平成27年度 大阪府同和問題解決推進審議会(平成28年1月22日開催)議事概要・配付資料

更新日:2016年3月30日

議事概要

平成27年度 大阪府同和問題解決推進審議会

1 開催日時 平成28年1月22日 金曜日 午後3時から午後5時
2 開催場所 大阪商工会議所 4階 401号会議室
3 出席委員(敬称略)
 1号委員(大阪府議会議員)
 坂上 敏也、富田 武彦、金城 克典、永藤 英機、しかた 松男、今西 かずき、内海 久子、中村 広美

 2号委員(同和問題に関し識見を有する者)
 浦坂 純子、岡 絵理子、境 真理子、冷水 登紀代、寺西 由記江、長尾 彰夫、中川 喜代子、丹羽 雅雄

 3号委員(同和問題に関し経験を有する者)
 北口 末広、阪本 孝義、谷口 正暁、中野 由雄、村井 茂

 4号委員(関係行政機関の職員)
 竹中 勇人、田代 堯
  
4 議事次第
(1)開会
(2)議事
 議題 旧同和対策事業対象地域における課題について
     −実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえて−
(3)閉会

5 議事録(要旨)

旧同和対策事業対象地域における課題について

※発言者の記載については、次のとおり。
○:委員、●:事務局 

(事務局(人権局)から、資料「旧同和対策事業対象地域における課題について−実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえて−」に沿って、以下概要を説明)

 ● 資料「旧同和対策事業対象地域における課題について―実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえて―」をご覧いただきたい。
1.はじめに
 まず、これまでの経過を簡単に説明する。

(1)経緯
 大阪府では、平成13年9月の府同和対策審議会答申及び平成20年2月の府同和問題解決推進審議会提言に基づき、同和問題の解決に向けて、一般施策による取組みを進めてきた。
 平成13年度まで、特別措置としての同和対策事業を実施してきた旧同和対策事業対象地域で見られる課題について、平成13年答申において、同和対策事業により、かつての劣悪な状況は大きく改善されたものの、進学率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題等が残されているとともに、差別意識の解消が十分でなく、部落差別事象も後を絶たないと指摘された。また、住民の転出入が多く、学歴の高い層や若年層が流出し、低所得層など自立支援を必要とする人々が来住している動向が見られると指摘されている。

(2)実態把握の実施
 大阪府では、平成13年答申で指摘された対象地域に見られる生活実態面の課題がどのように推移しているかを把握し、適切かつ効果的な一般施策の取組みを進めていくために、平成17年と23年に、対象地域が存在する市町とともに行政データを活用した実態把握を実施した。その結果、対象地域では、全体と比較して生活保護受給率が高い、大学進学率が低いことなど、依然として課題が見られることがわかった。
 しかし、平成13年答申で指摘された課題のうち、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題については、行政データを活用した実態把握では十分に把握できなかったので、平成22年の国勢調査のデータを活用した実態把握を実施した。その結果、対象地域では非正規労働者や完全失業者の割合が高いなど、依然として課題が見られることがわかり、対象地域の生活実態面の課題について一定の傾向を示す数値が把握できた。この実態把握の結果をどのように捉えるかについて、同和問題や差別論を専門とする学識者の方を本審議会の専門委員に委嘱し、幅広く意見をいただいたところである。

2.実態把握の概要及び専門委員からの意見聴取
 3ページをご覧いただきたい。これまでに実施した実態把握と専門委員からの意見聴取について、説明する。

(1)実態把握の概要
 1 行政データを活用した実態把握
 大阪府及び対象地域のある関係市町が福祉や教育などさまざまな行政施策を実施する中で保有するデータを活用し、ページ中ほどの各項目、年齢階層別人口構造、世帯状況、住民税課税人口の状況、生活保護受給世帯の状況、障がい者手帳所持者の状況、福祉医療助成受給者の状況、介護保険・要介護認定者の状況、ホームヘルパー及びガイドヘルパー派遣世帯の状況、認可保育所入所児童の状況、乳幼児健診未受診児の状況、市町立中学校の進学等の状況、市町立小・中学校の長欠児童・生徒の状況、市町立小・中学校就学援助利用の状況、府立高等学校の進学等の状況及び府立高等学校中退の状況という、15個の項目について、平成23年度の対象地域のデータと関係市町のデータを集計したものである。
 また、平成12年度に対象地域について実態調査を実施しており、その調査の結果と同じく平成17年度の行政データを活用した実態把握の結果との比較・分析を行ったものである。続いて、4ページをご覧いただきたい。
  2  国勢調査を活用した実態把握
 平成22年の国勢調査のデータを活用し、ページの中ほどの各項目、1)人口・世帯の状況として年齢構成や家族類型、2)教育の状況として学歴構成、3)労働状況として、労働力状態、労働力率、就業率、完全失業率、従業上の地位、職業構成、5ページで4)住まいの状況として住宅の所有形態、5)移動者(転入者)の状況として、移動者(転入者)の状況、現住地居住期間と世帯類型、現住地居住期間と学歴構成、現住地居住期間と従業上の地位、現住地居住期間と住宅の所有形態という、項目について数値を集計・比較した。
 4ページに戻っていただき、国勢調査を活用した実態把握では、平成13年答申において、「これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題としてとらえることが可能であったが、同和地区における人口流動化、とりわけさまざまな課題を有する人びとの来住の結果、同和地区に現れる課題は、現代社会が抱えるさまざまな課題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる」という指摘があり、これについて、対象地域における生活実態面の課題の集中が対象地域以外にも見られるかどうかを検証するため、「基準該当地域」の考え方を導入した。
 さらに、対象地域における生活課題の状況が住宅エリアや商工業エリアなど地域の状況によって異なるのかどうかを把握するために、対象地域を都市計画法上の区域区分、用途地域により9つに類型化し、大阪府全域との比較を行ったほか、対象地域に隣接する地域のうち対象地域と同じ地域類型になっている地域を抽出して、対象地域と比較している。 続いて、6ページをご覧いただきたい。

