第19回審議会

更新日:2023年5月11日

第19回大阪府人権施策推進審議会


(と き)平成18年2月10日金曜日
午後1時30分から午後3時43分


(ところ) プリムローズ大阪 3階 高砂

(出席者)入谷(桂)委員、上田委員、大國委員、加地委員、川島委員、佐藤委員、西村委員、福田委員、藤井委員、松見委員

(議事概要)

1 開会

・ 大阪府企画調整部長挨拶

・ 委員紹介

2 議事

(1) 会長、会長代理の選出について

・ 推薦により上田委員を会長に選出

・ 会長の指名により、大國委員を会長代理に選出

(2) 大阪府人権施策の状況について

・ 事務局から、大阪府人権施策の状況について説明、報告を行った。

(3) 人権問題に関する府民意識調査について

・ 事務局から、人権問題に関する府民意識調査について説明、報告を行った。

(4) 人権相談・救済システムについて

・ 事務局から、人権相談・救済システムについて説明を行った。

3 意見交換  〔 ○:委員 ●:事務局及び大阪府関係課 〕

  ○ これだけ膨大なエネルギーと予算を投じて人権教育をしたにもかかわらず、依然として問題は深刻化しているというお話であるから、受ける側の問題ではなく、している側の仕方について反省をすべきである。委員会などの第三者の評価の組織をつくって、大阪府とは全く無関係の人の厳しい評価により、人権教育の具体的な施策の内容の一つ一つを検討して、評価を加えて、やり方に問題があるというところを反省する必要がある。
    人権基礎教育の指導事例集は非常にいいものだと思うが、その人権基礎教育については資料には2行しか書いておらず、指導事例集がこの中にきちんと取り入れられた形での連動性が見えない。基本的な道徳意識というものがない以上は、いくら人権教育をやっても、それは砂上の楼閣である。大阪府の人権施策は、むしろこれを大きな特色として打ち出すべきであるのに、それが依然として取り上げられていない。人権教育に費やしてるエネルギーの半分を人権基礎教育にすると、また違うと思う。

  ○ 人権教育の第一歩は小さいときからきっちりとやる必要があり、基礎教育ということをこの審議会でも強く申し上げて、大阪府の教育委員会でも取り上げられ、また、初等教育・中等教育における人権教育に重点を置くという、国連で提言している世界計画の方向と、私ども審議会が申し上げたことは一致していると思う。

  ● 講師については、職場で研修する場合、どういう講師を呼んできたらいいかわからないこともあるので、トータルで整備をする必要があり、今年度から、研修をする場合に、対象者や職場に応じた講師や研修内容のマニュアル的なものをつくる検討会を立ち上げている。講師についても、できれば人材バンク的なものをつくって、適切な講師派遣と企画まで含めたこともアドバイスできるようなシステムづくりも、人権教育推進計画の中で随時進めていきたいと考えている。
    評価については、人権教育でどういう効果があったかというのは難しい問題で、意識調査も評価の一つだと考えている。今回の意識調査は、余りいい結果ではない一面もあるので、今後の効果的な方策を考えていきたい。

  ● 人権基礎教育の事例集については、府内の小・中・高等学校から幼稚園、また保育所にも配布し、昨年に引き続き今年も、校長研修や教員の人権研修など様々な機会を活用して、内容の周知を行っている。自尊感情、命の大切さ、善悪の判断、思いやり、コミュニケーションする力、そしてともに生きていくんだという気持ち、規範意識、権利と責任、社会貢献という9つの観点が、成長段階においても、小学校高学年、中学校、高校へ行くにつれても、こういった基礎の上に立って、さまざまな人権問題について考えていけるものだと考えている。
    この事例集を周知していくとともに、各市町村教育委員会のヒアリングを通して、この問題の大切さを意識してもらえるようこの2年間努力しているところ。多くの自治体で研修が実施されており、20に近い自治体に、府からも直接出向いて、内容等について周知に努めている。来年度以降についても徹底を図っていきたい。

  ○ この指導事例集は、教室における指導であり、いくら座学で教えても、お説教になってしまう危険性が大きい。一度提案したが、1カ月ぐらい合宿をやって、一緒に飯を食い、一緒の布団に寝るという、思い切ったことをやらない限りは、いじめとかそういうようなものに対して対処できない。この行き詰まってる状態ならば、これまでにないことをするということでしか打開の方法がない。政策の問題になるため、太田知事が心を入れかえてやってもらわないとだめだということをつけ加えておく。

