第17回審議会

更新日:2023年5月11日

第17回大阪府人権施策推進審議会


(とき) 平成16年2月3日火曜日
午後1時30分から午後2時50分


(ところ) プリムローズ大阪 3階 高砂

(出席者) 大國委員、加地委員、川島委員、内藤委員、西村委員、萩尾委員、馬場委員、平沢委員、福田委員

(議事概要)

1 開会

・ 大阪府企画調整部人権室長挨拶

・ 委員紹介

2 議事

・ 人権施策の実施状況等について

事務局より大阪府の人権施策の実施状況について、人権相談事例の分析、報告等について、それぞれ説明を行った。

3 意見交換

  ○ 事務局から、人権意識の高揚を図るための施策と人権擁護に資する施策について、非常に具体的な事例を紹介いただいた。
それぞれ大阪らしい、いい取り組みがされていると思う。
しかし、府がリーダーシップをとって人権施策を推進するというのは一体どういうことなのかということを考えたときに、
もちろんこの2つの柱で具体的な事業を進めることは必要であるが、「総合行政として人権行政を行う」「全庁的に取り組む」ということは、
どういうことなのかが、もうひとつはっきりしない。
これが、府内の市町村の具体的な取り組みにかかわって担当者等と意見交換を重ねる中から見えてきたことだ。
例えば、職員に対して人権意識を高めるために研修をするというのは、もちろん大事であるが、人権というものをどういう概念で捉えればいいのか、それぞれの部署において府民や市民にサービスを提供したり施策を実施する中で、人権行政の視点でその施策に取り組む、
あるいは計画するということは一体どういうことなのか、そこを明らかにすることが実はとても大事ではないかと思う。つまり、人権に直接関係しなくても、福祉、環境、土木、税務など、それぞれの職務の中で、人権文化の視点に立って施策やサービスを提供するということはどういうことか、ということについて認識を高めるということが、ひいては人権行政を本当に全庁的で中身のあるものにしていくのではないかと考えている。そうなれば、府の行政の各機関やそれぞれの部署での取り組みを人権行政という視点から職員自身が分析して、その到達点を確認する、あるいは府が府内の市町村に対し、こんなかたちで取り組むということが人権行政を進めるということなんだというモデルを提示することができると思う。
こういうことが今まで議論の中でも余りなされてこなかった。人権教育、啓発、擁護というものは見えやすいが、その根底には人権行政をどう進めるかという観点が必要であるような気がする。
 また、例えば府の職員に対して参加型の研修をするということは非常にいいことであるが、そこで政策評価の視点について、あるいは政策を実施し分析していく場合にどういう観点で行えばいいのかを考えたり、NPOや市民との協働という発想をもつことが今、実はとても必要ではないかと痛感している。こういう観点から見て、この間の取り組みをどう評価できるのか、
人権施策の基本方針が打ち立てられる前と後で一体何が変化したのかということを後づける作業が大事ではないかと思う。


  ● まず、人権文化の視点でサービスを提供するという行政をどう進めていくのかということについて、
例えば職員研修を進めていく上でも、非常に課題になっていると考えている。これまでは、人権侵害をしない、
差別をしないということを中心にして職員研修を実施してきた。しかし、現在策定を進めている人権教育に係る新しい計画の中でも検討しているが、それぞれの施策の中にどう人権の視点を盛り込んでいくのかという観点に立つ、見かけはあまり人権とは関係なさそうな業務についても、実は深く人権とかかわっているということを十分に職員に理解させることが必要であると考えている。例えば道路行政などでも、道路をつくるということは単に技術的なことだけではなく、基本的に国民、府民の通行権の保障、サービスの提供を行っているわけであり、総じて言えば、私たちの仕事は、基本的人権を守って、それを実現していくものであるという意識を職員に持たせていくための研修が必要だと考えている。
 また、市町村との関係においては、府内市町村と大阪府により構成する大阪人権行政推進協議会において、効果的な人権行政を推進していくために意見交換や研修等を行っている。また、研究会も設置しており、人権行政のあり方について、きめ細かく研究を進めている。
これは、大阪府が高所から市町村に対して何かを提示をするというかたちのものではなく、お互いが連携・協力して進めているものであり、
御指摘の人権行政の進め方のモデル等については、こうした研究等を充実させていく中で、今後検討していきたいと考えている。 
また、政策評価の視点や分析の観点についても、行政の実施する事業においては、府も市町村も当然、取り入れなければならないものと考えている。
また、NPOとどのように協働していくのかということについても、これからの重要な柱であると思う。
大阪府では、昨年初めて憲法週間記念行事を財団法人大阪府人権協会に委託した。さまざまなNPOに集まってもらい、
それぞれのまちづくりの中でのNPOの活動を紹介しながら、意見交換や情報提供を行うイベントを行った。
今後も、NPOとの間で何ができるのかということを考えていきたい。

