大阪府人権施策推進基本方針

更新日:2023年1月18日

大阪府人権施策推進基本方針   (平成13年3月制定 令和3年12月変更 大阪府)

■目 次
はじめに
第1 基本理念
第2 大阪府における人権をめぐる状況
  1 国内外の人権尊重の潮流
  2 大阪府におけるこれまでの取り組み
  3 取り組むべき主要課題
第3 人権施策の基本方向
  1 人権意識の高揚を図るための施策
   〔視点〕
   〔施策の方向〕
    (1) 人権教育の推進
    (2) 人権教育に取り組む指導者の養成
    (3) 府民の主体的な人権教育に関する活動の促進
    (4) 人権教育に関する情報収集・提供機能の充実
  2 人権擁護に資する施策
   〔視点〕
   〔施策の方向〕
    (1) 府民の主体的な判断・自己実現の支援
    (2) 人権相談の充実
    (3) 国の人権擁護機関との連携
第4 推進にあたって
  1 庁内の推進体制
  2 市町村との連携
  3 企業、NPO等との連携



はじめに

 近年、大阪はビジネス、観光など、海外から多くの人々を惹きつける都市として、大きく発展しています。また、2025年には大阪・関西万博が開催されます。この万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」は、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が達成された社会をめざすものであります。大阪は万博開催都市として、SDGsの17ゴールの達成をめざしています。
 一方で、近年の自然災害や感染症の発生に伴って人権が脅かされる事態が生じており、またSNSなどインターネット上の書込みに起因する人権侵害は、社会的な問題となっています。
 こうした中、一人ひとりがかけがえのない存在として、それぞれの自分らしさやお互いを認め合い、違いが大切にされる、人権を尊重する態度や精神に満ち溢れた文化を創造することが重要です。
 大阪府では、平成10(1998)年11月に「大阪府人権尊重の社会づくり条例」を施行し、平成13(2001)年3月には同条例に基づき「大阪府人権施策推進基本方針」を策定して、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし、人権施策推進の枠組みを示しつくり上げることを掲げ、人権施策の推進に努めてきました。
 「大阪府人権施策推進基本方針」の策定から20年が経過し、人権をめぐる状況は大きく変化しました。平成28(2016)年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、「部落差別の解消の推進に関する法律」、いわゆる人権3法及び「大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例」が施行され、また、令和元(2019)年には、「大阪府性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例」、「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」が施行されました。さらに、令和2(2020)年には、「人権問題に関する府民意識調査」(以下「府民意識調査」という。)を実施しました。こうしたこの間の動きを踏まえ、人権についての府民の意識、人権課題の現状、これからの取り組みの方向性などについて見直し、「大阪府人権施策推進基本方針」の変更を行うこととしました。
 今後、この新しい基本方針に基づき、すべての人の人権が尊重される社会の実現をめざして、全庁をあげて人権施策の推進に取り組んでまいります。

第1 基本理念
 「大阪府人権尊重の社会づくり条例」は、その前文で、「すべての人間が固有の尊厳を有し、かつ、基本的人権を享有することは、人類普遍の原理であり、世界人権宣言及び日本国憲法の理念とするところである。かかる理念を社会において実現することは、私たちすべての願いであり、また責務でもある。」「人権尊重の機運が国際的にも高まる中で、大阪が世界都市として発展していくためにも、私たち一人ひとりが命の尊さや人間の尊厳を認識し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会を実現することが、今こそ必要とされている。」とうたっています。
 こうした条例のめざす人権尊重の社会を実現するため、次の二つを府政推進の基本理念として掲げます。

○ 一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される差別のない社会の実現
○ 誰もが個性や能力をいかして自己実現を図ることのできる豊かな人権文化の創造

 人権とは、人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利です。すべての人は、人間として皆同じ人権を有しており、一人ひとりがかけがえのない存在であるということを認識し、それぞれの個性や価値観、生き方等の違いを認め合い、多様性を尊重することが必要です。
