第34回 大阪府人権施策推進審議会

更新日:2023年3月8日

第34回大阪府人権施策推進審議会 議事概要

【日 時】平成31年2月15日(金曜日)10時から11時30分
【場 所】大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)特別会議室
【出席者】有村委員、大谷委員、善野委員、谷田委員、
      中井委員、毛利委員、森田委員

【配布資料】
資料1 現状と課題認識 [Wordファイル/46KB]
資料2 検討スケジュール(想定) [Wordファイル/18KB]
参考資料1 大阪府人権尊重の社会づくり条例 [Wordファイル/26KB]
参考資料2 大阪府の条例における責務規定 [Wordファイル/23KB]
参考資料3 各都府県の人権条例における責務規定 [Wordファイル/26KB]
参考資料4 大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例 [Wordファイル/37KB]
参考資料5 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 [Wordファイル/26KB]
参考資料6 東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例 [Wordファイル/44KB]
諮問書(写し) [PDFファイル/55KB] 諮問書(読み上げ用) [Wordファイル/22KB]

【議事概要】
○開会
  
○議題

(1)大阪府人権尊重の社会づくり条例第4条第1項に基づく諮問
【質疑応答】

・大阪府人権尊重社会づくり条例における府民および事業者の責務について

〇委員
  今まで大阪府の条例には、府民あるいは事業者の責務についての規定がなかったということだが、これが今までになかったというのは特に意識して設けなかったというような経緯があるというわけではないのか。条例の附帯決議の「4 市町村、事業者及び府民と連携するに当たっては、その自主性を損なわないようにすること」というのがあるので、その問題はあえて否定したということなのか、それとも作ったときはあまり意識してなかったということにとどまるのか。そのあたりはいかがか。

〇事務局
  平成10年の制定時の原案には府民の責務は入っていた。議会で承認いただく際にそこは府民の判断に委ねるべきではないかという意見があり、府議会の判断ということで、結果的に府民の責務というのが削除されたという事実がある。いろんなご意見があり、そのようになったと確認している。
   また、問題ないのかというご質問があったが、これについては、確かに大阪府の人権条例の中には府民の責務がないのだが、関連して、各市町村でも人権条例を制定されており、その方向性、府の施策と協調してやっていくということで、そこには市民の責務が各市の条例には規定されており、府民は市民、市民は府民だという考え方に立つと、全体として府の施策と協調している市の施策を、結果的には府の施策に間接的に協力しているのだと、私たちは自主性を尊重するというところで、そうさせていただいたと理解している。

〇委員
 (府民の責務が現行条例に)ないことの経緯を確認した。条例をつくったときには意識してもうけなかったということ。今回それを入れるということになると、意識して入れることになるのかなと思う。先ほどご説明もあったが、各種、各分野の条例もかなりできていて、そういうところには府民とか事業者の規定が多く入っているということで、状況が変わってきているということは言えるかと思う。

〇会長
  諮問の内容について非常に明確にしていただいたと思う。理念法の中に責務を入れるかという論点かと思う。そのほかに。

〇委員
  資料1の「現状」のご説明の中に取組みが明記されている、1986年からの条例を拝見すると、規定としてはすでに条例の中には入っているということである。先ほどの委員のご発言にあるように、府としては、そのような認識はあったけれども、表現としてはその当時の社会情勢を鑑みて表現されなかったというご説明については、理解をした。
   この中で、府民及び事業者の責務とあるので、府民と事業者、同一の規定というお考えがあるのか。府民、事業者を分けての段階があるのか、何らかの考えがあるのであれば、それについても少し教えていただけたらありがたいかと思う。

〇事務局
   その点も踏まえ、委員の先生方のご意見をいただいた上で、私どもの方で条例の建付けについては考えたいと思う。他府県の例で申し上げると、府民の責務と事業者の責務を分けて、「努力をしてください、人権尊重についてしっかり勉強してください」という項目と、「協力をしてください」という2つの内容からなっているかと思うのだが、そういった各々の立場でまずきちんと(しなければならない)。事業者については「府の施策に協力しなさい」だけならいいかもしれないし、その辺りを先生方にご議論いただいて、よりよい規定を考えていきたい。基本的には分けてと考えている。

