第23回審議会

更新日:2023年3月8日

第23回大阪府人権施策推進審議会

(と き) 平成21年12月14日 月曜日 午後1時30分から3時45分 

(ところ) プリムローズ大阪 2階 鳳凰東 

(出席者) 上田委員、加地委員、神原委員、倉田委員、中井委員
       
西村委員、萩尾委員、畑委員、平沢委員 

(議事概要)
1 開会
  ・大阪府府民文化部長挨拶
  ・委員紹介

 2 議事
(1)会長の選任及び会長代理の指名について
  ・会長に上田委員、会長代理に西村委員が選出された。

(2)大阪府人権施策の状況について
 事務局から、大阪府人権施策の状況について説明、報告を行った。
  ・「大阪府人権尊重の社会づくり条例を具体化するための10年間の歩み」について
  ・大阪府人権施策の状況(平成21年度版)について

(3) その他
  ・意見交換
  (
○:委員 ●:事務局及び大阪府関係課) 

○A:大阪府は「人権教育のための国連10年」を受けて、世界で一番早く行動計画を作り、府の取組みが全国のモデルになるような人権の先進地であったが、近年はそういった先進性が少し薄れてきて、コーディネイトの視点に移行するなど小さくまとまってきているように思う。
 また、「人権教育・啓発に関する基本計画」では、人権教育・啓発の手法には人権一般の普遍的な視点からのアプローチと、具体的な人権課題に即した個別的な視点からのアプローチがあり、この両者があいまって人権尊重についての理解が深まっていくと謳われているが、府の人権施策全体の枠組みの中では、普遍的アプローチにあたる部分が弱いのではないか。個別的な視点からのアプローチについても、新たに発生している貧困家庭、一人親家庭等の課題に関する記載が「人権施策の状況」になく、人権施策の枠組みが現実の課題に追いついていないのではないか。
ヨーロッパでは、グローバル化する時代においてよりよい社会づくりに主体的に参画していくことのできる、自立した市民を育成していくための市民性教育が推進されている。府においても、10年先にどのような人権意識をもった府民像を想定するのか、人権室が人権施策のグランドデザインを描く必要があるのではないか。
 今、人権教育関係者の間でも、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の形成」という教育基本法の目的にかなうような人間を育てるために、道徳教育と人権教育の対話が必要だという議論がある。
こういう時代だからこそ、府には、人権の普遍的アプローチの視点、新たに発生している人権課題を含めた人権施策の枠組みや、10年後を展望した府民力を育てる視点で施策を打ち出してほしい。具体的には、府と民(NPOや企業等)が協働して人権尊重のまちづくりを行うような取組みが望まれるのではないか。

● :現在は具体的な取り組みに施策の重点を置いているが、府の先進的な姿勢を保ちながら、今後は普遍的アプローチに関する取組みにも努力していきたい。

○B:財政が厳しい中、努力していることは理解できるが、施策が羅列的で重点がない。この10年の振返りを機に何が重要かを見極め、今後の年次計画を立てる必要がある。

○C:枠組みのないまま世界的にグローバル化が進み、格差が広がると、例えば非正規社員のような弱い立場の人たちが人権を侵害される。このような問題に対して、企業はどのような労使関係を作るべきかを考えなければならない。
また、自己主張のあらわれとしてフリーターを選択していた人が、現在の厳しい雇用情勢の下で困っている現実がある。権利を主張する教育だけでなく、道徳教育もきちんとやっていかないと世の中が非常に刹那的になる。人権の問題についても、根底を押さえることが必要であり、現象だけに対応していてはいけない。

○D:ヨーロッパでは、国家政策として差別や貧困等の社会的排除を解決していく取組みが進んでいるが、日本では放置されており、今後、社会的排除に対して政策的にどのように取り組むかが、人権行政のマクロ的な視点となる。
 子どもの人権については、1994年に日本は子どもの権利条例に批准しているが、国も地方自治体も、子どもを権利の主体として具体的施策につなげていない。「人権施策の状況」にも、子どもの権利条約の記載がない。子どもを人権の主体として明確に位置づけ、具体的な施策につなげていかなければ、次の世代が人権を尊重する主体として育たないのではないか。また、子供たちが虐待等の被害者だけでなく、暴力等により人権侵害の加害者にならないための取組みも今後の課題である。
 それと同時に、実際に人権施策を行っていく地域において、行政が住民の活動を後押しする取組み、例えば、地域での人権まちづくりや、ネットワークづくり等の取組みがまだ足りないのではないか。
 また、「人権施策の状況」では、学校教育と連携した人権施策の取組みについて触れられていないが、子どもの人権を尊重するためには、学校・地域・家庭が連携した上で、子ども達が自分の権利を自分でどう守っていくかという視点で大人とかかわっていく必要があるのではないか。