 すべての人が人権尊重の精神を身につけ、日常生活の中で実践するようになることで、人権文化が根付いた社会が生まれます。そして、そうした社会において、誰もが個性や能力をいかして自己実現を図ることが可能となります。
 社会の人権文化を豊かにするためには、二つのことが必要です。
 ひとつは、性別、性的指向・性自認、障がいの有無、社会的出身、あるいは人種や民族など、本人が選ぶことのできない事柄によって、生き方の可能性が不当に制約される状況をなくしていくことです。
 もうひとつは、すべての人が自分らしさを輝かせ、様々な異なりをもった他者との出会いを通じて世界を広げ、社会参加を実現することによって、個の主体性や多様性にもとづく新たな社会的活力を創り出すことです。
 今日まで、様々な人権分野で法整備が進められ、人権尊重のための社会の仕組みづくりが進んできました。
 また、一方では新たな課題も生まれています。
 とりわけ、インターネット上での匿名での書き込みにより差別が助長され、プライバシーが侵害されるなど、インターネット上の人権侵害が社会問題化しています。
 一人ひとりが、自己の人権のみならず他人の人権も尊重する態度を身につけることがますます重要となっています。
 大阪府では、こうしたことを背景に、条例のめざす人権尊重の社会をつくるために、前記の基本理念を踏まえ、以下の考え方に基づき、総合的な施策の推進に努めていきます。
 すべての人が、それぞれの個性や価値観、生き方等の違いを認め合い、多様性を尊重することの重要性を十分踏まえることを基本とし、あらゆる行政分野において、一人ひとりが自分の権利のみならず、他人の権利についても深く理解するとともに、権利の行使に伴う責任を自覚し、人権を相互に尊重しあうことの重要性を認識して施策を進めます。そして、施策を通じて人権の普遍性が府民や民間事業者に理解されるよう努めるとともに、人権侵害の予防・救済など、府民の人権の尊重を基礎に据えた取り組みを行い、差別のない社会の実現に努めます。
 さらに、豊かな人権文化の創造に向け、すべての人が情報や市民活動の成果などを活用することのできる環境を整備するとともに、行政が府民による主体的取り組みとの有機的連携を図ることによって、地域全体の人権文化を豊かなものとなるように取り組みます。

第2 大阪府における人権をめぐる状況
 1 国内外の人権尊重の潮流
 二十世紀の世界は、二度の大戦をはじめ数多くの戦争を経験してきました。最大の人権侵害である戦争で、個人の権利は大きな犠牲を強いられ、その傷が癒えることはありません。
 こうした経験を踏まえ、国際連合では、人権の尊重が平和を守ることと密接不可分の関係にあるという考えに基づいて、国家の枠組みを越えた国際的な人権規範の整備に取り組んできました。
 昭和23(1948)年に採択された世界人権宣言をはじめ、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(昭和40(1965)年)、「国際人権規約」(昭和41(1966)年)、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(昭和54(1979)年)、「児童の権利に関する条約」(平成元(1989)年)などにより、国際的な人権保障の枠組みの形成が進んでいます。
 また、SDGsの観点でも、平成27(2015)年9月に国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に「人権を保護しジェンダー平等と女性・女児の能力強化を進めること」と記載されており、取り組むべき課題として、人権の視点が明確に示されています。
 我が国においては、世界人権宣言に先立つ昭和22(1947)年に「基本的人権の尊重」を基本理念に掲げた日本国憲法が施行され、それ以降、国際人権規約をはじめ人権関連条約の批准がなされてきました。また、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」をはじめ、国内で発生する様々な人権課題に対応するための個別の法整備が進められてきました。
 2 大阪府におけるこれまでの取り組み
 大阪府では、同和問題・在日外国人問題をはじめとする様々な人権問題を重要な行政課題と位置づけ、他の自治体に先駆けて取り組んできました。
 平成10(1998)年に制定した「大阪府人権尊重の社会づくり条例」を土台として、大阪府の人権施策を進めるための枠組みをつくり、すべての人の人権が尊重される社会の実現をめざした取り組みを進めています。
 庁内においては、人権局を中心とした横断的な庁内推進体制のもとに、総合的な人権施策を行い、女性、子ども、高齢者、障がい者、同和問題などの個々の課題については、それぞれの関係部局において施策推進に取り組んでいます。
 3 取り組むべき主要課題
 人権尊重の社会をめざした取り組みが進められていますが、府内には今なお取り組むべき人権課題が存在しています。
 (1)女性の人権
 人々の意識の中に長い時間をかけて形づくられてきた、性別に基づく「固定的性別役割分担意識」は、男女共同参画社会の実現に向けた大きな障害の一つとなっています。