〇委員
 参考資料2の「大阪府の条例における責務規定」というのがあり、2つ目の「大阪府男女共同参画推進条例」が平成14年4月に施行されている。これを拝見すると、府の責務、府民の責務、事業者の責務、こういうふうにきちっと規定が分かれているというところがある。その前はもともと人権条例ではこういう府民の責務や事業者の責務は明記されていなかったが、男女共同参画推進条例ができ上がった時点では、府民の責務、事業者の責務を個別の条文に増やすことについて特段の反対意見というのはなかったのか。

〇会長
  出来上がった時の経緯についてのご質問。

〇事務局
  今日は担当課が来ていないため、当時の経過は把握していないが、男女共同参画推進条例ということで、当時はこういった男女の問題というのがかなりクローズアップされた時期であり、個別の課題に置かれたその取組み、必要性というのが考えられたのではないかと思われる。経過の詳しいことはまた改めて次回までにご報告差し上げたいと思う。

〇会長
  メール等で結構なのでまたお知らせいただければと思う。

〇委員
   表現の仕方が違っているのは、方法的には異論はない。ただ、条文の建付けだとかその文言は別途検討する必要があると思う。例えば隣の「大阪府子どもを虐待から守る条例」、これは府民の責務という形ではなくて、府民との協働、保護者との協働、関係機関等との協働という形で「進めなければならない」という表現ではなく、「努めるものとする」という表現になっている。目的に応じて表現も変えておられるので、そこの経緯を教えていただきたかった。

〇会長
 それも含めてまた次回までにいうことで。条例とはおそらく外から見たときに大阪府がどういう活動をしているかわかるような形で作られる側面と、大阪府民や事業者の方々に対するメッセージの側面と二通りがある。そうした関係もあって、そのような表現になっているのかもしれない。またそれも含めてご報告いただければと思う。

〇委員
  資料1の「現状と課題認識」でお示しされていることで、拝見する限りは今後予想される増加する外国人あるいは法制度の変化や国際イベントといったようなことが示されていて、知事の答弁といったものが示されているわけであるが、考えていく前提として、10年に社会づくり条例が施行されてから、これまでは府民、事業者の責務という努力義務についての規定はなかったわけであるが、それが今日に至って、いわゆる、他の市町や他の法令とかの関係で整合性を取るためにこういったようなことが必要なのか、あるいは実態としてこの条例が、ある意味そういった形で検討していかなくてはいけないような、そういう課題がどこかに今まであるのかどうか、答えられる範囲内で教えていただければと思う。

〇事務局
   先ほどの資料の持続可能な開発目標である、SDGsという国連が定めた目標の一つに人権の視点も入っており、大阪府では、2018年4月に実現に向けて、庁内関係課からなる推進体制を整備し、オール大阪でやっていくという推進体制を実現するために築いている。複雑多様化する人権課題に大阪府が一生懸命取り組んでも、その主体である、府民、事業者の方のご理解、協力がないとなかなかその実現が難しい。そういうことで今回、各々の役割分担をしっかりこの際に規定する必要があるのではないかということで諮問させていただいた。

〇委員
 2点目にご質問したところで、なかなかデリケートなところもあると思うが、現状の社会づくり条例の中でそういった課題がこれまであったのかどうなのか、未来志向でそういったこういうことが言われて諮問しているのか。現状の中でもそういったことの中で課題があったのかどうなのかっていうことは、もし可能であればご説明いただければ。

〇事務局
  この社会づくり条例で、人権施策を推進する体制としては、府民の人権意識の高揚を図る施策と人権擁護に資する施策、つまり啓発と相談という手法を用いて、問題について推進してきたところである。しかし、やはり啓発というところでは、私達が地方の情報を届けて、理解いただこうということであるが、キャッチされる側との協働でなければ、私達が投げてもなかなか府民に情報が伝わっていないということがあるのではないかと思う。
   不都合があったというところまではないと思うが、今後、こういう新しい課題に対して対応していく、特に性的マイノリティの方への対応については府民の理解がやっぱり不可欠というところで、正しい知識を理解しようとする府民のお力添えがないとなかなか実現難しいのかなと感じている次第。

〇会長
  委員のご質問に対しては、未来志向の形の諮問だということ。

〇委員
  大阪府は子どもを虐待から守る条例の中で、国の虐待規定に加え、経済的虐待を付け加えていて、そのために関係機関との協働を条例で付け加えていただいているのかなと思う。障害者虐待防止法は平成24年に成立したが、病院や教育機関が適用除外となっている。やはり正規の事業者の責務というところを盛り込んでいただく、あるいは、府民の協力をいただく、という意味では付け加えていただくことで、よりしっかり対応しうるのではないかと。

