人権学習シリーズ ちがいのとびら 自己開示とカミングアウト

更新日:2016年2月9日

自己開示とカミングアウト

1 自己開示

 ワークショップにおいては、様々な性格や経験、価値観が違う人たちと集中的に学びを行いますが、その際に避けて通れないのが、私はこの問題についてどう感じるかといった自分自身の感情や体験、意見などを表明する必要に迫られることです。もちろん、安心してワークショップに参加するためには、無理をして自分自身のことを話す必要はなく、話さないという、パスする権利があります。しかし、ワークショップを通じてお互いの関係性が深まると、一時的にせよお互いの信頼関係に基づく意見交換が自然に出てくることがよくあります。
 自己開示とは、相手には知られていない、隠されている自分のことについての情報を相手に表明することです。それは、自分の感情であったり、考えや意見、その裏にある経験や立場であったりします。
 人間関係のプロセスを解明する「ジョハリの窓」によれば、自己には、「オープンな領域」(open self)、「隠れている自己」(hidden self) と共に、「自分は気がついていないけど、他者からは知られている自己」(blind self) もあるし、「自己も他者もまだ気づいていない自己 」(unknown self) という、4つの領域があると言われています。
 自己開示とは、この「隠れている自己」を相手に開くことであり、これによって「オープンな領域」が広がり、また、「自分は気がついていないけど、他者からは知られている自己」を相手から教えられるというフィードバックによって、「自己も他者もまだ気づいていない自己」についての新たな発見が生まれるというものです。
 自分の中にある多様性をテーマとするワークショップでは、自分の多様な立場を表明しながら、相手からも教えられるということが大切になります。そのために、その自己開示を受け止められる、安心できる関係とその環境が必要になります。
 ※「ジョハリの窓」とは、4つの領域によって人間関係のプロセスを理解するための理論で、発案者のJoe(Joseph)とHari(Harry)の2人の名前からきています。

2 カミングアウト

 自己開示の中で、特に自らの立場を表明することをカミングアウトといいます。近年、人権問題に限らず様々な分野でカミングアウトという言葉をよく聞くようになりました。これは在日韓国・朝鮮人の本名宣言や被差別部落出身者の立場宣言などといった社会的少数者(マイノリティ)の当事者が、差別や社会、あるいは仲間、自分自身と向き合うために発する立場表明を指したり、同性愛者、あるいはHIV感染者などが、その立場表明にとどまらず、積極的に自己の存在を周囲に認知させることをも指しています。
 多様性の学習を考えた時、このような人権問題についての当事者性を持った人たちがワークショップに参加するのは当然のことですし、個人の中の多様性を考えれば、どの人もそれぞれの当事者性を持っていることが理解できるでしょう。
 また、マイノリティの権利や存在を認めることから、多様な生き方を尊重する社会を実現するまでのプロセスとして、当事者の立ち上がり(エンパワメント)によるカミングアウトへの理解は欠かせないものです。
 同時にカミングアウトは他者理解だけのためではなく、何よりも私たち一人ひとりがその当事者がおかれている立場の重さをどう受けとめるのか、また、相互に生かしあえる関係や共生社会を創造する担い手としてどう実践し、協働するのかが求められています。
 多様性についての学習では、このカミングアウトを受け止められる関係性とその環境が必要になるのです。
 


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このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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