(2)専門委員からの意見聴取
 1 専門委員の選任
 行政データや国勢調査を活用した実態把握によって得られた結果をどのように捉えるべきかについて、同和問題や差別論を専門とされる学識者の方から、大阪大学大学院の高田一宏准教授、京都産業大学の灘本昌久教授、大阪府立大学の西田芳正教授、関西学院大学の三浦耕吉郎教授を、同推審の専門委員に選任し、意見を伺ってきた。
 2 意見聴取の内容
 意見聴取に当たっては論点を設定し、「人口の流動化が進み、対象地域を取り巻く状況が大きく変化する中で、今日において対象地域に生じている課題をどう捉えるべきか」とした。
 意見聴取の日時及び内容については表にあるとおりで、昨年の6月に第1回、8月の下旬に第2回、10月下旬から11月上旬にかけて第3回を行い、意見を伺った。続いて、7ページをご覧いただきたい。

3.実態把握の結果及び専門委員の意見から推認できること
 これまでの実態把握の結果と専門委員から聴取した意見から推認できることとして3点お示ししている。

 1点目は、対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできない。
 2点目は、対象地域と同様の課題の集中が対象地域以外にも見られる。
 3点目は、対象地域で見られる課題は必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできない。
ということである。
 なお、ここで言う対象地域の課題は、行政データや国勢調査を活用した実態把握で把握できた教育や労働などのデータや数値からわかる、あくまで生活実態面の課題という意味である。
 これらの推認事項について、次ページ以降で根拠を説明している。8ページをご覧いただきたい。

○対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできない
1 対象地域には依然として課題が見られる
 ページ中ほどの表1−1をご覧いただきたい。これは国勢調査を活用した実態把握のデータであるが、対象地域では、大阪府全域よりも最終学歴が小・中学校卒の割合が高くなっており、大学・大学院卒の方は割合が低くなっている。さらに完全失業者も、やはり対象地域では大阪府全域と比べて割合が高くなっており、非正規雇用比率も、大阪府全域と比較すると、対象地域がやはり割合が高いという状況になっている。
 その下の表1−2をご覧いただきたい。これは行政データを活用した実態把握のデータである。対象地域と全体を比べると、住民税非課税人口割合は対象地域の方が全体よりも高く、生活保護受給世帯の割合も同様に高くなっている。一方で、府立高校生の大学・短大進学率は全体に比べ低くなっており、府立高校生の中退率も高いという状況にある。
 表1−2で経年変化を見ると、大学・短大進学率や中退率は改善傾向にある。また、対象地域の数値の悪化や改善の傾向は全体でも同様になっており、対象地域に見られる傾向は全体の傾向と同じようになっているものと考えられる。続いて、9ページをご覧いただきたい。
2 対象地域の課題の現れ方が地域類型により一律ではない
 国勢調査を活用した実態把握では、対象地域を都市計画法上の区域区分・用途地域別に9つに類型化した。その類型は、表2−1にあるとおりで、第一種・第二種低層住居専用地域から市街化調整区域まで、それぞれの地域類型に該当する対象地域の人口とそれぞれがどのような特徴があるかについて記載している。
 例えば第一種・第二種低層住居専用地域は、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域であり、閑静な住宅街を、第一種・第二種中高層住居専用地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域で、中高層マンションが建ち並んでいる住宅地を、それぞれイメージしていただければと思う。
 以下同様に、第一種・第二種住居地域は、一戸建て住宅や中高層マンション、店舗やホテルが混在する地域、近隣商業地域は、いわゆる地域の商店街、商業地域は、いわゆる繁華街、準工業地域は、あらゆるタイプの建物が混在する地域、工業地域は、いわゆる工業地帯、市街化調整区域は田園地帯のような地域を想像していただければと思う。
 第一種・第二種低層住居専用地域と準住居地域の2つは人口が200名程度で非常に少なく、極端な現れ方をしているので、この両地域に関する数値はあくまで参考である。10ページをご覧いただきたい。
 対象地域を類型化して、それぞれの項目を見ると、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域あるいは準工業地域については、対象地域全体とほぼ同様の傾向となっているが、対象地域の傾向と大きく異なる傾向を示す用途地域もあることがわかった。例として、表の2−2をご覧いただきたい。
 対象地域にお住まいの方の学歴構成を見ると、第一種・第二種住居地域や準工業地域、工業地域ではそれぞれ、大学卒の方は、男性で11%、女性が4%強となっており、対象地域の計、男性13.3%、女性5.2%と比べて、それほど変わらないが、近隣商業地域や商業地域の方を見ると、大学卒の方は、男性でそれぞれ20%強、女性で9%前後となっており、2倍程度の開きがある。
 また、非正規雇用比率を見ると、工業地域と市街化調整区域では、男性で15%前後、女性で48%前後となっている。これは、第一種・第二種中高層住居専用地域や第一種・第二種住居地域の割合と比べて低くなっており、大阪府全域の男性15.5%、女性49.1%と比較しても大体同じ程度の値となっている。
 このように、対象地域の中でも地域類型により課題の現れ方は一律でないということが数値上わかった。大阪は、まちの状況が地域によって多様であるので、このことが課題の現れ方に反映されているものと言えるかと思う。続いて、11ページをご覧いただきたい。
3 対象地域間で課題の状況にはばらつきがある
 国勢調査を活用した実態把握では、対象地域と同様の課題が対象地域以外でも見られるかどうか、これを検証するために、「基準該当地域」の考え方を導入している。この「基準該当地域」を抽出するために、表3−1に記載している6つの指標を抽出基準として設定した。
 高齢単身世帯比率、母子世帯比率、高等教育修了者比率、初等教育修了者比率、完全失業率、非正規労働者比率の6つの指標が、それぞれ対象地域の平均より厳しいというところについて、これを対象地域自身にも当てはめてみたところ、表3−2のとおり、指標が6つとも当たる、比較的厳しいと思われる地域から、1つも該当しない、比較的厳しさが緩めではないかと考えている地域まで満遍なく存在していることがわかった。対象地域の間でも該当する課題の状況や課題につながる要素等にはばらつきがあることが考えられる。
 これら1から3により対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできないということを推認したところである。続いて、12ページをご覧いただきたい。