〇会長
  責務という形で明確にした方がより対応しやすくなるのではないかということ。

〇委員
  大阪府がこれまでに条例化してこられた分野に関しては経緯を教えていただいてわかったが、それぞれ根幹に人権関連や人権保障などを据えつつも、上位の法律があったり、政策があったりして、そこで、個別の分野で具体的な政策を打っていきましょうという方向性を打ち出した条例となっている。具体的には先ほど委員が直近でおっしゃった子どもの虐待に関してまだまだのところがあるが、それでも府民若しくは事業者の責務ということに踏み込んできて、できてきたかなと。特に障がい者なども合理的配慮の面で義務化されてきているので、こういうところは組み込みやすかったのかなと思う。
   一方で、大阪府人権尊重の社会づくり条例というところで、一般的な人権の尊重を謳いつつ、そこで府の責務は啓発と相談とのことであったが、そのもとにある府民もしくは事業者に対して、例えば、参考資料3の栃木県のように、「県民は人権を尊重しなければならない」というようなことを言ってしまうと、これはむしろ衝突が起こったときに、どういう形で対処していくのかというような新しい問題を呼び起こすことになるのではないかと懸念する。
   具体的な分野を条例でも推進していく、ここで差別を消していく、ここで対処していくという形ではなくて、社会全体として人権の底上げをしていくというときに、府民にその相互での尊重義務ということを謳ってしまうというのは、少し漠然としすぎてして、むしろ危険を感じている。
   先ほど事務局がご紹介してくださったときに、特に取り上げてくださった右から二つ目の滋賀県の条例であれば、例えば、府としてしっかり啓発をやっていく、そのなかでそれを受けた府民は、「人権が尊重される社会づくりに寄与するように努力していく」となっており、このあたりでの表現であれば、むしろ盛り込むべきと思うが、人権の尊重をし、府民に委託する、丸投げするのは、私は注意すべきではないかと考えている。

〇会長
   個別の具体的な課題に対応する場合と、一般的な人権の規定を考える場合はまた少し違うのだろうというご意見。

・ヘイトスピーチの解消及び性的マイノリティに対する差別の解消に向けた規定について

〇委員
   ヘイトスピーチの解消と性的マイノリティは、現在ともに問題になってきているが、内容的には別々のことである。東京都が最近作った条例では、オリンピックのための人権尊重ということでまとめて中に入れているが、大阪府の場合は昔から人権尊重の社会づくり条例というのがあるので、どういう形で条例化されるのかということ、詳しい内容というよりはどういう形を考えているのかという質問をしたい。
   現在の人権尊重の社会づくり条例にこれを付け加えるというのは、体系的に違和感があるのではないかという気がする。個別の課題についてはそれぞれの条例があるということなので、東京都のように新しく作るのであれば確かに今の課題を同じ条例にいれるということはありうると思うが、昔からある条例に個別のものを2つだけいれるのは違和感がある。
   形式的なことなので、それでもやるということもありうるとは思うが、その辺りのお考えがあればお聞かせ願えればと思う。

〇事務局
   ご指摘についても、しっかり考えていきたいと思う。
   現時点では個別にするのか、ここに入れるのかは私どもとしては判断としては持っていない。どういう形がいいのか。ご審議いただいた上で、執行機関として考えさせていただけたらと思う。

〇会長
  建付けについても私達の議論を経て決めていただけるということだと思う。
   今、違和感の表明があったが、それは大切にしつつ、議論を進めていきたいと思う。

〇委員
   私も、委員が今おっしゃったように、ヘイトスピーチの解消についてと、性的マイノリティに対する差別の解消について、この二つの課題はもちろん推進していかないといけないので、条例として制定することには賛成。ただ、これを個別条例とする方が、収まりがいいのではないかと。
   社会づくり条例はもともと基本法的なもので、そのもとで個別の条例が、この時代の変化や、どんどん人権課題を後追いする形で必要性に応じてこういうものが作られてきている。とするとこれを資料1の「現状と課題」の流れを見ると、最初に、人権尊重の社会づくり条例ができ、その後、個別の条例ができているので、むしろ足跡をつけるというような意味でも、時期にかなった立法だと思う。このヘイトスピーチを解消すること、性的マイノリティに関することの法制化の問題はとても重要なことなので、これがむしろこれ個別の条例として制定した方がよろしいのではないかと思う。

