第16回審議会

更新日:2023年5月11日

第16回大阪府人権施策推進審議会
(と き) 平成15年1月17日金曜日 午後1時35分から午後3時00分
(ところ) プリムローズ大阪 2階 鳳凰
(出席者) 上田会長、岡本委員、西村委員、萩尾委員、福田委員、金委員、入谷委員
            
(議事概要)
1 開会
・        企画調整部長挨拶
・        委員紹介
・        会長挨拶
○審議会では、これまで府民の主体的な人権に関する活動を大阪府の行政が行政としてどのように支援していくか、地域における人権教育をどのように具体化するか、地域に密着した人権文化の輝きをどのように創造するか、これらを中心に審議会を持ち、その答申を受けて、「大阪府人権施策推進基本方針」が策定された。
今後は、この基本方針をどのように具体化していくかということが課題である。委員の方々から貴重な提言をいただき、この基本方針がより充実した内容を伴う実践につながっていくことを期待している。
私自身は、21世紀の重要な問題は環境問題と人権問題であると思っているが、ややもすると環境問題に熱心な方は人権問題に無関心であり、逆に人権問題に一生懸命取り組んでいる方は環境問題には余り関心がないという、ばらばらになっているような趣がある。
だがこれは統一的にとらえるべきものであって、人間の命、自然の命、命の尊厳を前提にしなければ、環境問題も人権問題も解決できないというように思う。
そしてアジアにはアジアの人権、関西には関西の人権、大阪には大阪らしい人権の文化創造の歩みがあり得るのではないかと思っているが、どうか今後の議論の中で、方針を単なる基本方針にとどめることなく、より効果的な実践につながるよう、先生方からのご助言をいただきたい。
 
2 議事
・ 人権施策の実施状況等について
事務局より大阪府の人権施策の実施状況について、大阪府在日外国人施策に関する指針について、それぞれ説明を行った。
 
・ 意見交換
○総合的な相談窓口の整備を説明いただいたが、現在までの相談の状況、件数はどの程度か。

●大阪府では平成14年4月から、府下市町村の協力を得て、府民・市民の方に身近な相談窓口を整備し、現在35の市町村で相談窓口を開いている。
相談件数は、昨年11月末現在で約200件、相談内容は、例えばドメスティック・バイオレンスや子どものいじめの問題、職場におけるいじめなどの相談も多いように伺っている。
また、大阪府人権協会でも同じく相談窓口を開いており、昨年12月末現在で約170件ぐらいと聞いている。いずれも府民の方からの悩みの相談、人権侵害を受けた相談で、切実なものがあった。府としては、今後ともこの相談窓口を通じ、適切な助言、アドバイスに努めてまいりたい。

○新しく総合相談窓口機能を整備する事業であるが、人権ケースワーク事業として府下市町村に補助金を交付する事業と、大阪府人権協会の人権総合相談事業があり、毎日相談窓口が開設されているが、市民の方が活用しやすいものであれば良いと思うが、実態を詳しく説明いただきたい。

●人権協会における人権相談は、常勤の職員1名を配置しており、府民の方が来館し、または電話がかかっても常に相談を受けられるという態勢である。法的な問題も多いので、大阪弁護士会とタイアップし、毎週金曜日に、弁護士に来てもらい相談をしており、昨年12月末現在で、約90件の相談があったと聞いている。身近な地域に相談に行くほうが良いケースもあるので、その場合は最寄りの市町村を案内している。
もう一つは、例えば児童虐待やドメスティック・バイオレンスの場合には法律があり、法的な制度・措置に待ったほうが良い場合には、それぞれ適切な関係機関につないでいる。

○相談を受けて、その後それぞれの問題の性質に応じてどういう対応をするかという、そのアフターケアが非常に大事である。それとの関連でネットワーク事業がかかわってくる。

●指摘のとおり、府内にはいろんな相談機関がある。行政だけではなくNPOなどいろいろな関係機関があるので、昨年7月にこのネットワークを立ち上げ、現在180ぐらいの機関が入っている。大阪法務局や大阪労働局などの国の機関も入っており、相談内容に応じ、横の連携を保ちながら、適切な機関につなぐ、適切なアドバイスをすることに努めている。