  ○ 今、府内の自治体の動向を見ると、一面では財政危機に対応するために民間に委託するという観点からNPOと協働する動きがあるように思える。
しかし、ただコストを下げる目的で協働をとなえるのではなく、むしろ民間に委託することで、よりサービスの質を高められる可能性があるという視点から人権行政の推進を考えたときに、人権にかかわるNPOや府民の草の根の取り組みがもっているパワーに着目する必要がある。
NPO等に協働を求めたり、事業を委託することで、NPO自身の主体的力量を高めるという話があったが、ただサービスの担い手とみなす
発想ではなく、主体的力量を高めて、多くの協働のパートナーを育てるというような発想で取り組むことが、とても大事だと思っている。


  ● NPOと行政との関係については、これまでも、例えば行財政計画の見直しの中で、NPOに担ってもらう事業の打ち出しを進めるなどしている。
ただ、気をつけなければならないのは、御指摘のとおり、単にNPOを行政の下請けとして考えるのではなく、行政側もなぜNPOと協働するのかをよく考え、そのNPOの持っているノウハウや実力、能力を十分評価し、任せられるところはきちっと任せるという方向で進めていかなければならない。
まず最初に必要なのは、NPOの行政に対する不信感を払拭していく中で、お互いパートナーとして協働できる環境をつくっていくということだろうと考えている。


  ○ 非常に多くの相談があり、多数の府民が人権侵害で悩んでいるということが明らかになったということと、その一方では、相談できない人たちも相当数いるという認識で受けとめなければならないと思う。
人権相談及び人権侵害事例分析報告書の提言に「事例分析手法の確立」という項目があったが、この資料では、生の事例について、主訴、経過、対応、課題・問題点とファイルしてあり、状況が把握しやすいデータになっている。
このデータをジャンルごとに見ていったときに、例えば、一体なぜこういうことが問題となったのか、なぜこれを当事者は問題だと気づいたのか、という分析や、こうしたデータから、従来、それぞれの人権課題やカテゴリーごとに、こういう現状にあると認識していたが、相談事例をつぶさに見ていくと、今まで見えていなかったこんなことが実はあったのだ、ということに気づけたという、そういう分析が必要ではないかと思う。
         それと同時に、この報告書には課題・問題、対応が挙げられているが、どういう事例に、どんな対応が効果を上げるのかというような
切り口で、この事例ファイルを分析していくと、そこから読み取れるだけでも、かなりのデータがあるような気がする。
ここで提示されているデータは数字的にどうなっているかということはよくわかるが、その数字から何を読み取って、そこから何を次につなぐかということをまとめる作業が実は大事で、そこからもう1度具体的な相談のあり方を工夫するという形で返して、それが効果を上げたかどうかをもう1度検証するというサイクルが必要ではないかと思う。


  ● そうした問題意識は全く同様であり、この分析法は今年は初年度ということもあって足りない点等々ある。さまざまな生のデータがあるので、今後は毎年積み重なっていくそうしたデータをいかに分析し、どのように施策の展開に生かしていくかということについて、さらに検討を深めるとともに、いろいろな方々の意見も聴取しながら進めてまいりたい。


  ○ この事業実施計画並びに実施状況、人権相談及び人権侵害事例報告書等を見たが、膨大なエネルギーと時間をかけて作成していると思う。
しかし、率直に言うと、こういうやり方では、まず効果はないだろうと思う。というのは、例えば川の流れに例えると、川上に大阪府庁がある、
川下に実際の当事者がいて、上から流れてくるものをただそのまま実施しているだけである。職員に研修をし、教員に研修をし、と順番に行っていけば全体に及ぶであろうという考え方で実施しているようだが、理屈の上ではそうでも、実際にはそこまで届かないと思う。
これは対症療法であって根本療法ではない。こういう膨大なお金をかけてするのなら、どうして最初から子どもなら子どもに焦点を絞って取り組まないのかと思う。
現在も確かにいろいろ問題はあり、今も対応していく必要はある。その一方、こういう対症療法のほかに、問題、例えば、いじめが起こってくることへの根本的な治療方法はないかと考えて取り組むべきである。例えば、中学1年生に、入学後、大阪府が支援して1カ月間合宿生活をさせる。1カ月間の合宿生活をしたら、子どもたちの共同生活の中で、さまざまな問題を子どもたち同士で考えて行動し、身につけて、そこでさまざまなコミュニケーションが生まれてくる。いじめなどは、必ずなくなる。もし必要な教員が足りなければ、学生諸君に参加させて、
そのうちの1、2週間を教員免許をとるための実習として充ててもよいであろうし、幾らでも補助態勢はとれると思う。こういう取り組みを10年やれば、子どもたちへの根本的な人権基礎教育ができると思う。そして、その子どもたちが二十歳になって社会に出たときには、これまでとは違うはずである。
もちろん、現在もやらなければいけないことはあるが、実施したことの分析をせずに、毎年同じようなことを実施するのであれば、単なる継続である。
政策が必要であり、政策として実施する内容を担当者から突き上げて、こうした取り組みの提案をすればいいのではないか。
そういう思い切ったことをやらなければ、効果は上がらない。