〇会長
  二つだけがここに取り上げられるという、そういう事態の理由も必要ではないか。今まで個別に対応してきたなら、同じような形で対応するのが自然なのではないかというご発言。

〇委員
   ただいまの委員の発言を受け、私も府としての歴史というのは、やはり他府県と違う人権の捉えをしっかりと進めてきたということを自負されている点が多々あると思う。その点について、府としての人権の歴史の流れが見える形の個別条例をきちんと制定したのだということを、一つは、外に向けてしっかりと示すというのが今の時期だと思う。
   外に向けてと言ったときに、社会情勢として捉えられるこの世界的イベントということがチャンスになっていると捉えればいいのであって。これまでも様々な人権に対する配慮や支援をしてきたけれど、この社会情勢を受けてさらに外に向けて府はこうだ、ということをしっかりと宣言するということを明確にする。これは二つの中のヘイトスピーチの解消については明らかに、というふうに考える。
   もう一つの性的マイノリティに関してのことは別の考えもあるので、まずはヘイトスピーチに関してということで、外に向けての発信と同時に、やはり内に向けての配慮など、今後様々な点でこの制定が教育の分野にも必ず影響していくと思う。カリキュラムマネジメントと言われるように、府が推進していくことについても教育に位置づけていく、一つの方向性になっていくことになろうかと思う。
   文科省の方も様々な事業の中にそういう取組みをしている補助推進事業などの公募もすでに昨日あたりから始めているので、そういうことについても、府民が、府の教育が、そのことも含めて、発信していく一つの契機にしていくということがさらに見える形になればいいのかなと考えている。

〇会長
  ヘイトスピーチと性的マイノリティを一緒に議論してしまったので、共通の問題も出てきたわけであるが、少し切り離して、ヘイトスピーチについてのご意見いただいた。
   最初に「一緒に」と僕は言ってしまったかもしれないが、ヘイトスピーチの方で特にご意見があれば引き続きお願いしたいと思う。

〇委員
  ヘイトスピーチの解消についてということでは、他の地方自治体でも広がりつつあるところかと思うので、これもどの程度までやるかということが大きな問題になると思う。大阪市のようなことをするということになるのかどうかということ。
   国が差別的言動の解消に向けた取組みの推進に関する法律を作っているので、これを受けて、同程度のかなり理念的なものにとどまるものを制定するということであればそんなに難しいことではないと思う。また、それも一つ重要なことであるとは思う。
   一方で、大阪市や東京都は、審査会を作って個別のヘイトスピーチの認定をするということをやっているということなので、大阪府としてそこまでするのかという辺りが問題となってくるかと思う。そうなるとわりと大変で、条例制定後も、できるであろう審査会やその事務局に大変な負担をおかけすることになる。
   その辺りを考えて、どういうことをやっていくのか考えておかないといけないと思うが、その辺りの考えがもしあればお伺いしたいと思う。

〇事務局
   最初の委員のご質問については、府としては、ヘイトスピーチを許さないという府の考え方を府民に見せる形で示す、宣言する必要があると考えている。
   そのため人種、民族を理由とする不当な差別的言動を禁止する規定を置きたいと考えている。
   それから二つ目のご質問で、大阪市、東京都のような個別案件の公表については、委員の皆様のお考えをお聞きしたいところであるが、ヘイトスピーチの表現行為を公表することにより、差別の拡散に繋がるというようなこともあるかと思う。また該当性の判断、ヘイトスピーチに該当するかどうかの判断は慎重におこなうことが必要。難しい審査に時間がかかるということがあるため、現在、我々としては公表制度を設けることについては考えていない。

〇委員
   表現の自由などとかかわる微妙な問題であるため、条文の表現については慎重に考えるべきところがある。府としての姿勢を明確に出すということは重要なことかと思う。それ以上の審査会等までという考えはないということだと理解した。