● :道徳教育については、府教育委員会でも幼少期からの取り組みが重要であると認識しており、「人権基礎教育事例集」を府内市町村及び公立幼稚園に周知し、毎年実施状況を調査している。また、「大阪の教育力」向上プランに基づいて人権教育プログラムを策定し、個別的、普遍的、両方のアプローチから教員用、児童用の教材をつくることとしている。
次に、学校教育と連携した人権施策の取組みについては、学校・地域・保護者が連携して進める事業を実施しており、また、管理職対象の参考資料として、学校の人権教育自己診断シートを作成し、学校・保護者・地域間の連携に努めることを示している。

● :子どもの権利について、府では「大阪府子ども条例」、それに基づく「次世代育成支援行動計画」を策定している。現在「次世代育成支援行動計画後期行動計画」を策定中であり、子どもが権利の主体であるという視点を十分に踏まえて策定していく。

○D:日本の子ども達は「子どもの権利条約」について学ぶ機会がない。府の子ども達は「子ども条例」について学ぶ機会はあるのか。まず、子ども達自身が権利の主体であるということをきちんと伝えた上で、具体的な施策に関して子ども達の意見を十分聞いて、施策に生かしてほしい。

● :子どもが人権の主体であることについては、「ゆまにてなにわ」やその他啓発冊子等に記載し、府民の皆様にお伝えしている。

○B:子ども条例を学校で子ども自身が学んでいるかについてはどうか。

● :府教育委員会では、小中学校、府立学校の教職員と連携して共同研究を実施している。子どもの権利は研究テーマの一つで、現在、実践的な取組事例等を集めているところであり、これらの研究資料はHPに掲載して広く活用していただく予定である。また、府立学校では、社会に出て行く際に必要な権利、義務を身につける取り組みも行っている。児童生徒のエンパワメントは重要であると認識しており、今後も取り組みを続けていく。

○A:今のやりとりについてだが、「ゆまにてなにわ」には子どもが人権の主体であることについての記載があるが、「人権施策の状況」にはそのような視点が見られない。しかし、「人権施策の状況」は、人権室の基本的な考えを最も代表して表現する文書であり、本来はその考えが「ゆまにてなにわ」や他の冊子、計画等に反映されるべきである。庁内でどれだけ意見交換がされているのか、整合性をはかる必要があるように思う。

○E:人権施策を川の流れに例えると、この10年は人権相談窓口の設置や人権擁護士制度の創設など、川下の方の人権問題の結果への対応が主だったが、次は川上の動機の方に踏み込んでいかなくてはならない。そのためには学校で人権基礎教育(道徳教育)をどう行っていくか。予算削減の中で薄く広く施策を実施しているが、何年間かは予算を傾斜配分して、人権基礎教育に重点を置いて施策を行ってみてはどうか。その場合、一番効果のある方法は小学校4年生、中学校1年生の4月に1ヶ月間合宿を行うことだと考える。

○B:人権基礎教育という言葉を使ったのは、全国で大阪が初めて。実際にどのような内容の教育をしているのか、現場で使用している教材を審議会で配布してほしい。
また、グローバル化の中で貧困等の問題が発生し、企業のモラルが問われている。人の人たる道、アジアのモラルである人道と、ヒューマンライツの訳語である人権は同じものだが、人権と言うと、皆身構える。ヨーロッパ流のヒューマンライツという概念をアジアに定着させるためには、例えば人権擁護士のようなユニークな取組みが必要である。個性ある地域性、大阪府らしい人権教育の展開をやってほしい。

○C:日本的な人権思想があってもよい。神が宿っている自然を深く敬うという、日本古来の精神を原点として、人権思想を広めていくほうがよい。

○F:10年間の取組みを見ると、大阪府はよくやっていると思うが、第三者による評価がなされていない。例えば、「人権意識の高揚を図るための施策」に関する現在の課題として、「各種啓発事業等が実施されているが、重複や効果的でないもの、非効率的なケースが見受けられる」という指摘がある。こういった点を第三者評価により、さらに具体的に指摘する必要があるのではないか。この審議会で第三者評価をしているという見方もできるが、年に1回しか開かれないので、審議会の下にワーキンググループをつくる等の形で施策の具体的な中身について第三者による評価を行い、それを踏まえて重点施策を検討し、次の10年間の実施計画を作っていくような仕組みが必要である。