  ● 非常に厳しいお言葉をいただいた。人権施策を実施するについて、何を重点にして、根本的にどう見据えて、将来的にどのように変えていこうという視点を持っているのか、という御指摘だと思う。遅々として進まない部分については、皆様方にはお叱りを受けるかもしれないが、人権基礎教育も、子どものうちにしっかりと教育していくという観点からすれば、将来に向けて役に立つ施策であると思っている。今すぐに、
さまざまな面での施策を大展開するというのは難しいと思うが、御指摘のあったような取り組みも、今後幅広く考えていきたい。

  ○ こういう調査や取り組みが必要ではないというのではなく、きちっとやる必要はあるが、こうすべきだ、というだけで終わったのでは、何もならない。
これは経済界でも同じであり、大阪の再生、経済再生をどうするかを今まで議論して、何度も調査し、こうすべきだ、ああすべきだという意見が出ている。
しかし、どれだけ議論しても、ある程度限界がある。問題は、そこから何を実行していくかということ、そして実行した上で出てきた課題についてどうするのか、というところを議論していかないと、結局は議論ばっかりで終わってしまう。まさに今、経済界はそういうところに来ていて、
もう議論はいい、問題は分かっているというところまできている。調査をすればするほど厳密な結果は出てくるが、それよりも実行することのほうに精力を使うほうが有効ではないのかと今は実行することに関心が集まってる。したがって、こうした調査についても、多分、結果については大体の推測はできているのではないかと思う。調査をするのは結構だが、調査の結果として、ではどうしたらいいかというところに議論を展開していくほうが有効である。金も人も制約がある状況の中で、少しでも効果を上げるということを考えるのであれば、できるだけ現実問題として取り上げていったほうが効果的である。


  ● 人権相談に関しては、報告書をもとに、現在、府内で、どういう状況であるか、どういう事件が起こってるかということを把握できる。
問題は、先ほどからの御指摘のとおり、今後このデータをもとに、どういう施策を展開していくかということだろうと思う。
240の人権相談機関をネットワーク化してあるので、本日御報告したようなデータをもとにして、府内全体で、人権侵害に対して適切な対応をできるようなシステムづくりに取り組んでまいりたい。


  ○ DV、児童虐待など、非常に緊急性を要するケース、救済に専門性を要するケースが非常に増えてきていると思う。
今回の岸和田市での児童虐待事件については、私自身が子ども家庭センターの岸和田の担当で相談を受けているので、非常に衝撃を受けている。
実際この報告書の中にも相談員の専門性の確立や専門相談機関、NPOなど、さまざまな機関との連携、協力を通じて情報や解決について手法の教育を進めていく必要があると書いてあるが、具体的にどうしていくのか。特に専門性を要するところで、ひとつ誤れば人の命が失われるという人権侵害の最たるものが発生するわけであるから、これから分析をしてという悠長なことではなくて、特に大阪府内でああいう大きな事件が起こってるわけであるから、緊急の対応をしていただかなければいけない。
どういう部分で対応が足りなかったのかという具体的な事例を分析した上で、府の機関として何が足りないのかというところを早急に検討してほしいと思っている。


  ● 後ほど児童家庭室から答弁があると思うが、報告書の『〔3〕緊急時への対応』というところで、「DVや児童虐待に多く見られるように、
人権侵害を受けた当事者に対しては、その保護を十分なものにするため、初期対応が重要なケースが多く、そのためには、緊急時に入所を含めた迅速な対応が必要である。この場合には、事案に応じて、迅速かつ的確に対応することができるよう、幅広くかつきめ細かな関係機関相互の連携を図るとともに、既存施設や制度の効果的な活用が求められる」とあり、問題は、これが具体的に実践されていないことである
認識している。岸和田の事件等々を踏まえると、早急にこうした事件にどのような対応がとれるのかということを詰めていくべきだと考えている。