  ○ 意識調査の結果でも、二十歳代の人の回答が非常にレベルの低い回答になっているので、基礎教育の問題とも連動して、研修のやり方、あり方を十分ご検討いただきたい。今は研修後に何か点検はしているか。

  ● 点検をやってるところもあるし、まだやってないところもあるので、徹底していきたい。
 
○ 評価と言うと、仲間うちでは難しいでしょうが絶えずやっておかないと、おざなりの研修になりがち。大阪府が警察官も視野に入れてやっているのは大変注目しているが、研修の中身の報告は一度もない。研修は警察に任せているのか。

  ● 基本的には警察のほうで、警察学校等で実施している。私どもも、この中の一部に講師として行っている。
 
 ○ 人権教育というのは全庁的に取り組まないといけないし、大阪府の人権教育はこれで行くんだと、当面の目標はこれだというものがほしい。本年度の重点はどこかというのが余り強く言われておらず、羅列してあるという印象が強いので、点検してほしい。

  ● 府の内部組織である人権施策の推進本部で、今年はこういうことを重点でやるなど、徹底をしたい。

    また、各部で研修する場合は、できるだけ各部の職員がみずから知識を持って、講師になって研修をするという進め方にしており、その講師になる職員の養成の研修の場で、そのときどきの重点課題や、今発生している新しい問題などの検証をし、それを考慮して各部で研修が実施されるように努力をしている。
    ご指摘の件については、推進本部等、あるいは各部の研修担当者等を通じて徹底し、また点検もしていきたい。

  ○ 人権教育について、小学校、中学校などの教育を受ける人たちの当事者意識がないことや、自分の問題として意識するきっかけが不足していることが問題である。読み書き、計算、それから法的な思考力、この4つは人間が生きていくときに非常に大事であり、ルールというのは人間のそれぞれの自由を守るものであるということを、小さいときから身につけさせる必要がある。司法改革にも関連するが、裁判員制度が3年後に導入されるので、だれでも裁判員になる可能性を持っているわけで、今度は人ごとではないし、死刑の問題にもかかわる。その心構えを小学校や中学校のときから、法というのは自分たちの身近にあって、生きる上に不可欠なものだということを早く身につけさせる方法が必要。法教育の実験教育を行っているところもあり、今法務省を中心に文部科学省も出席して「法教育推進協議会」が行われている。また、教育の問題は自治体の事務であると言っているのだから、自治体から法教育のあり方、強化の仕方について発信をするぐらいの力を持ってほしい。特に大阪府は責任が大きいと思う。人権教育、法教育、裁判員制度など全体を含めた教育のあり方、人権教育と法教育がリンクするような、そういうものを工夫することを、ぜひ大阪府から発信してほしい。
    次に、今まで日本の地方自治法は、司法というのは国の事務だと言って掲げたので、司法のことは自治とは何の関係もないと自治体の職員も皆そう思ってきたが、地方裁判所でも地方の人が裁判員になるなど、司法というのは自治体の自治の問題、自治の一環である。司法改革の中で、総合法律支援センターを作って自治体と司法とを結びつけようとする動きがあるが、自治体が支えて一緒にやろうということにならないと、なかなか成長することはできないと思う。人権問題も最後まで行ったら司法であるから、何でも行政が抱え込んで守ってやるんじゃなくて、闘おうという人が闘える体制や支援する枠組みをつくるということも司法と相談のリンクとして考え、大阪府から発信してほしい。実効的な救済がなされるという仕組みをつくらないといけない。

  ● 法制度の問題は人権教育の中において大変重要な課題だというふうに認識している。人権の問題の当事者性については、自分自身が法を守らなければならないとともに、法に守られているんだという法というものに対する当事者意識を持たせるため、小中学校でも参加・体験型の学習を行っている。
   また、「2分の1成人式」という取り組みや地域の老人ホームなどにおける介護の実習など、いろいろな体験を重ねることによって、人権意識を培っていくという教育が大切と認識している。この人権基礎教育指導事例集も、内容的には参加・体験型の学習がほとんどであり、そういう視点で今後も取り組んでいきたい。