○今年度立ち上がったばかりで、実態のご報告などは、まだまとまっていないであろう。これからそういうネットワークがどう活用されていくのかを注目していきたい。具体的な問題がどのように解決されたのか、そういうフォローのための調査報告書みたいなものを作成してもらえれば、非常に意味があると思う。

●指摘の件は、我々がねらっている方向である。今年度新たに市町村と連携した地域における相談体制の構築と、行政機関も含めた府域全体のネットワークの構築、その上で、今国会で審議されてる人権擁護法案、国の救済機関との連携。これらを視野に入れ、ことし総合的相談窓口体制の構築をスタートした。実質的に動き出したのが年度後半ぐらいからで、相談員の人材養成、専門スキルを持った相談員の配置などの組織体制の整備も市町村と一緒に今取り組んでいる。さらに相談時のマニュアルを作成し、その中で具体的な事案を整理し、どのような人権侵害の課題が出てきているかを年度ごとに集計、分析し、それをどう政策につなげていくか、ということも視野に入れて取り組んでいきたい。年々整理していく中で充実させていきたい。まとめられたら人権審議会にも報告したい。

○女性に対する家庭内暴力の問題も、新たな法律の展開の中で問題が出ている。児童虐待についても、施設が満杯であるなどにより、地域によっては救済できず、その家庭に対する指導や説諭とういう形で済ませてしまっている府県もある。大阪府は、保健所などとも連携をとって対応してきたが、家庭内暴力及び児童虐待について、最近の状況や特徴があれば聞きたい。

●児童家庭室の所管であるが、出席していないので、改めて報告したい。

○虐待についてはこれまで考えていた以上に全国的に受け入れるところが少なくなっている。そのため、説諭や教育だけで済ませてしまうというケースもある。専門の里親制度が10月からスタートした。これまでの里親制度とは違う機能を持つ、専門の技術や経験を持った人を今度は採用することになる。そうしたことを含めてやっていかないといけない状況になっている。里親は今までの機能のほか、救済機関としての意味があるので、府民に対してこの制度を知らせて行くことが大事である。人権擁護に関し、身近な新しい体制できたときは、今後も気をつけて知らせてほしい。専門里親は機能をすると大きな意味を持ち、施設の補完もするので、今後推進する上で力を入れてほしい。

○大阪府在住外国人施策に関する指針について関係団体とのヒアリングの中で、特に大阪府に強く要望されたものがあれば、聞かせてほしい。

●指針策定に当たっては、関係団体との調整を重ねてきた。その中でオールドカマーとニューカマーとでは問題の所在が違うのではないか、という指摘が幾つかの団体からあった。在日外国人有識者会議でも議論したが、共生社会の実現というキーワードでは共通であるが、この指針の中でそれぞれの課題を書き分けた。オールドカマーとニューカマーにはそれぞれの問題がある。指針としては共通の問題としているが、具体的な箇所ではそれぞれの問題を掲げて、今後の方向性を示している。
それから、教育の問題がある。在日外国人の方、児童・生徒のアイデンティティーを高めるということが、関係団体から数多く寄せられた。これまで教育現場でもさまざまな取り組みをしており、指針の中でも、これまでの取り組みをできるだけ尊重し、在日外国人のアイデンティティを高めるという方向性を示した。

○有識者会議でこの指針をまとめたとのことだが、私の感想を述べると、取り組むべき課題というのを5つ挙げて、それぞれ具体的な提言をしているが、その5つのうち府政参画については、ほかの課題に比べると、少し不十分な印象がある。大阪府に住んでいる定住外国人の方の意見を府政に反映させる施策を推進すべきだとは書いてあるが、地方参政権の問題は府議会でも決議されている。法律の制定に待たなければいけないものであるが、参政権のない方々が府政に意見を反映するには、このような審議会の場で、意見を述べることなどが非常に重要になってくる。
もう一つは、これまでの大阪府の施策の歩みが年表として書いてあり、平成10年10月に、府の「人事委員会が知事部局の128職種のすべてについて職員採用試験における国籍条項の撤廃を決定」したと書いてある。これは要するに公務員に外国人の方を採用するという問題である。従来は、古い内閣法制局の通達があり、公権力の行使や公の意思形成にかかわるような職種については日本国民に限るということで、日本国籍を要するという採用要件があった問題であるが、最近の国際化の要請からすると、考え直していい時代に来ている。府も平成10年にこういう形で国籍条項を撤廃している。さらに平成11年を見ると、その国籍条項を撤廃した上で採用試験を実施したと書かれている。国籍条項を撤廃して、実際に日本国籍を持たない方を採用したという実績はあるか。
  これに関連する具体的な府の試みについても、説明いただきたい。