 また、ドメスティック・バイオレンスの被害者は、多くの場合女性であり、その背景には、「固定的性別役割分担意識」や男女間の経済格差など、社会の構造的問題が関与していると言われています。加えて、10歳代、20歳代の交際相手同士の間で起こる暴力である「デートDV」が問題となっています。
 一方、これまでは仕事中心だった男性の中にも、家庭や地域で活躍している人が増えています。仕事でも、家庭でも、地域でも、男女ともに自分らしく暮らせる社会を実現していくことが必要です。
 「男女共同参画社会基本法」、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、「大阪府男女共同参画推進条例」に基づき、男女がともに自分らしくいきいきと暮らせる社会の実現に向けて、男女共同参画の推進が求められています。
 また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」に基づき、配偶者等からの暴力を許さない社会づくりが求められています。
 (2)子どもの人権
 社会構造やライフスタイルの変化、また、様々な家族形態があるなど子どもを取り巻く状況が大きく変化している中、家庭における児童虐待、学校や施設における体罰、暴力行為やいじめ、不登校の問題、また、児童買春・児童ポルノをはじめとする性犯罪や薬物乱用など、子どもの人権を巡る問題が深刻化しています。さらに、貧困や自殺等の問題も憂慮すべき状況にあります。
 「児童虐待の防止等に関する法律」、「いじめ防止対策推進法」、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」、また、「大阪府子どもを虐待から守る条例」、「大阪府子どもを性犯罪から守る条例」などを踏まえ、すべての子どもが社会全体で見守られながら、健やかに成長することができる社会づくりを進めていくことが求められています。
 (3)高齢者の人権
 高齢化が急速に進む中、養護者等による介護・世話の放棄・放任や暴力的な行為を受けたりする等の高齢者虐待が大きな課題となっています。
 また、一人暮らしの高齢者や認知症高齢者、障がいなどを有する高齢者の中には、日常生活において財産や金銭を詐取されるといった権利侵害の事例も見られます。
 「高齢者虐待防止法」や「介護保険法」などを踏まえ、高齢者虐待の防止や権利擁護の取り組みを進め、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で暮らし続けることができる地域包括ケアシステムの実現を目指し、主体性をもって生活することができるよう、みんなで支えあう地域づくり、社会づくりが求められています。
 (4)障がい者の人権
 障がい及び障がいのある人に対する理解と認識の不足から、車いすを使用していることを理由に入店を拒否したり、障がいがあることを理由に契約を拒否したりといった不当な差別や、障がい者福祉施設等や雇用の場面においての虐待のほか、様々な問題の発生につながることがあります。
 平成24(2012)年に、障がい者の権利利益の擁護に資することを目的とした「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」が施行され、平成28(2016)年には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。
 これらの法律や「大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例(大阪府障がい者差別解消条例)」などを踏まえ、すべての府民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重しあいながら共生する社会の実現に向け、障がい者差別解消や虐待防止に向けた取り組みと併せて、障がい及び障がいのある人に対する府民の理解を深める取り組みが求められています
 (5)同和問題
 令和2(2020)年6月に国が公表した「部落差別の実態に係る調査結果報告書」においては、部落差別についての正しい理解が進む一方で、心理面における偏見、差別意識が依然として残っていることや、インターネット上での不特定者に対する誹謗(ひぼう)中傷が一定数見られることなどが報告されています。また、府民意識調査においては、同和問題に関する人権侵害として、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に対する認知度が最も高いことなどが報告されています。
 同和問題の解決に向けては、昭和60(1985)年10月に施行された「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」に基づき、差別事象を引き起こすおそれのある個人及び土地に関する調査の規制等を行うとともに、平成28(2016)年12月に施行された「部落差別の解消の推進に関する法律」の趣旨を踏まえながら、相談体制の充実や教育・啓発等の取り組みを推進していく必要があります。また、インターネット上での差別の助長・誘発といった課題への対応も求められています。