  ● 人権相談と司法との関係ですが、市町村で行っている人権相談のうち、カウンセリングや専門相談機関の紹介により、約半分強が解決に導かれた。しかし、あとの半分は解決に至っておらず、最終的には、司法の場でないと実効性ある解決には至らないということは承知している。そのため、大阪府の人権協会の中で日を決め、法律相談を受けてもらえるサービスを提供している。
    また、弁護士会で設けている人権救済制度とも連携するなど、現行の制度の中において、司法との連携をできるだけしていきたいと思っているが、やはり今後はご指摘のような、もう少し次元の高い、司法と自治体のあり方とかも含め、勉強したい。

  ○ 人権問題に関する府民意識調査について、これだけ時代が動いて教育の中身も変わっており、人の意識も変わっているときに、前回調査のフォローをする調査ということを余り考えなくてもいいのではないか。時代に即したものに変えていいのではないか。
    また、人権に関する施設のリバティ大阪、ピースおおさか、ヒューライツ大阪に行ったことがあるかどうかについての質問は、大阪府や大阪市の投資したものが、どう生かされているかというような調査の中でやるべきことである。何がよかったかと問うならまだわかるが、認知度だけきくのはいかがか。
    大阪府内の学校は、子どもたちの人権に関する詩や、作文の教育に熱心に取り組んでおり、自分の体験や感じたこと、日常生活中から情感を育てるようないい教育がなされているので、調査の中に、今大切にしなければならない心の問題や、人権教育に生かしていくもののヒントを得られる項目を入れてはどうか。

  ● この調査は、4名の調査検討会で質問項目を検討していただき実施した。過去5年ごとに何回か実施しており、これまでは同和問題を中心に特別対策の間の調査であった。今回が特別対策が終わって初めての意識調査ということになる。
    府民の意識と現状を把握して、今後の教育啓発のあり方を検討するということで実施したので、比較というところが出てくることになるが、今先生からお伺いしたご意見については、検討委員会の先生方にもお伝えする。

  ○ こういう調査は、何を読み取って、どう施策に結びつけるかということが問題である。パーセントが高くても緊急、重要なものなど、個々の項目について緊急性も違うと思うので、そういうことも考慮に入れてまとめる最終報告に期待したいと思う。
    次に、人権施策の状況に戻るが、社会の各セクターで人権教育を進めていく場合に、指導者が非常に大事であり、大変不足していると思う。指導者の養成にもっと力を入れる必要があると思う。
    また、一見人権については専門家であると見られるような裁判官、検察官、弁護士などの法曹の方にも、国際人権基準等について再教育する必要があるのではないか。『法曹関係者に対する人権マニュアル』(ヒューライツ大阪で翻訳中)というものを国連でも出しているように、検察官あるいは警察官等に対する教育が特に重要である。

  ○ 指導者の養成の問題は、相談員の心のケアの問題ともかかわっている。相談する方が自信を持っていなければ相談にはこたえられないし、広い教養と判断力を持ってないと、本当の人権相談というのは難しいということで、相談員の方の心のケアの問題が提起されている。相談員のレベルアップの問題と、人権教育における指導者のレベルアップの問題について、今後具体的にどうするかということを、お考えがあればお願いしたい。

  ● 人権相談の相談員のレベルアップの問題について、具体的な学習内容や求める資質という点については、今後、いわゆる講義形式ではなく実践的な教育、ケーススタディー方式を多用した形などを考えている。項目、科目、時間配分などは今後検討させていただきたいと思っている。

  ● いわゆる人権救済、相談救済となると、最終的には司法の分野になるが、そこへ至るまでの行政にできることとして、本府としても救済のための条例について検討してきたが、国の人権擁護法案の動き等もあり、条例化は今のところストップしている。従って、最終の司法へ至るまでに、行政として、闘いたい人が闘えるような制度を作るという形で支援していくために、まず現在の人権相談員のレベルアップを考えている。座学だけではなく実践も踏まえた形で、学識経験者のご意見等もいただきながら、至急に考えていきたい。