〇会長
   かなり明確になってきたと思われる。

〇委員
   確認だが、ヘイトスピーチは許さないという姿勢を示し、それを条例で禁止規定は盛り込むということで理解してよろしいか。

〇事務局
   はい。そう考えている。

〇委員
   具体的な個別の案件については、ここまでは踏み込まない。

〇事務局
   事務局の考えとしては、先ほど申し上げたとおり、慎重な審査が必要だと思われるため、公表までは考えていない。

〇委員
   公表までは考えていない。ヘイトスピーチはこういうものですよとか、規定等、そういうふうなものにも踏み込むということか。

〇事務局
   禁止規定については、我々としてはやはり宣言だけではいけないと思うので作っていきたいと考えている。

〇委員
   こういうのが具体的なヘイトスピーチですよということはお示しするということか。

〇事務局
   個別案件の公表までは考えていないが、定義については必要かと思う。そこについてもご意見等をお伺いしたいところである。

〇委員
   今、公表という言葉を使われたのは、審査会にかけて何月何日どこそこで行われた行為がヘイトスピーチにあたるという認定をして公表するというような方向性は持っていかないということを言われたのでは。

〇事務局
   はい。例えば定義については一定、定める必要があると思うが、先ほど、委員がおっしゃったように、個別案件の公表は考えていないというところである。

〇委員
   むしろそれが拡散につながっていくと。

〇事務局
   我々もそう考えている。

〇委員
   ヘイトスピーチと性的マイノリティを切り分けてとおっしゃった今になってまた少し申し上げにくくなったのだが、少し違う視点からあえて発言させていただく。
 東京都はオリンピックに向け、オリンピック憲章という下地がおそらくあってこの2つ人権を取り上げられてこういう形でまとめられたと思うが、皆さんおっしゃったとおり、大阪府には、それだけでない様々な差別があり、様々な個別の人権問題もあり、そしてこれからも様々な差別がどんどん出てくる可能性がある。
 国の上位法も全くない中で非常に難しいことではあるが、あえて申し上げると、大阪の今おかれた、国際的イベントも控えるこの時期に、人権尊重の社会づくりということをあえて打ち出す、大阪府の立ち位置を明らかにするというためには、かなり包括的な差別の禁止条例といったようなものを作って、あらゆる差別に対して大阪府は闘っていくというようなことをやっていくのがよいのではないか。
 もちろんこれまでやってこられたように、ヘイトスピーチのように上位法ができたから対処していくというやり方も一つだと思うし、それが確実だとは思う。ただ、あえて、こういう包括的な差別の禁止条例を視野において議論しているというのも一つあるかなというアイディアとして述べさせていただく。

〇会長
   上位法ができたので対応するという方法も一つ明確なあり方としてはあるけれども、包括的な立場を示して大阪府の決意を明らかにしていくというやり方で条例を作っていく、考え直していく、再検討していくという方法もあるのではないかということ。

〇委員
   委員の先生方の意見を聞いていて、正直、悩ましいところだろうというのがあったと思うが、自分なりに整理してみると、ヘイトスピーチの解消と性的マイノリティ、同じような形でお話をさせていただくことになるが、基本的にこういった部分について解消していくということについては大いに賛成だということになるかと思う。
   ただ、先ほどご指摘いただいたように、今の社会づくり条例というのが、ある種の人権尊重に係る理念法的な意味合いがあるとすると、こういった個別の課題をこれにのせていくのか、別枠で条例建てするのかという非常に難しいという認識がある。
   議論からすると、いわゆる社会づくり条例にのせていくと、なんとなく理念の枠の中でおさまってきてしまうので、果たしてどこまで効力があるのかということがおそらく出てくるだろうと思われるし、一方でご指摘のように、個別に条例を立てていくということになってくると、具体的にどのように解消していくのかという、先ほどの審査会のようなことも一方で問われてくるということになるのだろうなと思う。
   どちらが良いか悪いかというところまではなかなか言えないが、一方で大阪府とそれぞれの市町との関係もあるのだろうと思われるし、どういう形で進めていくのかは悩ましいと思った。
   私の意見としては、当然、こういった解消をぜひとも進めていく必要があるのだけれども、委員の先生方もご承知のように、ヘイトスピーチの解消ということからすると、当然言論の自由や表現の自由という問題とどういう形で整合性をとっていくのかということと、性的マイノリティに対する差別ということからすると、この根幹的な問題、それぞれの指向の問題があると思われるので、それらがどこまで調整しきれるのかどうなのか、特にこういった理念法の中でそれを示すということになってくると、そのあたりの難しさが一方にあるのかと思う。
   あと一つ教えていただきたいのが、先ほどの努力義務というようなところの記述もあるが、参考資料3の県民の責務で、例えば、「協力するように努めなければいけない」といったような表現や、一方で福井県のように「積極的に協力するものとする」といったような形となっている。おそらくこれは法律の先生方がくわしいと思うが、ある種のこれは理念にとどまっているものなのか、しなければならないというとサンクションがある程度生じてくることになるのか、そういったところがわかれば教えていただきたい。