 (6)外国人の人権
 外国人に関する課題としては、国際化が急速に進む一方で、言語、習慣、価値観等の相互理解が不十分であることなどから、就労における差別や入居差別などの問題があります。また、大阪府には、歴史的経緯から韓国・朝鮮人が多く居住していますが、在日韓国・朝鮮人の中には、差別を回避するため、その意に反して本名ではなく日本名(通名)で生活せざるをえない人もいるといった問題も存在しています。さらに、特定の人種や民族の人々を排斥する差別的言動、いわゆるヘイトスピーチが社会的な問題になっています。
 平成28(2016)年6月に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行され、大阪府においても、令和元(2019)年11月に「大阪府人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」を施行しました。
 また、平成30(2018)年12月に「出入国管理及び難民認定法」が改正され、外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取り組みとともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備が進められています。
 今後も外国人の居住の増加が見込まれる中、互いの文化的な違いを認め合い、多様性を受け入れ、ともに生きていく社会を築いていく必要があります。
 (7)感染症に関する人権問題
 感染症に関する誤った知識や偏見等により、感染に伴う様々な差別や人権侵害が起きています。
 HIV陽性者に対しては、日常生活での接触で感染することがないにも関わらず、感染を理由とした就職拒否や入居拒否などの人権侵害が起きています。
 また、ハンセン病については、感染することが極めてまれであるにもかかわらず、法に基づき患者を強制的に療養所へ送り込む、いわゆる「無らい県運動」が戦前、戦後に展開され、患者だけでなくその家族も、偏見や差別を受けました。平成8(1996)年に「らい予防法」は廃止されましたが、未だに根強く偏見や差別が残っています。
 さらに、新型コロナウイルス感染症に関しては、未知のウイルスに対する恐れや無理解等から、感染された方に対してだけでなく、医療、介護、物流など生活の維持に欠かせない業務の従事者やその家族等への誹謗(ひぼう)中傷や差別的行為が発生しました。今後、未知の新興感染症が流行した際に、同様の差別的行為等が発生するおそれがあります。
 これらに対しては、感染症に関する正しい知識の普及啓発により偏見や差別意識を解消し、誰もが安心して生活できる環境づくりが求められています。
 (8)犯罪被害者等の人権
 犯罪はそれ自体が人権を無視した行為です。
 不幸にして犯罪による被害を受けたとき、本人やその家族又は遺族は、心身を傷つけられ、それまでの平穏な日常生活を損なわれたうえ、時には無理解や偏見に基づく誹謗(ひぼう)中傷等により名誉さえも毀損されるなど、十分な支援を受けられないまま社会で孤立してしまうことが少なくありません。
 また、犯罪被害に遭ったことのない者にとって、自身や家族等が犯罪被害者になったときのことは想像し難いことから、その支援についての社会的関心は決して高いと言えず、犯罪被害者等が置かれている状況への理解も十分とは言えません。
 このため、大阪府では、平成16(2004)年に制定された犯罪被害者等基本法の理念に基づく「大阪府犯罪被害者等支援のための取組指針」を、平成18(2006)年12月に全国に先駆けて策定し、様々な支援施策を総合的・体系的に推進してきました。
 さらに、平成31(2019)年4月に施行した「大阪府犯罪被害者等支援条例」において、被害者支援の基本理念や各主体の責務をより明確にするとともに、府民理解の増進や関係機関と一体となった総合的な支援体制を構築していくこととしています。
 犯罪によって受けた被害からの回復は、犯罪被害者やその家族が有する当然の権利です。こうした取り組みを通じ、「犯罪被害者等に関する問題を社会全体で考え、ともに支えあう、だれもが安心して暮らすことができる大阪」をめざして、犯罪被害者等の個人としての尊厳が重んぜられ、その権利が尊重される社会づくりが求められています。
 (9)インターネット上の人権侵害
 インターネットは、手軽に情報を入手できるだけでなく、誰でも容易に情報を発信できるメディアとして、必要不可欠なインフラとなっています。
 一方、課題として、匿名性を悪用した特定の個人や団体、不特定多数の人への誹謗(ひぼう)中傷、ヘイトスピーチや同和問題に関して差別を助長・誘発する行為、個人情報の暴露などのプライバシーを侵害する行為など人権に関わる問題が多数発生し、社会問題化しています。   
 また、府民意識調査においても、「差別を助長するような情報が掲載されること」が、「どちらかと言えば」を含め、あると思うと答えた人が86.4%となっており、インターネット上の人権侵害が深刻であることがうかがえます。