○対象地域と同様の課題の集中が対象地域以外にも見られる
 ここでは、対象地域以外で見られる課題の集中を根拠としている。
 国勢調査を活用した実態把握では、対象地域と同様の生活実態面の課題の集中が対象地域以外にも見られるかを検証するため、対象地域を除いた大阪府全域で6つの指標のうち3つ以上該当した地域を「基準該当地域」とした。
 その結果、表の4のとおり、対象地域と同様の課題の集中が見られる「基準該当地域」の人口規模が約41万人となった。これは、対象地域の人口8万人と比べ約5倍の規模となっており、対象地域と同様の課題の集中が対象地域以外にも見られるということが確認できた。こうなった背景であるが、13ページの表5をご覧いただきたい。
 これは国勢調査を活用した実態把握の住宅所有形態別世帯数構成比のデータであるが、公営の借家にお住まいの方は、大阪府全域に比べて、対象地域と「基準該当地域」では、公営の借家に居住する世帯の割合が非常に大きくなっており、対象地域では40.7%、「基準該当地域」で45.5%となっている。
 公営の借家には公営住宅と改良住宅が含まれているが、公営住宅や改良住宅は、対象地域の生活改善や住まいに困窮する人のセーフティーネットとしての役割を果たしてきた。しかし、制度上、入居者の収入が増えると、住宅を明け渡すことを求められる。また、新しく入居する方も低額所得者であるので、公営住宅や改良住宅が多い地域では、結果として、生活実態面の課題を有する人が多く居住することになり、このことが課題の集中が見られることの背景の1つと考えられる。続いて、14ページをご覧いただきたい。

○対象地域で見られる課題は、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできない
1 対象地域の人口の流動化
 平成12年に、対象地域において大規模な調査を行っており、対象地域の居住者の出生地の調査結果が表の6−1である。平成12年当時、対象地域の人口は9万5,000人程度であるが、対象地域の出身でないという方が36.7%であった。表の6−2をご覧いただきたい。
 これは、平成22年の国勢調査を活用した実態把握の現住地居住期間別世帯員数のデータであるが、対象地域の現住地居住期間別の世帯員数を見ると、現住地の居住期間が10年未満の方が約2万5,000人、対象地域の人口の32%となっている。この数値は、あくまで現住地に住んでいる期間であるので、同じ対象地域内で転居ないし引っ越しされた場合も含んでいるが、平成12年の調査後10年間に対象地域の外から移動してきた方も多いのではないかと考えられる。
 一方で、これだけの人口移動を含めても、対象地域の人口は平成22年で7万9,000人となっており、平成12年調査時点の9万5,000人から約1万6,000人減少している。この減少には自然減も含まれているが、この10年間で対象地域の人口はかなり流出したと考えることができる。
 また、表6−1を再度ご覧いただくと、出生地が現住地区とされている方が47.1%、平成22年の国勢調査を活用した実態把握では8.6%となっている。これは府全域の8.8%とほぼ同じような数字となっているが、平成12年調査と国勢調査では調査方法が異なり、平成12年調査は抽出調査で、出生地が現住の対象地域かどうかを聞いているのに対し、国勢調査は悉皆調査で、今現在住んでいるところに何年いるのかというのを聞いているので、そのまま数字を比較するわけにはいかないが、対象地域での人口の減少などを踏まえると、対象地域で出生時から居住しておられる方というのは大幅に減っていると考えられる。続いて、15ページをご覧いただきたい。
2 対象地域の住民の意識
 専門委員の方のご意見によると、自分が対象地域に住んでいるということを知っていても、同和問題に関係がないと思っている方もいれば、そもそも自分が住んでいるところが対象地域であるということを知らないという方もいる。
 なお、参考として、平成12年調査のデータを表の7に示している。これによると、平成12年当時でも対象地域に住んでいる方の38.1%は「自分が対象地域出身者だと思わない」と回答していた。
3 実態把握の限界
 専門委員のご意見によると、歴史的な経緯を踏まえれば、対象地域に見られる生活実態面の課題には部落差別から何らかの影響があると考えられるが、実際の影響の有無ないし程度までは、この実態把握ではわからないということであった。
 具体的な部落差別の影響、程度まではわからないが、人口の流動化、あるいは住民の意識の状況を踏まえると、対象地域に見られる生活実態面における課題については、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできないものと考えられる。続いて、16ページをご覧いただきたい。
 これまでの実態把握には限界があって、部落差別の影響まではわからないが、仮に部落差別の影響を調べるとしたらどうなるのか、どのような課題があるのかについて、参考として記載している。
 対象地域に見られる生活実態面の課題に対する部落差別の影響を把握するには、対象地域の住民の方を対象として調査対象者を抽出し、それらの対象者に対し、調査の趣旨、居住地が対象地域であるということを明らかにした上で、ご自身が対象地域の出身者であるかということについての認識、被差別体験の有無、今どのような生活上の課題があるかということと被差別体験の関連を伺う必要がある。しかし対象地域の所在地名については、大阪府個人情報保護条例において、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報として取り扱われており原則として収集禁止とされているほか、個人情報の外部への提供が原則として禁止されている。
 特別対策としての同和対策事業が終了した現在においては、調査対象者に対し、居住地が対象地域であることを示して、対象地域の出身者であるか、あるいは差別体験があるかなどを聞くなどのセンシティブな情報を収集する調査を実施するのは難しいところである。
 また、個人情報保護の点以外にも、大阪府では部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例を制定し、興信所や探偵社業者と不動産業者など土地調査等を行う者に対して、対象地域に関して調査したり、あるいは報告したりするということを規制している。
 大阪府自身は本条例の規制対象ではないが、特別対策としての同和対策事業が終了した現在においては、条例により差別防止の観点から規制している対象地域の調査や報告等を規制当局である大阪府が行うことは難しいと考えている。最後に、17ページをご覧いただきたい。
 これまで説明した点以外についても、専門委員から、実態把握あるいは部落差別等に関し、さまざまなご意見をいただいた。その概要について記載している。(1)実態把握に関する主な意見、(2)生活実態面の課題に対する大阪府の施策に関する主な意見、18ページで、(3)部落差別に関する主な意見、(4)対象地域における人口の流動化に関する主な意見、として大きく4点記載している。資料の説明は以上である。 

(委員からの質問、意見等)
○A委員 ここで述べられている対象地域というのは、どの範囲を指しているのか。

● 今回の実態把握で用いている対象地域の定義は、特別対策の法律があったときに、法によって指定をされていた地域を対象地域としている。例えば、国勢調査では、調査区単位でのデータが出てくるので、対象地域が存在する調査区のデータを積み上げたものということになっている。