  ● 今回の事件については、相談内容からは、虐待であるという認識が子ども家庭センターに十分になかったように認識している。今回の事例については、学校との連携、年齢の高い子どもたちに対しての虐待へのアプローチ、虐待以外の非行や不登校についての相談に隠れている虐待の芽についての敏感な対応が必要であったと思うので、対応に何が足りなかったのかというようなことについても、早急に検討し、二度とこうしたことが起こらないような対策を考えていきたい。


  ○ 今回の児童虐待の取材の中で、専門性を生かしたチームからの調査報告があるなど、かなりの緊張感があった。
しかし、今回の事件への対応だけを責めるというのではなく、今のシステムの何が問題なのかを考えるべきであると思う。警察などで取材をしていると、通報があったからと現場に行ったら、実はほとんどそういう事実がなかったというような報告もある。それぞれの地域には、
専門性を持った熱心な方々がいるのに、そうした方々の知識や経験がうまく生かされていない。やはりどこかが指導性を持って、
そこと積極的な対応をしていかないと難しいと思う。特に子どものsosであるが、困ったときに入りなさいという旗が門口に立っている
「子ども110番」という制度には大変感動していたが、実際は、旗が立っている家に鍵がかかっていたり、順番に旗が回ってきたから置いてあるというような場合もあると聞く。留守がちな方にお願いすることは無理なことであり、子どもが駆け込んで行っても戸も開かなかったらと考えると心が痛む。やはり今回の岸和田の事件も同じで、対応だけを責めるというのではなく、かたちだけが整えられても、本当に機能しているのかどうかを見極め、総点検することが大切である。
例えば、現実的に、ここの地域はこの方法では無理だと思ったら違う方法で取り組むなどしない限り、機能していかない。特に取材で回っていると、虐待にあった子どもを預かる施設も多くあるし、国が取り組んだ専門里親制度もかなり進んでいるが、実際にはまだなかなか機能していない。
全国一律のシステムでない方法、例えば大阪では、保健士が活動していた地域の状況報告をよく聞いていたので、そういう職能を持った人たちの力も借りて取り組んでいくことを、ぜひ要望したい。


  ● 総合的に人権を調整する立場からみて、特に子どもに限って言うと、
さまざまな関係機関が連携するセーフティーネット的なものは基本的には充実してきていると思っている。
ただ現実には、そのセーフティーネットを使う現場の職員自身がきちっとそれに気付くだけの力を持っていくことが必要だろうと考えている。
今回の岸和田の事件後、すぐにできることは、セーフティーネットを見直して、まず少なくともシステム上、こういうことが起こらないようにする作業だと思う。
しかし今後、時間はかかるかもしれないが、職員自身もそうした気付きをできる感性を持てるようにしないと、こういう事件を根治することは難しいと思うので、やはり総合的に考えていく必要がある。


  ○ 人権施策や人権救済というのは、教育するにしてもペーパーの上だけでやっていたらなかなか進まないだろうと思う。
実際に何ができるのかを考えていかないといけない。先ほどのネットワークの関係でいくと、児童虐待に限らず、DV、高齢者虐待、差別問題にしてもすべてだと思うが、実際の例として、児童虐待に対応するネットワークは大阪府でほぼ100%近くできているが、ネットワークの中で、ただ啓発活動、教育だけをやっている自治体と、事務局を置いて、実際のケースに当たっている自治体とがある。
実際に自治体のケースを拾って扱っていこうとしているネットワークのあるところでは、子ども家庭センターに上がってくる重篤なケースの数は減ってきている。
市で拾って、地域の方が対応することで解決しているケースというのはかなり増えている。大阪府が声かけをして、そういう実効性のあるネットワーク作りをこれから進めてほしい。


  ●やはり大阪府が単にシステムとしてのネットを組むということだけではなく、例えば地域地域の知恵を借りる、
地域の情報を十分得られるようなシステムにするといったことも大事である。もう1つは、それぞれがそういう事象を探知したときに、
関係機関に通報した後のフォローもできるようしないといけないと思う。あわせて、相談機関や行政側の機関だけではなく、
虐待等に直面する子ども自身にも、広い意味での人権教育の中で、自分の持っている権利というものを主張できるようなエンパワーメントというものを持てるような教育も大事だろうと思うし、その受け手側も含めてやっていかないとなかなか難しいだろうと考えているので、
御意見も踏まえて、今後の施策を進めていく中の参考にさせていただきたいと思う。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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