 こうしたインターネット上の人権侵害情報は、瞬時に世界中に拡散し、しかも、後から削除することが極めて困難であることから、被害者は将来にわたり長く苦しむこととなります。被害者の救済のためには、憲法が保障する表現の自由等を考慮しつつ、法整備を含めたより実効性のある全国一律の制度の構築や表現の場を提供するプラットフォーム事業者等の自主的な取り組みの強化が求められます。
 あわせて、インターネットを利用する一人ひとりが人権意識を高め、情報の収集や発信における責任やモラルについて正しく理解できるように、さらなる啓発に努めるとともに、被害者への支援を図るため、相談体制の充実などの取り組みが求められています。
 (10)北朝鮮による拉致問題
 北朝鮮当局による拉致は、国民に対する人権侵害であり、我が国の主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題です。
 こうした認識の下、拉致問題の解決を始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が、国際社会を挙げて取り組むべき課題とされる中、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が、平成18(2006)年6月に施行されました。    
 この法律に基づき、国や関係機関と連携を密にしながら、拉致問題に対する府民の関心と認識を深めていくことが必要です。
 なお、拉致問題は北朝鮮という国家による犯罪であり、在日韓国・朝鮮人や北朝鮮の一般の国民には何の責任もありません。取り組みを進めるにあたっては、外国人の人権への配慮が必要です。
 (11)性的マイノリティの人権問題
 性的マイノリティに関する課題としては、「出生時に割り当てられた性」と「自認する性」が一致している人や「性的指向」が異性に向いている人が多数派とされる中、そうではない人に対する差別や偏見が存在しており、性的マイノリティの人権問題に関する社会の理解はまだ十分に進んでいません。
 府民意識調査では、74.9%の人が、どちらかと言えばあると思うを含め、性的マイノリティへの理解や認識が不足していると思うと答えています。
 性的指向については、性的指向を理由とする差別的な取扱いは不当であるとの認識が広がっていますが、いまだ、同性愛等に対して根強い偏見や差別があり、苦しんでいる人々がいます。
 性自認については、出生時に割り当てられた性と自認する性との違和感に悩みながら、社会の中で偏見を受け、社会生活上、支障をきたしたり、職場や学校等で嫌がらせやいじめ、差別を受け、苦しんだりしている人々がいます。
 令和元(2019)年10月に施行した「大阪府性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例(大阪府性の多様性理解増進条例)」の趣旨を踏まえ、性の多様性についての理解を深め、偏見や差別意識がなくなるよう、引き続き、啓発や当事者が抱える様々な課題に対する取り組みを進めていくことが求められています。
 (12)職業や雇用をめぐる人権問題
 職業や雇用をめぐる人権問題としては、就労形態や職種、職業に関する偏見や差別、本人の適性・能力に基づかない不合理な採用選考、賃金や昇進等における男女の不均等な待遇、職場におけるセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントのほか、非正規労働者の待遇改善や長時間労働の問題等があります。
 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」においては、労働者が性別や妊娠・出産により差別されることを禁止するとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント対策の措置を事業主に義務付けています。
 「育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)」においては、労働者が育児休業・介護休業等の制度を利用したことに関する事業主による不利益な取扱いを禁止しています。
 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」においては、通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者の待遇を差別的に取り扱うことの禁止等を定めています。  
 また、「労働施策総合推進法」の改正により、パワーハラスメント対策が法制化され、パワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました。
 社会・経済情勢の変化に伴い、働き方も多様化する中、一人ひとりの仕事の役割を理解し、仕事に優劣のないことを認識し、社会を支える構成員としてお互いを認め合い支え合える社会を築くための取り組みが求められています。
 (13)生活困窮(貧困)をめぐる人権課題