○B委員 全体として大きく言えば2点、大変違和感を感じたり、疑問なり、あるいは、この審議会でぜひ議論も必要ではないかと強く感じた点がある。
 1つは7ページの表現である。実態把握の結果と専門委員の意見から推認できるというタイトルは誤解を与えるので適切ではないという専門委員の意見が載っている。私も誤解を与えるというか、捉え方として、そもそもこういう対象地域の課題を把握しようとしているこの同推審の意味というか、出発点の原則から見て、少し違和感を感じた。
 同和地区の抱える課題は他の地区の抱える課題と同じであるから、差別の現実として捉えることはできないのではないかという質問を研修会などで私も受けることが時々ある。
 例えば、同和地区には不安定な就労実態があって、これが部落差別の実態だと言うけれども、失業者は同和地区以外にもいるではないか。働く権利が侵害されている現実というのは何も同和地区だけではないといった意見であるが、同和地区の抱える課題は他の地区の抱える課題と同じであることは全くそのとおりである。むしろそんなことは当たり前だと思う。人権というのは、人間に対して保障される普遍的な権利だから、同和地区にだけ何か特別な、ほかに見られない人権の課題が存在していると考える方がおかしいと思う。
 同じ時代に同じ人間として同じ社会で生活しているわけだから、同和地区が抱える課題、つまり人権の課題と他の地区が抱えている人権の課題、共通しているのは当然なことだと私も思っている。この実態把握の中でも出ているが、教育の権利、住環境の問題など、部落差別の現実で訴えられてきた人権課題は他の市民にも共通した課題だとは思う。その意味では、同和地区と同和地区外を比べて、人権の課題における違いを見出そうとすることはそもそも無理な注文だと思う。
 部落差別の実態というのは何なのかという捉え方の問題があると思うが、それはまさに人権の課題というのは、同和地区だけではなく、被差別と言ってもいいが、被差別マイノリティーの人々、集団に集中的にもたらされている現実のことだと思う。これを検証、分析して、その実態をどう解決していくかというのが、そもそもの観点だと思う。
 そうすると、同和地区に人権の課題がどうして集中してしまうのか。それは何も部落差別に起因しているわけではないという意見が示されるときがあるが、果たして同和地区にさまざまな人権の課題が集中的に現れている現実を部落差別と切り離して考える意見は成り立つのかどうか。部落差別とは関係がないとすれば、その集中は何によってもたらされているのかという説明が要ると思う。
 私は、同和地区が抱えるさまざまな課題を部落差別とは切り離して捉えるとする姿勢とか意見には素直に頷くことができない意見を持っており、部落差別に起因する、部落差別の影響によるということには広い意味が含まれていると思う。
 例えば、就職差別する、同和地区出身者から排除するという直接差別である。しかし、それだけで部落の失業者が生じているわけではないと思う。問題は、不況に襲われたときに真っ先に人員整理されるような不安定な雇用形態で働いている人が非常に多くおられることである。真っ先に発注を止められるような零細な事業所に勤めている人たちが非常に多い。その結果、他の地区よりも一層厳しく失業問題が同和地区に噴出しているのではないかと思う。
 今、若い層に大きな格差が出ているという今回の調査結果も非常に注目しなければならない点である。大学の進学率に大きな差があるという結果が出ているが、同和地区出身者は大学入学お断りなどという直接的な部落差別に起因する結果ではないと思う。受益者負担に基づく高学歴高負担の教育制度の前に、部落の厳しい生活実態が大学進学を断念させている結果であるというのが今回の調査の結果ではないかと思っている。
 就労実態と教育実態が非常に不可分に結びついていて、就労実態の不安定が収入の不安定を招いて、それが子供の教育費の問題にはね返って、そういう結果によって形成された教育実態が特に大学という高学歴のところに集中的に現れているのではないかと思う。
 そういう積み重ねによって形成されてきた部落の厳しい生活の現実も、やはり部落差別の実態としてしっかり課題把握しようということが2001年のこの審議会の答申にもうたわれ、現在もそういう認識で、差別意識の実態、差別事件の実態も非常に深刻だが、引き続き、特別措置法期限後の今日においても対象地域の実態をしっかり見つめよう、課題把握しよう、直接的な差別だけではなく間接的な差別も含めてやろうということだと思う。
 もう1つは、16ページに、実態把握、課題把握が困難だという参考資料が載っている。これについては、非常に重要な問題ではないかと思う。特措法制定以前でも国を挙げて全国調査をやってきた歴史がある。同対審の答申を出すためには、ものすごい精密な全国調査をしてきた。
 大阪府も近年、2006年に教育委員会が同和地区児童・生徒の学力実態の課題把握に努める調査をした。これは、裁判でそういう調査はけしからんと提訴されて、大阪府が被告になったが、特別措置法失効以降も、行政課題として、いわゆる対象地域というものの課題把握の調査をすることには合理性がある、必ずしも個別のプライバシーを侵害するものではないという判決が出ている。そもそも部落問題解決という正当な目的のために行政が課題把握しようとする調査、あるいは研究者が同和地区の実態を研究者として真摯に研究する調査はしっかりしないといけない。これができないと誤解されかねない心配があるので、そこのところはもう少し正確に説明していただきたいと思う。 

○C委員 報告の枠組みについて質問したい。専門委員の所属学部を拝見していると、この分野の専門家であるということがわかるのだが、専門委員がどういうバックボーンでどういう研究をされていて、発言をされているのかということが気になった。
 17ページから18ページにかけていただいているご意見を拝見すると、意見という形でまとめて書いているのでまとまって見えるが、書いてある内容が研究されているバックボーンによって、もしかすると違うことをそれぞれがおっしゃっていて、それがこのまとめたところに反映されているのではないかと思っている。最終的にはこういう形で推認できるという3つの点を推認してまとめていただいているが、必ずしもこの3つに集約されないようなご意見をお持ちの専門委員もいらっしゃったのではないかということを危惧した。 

● この資料の4番の主な意見の部分については、必ずしも大阪府が今回16ページまでにまとめている意見と方向が一致しないものも含まれている。各専門委員から多様なご意見を専門の見地からいただいて、そのうち、今回、我々がこうだろうということで取りまとめた意見は16ページまでに記載させていただいているが、大阪府の記述に対して専門委員ご自身の意見と違うのではないかというご意見もあり、そういった違う意見も後ろの4番のところには書かせていただいているので、4番のところは、それぞれ多様な視点の意見がまざっているという形になっている。16ページまでの記載は、これまでにわかっている実態把握のデータ及び専門委員からいただいたご意見を総括して、大阪府として、こうであろうということを結論づけたものである。 

