○大阪府ギャンブル等依存症対策基本条例
令和四年十月三十一日
大阪府条例第五十九号
次に掲げる条例を公布する。
大阪府ギャンブル等依存症対策基本条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 ギャンブル等依存症対策推進計画及び基本的施策(第七条―第十一条)
第三章 大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部(第十二条―第十五条)
附則
競馬、競輪、競艇、オートレースといった公営競技やパチンコ等は、府民生活に楽しみをもたらす一方、これらのギャンブル等にのめり込むことにより、ギャンブル等依存症に陥る府民も少なくない。
ギャンブル等依存症は、多重債務や失業といった経済的問題、うつ病の発症といった健康問題、それらに伴う家族の問題、学生等における学業の中断といった問題によって日常生活や社会活動に支障を生じさせ、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会的問題を引き起こしている。
さらには昨今、海外インターネット経由のオンライン・カジノの増加や、公営競技がスマートフォン等によって手軽に利用できることにより、ギャンブル等依存症の問題がより拡大し、深刻化する傾向にある。
ギャンブル等依存症は、誰もが陥る可能性のある精神疾患であるということを私たち一人ひとりが認識し、ギャンブル等依存症である者等やその家族等が、安心して相談し、治療を受け、そして、社会に復帰することができるようにしていかなければならない。
そのためには、府のギャンブル等依存症対策をさらに進めるとともに、国、府、市町村、医療機関、関係機関、自助グループをはじめとする民間団体等の間における連携をさらに強化する必要がある。
こうした理解の下に、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進することにより、府民が安心して、健康的に暮らせる社会の実現をめざして、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、ギャンブル等依存症対策基本法(平成三十年法律第七十四号。以下「法」という。)で定めるもののほか、府が実施するギャンブル等依存症対策に関し基本となる事項を定めることにより、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって府民の健全な生活の確保を図るとともに、府民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において「ギャンブル等依存症」とは、ギャンブル等(法律の定めるところにより行われる公営競技、ぱちんこ屋に係る遊技その他の射幸行為をいう。)にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいう。
(アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携への配慮)
第三条 府は、ギャンブル等依存症対策を講ずるに当たっては、アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとする。
(市町村との連携)
第四条 府及び市町村は、法第三章に規定する基本的施策をはじめとするギャンブル等依存症対策について、相互に連携して実施するよう努めるものとする。
(ギャンブル等依存症問題啓発月間)
第五条 府民の間に広くギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるため、法第十条に規定するギャンブル等依存症問題啓発週間である五月十四日から同月二十日を含め、毎年五月をギャンブル等依存症問題啓発月間(以下「啓発月間」という。)とする。
2 府及び市町村は、啓発月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第六条 府は、ギャンブル等依存症対策を実施するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
第二章 ギャンブル等依存症対策推進計画及び基本的施策
(ギャンブル等依存症対策推進計画)
第七条 知事は、法第十三条第一項に規定するギャンブル等依存症対策の推進に関する計画(以下「ギャンブル等依存症対策推進計画」という。)を策定するものとする。
2 ギャンブル等依存症対策推進計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。
3 知事は、ギャンブル等依存症対策推進計画を策定し、又は変更した時は、遅滞なく、これを議会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
4 ギャンブル等依存症対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第八条第一項の規定による大阪府健康増進計画、アルコール健康障害対策基本法(平成二十五年法律第百九号)第十四条第一項の規定による大阪府アルコール健康障害対策推進計画その他の法令の規定による計画であってギャンブル等依存症対策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
5 知事は、府におけるギャンブル等依存症に関する状況の変化を勘案し、及び法第二十三条に規定する調査の結果を踏まえ、少なくとも三年ごとに、ギャンブル等依存症対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。
(若年者への啓発)
第八条 府は、法第十四条に規定する施策を講ずるに当たっては、とりわけ若年者に対して、ギャンブル等依存症に陥る経緯やギャンブル等依存症がもたらす重大な影響等について、ギャンブル等依存症の予防等に資するための啓発に取り組むものとする。
(依存症支援拠点等)
第九条 府は、ギャンブル等依存症である者等及びその家族等に対する相談支援、社会復帰支援等の拠点を整備し、市町村及び法第二十条に規定する医療機関、精神保健福祉センター、保健所、消費生活センター、日本司法支援センターその他の関係機関、民間団体等(以下「医療機関等」という。)と連携して必要な支援に努めるものとする。
2 府は、ギャンブル等依存症である者等及びその家族等の相談等に幅広く対応できるよう、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法による相談支援体制等の整備に努めるものとする。
(民間団体の活動に対する支援)
第十条 府は、ギャンブル等依存症である者等が互いに支え合ってその予防等及び回復を図るための活動その他の民間団体が行うギャンブル等依存症対策に関する自発的な活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(連携協力体制の整備)
第十一条 府は、施策の効果的な実施を図るため、医療機関等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
第三章 大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部
(大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部)
第十二条 ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(本部の所掌事務)
第十三条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 ギャンブル等依存症対策推進計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
二 ギャンブル等依存症対策推進計画に基づいて実施する施策の総合調整及び実施状況の評価に関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、ギャンブル等依存症対策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。
2 本部は、次に掲げる場合には、あらかじめ大阪府ギャンブル等依存症対策推進会議の意見を聴かなければならない。
一 ギャンブル等依存症対策推進計画の案を作成しようとするとき。
二 前項第二号の評価について、その結果の取りまとめを行おうとするとき。
(本部の組織)
第十四条 本部は、大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部長(以下「本部長」という。)、大阪府ギャンブル等依存症対策推進副本部長(以下「副本部長」という。)及び大阪府ギャンブル等依存症対策推進本部員(以下「本部員」という。)をもって組織する。
2 本部長は、知事とし、本部の事務を総括する。
3 副本部長は、副知事とし、本部長の職務を助ける。
4 本部員は、府の職員のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として知事が指定する者とする。
(委任)
第十五条 この条例に定めるもののほか、本部の運営に関し必要な事項は、知事が定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。
(令和四年規則第八一号で令和四年一一月二五日から施行)
(検討)
2 知事は、この条例の規定については、この条例の施行後三年を目途として、この条例の施行状況等を勘案し、検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。