 近年、我が国の経済は緩やかな回復基調を続けていたにもかかわらず、大阪府では、生活保護率の水準や非正規雇用者の割合が全国平均より高い状況にあるなど、厳しい社会・経済状況に置かれていました。加えて、新型コロナウイルスが世界中にまん延したことに伴い、我が国の経済は停滞した状況を見せ始めています。今後予測される生活困窮(貧困)の広がりは、一般的に自殺者の増加等に深い関連性があるという指摘がなされており、また、子育て世帯の生活困窮(貧困)は、そのまま子どもの貧困へとつながり、未来を担う若者層を蝕む深刻な人権課題となる懸念があります。
 こうした懸念を払拭するため、国においては、経済活動の活性化と雇用の維持を図るための取り組みが強化されているところですが、地方公共団体においても、平成30(2018)年に改正・施行された「生活困窮者自立支援法」の基本理念(「生活困窮者の尊厳の保持」、「地域社会からの孤立等生活困窮者の状況に応じた包括的・早期的な支援」、「地域における関係機関等との連携等支援体制の整備」)や、「地域共生社会」の実現に向けた包括的な支援体制の整備を求める「社会福祉法」の趣旨に基づき、CSW(コミュニティソーシャルワーカー)や隣保館等の既存の相談事業などと密接に連携するとともに、地域における社会資源を有効に活用したセーフティネットの整備に努めていく必要があります。
 (14)ホームレスの人権問題
 ホームレスは、厳しい夏の暑さや冬の寒さに耐えながら生活しています。ときには投石行為等の嫌がらせを受ける等、絶えず劣悪な環境での生活を余儀なくされています。また、民間賃貸住宅を借りる場合や就職面接等において、ホームレスというだけで契約や採用に至らない場合もあります。
 路上(野宿)生活に至る原因は、人によって様々です。日雇労働に長年就いてきた人たちの高齢化や会社の倒産等による失業者の増加や仕事量の減少など、経済的な原因によるものが多数を占めますが、健康上の問題、家庭内の問題や借金の問題など、複数の原因が複雑にからみ合っているケースも少なくありません。
 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」に基づき、自立の意思のあるホームレスに対して安定した住居と就労機会の提供・確保や生活相談の実施等、自立につながる総合的な施策の実施が求められています。
 (15)災害時の人権問題
 平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災は東北地方を中心とした東日本に甚大な被害をもたらしました。現在も避難生活を余儀なくされている方々が多くいます。
 また、近年では、毎年のように各地で大規模な自然災害が発生し、さらに、甚大な被害が予想される南海トラフ地震が、今後30年間で70〜80%の発生確率で想定されるなど、予断を許さない状況が続いています。
 災害時という非常事態のなかで、例えば、避難所においては女性、高齢者、外国人、障がい者、性的マイノリティなど多様な方々が共同生活を営むこととなり、様々なハラスメント、いわれのない差別、プライバシーの侵害など人権問題が容易に起こり得る状況が考えられます。
 こうした状況もある中、障がい者や高齢者などの要配慮者に配慮し、安否確認や避難誘導を支援するなど、様々な場面において、きめ細かな対策を行うための体制整備が求められています。
 (16)その他の取り組むべき人権課題
 取り組むべき人権課題としては、これら以外にも様々なものが存在しています。
 ・アイヌの人々に対する理解が十分でないため、就職や結婚等において偏見や差別が依然として存在しています。
 ・「こころの病は特別な人がかかるもの」という古くからの慣習や風評などから生じる先入観や偏見のために、こころの病で通院や入院をしている人々が生きづらさや生活のしづらさに苦しんでいるという実態があります。
 ・住所、氏名、年齢などの個人情報が本人に無断で収集や提供がなされ、プライバシーなどの個人の権利や利益が侵害される事例が発生しています。
 ・人身取引(性的サービスや労働の強要等)は重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められています。
 ・刑を終えて出所した人や家族に対する偏見や差別は根強く、定職に就くことや住居を確保することが困難な状況にあります。このため、更生に向けた計画的な支援や必要に応じた福祉的支援など、地域で暮らすための支援が必要な状況にあります。
 ・生まれつきのあざ、事故・病気による傷ややけど、脱毛などの「見た目(外見)」の症状がある人たちが学校でいじめられたり、就職や結婚で差別されたりするといった問題があります。
 ・何らかの理由から出生の届出をしないために、戸籍がないまま暮らさざるを得ない方が存在しています。戸籍に記載されていないことによって、社会生活上、様々な不利益を被るといった無戸籍者の問題があります。

第3 人権施策の基本方向
 大阪府人権尊重の社会づくり条例に示されている「人権施策」、すなわち、「人権意識の高揚を図るための施策」及び「人権擁護に資する施策」について、それぞれの概念、内容を明確にし、推進する必要があります。
