、雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務づけました。
第11条:職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置 |
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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ
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