●まず参政権の問題。指摘のとおり、国会における審議の動向を見守っていくというのが私どもの考え方である。
審議会等を通じた外国人の意見の反映については、先ほど、現在、5つの審議会で6人の委員が就任していると申したが、数としても少ないというのが私どもの印象である。今後とも外国人委員の登用を目指していきたい。
採用については、人事当局がおれば補足してほしいが、平成14年の高校卒の事務職の試験で1名、合格されたと聞いている。

●国籍条項について、これまでの取り組みは、指摘のように、公権力の行使、公の意思の形成という解釈論の中で、従前人事課が個別の職種ごとに採用枠を広げてきた経過があるが、事務職員(行政職員)についても撤廃した。任用後の処遇の問題では、その解釈論がまだ残っているが、少なくとも門戸はこういう形で開いた。今まで受験はされていると思うが、実績ではたしか、競争試験の結果、今年度1名、この4月から府の職員として入ってくると思う。

○採用の場面と採用された後の任用、配置転換や昇進の問題などの2つに分けて考えることができる。ここには採用の場面で全職種について国籍を求めないと書いてある。実際、試験をして入られた方がまだ一人だということなので、これからの問題だと思う。
採用された後の任用の問題では、公権力の行使や公の意思形成にかかわるものという、一つの基準のようなものがあるが、職種別にどうするのかということについて、府は要綱か何かをつくって対応しているのか。要綱等で何か具体的な方針等を定めているのなら教えてほしい。

●詳細は承知していないが、かなり以前から職種ごとに、専門職で、指摘のような他に事例がないものについてもかなりやってきた。その後の扱い、処遇についてどうするかは、不案内で説明できない。また整理して報告する。

○民間企業が採用する際、国籍を理由に不合理な差別をすべきではない、民間でそういう問題に取り組むべきだと書いてあるが、府自身の問題として、職員の採用や後の任用の問題についても、もう少し積極的に取り組むべきではないかと感じる。いわゆる一種のポジティブ・アクションみたいな発想で、二十万人以上の外国人が住んでいる地方自治体であり、もう少し府の行政組織の中にも外国人の職員を人材として活用する方向で積極的に取り組んでいくべきではないか思う。

○外国人に対する差別意識というのが、グローバル化社会の中で大分意識が変わってきている。今までは、そういう外国人との交流が少ない閉ざされた日本の中での差別が問題になっていたが、もう既に多様な価値観を持った外国人を採用していかなければ企業自体が対応できないという状況になっている。今企業は能力などを持った人なら、積極的に外国人を採用して自分たちの中に取り込み、企業のパワーを上げていこうというふうに変わってきてる。その中で、かつての閉ざされた中での意識とは、まざり合った形であるが、企業の意識は変わりつつある。外国人の採用も現実には増えている。むしろ積極的に能力のある人は採用していこうということになってきている。そういう現実の前に企業の意識は変わってきていると思う。

○国際化社会が進めば進むほど、内なる国際化がますます必要になってくる。今大阪はそうでもないが、静岡などはブラジルからの労働者との間で問題が起こっているし、滋賀県なども深刻な状況のようである。大阪では特にブラジルや中国がふえているという統計だが、その辺はどうか。中国系の在日の方や大阪に住むブラジルの皆さんの問題など、府でキャッチしている事例があれば聞きたい。

●20ページ資料4で、大阪府における外国人登録者数の推移を書いている。ご指摘のように、中国の方が2倍以上、ブラジルの方が4倍以上、ペルーの方は10倍以上と、それぞれ急激に伸びている。
労働の問題では、さまざまな集会やシンポジウム等で、そういった労働上の問題があるという情報に接することがある。

○外国人もかなり能力を持った人などは良いが、低賃金でどんどん入れた結果として非常に差別が起こっている問題は、これからも起こる。そこを見極めていかないといけない。差別がなくなる面と差別が起こっていく面とある。