○D委員 ポイントが理解できないところがある。対象地域で見られる課題は必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできないという部分である。もともと平成13年、2001年答申は、「同和地区に集中的に現れていると見ることができる」としていた。それがなぜイコール部落差別の結果という形に言葉が置きかわるのか、これがよくわからない。部落差別の結果とは何かということが初めに問題提起もない。答申そのものは、同和地区に集中的に現れているとして、それが今回の報告では、結果的には必ずしも生活実態課題が部落差別の結果と捉えることはできないと言う。部落差別の結果かどうかという前提で調査をするというのだったらまだわかるが、私の頭の中ではそこのところの関係性が非常に明確ではない。だから、どうしても違和感がある。生活実態の面だけだが、結論が「それは部落差別の結果ではありませんよ」とされる。私は全体の枠組みがもう1つ理解できない。 

○E委員 昨日、これを何人かで集まって読んでみた。感想を述べると、誰にもわかりやすいコンパクトなまとめ方をしていただいている。前回までがあまりにも専門的過ぎて難しく、その点では、こういうまとめ方をしていただいてよかったと思っている。
 そこで、一言ずつ感想を言ってもらったので、それを紹介したい。まず、「対象地域だけの課題ではなく、一般的な課題になってきているな」という感想。若い者は大学を卒業していったら地域を出ていっており、所得の高い方々も地域を出ていっているから、必然的に、大学の進学率とかが低いというのはその表れだ。もう1つは、「地域は市営住宅ばかりで、自分の家を持ちたくても住む場所がないところがある。公営住宅だから、生活保護の高いのは当たり前」という意見。もともと地域でなかったのに、同和事業でどんどん地域を広げていったから、対象地域とそのほかを比較分析してもあまり意味はない。いわばもともとの地域というものから、さま変わりをして広がっているというのが実態である。きつい意見としては、「こんな数字を出すこと自体がナンセンスだ。対象地域と一般を比較、分けること自身が差別的取扱いになっているのではないか。国の根拠法がないのに対象地域と呼び続けるのはおかしいのではないか」。
 昨年6月15日に開催された専門委員の全体会議の中での、ある委員の意見に私は注目しているが、ここに先ほどから出ている意見を解明する鍵があるのではないかと思うので紹介する。「基本的にはまちづくり、住宅政策の失敗と言ってしまっていいか。住宅政策の問題があろうかと思う。大規模な公営の住宅を建てて、あとは環境改善を進めた地域がたくさんあると思う。低所得者しか住めないような地域になってしまっている。もともと生活安定層が住めないような地域にしてしまったという問題、このことが基本にあろうかと思う。結局、地域の中に住んでいるのは高齢者、若年層でも生活困難層」。こういう指摘がある。
 2つ目に、「住宅政策ということでいうと、同和地区以外にも公営の低所得者向けの住宅が集中している地域がたくさんあるので、おそらく同和地区外でも、そういう地域では課題が集中する傾向は見られるであろう」とおっしゃっている。私は頷けると思う。
 私も、地域にさまざまな課題が生まれる要因の1つにこの公営住宅問題があると思っている。公営住宅、住宅政策の失敗という観点から、大阪府に対して、もっとシビアに実態を把握し、打ち出せなかったのか、その点をお伺いしたいと思う。
 部落問題が解決された「まち」というのはどんな地域を想定して大阪府はこれまで施策を打ってきたのか。今日のような状況は、私はとても正常な姿ではないと思っているので、その点についても教えていただけたらと思う。 

○F委員 住宅対策の件で、公営住宅に対するご意見がいろいろあったが、大阪府は、公営住宅の建替えのときに2割ぐらいは民間開発を導入するということで、今、施策を一部やっていると思う。私の地元市でも、まちづくり協議会をつくり、新たなまちづくりをするときに、住宅建替えに民間活力導入ということで、2割ほど民間に払い下げてまちづくりをしようということでやっている。なぜそうなったかと言うと、もともと戦後、住宅困窮者が非常に多かったので、とりあえず住宅をつくらないといけないということで、あえてURもつくり、それで住宅をつくってきたという背景があった。千里ニュータウンとか多摩ニュータウンとか、いろいろなニュータウンをつくったが、現在は全て高齢者の方々が残っている。これはどこの地域へ行っても言われていると思う。今後の課題として、前を向いて、それをどうするかということを議論する方が大事だと思う。
 同和対策事業の中で、3つの柱があると思った。住環整備事業、これは一定の評価が出ていた。その次、ソフト面、これは啓発、教育の法律ができた。最後に残るのは、差別等の事象があった場合にどのように抑止するか、どのような施策の対象になるかということで、一番大事なことは、やはり住宅であるから、そういう見直しをすべきだと思うし、現に行われつつあると思う。 

● 公営住宅についてのご意見をいただいた。資料にも、12ページ、13ページのところに、考えられる背景として、公営住宅が多く整備されている地域においては生活実態面の課題を有する人が多く居住することとなり、このことが課題の集中が見られる背景の1つと書かせていただいた。
 1回目の専門委員の会合の中でも、住宅政策に関するご意見等もあったが、今回、12、13ページに書かせていただいたのは、やはり対象地域においては、地域の生活環境の改善に寄与するため、あるいは低所得層のセーフティーネットとしての役割を持たせた上で、公営住宅や改良住宅を整備してきたということで、一定の役割は担ってきたと考えている。ただ、公営住宅には、あくまで制度上だが、どうしても課題を抱えるような人が多く居住するような背景につながっているのではというところは事実としてあるかと思う。確かに高齢者が増えていたり、若い人の活力がどんどん減ってきている、若い人はどんどん出ていっているというような課題もあるかと思う。ただ、こうした状況は対象地域だけに限られるものではなく、府内全域で見られると思っている。公営住宅に関する必要な施策については、広く府内全域で実施される必要があり、担当部局で適切に進められているところである。 

● もう1点、同和問題が解決した「まち」というのはどのような「まち」かというご質問をいただいた。これは非常に難しい質問で、ここでお答えするのは難しいのだが、先ほどご意見をいただいた中に、18ページの部落差別に関する主な意見の3つ目を言われたと思う。ある専門委員が、「昔ながらの部落差別、いわゆる仕事、血筋、地域が一体となった部落差別は現在では存在していない。しかしながら、そこで住む貧困層などマイノリティーが差別の対象になっている。そういう意味でいうと、『対象地域の課題は必ずしも全てが部落差別の結果とは捉えられない』という表現は適切ではない」という言い方をされている。「もともとの部落差別から起因した結果が課題につながっているかというと、それは違うだろう。しかし、今は差別の形が少し変わってきているのではないか」ということをおっしゃっている。
 では、どういう「まち」が解決した「まち」かと言うと、差別がどういう形で人々の心の中の意識の中にあって、どういう現象で表れてくるかによって異なってくると思う。もし貧困層に対する差別が部落差別として絶対的なものだということであれば、貧困層のみで住むのではないまちづくりをすればいいということになるが、そう単純な問題ではないと思うので、お時間をいただきたいと思う。 

