人権学習シリーズ ちがいのとびら 多様性と人権課題

更新日:2016年2月9日

ニートは困った人?

ねらい

 昨今、若年層の不就労問題=いわゆるニート問題(※)が注目されています。
 世間的にはまだまだその実情を見つめるよりも、「怠け者」「自分勝手」等といったイメージや言葉だけが独り歩きしているところがあります。
 このプログラムでは、青少年の置かれている社会状況を客観的に学ぶとともに、青少年の社会参加や自立への取り組みからも学びながら、イメージや言葉としての「ニート問題」から、多様性を認めあう「私たちのニート問題」としての認識への転換を図ることをねらいにしています。

※「ニート」とは、「Not in Education, Employment or Training (NEET)」という英国における造語であり、仕事に就いておらず、教育や職業訓練も受けていない若者を示します。日本では、15歳以上34歳未満で、配偶者がおらず、通学をおこなわず、仕事をしていない人(内閣府)や、15歳以上34歳未満で、通学や家事をおこなわず、仕事をしていない人(厚生労働省)という定義があります。

基本概念

若者のエンパワメント、世代間の絆、ソーシャル・インクルージョン

時間

130分〜160分

準備するもの

資料「ニート問題」(参加人数分)
ジャガイモ(参加人数分)
おでこに貼る数字の書いたシール(例えば、10・20・70、5・15・80、5・40・55など合計が100になるようにして参加人数分にする)
のり付きふせん紙(7〜8センチ角 参加人数分×20枚程度 ※多めにあるとよい)
模造紙(グループ数)
マーカー(グループ数)


プログラムの流れ

「私の大切なじゃがいも」
 アイスブレーキングをかねて、ジャガイモを使った自己紹介を参加者どうしで行います。
  【アクティビティ】
  ジャガイモで自己紹介

                                              ↓

「ニートって何?」イメージを出しあおう
 私たちの中にあるニート像を出しあってみましょう。
共通するものもあれば、新たなイメージの発見などがあるかも知れません。
 この検討を通してニートに対するイメージを明らかにしながら、共通理解を図り、問題認識のスタートラインに立ちます。
  【アクティビティ】
  ニートって何?

                                              ↓

ニートの実際は?〜資料から学ぶ〜
 「ニート」と呼ばれる人たちとは、どういう実態なのかを資料(データ)から読み取り、自分たちのイメージとのギャップや共通項を考えます。
 ここから「ニート問題」の理解や解決に向けてのあり方について、意見交換を行ってみましょう。
 【アクティビティ】
 ニートの実際は?〜資料から学ぶ〜

                                              ↓

私たちの踏み出し
 「ニート問題」の解決には当事者のやる気といった個人的な頑張りだけでなく、広く社会的にどう働きかけるかという私たちの「踏み出し」も必要です。私たちの日常の生活の中でできることは何か?アクティビティを通じて体感します。
 【アクティビティ】
 三人で100

アクティビティの進め方

●ジャガイモで自己紹介(30分)
 参加者には円形に並んだ椅子に座ってもらいます。ファシリテーターが各参加者にジャガイモを1つずつ渡します。
 参加者はジャガイモを自分自身に見立てて、自己紹介(あるいは物語)を考えて発表します。
 その後、ファシリテーターがジャガイモを一時的に回収し、再び参加者に自分のジャガイモがどれか当ててもらいながら、全員にジャガイモを返します。
 ジャガイモはデコボコで土まじりではあるけど、人間もそれと同じで完璧な人は誰もおらず、その中身はジャガイモ同様にきれいなものであり、誰もが「ありのままの自分らしさ」を持っていることを見つめてみます。
 また、経済不況などの厳しい社会状況下で、自分らしく生きることの困難さは誰もが抱えており、「人生をやり直せる」暖かい受け皿や環境の必要性について話しあいます。
 アクティビティを実施しての感想を聞きながら、社会における私たち一人ひとりのあり方や尊厳について全体で考えます。

 ファシリテーターの問いかけ
  「ジャガイモを使っての紹介はどうでしたか」
  「いろいろな人の紹介や物語を聞いて、気づいたことや発見がありましたか」
  「自分のジャガイモが分かりましたか。どうして分かったんですか」
  「温かい環境とは具体的にはどんなことだと思いますか。ご意見をお出しください」