〇会長
   2つおっしゃったと思う。最初の建付けの件に関しては、論点は出てきたと思うので、条例をどういうふうに作っていくかっていうことに関しては事務局の方でも議論いただいて、次回あたりまたご提案いただくという形にしていただくとありがたいなと思う。
   それから二つ目の表現について。サンクションがあるのかないのかっていうことについてちょっとご認識を教えていただければ。努力義務だからこれは特に罰則がないという理解でよいのか。

〇事務局
   罰則がない宣言的な規定。差別はしてはいけない、あるいは、県が行うことに協力してくださいという姿勢を、県民の方々に示している条文だと思われる。
啓発するときでも、ここに書いているとおり、この責務・役割をお願いしているというような、府がもしこういう規定を設けた場合にはそれを根拠というか、一つの啓発のよりどころとして、より府民に協力を求めるという意味合いでは規定するメリットはあるかと思っている。

〇会長
  しっかりとした立場を示すという意味合いかなと。
   次の性的マイノリティの差別の解消に向けた規制について重点を置きながら、ご意見をお願いしたい。
   ヘイトスピーチの方は先ほど上位法があるということで議論あったが、こちらの方は今(国会で)審議中ということで、そのあたりが少し違うということになるかと思われるが。

〇委員
   確認であるが、ヘイトスピーチの上位法があるということか。

〇委員
   法律に定められている。

〇事務局
   参考資料5に法律を参考で付けさせていただいている。

〇委員
  承知した。

〇会長
   性的マイノリティの件に関してはこういう法律がまだできてないという状態。

〇委員
   性的マイノリティ、LGBTとよく言われている方々に対しては何が差別なのかということが非常に流動的で、それこそ昨日も同性婚を認めないことについて提訴を行うというようなニュースもあった。何が差別か流動的ということがあるので、おそらくこちらのほうは、それこそかなり理念的なこと、その時々に応じて不合理、不当だと認められるものはしてはいけませんよという、そういう程度のことになるのかなとは思われる。
   もちろん、そういうことを条例としてでもつぎ足すことは大変大きな意義があるというふうに思うが、細かく書くのは難しいのかなという気がする。

〇委員
   前回も性的マイノリティに関して発言したことであるが、従来のカテゴリーの中にあるところにポンと加えられたというような認識ではなくて、子どもの人権にかかわることであるとか、様々な複合的な課題として現れていることだと思う。
   このことについては、もう一度人権課題についての整理というものを大局的に見直す必要があるのではないかということを申し上げたと思う。
   先ほど委員がおっしゃった、包括的に府としてこの差別というものを捉え直す必要がある、というふうにおっしゃったところにかなり近い思いを持っている。
   これが大阪府の人権課題に対する、もしかしたらエポックメイキングになるのではないかというぐらいの大きな分岐点なのかなという思いもしている。
   先ほど分けて考えておくと申し上げたいのは、ヘイトスピーチというのは差別としては、アウトプットする側の方であり、性的マイノリティは、受ける側なので、インプットされた中での差別をどう捉えていくかというふうに、大きく違う構造になっているというふうに私は捉えているので、こういうことをあえて改めて意見を述べたいと申し上げたところ。
   やはりこの件に関して、慎重さという点では、差別を受けたと感じている方々についての個別の聞き取りであるとか事例というものをもう少し積み上げたりしていきながら、しっかりとそのことに対応していくということは、そのインプットという意味で、どのように捉えられた、どんな場面で、というようなことを少し貯めていきながら調査していく、というようなことが今までのいわゆる弊害の積み重ね、積弊と言われるものを洗い出すという作業が必要になってくるかというふうに考えている。

〇会長
   性的マイノリティについては、現在の法案が審議されているところだということであるし、この審議会で審議するに当たっては、やはり当事者の方やこの分野における有識者の意見を伺っていく必要があると今ご指摘があったというように思う。とはいえ、なかなかその方を呼んでということも、時間的な制約で難しいかと思われるので、ぜひ事務局の方で意見聴取等をしていただいて、次の審議会においてご報告いただくという方向で考えていただければありがたい。
   何が差別なのか、何を規定するのが難しいということであり、これは我々も勉強しないといけない。

 

(2)その他
  特になし

 

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府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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