○A委員 同和対策審議会答申が出された1965年ごろというのは、大阪でも大阪以外でも、まさに住環境は劣悪な実態で、そのときのたくさんの調査の結果も出ている。そういう意味では、私は別に行政を擁護するわけではないが、この劣悪な実態を早く解決しないとだめだということで、当時、住宅地区改良法等を使って、劣悪な住宅がたくさんあるところを除去して、そこに改良住宅を建てるという手法をとった。改良住宅は、もともとそこに永住するという前提であったが、そこに一般の公営住宅と同じように所得水準が導入され、所得の高い人が出ていかざるを得ないということになったと思う。
 ただ、私は今から50年前、当時の政府がああいう法律をつくったのは、この劣悪な実態を何とか改善しなければならないということがあって、そのときの状況を踏まえた上で、今の状況を考える必要があると思っている。当時の状況でとった政策が一定の成果を出した反面、時代によってどんどん変わっていくわけであるから、そこに、今、前向きに、今後のことを含めてどう考えていくかということをやっていくことが非常に大事だと思う。
 被差別部落とか、その「まち」そのものが消えてしまうということはない。そういう意味では、その「まち」から部落差別がなくなった状況というのは、例えば多くの人が、「あそこはかつて被差別部落であった」、「あ、そうですか」と言って、そのことによって差別意識とか偏見を持たなくなれば、私は、それはそれで解決したと言えると思う。
 私が子供のころ、よく結婚のときに、例えばあそこはもともと士族の出身であったとか、あそこはもともと何々の出身であったとか、そういうことを言う人がいた。しかし、そのときから徐々に、「ああ、そうですか。士族のどこが偉いんですか」というような感覚になっていったと思う。いずれ、あそこはかつて差別されていた地域であったけれども、今は全くそういうことはありませんというような状況になる。そのときに、その地域の生活水準がどの程度かというのは一定の影響を与えると思うが、例えば地域によっていろいろな格差があり、貧しい地域であっても、それが被差別部落でなかったら、差別意識を持たれていないところはたくさんある。だから、歴史的なこととしてみんなが認識するという状況になるということが大事だと思う。
 そういう意味で、7ページのまとめとして、1つ目が、対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできない。このとおりだと思う。これは当時から言われていた。前回の平成13年の答申のときも議論では言われていた。私もそうだと思う。2つ目は、対象地域と同様の課題の集中が対象地域以外にも見られる。当時も、社会的な矛盾はたくさんあって、その社会的な矛盾が集中して現れているのが被差別部落なんだということなので、対象地域と同様の課題の集中が対象地域以外にも見られる。貧困層の集住しているところがそうだと思う。これもそのとおりだと思う。
 ただ、3つ目が、対象地域で見られる課題は必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできないというのは、100%部落差別の結果では私もないと思う。一体何%なのか、どれぐらいなのかということはわからないと思う。ということは、この表現、対象地域で見られる課題は、多くの場合、部落差別の結果と捉えることができるというふうに表現しても同じことだろう。逆説的に表現していると思う。全てが部落差別の結果と捉えることはできないなら、多くの場合、部落差別の結果と捉えることができるという意味だと捉えていいと思う。あえて言うと、対象地域で見られる課題は、多くの場合、部落差別と社会的要因が重なった結果と捉えることができるというふうにすべきだと、これを読んで思った。
 社会的な矛盾、例えば、高校によっても違うが、中退率が高い地域とそうでない地域がある。大阪全体として中退率が、仮に5%としたら、例えば対象地域は10%。同じような課題はある。そういう意味では、社会的な要因と部落差別が重なった結果と捉えることができると言った方がより適切ではないか。
 18ページの先ほど引用された「対象地域の課題は必ずしも全てが部落差別の結果と捉えられない」という表現は適切でないと思うというところは、私自身もそういうふうに思う。 

○E委員 平成27年6月15日の専門委員からの意見聴取全体会議の中で、府の事務局が述べていることを少し詳しく教えてほしいと思う。 「相談事業を通じた実態把握の内容であるが、部落差別に迫る、深掘りする内容として相談事業を活用すると、そこから見えてくるものがあるのではなかろうかということで平成18年に行った。結果として何も出てこなかった。これにはいろいろ問題がある」と答えているが、これは非常に興味のあるところで、ぜひ教えていただきたいと思う。
 先ほど別の委員から話があった、大阪府が学力テストで同和地区とそれ以外とを比較するということを裁判に訴えられて原告が勝訴できなかったということは事実だが、その裁判以降、大阪府はそういう調査は一切していない。それは、やはりしてはならない調査ということが大阪府教育委員会もわかったからだと思うので、つけ加えておく。 

● 先ほども少し議論になったが、個人情報保護の観点から、特別対策終了以降、いわゆる被差別部落を特定した、その地域を特定した、その住民を特定した調査がやりにくくなっているということはどう考えていただいてもわかると思う。絶対できないとまでは申し上げていないが、センシティブ情報に当たるので非常に難しくなっている。その反面、何とか実態を把握したいということから、1つは行政データを活用した実態把握を行った。ただ、単なるデータなので、いわゆる部落差別の関連とか、中身がやはり出てこないので、別に行っている相談事業の事例を吸い上げていくと、こういうことがあったんだなということがわかって、部落差別と、そのデータとの関連性が何らかわかるのではないかと期待していた。「結果として何も出てこなかった」というのは、ほとんどそういう事例が上がってこなかったということである。調査設計としては、ほかに方法がなかったので、我々としてはやむなしと思っているが、結果として成功しなかったということを申し上げた。 