  ○ 報告書について率直な感想として、予算を使って多様な人権施策を実施していることはわかるが、事業の成果を評価する部分というのがどこにもない。報告書の最初のほうの「人権問題の現状と課題」という項目に課題別の総論的な記述があるが、事業を実施した成果に係る評価や個々の問題について、具体的な記述が見当たらない。人権相談などで扱われた問題などをここに記述することにより、今府民が抱えている最も喫緊の人権課題がよくわかり、それに対する対策も考えることができ、次年度の事業内容や研修内容などに反映させていくことができると思う。大阪府の人権室には、そういうコーディネート機能も果たしていただきたい。
    一例を挙げると、個人情報保護法が施行されて、府民の意識が非常に高まったという面と新たな人権問題が生じている面がある。相談窓口における個人情報にかかわるような具体的な相談事例がここに紹介されていれば、もっと大阪の人権施策をめぐる具体的な状況というのがよくわかると思う。
    私もこの審議会に、基本方針を作成するときからもう丸5年かかわっている。丸5年こういう多様な人権施策を実施してきたのであるから、その成果をきっちり再評価し直して、新たな年度の事業内容に反映させていくべき時期に来ていると思う。

  ● 報告書のまとめ方について、前半部分で、できるだけ具体的な事例や変更点を充実して入れるよう検討したい。相談事例等については、別途報告書があり、ここにすべて書き切れないが、今後検討をしていきたい。

  ○ 人権相談と広報について提案したい。私の知り合いに、去年自分は性的マイノリティのレズビアンであることをカミングアウトした人がいて、自分が不便に思ってることとして、住宅供給公社の入居の資格としては血縁か婚姻関係がないと一緒に住めないが、府議会で別の制度を提案し、実際に今、その緩和が進んでいるという記事を見た。また、その人がカミングアウトしたことで、今までだれにも相談できなかった同じような立場の人から、たくさんメールの相談が来るらしい。これは人権相談のうまくいった例ではないかと思う。
    一つの提案だが、実際に性的マイノリティ、同和地区で生まれ育った人、障害者、ホームレス、在日外国人、HIVにかかった方とか、そういう人の代表が集まって、お互いに実際に困っていることを生の声で言う会をつくって、年に1回でも広報番組という形でテレビ番組にしてはどうか。先ほどの意識調査でも、テレビ、ラジオで見て人権のことを取り扱っているのを知ったというのが一番多いことから、テレビ番組にして、見ている府民の方がメールで意見を出したり参加できるようにする、また、実際にその出ている方々に直接メールなどで相談できる窓口をつくるのはどうか。広報誌の配布や人権講演会よりも効果的であると思う。

  ● HIV、性的マイノリティなど専門の相談に乗っていただけるNPOがあり、人権相談機関ネットワークに加盟している機関には、年2回ぐらいネットワーク連絡会ということで、各相談機関の相談員さんに研修も兼ねて集まっていただいている。そういう場でマイノリティの問題とかHIVの問題とかを取り上げるということは、十分検討したいと思う。
  専門相談機関の窓口、電話番号、メールアドレスなども府のホームページで見ていただけるようになっている。今後一層PRに努めたいと思う。
  ○ 私は子どもの権利に関することで取り組んでおり、学校の先生や児童福祉施設の現場の先生方に対する子どもの権利擁護についての研修に講師として行くことがある。その中で「子どもの権利とは」ということをお話すると、どこまでが体罰か、どこからが権利を侵害したということになるか、ということが一番の関心事である。実際に現場にいると、悩まれる部分が多いようだが、そこに話が集中してしまい、本当の人権とは何であるのかというのがなかなか伝わりにくいという現状もある。また、権利を主張する以上は、責任を果たさなければならない、やるべきことをやってないから、権利を主張してはいけないのではないかという、制約つきの人権みたいな考え方を思っておられることもよくある。人権教育をやっていく上では、かなりきちんといろいろなことを伝えていかなければならないという厳しさを感じている。

  ○ この資料を拝見していて、人権教育のテーマとして、当面する大きな課題に集中することもあるのか、本当に基礎的なものとのバランスをどのように調整しているのか。また、分野別の研修において、それぞれの分野で起こる人権問題だけを中心にしているのか、あるいは同和問題なども入れているのかという、分野別のバランスの問題については、どのように調整しているのか。

  ● 人権研修の場合、人権の基本的な部分については当然実施した上で、ときどきの新しい課題などをプラスしていくというのが基本だと考えている。それぞれの分野や現場においても、基本的なことをわかった上で、分野別での内容で研修するという方法が基本であると考えている。

  ○ 今日出た意見を十分に事務局のほうでご検討をいただきたい。実施状況の報告の仕方を根本的に検討し、成果と課題をはっきり分析して書くようにしていただきたい。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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