 府民意識調査においても、「差別をなくすために、行政は努力する必要がある」との考え方について、「どちらかと言えばそう思う」を含め、「そう思う」と答えた人の割合は83.7%となっており、5年前の調査に比べ4.7ポイント増加しています。
 また、基本方針で掲げる2つの基本理念を踏まえて行うべき個別の人権にかかわる施策の多くは、それぞれの人権課題に応じて、まとまった行政領域として、それぞれ個別法や個別の諮問機関の答申等を踏まえて、実施されています。
 したがって、これらの課題に共通する人権意識の高揚を図るための施策を積極的に推進するとともに、課題ごとの取り組み、とりわけ府民の自立や社会参加を促進するための施策や人権救済・保護のための制度や施策を充実・活用していくことを基本に、人権問題についての実態の把握に努めながら、総合的な人権施策を構築していきます。
 1 人権意識の高揚を図るための施策
 府民一人ひとりが、人権の意義や価値についての理解を深め、すべての人の人権を尊重する態度や行動を身につけるための人権教育を行うとともに、府民の主体的な活動を促進します。
〔視 点〕
 ・府民が主体的に社会生活を送るうえで、身につけておくべき基本的な社会ルールとして、互いの尊厳と権利を尊重することの大切さを理解すること。
 ・府民が、日本国憲法や人権関連諸条約上の人権の理念や内容を深く理解し、自らの生活や活動の中で具体的にいかす態度や問題解決能力を身につけること。
 ・異なる文化・価値観を持った人々との出会いや交流を通じ、豊かな人間関係を結ぶことにより、偏見や無理解をなくし、多様性を認め合う価値観を身につけること。
 ・人権意識の高揚を図るための施策は、府民一人ひとりの心のあり方に密接にかかわることから、府民の自主的・自発的な取り組みを促すことを基本になされるべきであること。
 ・地域社会やNPO等が、主体的に自己実現をめざす個人の活動の場となり、また、それらの活動が人権意識の高揚に役立つこと。
 ・府民が身につけた人権尊重の態度を、日常生活や職場等の活動の場において実践できること。
〔施策の方向〕
 (1) 人権教育の推進
 人権教育は、家庭、学校、職場、地域など、あらゆる場や機会をとらえて、推進する必要があります。なかでも、人権問題を的確にとらえる感性や人権を重視する姿勢をはぐくむことが重要です。
 したがって、幼少期から生命の尊さや人の人たる道(人間として基本的に守らなければならないルール)に気づかせ、豊かな情操や思いやりをはぐくみ、お互いを大切にする態度と人格の育成をめざす人権基礎教育に、基本方針で掲げる2つの基本理念を踏まえて取り組むことは、その後の成長に応じた人権教育を実効的なものとするうえで、大きな役割を果たすと考えられます。
 このため、人権啓発や同和教育の成果を発展させ、人権に関する学習の機会を、学校、職場、地域などで一層充実させるとともに、従来の知識習得型の学習から、人権に関する知識が態度や行動に結びつくような実践的な学習へと転換を図ります。
 さらに、人権が尊重される社会の実現に深くかかわる立場にある者が、常に人権尊重の意識や態度をもって、職務の遂行に臨むことが重要であり、大阪府職員をはじめとする公務員や教職員、警察官、医療関係者、福祉関係者等に対する人権教育を充実します。
 (2) 人権教育に取り組む指導者の養成
 府民が日頃から人権問題について考え、自主的・自発的にその解決に取り組むことが重要であることから、府民の身近なところで人権教育に取り組む指導者の養成や、人権教育を効果的に推進するために重要な役割を果たす専門的な指導者の養成を図ります。また、そのために、人権教育に関する諸機関との連携や支援に努めます。
 (3)府民の主体的な人権教育に関する活動の促進
 多様な文化や価値観を大切にしあう豊かな人権文化を創造するためには、府民の自主的・主体的な取り組みを促すとともに、地域において様々な人々がふれあい、交流する場を増やし、相互理解を促進することが重要です。このため、NPOや企業等による人権教育や府民の交流・相互理解のための自主的・主体的な活動を促す環境を整備します。
 (4)人権教育に関する情報収集・提供機能の充実
 人権教育は、大阪府のみならず、NPO・企業・学校・市町村など様々な主体により、対象者やニーズに応じて様々な機会を通じて実施されることにより、より効果を高めるものです。このため、人権教育の各実施主体に対して、必要に応じて人権教育についての知識・手法や講師・教材、あるいは活動事例等についての情報などが適切に提供できるよう、人権教育に関する情報収集・提供機能の充実を図ります。
 2 人権擁護に資する施策
 府民が自立や社会参加を通じて、自己実現を図ることができるよう支援するとともに、人権侵害を受け、または受けるおそれのある人に対して、関係機関と連携して、救済・予防を促進・支援します。
〔視 点〕
 ・人権侵害につながる問題に直面した府民が、主体的な判断にもとづいて課題の解決ができるよう、支援がなされること。
 ・府民一人ひとりの自己実現のための主体的な取り組みが尊重され、促進されること。
 ・人権にかかる問題が生じた場合に、一人で悩むのではなく、解決方策について身近に相談できること。
 ・人権侵害を受け、または受けるおそれのある人が、迅速に適切な保護・救済を受けることができること。