○G:市町村の立場からすると、川上の動機の方も川下の現実的な対応も両方必要である。戸籍の本人通知制度や、インターネット上の人権侵害に対する削除依頼等、現実的な対応について、大阪府はよくやっているという印象を持っており、市町村も一緒に頑張っていきたい。露骨な差別表現は表面的には減っているが、その分根深く潜ってきているという現実の中で、少しでもそれを解消していかなければならない。こうした状況の下で、国が一体どこまで本気の決意と覚悟をもってこのような動きをバックアップしてくれるのか、ということが非常に気がかりである。府や市町村の動きに比べて、国の動きが鈍く拡散しているという印象があるが、府・市町村で国に対して物を言っていくことが必要である。また、この審議会の先生方にも機会を捉えて国に対する働きかけをお願いできればと思う。

○B:国もかつては人権について非常に熱心に問題に取り組んできたが、最近は不十分。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第1条では、国及び地方公共団体の責務が謳われており、国は法的には決して責任を放棄できない。民主党政権となり今後どのように展開していくかわからないが、人権についても、やはり国に要望すべきだと思う。大阪府はこれまで先進的な施策で常に全国をリードしてきた。その蓄積を前提に今後、重点をどこに置くか。施策の成果は第三者の評価がないと説得力がない。何らかの機会に10年間の歩みについての第三者の意見を聞いて、行政に反映されるということも大事ではないか。

○H:インターネットの進出で活字メディアは大変な曲がり角に来ている。新聞とネットのかかわりを見ると、例えば、在日の外国人の方々の権利を擁護するような記事や障がい者問題などの署名記事を書くと、その記者を名ざししてネットが炎上するというようなことが起こる。顔写真や住所、家族関係等がネット上で公開され、仕事がしづらくなっている人が出てきているのが、最近の顕著な傾向である。こういった状況を考えると、インターネット上のサイバー空間が身の周りにあるということを理解した上で、その中を生き抜いていけるだけの力を子供たちにつけていく教育が、今後、必要ではないか。差別的な事象に個別的に対応するだけでは解決しない状況であり、川上の動機の部分、人とともに生きる力や人の痛みを思う想像力をつけていかないと、ネット上のいじめや差別はなくならない。
   また、人権と同様に、文化に関わるインフラも、財政難により低調になっている。行政にとって文化は添え物と思われがちだが、例えば、スラムにあるコミュニティーが文化芸術活動によって活性化した事例等がたくさん報告されている。人権と文化は違うと縦割りに決めるのではなく、人権を育んでいくときに、文化が果たす大きな役割という観点から両方をつなぎ合わせるような取り組み、例えば養成後のファシリテーターの方が地域で展開される事業の中にアートや文化の視点を入れるということを検討してみてはどうか。そういう形で人権と文化を一体化させて、もう一度盛り上げることができるのではないか。

○B:1994年に国連総会が国連の人権教育10年を決議した時、初めてカルチャー・オブ・ヒューマンライツという言葉が使われた。日本では人権文化と訳しているが、定義はされていない。人権文化という観点では、大阪府は若干弱いかもしれない。

○I:ASEANに人権委員会が設置されて、アジアの地域性や文化を加味した人権条約づくりが進んでいる。その一方、人権擁護の観点では、ある程度世界共通の規範で人権保障は図られていくべきである。民主党が、個人が国際機関に対して直接に人権侵害の救済を求める個人通報制度を定めている関係条約(国際人権規約B規約)の選択議定書に批准することを公約に掲げていた。実現すると、最高裁で負けても国連の場で救済を求めることが可能となり、国連の規範に照らして、最高裁の決定が適切か否か判断され、それが日本の法制度に影響を与えていくことになる。民主党政権となった今、国に働きかけることも重要だが、批准されることを念頭に、地域レベルでしなければならないこと、例えば人権規約とは何か、国際的規範に照らして一人ひとりがどのような権利を持っているのかを、子どもにも大人にも、もっと伝えていくこと等に、国に先んじて取り組んでいくいいチャンスだと思う。

○B:委員の皆様、大変貴重なご意見ありがとうございました。事務局は先生方のご意見を今後の施策に是非生かすようご尽力ください。

● :ありがとうございました。いただいたご意見を府政に生かし、府民の心に届くような仕事を進めてまいります。

 

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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