●ニートって何?(30〜45分) 
 グループ(4〜5人)になってもらい、「ニートとは何か」について参加者が持つイメージをのり付きふせん紙にどんどん書き込んでもらいます。それを模造紙に張り出してもらいます。その後、出された意見を分類して、共通に出されているイメージを整理してもらいます。
 出されたイメージについて感じたことをグループで討議したり、全体で発表しながら参加者全体の「ニート像」を明らかにします。
 
※「ニート」を知らない参加者がいたときは、ねらいのところにある定義を説明します。

 ファシリテーターの問いかけ
  「自分の抱いていたイメージと話しあったイメージは一緒でしたか。それとも違いましたか」
  「参加者の意見を聞いてニートに対する変化がありましたか。あればどういう内容か教えてください」
  「このイメージは実際の当事者の実情をあらわすものと思いますか」


●ニートの実際は?〜資料から学ぶ〜(30〜45分)
 
若者の進路状況を記した資料「ニート問題」を使って、先のアクティビティで出したニート像と実際の当事者の実情とを比べて、その違いや共通性について、グループか全体で討議します。
 実情としては、「怠け者」「自分勝手」というよりも、経済不況を背景にした経済構造上の急激な変化(受け皿の激減、正規雇用から非正規雇用への転換など)が、働きたくとも働けない人たちを生み出していることが要因として大きいことを伝えます。
 また、いじめなどコミュニケーション上の困難などがあり、幼いうちから社会参加や自立を阻まれて生きてきた人たちが増大していることもあげながら、本人の努力(やる気)だけで解決できる問題ではなく、社会的な支援施策や自立のための援助が求められていることを考えます。

 ファシリテーターの問いかけ
  「資料を読んで、皆さんの中でニートに対する認識に変化がありましたか」
  「ニート問題は個人のやる気で解決できる問題でしょうか」
  「私たちにできることは何でしょうか」

※ここでは、内閣府・厚生労働省のデータを参考資料として掲載してますが、より「ニート」の実態を把握・理解するために、アクティビティを実施する際は、新聞や雑誌記事などを資料として活用することもできます。

●三人で100(30分)
 参加者全員に目をつぶってもらい、その間に、ファシリテーターが参加者のおでこに数字の書いたシールを貼り付けていきます。ファシリテーターの合図で参加者に目をあけてもらいます。
 次に、参加者に、「声を出さずに、自分と合わせて3人の数字の合計が100になるようになってください」と呼びかけます。参加者は、工夫しながら相手を探しあてていきます。3人で100になったグループからその場に座ってもらい、まだ100にならない参加者の様子を見てもらいます。
 ファシリテーターは、全員が3人1組になる過程を観察しながら、参加者の自発的な動きに注目をします(全員が100にそろわずに時間切れになっても構いません)。

※自発的な動きとして、例えば次のような動きが予想されます。
 (1)自分だけでなく、全体が100になるよう周囲に働きかける人がいる(傍観せずに他のグループを積極的に助ける人)。
 (2)組み合わせが悪く、どうしても全員がそろわない場合でも、新たな知恵や行動を発する場合がある。

 終了後、3人で100になったグループのいくつかに感想を聞き、その理由を出しあいます。そして、この動きからヒントを得て、ニート問題の解決に必要な動き、関わりは何かを具体的に出しあってもらいます。

 ファシリテーターの問いかけ
  「3人1組で100になることをやっていかがでしたか」
  「他グループの動きを見て感じたことがありましたか」
  「全員がスムーズに100になるには、どのような働きや動きが求められますか」
  「この動きを現実のニート問題にあてはめると、このアクティビティから学んだことは何ですか」
  「改めてニート問題の解決に必要な視点は何か、皆さんのお考えを聞かせてください」

●ふりかえり(10分)
 ニートは個人のライフスタイルの自由選択問題ではなく、社会的な構造上の問題であり、私たちの生き方と密接につながっていることの認識を深めます。
 また、その解決には当事者とあわせて、同じ社会の構成員である私たちが、その実情を理解し、受け容れようとする姿勢や行動が求められていることを共有します。


資料「ニートの実際は? 〜資料から学ぶ〜」 / [PDFファイル/910KB]


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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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