 ・人権侵害を予防するための取り組みがなされること。
〔施策の方向〕
 (1)  府民の主体的な判断・自己実現の支援
 府民が人権侵害を受けたり、人権侵害につながる問題に直面したりしたときに、解決のための手だてを探し出し、助言や援助などの支援を受けながら主体的に判断して解決していくことができるよう、各種の相談機関や公的支援制度、さらにはNPO等が行っている援助活動など、人権擁護に関する様々な支援情報を効果的に提供します。
 また、府民が自立や社会参加を通じて、自己実現を図ることができるよう支援するため、必要な支援情報の提供や、自らが問題の解決方策を見出して行動に移していくための施策を推進します。
 (2)  人権相談の充実
 人権侵害にかかわる問題が生じた場合に、一人で悩むのではなく、府民が身近に解決方策について相談できる窓口が必要です。
 大阪府においては、個別施策ごとに府民の相談に対応していますが、あわせて、人権全般についての総合的な受け皿機能を有する幅広い相談窓口において、事案に応じた適切な助言や情報提供を行っています。
 人権にかかわる相談には、複数の要因が複雑に絡み合っているものも少なくありません。相談窓口では、これらの要因を解きほぐして整理し、解決のための手だてを本人が主体的に選択できるよう、きめ細やかな対応が必要です。
 そのため、行政機関、公益法人、NPO等、様々な相談機関とのネットワークの充実を図るとともに、各相談機関の相談員等の資質の向上を図ります。
 (3)国の人権擁護機関との連携
 大阪府においては、自立生活を営むうえで援助を必要とする府民を支援するため、様々な施策を実施することにより、府民の権利擁護や人権侵害の予防を図っています。また、国においては、人権問題にかかわる紛争処理について、法務省の人権擁護機関が人権侵犯事件の調査処理を行い、被害者の救済を図っています。
 救済すべき事案を適切に人権救済の手続きに乗せていくことができるよう、法務省の人権擁護機関との連携を図り、より緊密な協力体制を構築します。

第4 推進にあたって
 以上に提示した、人権尊重の基本理念を基礎に据えた行政施策を展開するとともに、前述の基本方向に沿った人権施策を着実に推進するため、具体的な推進計画を策定し、適切な進捗管理を行います。
 また、国際的動向や国の方針の変化を踏まえ、取り組みを進めてまいります。
 さらに、社会情勢や価値観の変化に伴い、新たな人権問題が生起するものであり、これに的確に対応するため、必要に応じて、基本方針の見直しを行うこととします。
 1 庁内の推進体制
 本基本方針に基づき、知事をトップとする人権施策の推進本部体制のもと、総合的な見地から整合性のある施策を推進します。
 人権局のコーディネート機能を一層強化し、現在、各部局に配置されている人権局兼務・併任職員と一体となって、人権問題の実情を踏まえ、施策の企画・調整・点検を行うとともに、人権施策の実施状況を毎年度、人権白書「施策編」としてとりまとめるなど、効果的な施策の推進に努めます。
 また、大阪府職員に対する人権研修の徹底を図り、各部局の業務の実態に応じた研修の推進に努めます。
 2 市町村との連携
 府内市町村においては、地域の実情に応じて、それぞれに人権問題についての取り組みが進められています。大阪府の人権施策を効果的に推進するためには、こうした府民に最も身近な市町村が実施する諸施策との連携が不可欠であり、大阪府と市町村との連携をより強化します。
 また、市町村単位では実施が困難な事業で、かつ府域全体で取り組むことが望ましい事業や、情報提供などにより市町村の施策を支援する事業などについては、大阪府が積極的に推進します。
 3 企業、NPO等との連携
 これまで、府内では企業やNPOなどの諸団体が人権問題の解決のための様々な取り組みを行ってきました。
 近年、企業による人権尊重の必要性について国際的な関心の高まりを背景に、国においても、令和2(2020)年10月「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020−2025)が策定されました。同計画では、今後、政府が取り組む各種施策や企業活動における人権デュー・ディリジェンス(企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと。)の導入・促進への期待が表明されています。
 人権施策を効果的に推進していくため、企業やNPOなどの諸団体の活動とより一層連携を深め、協働関係の構築を図ります。

(参考リンク)
■「大阪府人権施策推進基本方針」の変更案に対する府民意見等の募集結果について
 https://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/houshin/kihonhousin-kekka.html


このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 企画グループ

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