●日系ブラジル人等の就労条件を緩和したことにより増えた面もある。低賃金労働者として門戸を開いて、人手不足の時期を背景にして増えている。その結果、例えば教育現場では、そういう方々の子弟の教育を受ける権利をどう保障するかという問題や言語の問題もあり、学校でどういう態勢で授業内容を理解させるかという課題も出てきており、そのための教員の配置等も、教育委員会、市町村でいろいろ工夫は凝らしている。

●そういった在日外国人に対する学校での指導教員の配置の問題等があり、例えば外国語の指導助手等を配置して、コミュニケーション能力の育成をしていくという授業がある。生徒の外国語による実践的なコミュニケーション能力を育成する観点から、国の事業だが府立高校にALT(外国語指導助手)や、NET(外国人英語指導員)などを配置して、日本人英語教員とのティームティーチングによる指導を行っている。あと、国際理解教育や学校の一層の特色づくりなどを推進するため、これも国の事業だが、外国青年招致事業(Jetプログラム)で韓国語指導助手一名を招聘をしたり、平成14年度には中国からも一名を招聘している。こうした取り組みにより、コミュニケーション能力の育成や国際理解教育の一層の充実を学校現場でも図っている。

○外国人で行政として一番困っているのは言葉の問題である。Altの話が出たが、本市は独自で全校にAetを去年から配置したが、日本語がほとんどわからない人が多い。外国人に接して外国人に馴染むことにおいては非常に効果があると思うが、日本語がしゃべれるとより効果が上がると思う。
それから小学生や中学生でもそうだが、学校では外国人の子どもたちに日本語の指導をしているが、家へ帰るとほとんどの親が日本語をしゃべれないという状況がある。行政の窓口では、ハングルや中国語、英語も書いていろいろ案内はしているが、それ以上のことになると、行政もとても対応できていないという問題があり、そこから人権問題が出てくる。外国人差別、そういうことが学校現場では特に問題になっているような気がする。その辺をもう少し府としても考えてほしい。

●今の質問に関連して、公立の学校における日本語の指導が必要な子どもたちの実態だが、平成13年の実態では、日本語指導が特に必要な子どもは小学校で772名、中学校で367名、高校で193名、盲、聾、養護学校で10名と、それぐらいの子どもたちが現在日本語指導が特に必要であると府の教育委員会としては認識している。この子どもたちについては、一定の加配をする場合や日本語指導のために、時間数で特に上増しをするなどの対策をしている。

○国連が識字10年を提言して、ことしはその第1年だが、従来読み書きできない、例えば被差別部落の方や在日韓国人・朝鮮人の高齢の方などの識字学級などはあるが、識字の問題も在日外国人の皆さんの問題の中に含み込んで、識字の運動も、視野を広げてやっていくべき段階かもしれない。その辺も合わせて検討してほしい。

○例えば、松原高校では、中国で学校の先生をしていた方が入国し、工場で働いているが、そういう家族に放課後に来てもらい、母語である中国語を教えている。日本語を学ぶことも大事だが、母語を大事にし、中国語の資格を取っていく。そのことは、生徒にとっては誇りであり、その能力も失わない。とても活気があり、生き生きしている。母国のプラス面の指導についても、何かしていただきたい。
また、実際に取材してみると、外国から来ても、多くの方が言葉が通じず、ごみの処理が悪いとか勝手な放り方をすると言われ、トラブルが起きてる。市民が自主的にやるべきことでもあるが、せめてそういうごみの捨て方のルールなどは、教えてあげる機会があればと思う。
また、外国、特にフィリピンの問題多いが、来日時はダンサーなどの資格で来るが、実際にはそういう仕事もなく、利用され、風俗の仕事などに入っていき、逃げられない。
結局男の人たちに暴力を受けている。言語の問題や帰国させられるという心配もあり、そのことがなかなか伝わってこない。大変深刻である。その辺のことが多分この資料の数字の中に含まれているのだと思う。民間支援グループと当事者とに話を聞く機会もあるが、民間だけではとてもしんどいと支援の人たちは言っている。

○今後事務局でも、委員の先生方の質問、意見にこたえて、具体化のため一層尽力いただきたい。 

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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