○B委員 2つ目の調査の件である。研究者の方が、同和問題という社会問題、また障がい者問題もそうだが、個別の方のプライバシーを守るというのは当然であるが、当事者の人たちの実態がどうなっているかということを追究したり、いろいろな人権課題について、その社会的問題にかかわって課題把握をするための調査なくして、政策立案はないと私は思う。そのときに、研究者とか、ましてや同対審答申が言うところの国の責務であり、国民的課題だと言われる行政的な責務を公共政策として果たすためには、正当な理由で、まさに人権を守り、伸長させるために、その社会問題を解決するための調査・研究をしなければならないわけである。そのことが、土地や個人の差別調査をすることを規制した条例、個人の人権を守るための個人情報の保護条例があるからできなくなっているという記述を参考資料として載せている。この参考資料がきちっと載っているのであれば理解できるのだが、できないということの方が載っていることについてどう考えているのか。そこを真剣に今までの大阪府はやっていると思うので、今回の文章には違和感を感じる。 

○E委員 平成27年6月15日の専門委員からの意見聴取全体会議で「地区を特定して、人を特定して、簡単に言うと、あなたは同和地区の人ですねという形で行う調査というのは難しい」という意見を出された専門委員の方がおられる。事務局は、「難しいとのお話があったが、はっきり申し上げて、できない」という答弁をされている。これについての大阪府としての考え方を示していただきたい。 

● かつて平成12年の実態調査のときは、特別措置法があったので、具体的に対象地域にお住まいの方を特定して、差別の体験とかさまざまな中身を聞いていくことができたのだが、今は特別措置法が失効している中で、どういった形で実態が把握できるかということで、大阪府で審議会のご意見もいただきながら検討してきた結果、行政データや国勢調査を活用した実態把握に、これまで取り組んできた。国勢調査や行政データは既存のデータを抽出するもので、改めて、対象地域の住民の方を特定して、直接聞いていくという調査ではないことから、これまで何とか実施できた。
 今後さらに、部落差別の影響を把握していくべきではないかというご意見も専門委員から実際に出てきたので、どういうふうにすればできるだろうということを検討してみたが、府の個人情報保護条例や部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例を踏まえると、やはり具体的に「あなたは部落にお住まいですか」とか「被差別体験はありますか」といった調査をするということは非常に難しいと考えている。センシティブ情報を問うことにより、新たに、ここは対象地域だという情報が拡散してしまうおそれ、それがまた部落差別につながるおそれが想定されることから、難しいと考えている。
 差別を解消する、人権問題を解決するためにこの調査は必要だという意見も当然あると思うが、調査をすることによって得られる効果と、逆に引き起こす差別の両方を総合的に見ていくと、やはりこうした調査は難しいというのが、今回、上げさせていただいた見解である。 

○B委員 「ここは同和地区ですよ。あなたは同和地区の人ですよ」というような調査ができるかという質問をしているのではない。研究者の方とか、同和問題解決の取り組みの行政責任を果たす上で、政策というものの裏には科学的な実態把握や調査というのが必要だから、その把握をどのようにしていくのかということについて、真剣に、現状の中でどうであるかということを示さないといけない。例えば差別事件調査、あるいは府民の同和問題に対する意識調査は、従来、積極的に行ってきたが、最近の状況は、そういった調査に対する取組みがあまりデータとしてしっかり出されてこなくなってきた。
 つまり、今回言われている条例の解釈のことを言っているのではなくて、同和問題を解決する審議会だから、解決するために必要な調査・研究をどのようにやって、政策を出していくかという前向きな方向性が、今即答していただかなくても結構だが、ぜひ必要ではないかと思う。 

○A委員 「対象地域というふうに一般と分けて呼ぶこと自体が問題だと言う人もいる」ということに関しては、大阪府はどう捉えているのか。私はいいと思っているのだが。 

● 今回の実態把握については、まさにデータをとるということがあるので、実際に、このエリアということで限定して進めていく必要がある。そういった意味から、旧同和対策事業対象地域を限定する必要があるので、対象地域という呼び方をさせていただいている。 

○A委員 もう1つ、どんな調査の手法をとることができるかというのは、今の条例、法律、制度、いろいろなことがあると思う。それをクリアするということは非常に大事だと思う。ただし、例えば病気を治すときに、その人がどんな病気かという診断を正確にしないとだめだ。その診断をするときに、違法な診断の仕方をしたら、当然、その人自身の体が被害を被る。しかし、いろいろな診断方法、CTを撮ったり、MRIを撮ったり、PETを撮ったりするわけである。適切な治療をするためには診断が必要なのと同じように、部落差別をなくす適切な行政を展開していく場合、やはり実情を把握する、適切な診断をするということは必要だと思うし、今後ともやってほしいと思う。「全てが部落差別の結果と捉えることはできない」と言うなら、どの部分が部落差別の結果として捉えられるのかということは今後もやはり分析をしていく必要があるのではないかということに関してはどう思っておられるのか。
 それと、もう1つ、非常に気になったのは、18ページの専門委員が言っているところで、「平成13年答申の『これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題であった』という認識は妥当性を欠いていたと考える」ということである。当時、4ページの2の国勢調査を活用した実態把握のところの記述にあるように、「平成13年答申における『これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題としてとらえることが可能であったが、同和地区における人口流動化、とりわけさまざまな課題を有する人びと来住の結果、同和地区に現れる課題 は、現代社会が抱えるさまざまな課題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる』との指摘」をされた。「同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題であった」という、ここだけを取り上げると誤解を招くと思う。そういう意味では、なぜ同和地区に集中的に現れていると見ることができるのかということ、一体どの部分がどんなふうに部落差別の結果とかかわっているかということを解明しないと、効果的で適切な行政施策は打てないのではないかというのが私の意見である。 

○E委員 繰り返すが、法的な根拠もなくなった地域を旧同和対策事業対象地域として位置づけて、行政データと国勢調査データを活用して比較・分析することで課題に迫るという、その発想自身にそもそも無理があるのではないか。前回の審議会で申し上げたが、いくら固有の問題、課題を探ろうとしても難しい。100%これだというのは出てこない。さまざまな要因が絡まってきている。これはどなたも納得していただけるのではないか。ようやく議論がここまで来たと思って私は喜んでいる。
 適切な対応。適切とは何かと言えば、一般施策、同じ府民としての施策、府民施策の充実、その中で適切に問題解決を図っていく、その道しかないのではないか。何か特別な道があるかのように聞こえないことはないが、それをやれば、逆に問題解決を遅らせることになると思うので、適切な道は、はっきりしていると申し上げる。 

○D委員 8ページで、対象地域で見られる課題というのは、大阪府全域との比較からいけば、明らかに出ている。前提として、対象地域では、多様な現れ方があるけれども、大阪府全域との比較からいけば、これだけの課題がある。これが、いわゆる従来的な部落差別の結果と言うのか、それとも、部落差別というのは、従来、属地属人とかいろいろあるが、人口減少もあるし、流出、流入もあって、地域の中の状況は変わっている。そうすると、いわゆる対象地域の現状、現代的な状況とは一体何なのか。その中の、いわゆる部落差別と従来から言われたものが、どの部分にあるのかというふうに整理しないと、何か結論だけがぽんと出て、私は頭がさっきから整理できていない。 

○G委員 かねがね私が1つ非常に疑問を持っていたのは、部落問題が解決したというのはどういう事態を指すのかということで、これについて、やはり議論する必要があるだろうと前々から申し上げている。
 それから、今、「部落差別の結果としての」というところであるが、これは昭和40年の答申の中ではっきりと、部落差別の結果としての低位性が部落には集中的に顕著に見られると書かれている。だから、皆さんと意見が違うかもしれないが、因果関係というよりも、「部落差別の結果としての」というのは確かにそうなのだが、現れてきた課題のあり方、現象のあり方は、私は共通していると思う。だから、最後の3点目の推認のところで問題になっているところは、私は、やはり現象として共通していると考えるべきではないか、そして、共通している課題を持っている地域は大阪府下にほかにもある、という意味だといういうふうに考えている。
 では、調査をどうするかということであるが、やはり部落問題というのは単なる個人の問題ではなくて、エリアと関係している、地域と関連しているので、「この地域がかつてそうだったけど今はもうそんなことは全然関係ない」ということになればいいのだが、まだまだ今は一括されて、ステレオタイプでカテゴリー化されるので、やはり地域として調査をするというのは、行政としてはできないだろうと思う。
 私は、行政として調査をするのではなくて、行政が調査を促進するような、要するに文科省の科学研究費のような制度をつくり、行政が実施できる具体的な解決策を立案できるような学問的、科学的な研究を、大阪府がサポートする方がいいのではないかと考えている。 

○H委員 地域類型を用途地域で分けて見るというのは、どういうことなのか。皆さんの中では、大体この場所というのがわかりながら、こういう話をされているんだろうなと思うのだが、私から見ると、これが一体何を指しているのかがよくわからない。
 もう1つは、先ほど住宅政策の話があり、私も住宅、団地のことを研究しており、交通の便の悪い昔の団地にどんどん生活保護の人たちが入ってきたりという状況があって、そういう団地をどうやって活性化させるか、そこの環境のよさを享受してもらって、それを売りにして、いろいろな人に入ってもらうということに取り組んだりしている。13ページのところにある対象地域の中で、持ち家と公営借家と民間借家、この3種類しかないという状況で、それがちょうど3つずつに分かれていて、その中の公営借家の状況というのは大体わかる。建て替えられた団地の状態はわかるのだが、例えば持ち家であるとか民間借家の状況というのは、これが一体、この地域類型の中でどういうふうにまじっていて、そこでどんな問題がいまだに残っているのかというところが、数値的に出てくると、もう少し私たちも発言しやすいのではないか。私のように、数字と場所だけ出てくると、なかなか状況がわからない者にとってみれば、とてもわかりにくい資料だと思う。
 1つ、私の大学でのエピソードを紹介する。私は、毎年、入ってきた学生に、自分の住まい歴を書かせていて、それをある時期まで全部、学生同士で発表させたりしていた中で、「私は部落の出身です」という学生が出てきた。その年から発表はやめようと思ったが、その学生が、「何も差別されている気持ちもなければ何も嫌なこともなくて、こうやって私はここに書ける。ただ、小さなときから、会館に行って、いろいろなことを教え込まれたことはあるが、近くの戸建て住宅にも移ってしまっているし、中にもいろいろな人が入っていて、私は何も感じないし、ここにこうやって、こういう出身であるということも堂々と書ける」ということを書いたレポートを出してきた。そういうふうな声が聞こえるような調査はできないものかと感じるところである。生の声で、18歳、19歳の子たちがどんな育ち方をして、今どんなことを考えているのかというのは、私にとっては、とてもいいレポートだったと感じた。 

○I委員 先ほどからいろいろなご意見が出ており、本当にいろいろと考えさせられるものがたくさんあった。しかし、今日は、あくまで旧同和対策事業対象地域の課題についてということがテーマとなっているので、私の捉まえ方とすれば、やはりそういった同和対策審議会の答申を受けて、その後の事業を進めた中で、対象地域ということを、あくまで同和対策事業をやった地域を指して言っておられるものだと思っているので、ここは私はあまり気にしていない。ただ、この中の資料を見る中で、もう少し前向きな回答があったら、これからこういうふうに進めていったら、もっと部落差別はなくなっていくという課題を残していただいたら、もっとよかったかという感じがする。 

○C委員 ずっとこの調査をされてきて、ようやく状況が全体としてわかってきたということであるが、これがどういうふうに役立っていくのかとか、ここから見えてくる、まさに課題が今後の施策にどうつながるのかとかいうことは、どこで所管するようなことになっているのか。 

● これまで、行政データと国勢調査を活用した実態把握の結果については、庁内の関係部局はもとより、市町村とも情報共有をしており、その上で、施策の推進に当たり活用しているところである。また、今後についても、今日さまざまなご意見をいただいているので、どういった形で進めていけばいいのかというところは、事務局の方でまた十分検討してまいりたい。 

○会長 この審議会は諮問がなく、いつまでに答申を出せということもない。府の施策上の参考になればという形で、委員のご意見を承る場だと私自身は認識している。ご意見をいただくこと自体に非常に意味があるので、自由に発言していただき、それを事務局で受けとめてもらって、何らかのプラスになっていくということになればいいと思っている。 

● 本日はさまざまなご意見をいただいた。これまでもいただいたご意見を踏まえながら、この実態把握を実施してきたわけであるが、今後、そのあり方なども含め検討してまいりたいので、よろしくお願いしたい。皆様からいただいたご意見については、今後の施策の参考にさせていただきたい。


作成:府民文化部人権局

配付資料

次第 次第 [Wordファイル/16KB]
資料 旧同和対策事業対象地域の課題について [Wordファイル/134KB]
参考資料1 「国勢調査を活用した実態把握」報告書【第一次】のポイント [Wordファイル/1.43MB]
参考資料2 「国勢調査を活用した実態把握」報告書【第二次】の抜粋 [Wordファイル/2.17MB]
参考資料3 行政データを活用した実態把握(主な傾向) [Wordファイル/24KB]

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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