○大阪府がん対策推進条例
平成二十三年三月二十二日
大阪府条例第六十八号
大阪府がん対策推進条例を公布する。
大阪府がん対策推進条例
大阪府は、全国に先駆けて、「がん登録」事業に取り組むとともに、がんを中心とする生活習慣病に関する専門施設である大阪府立成人病センターを設置するなど、がん予防とがん医療向上の取組を推進してきた。しかるに、肺、胃、肝臓、大腸、乳などのいわゆる五大がんによる死亡率は全国に比して高い状況が続いており、また、がん検診受診率は全国最低水準で推移している状況にある。
このような現状を踏まえ、全ての府民が生命を尊重する良心に基づき、温かみのある適切ながん対策を推進することにより、府民をがんから守り、健康な生活を送ることができるよう努めるとともに、がんになっても社会での役割を果たすことができ、お互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会を実現することを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、がんが府民の疾病による死亡の最大の原因であり、その対策が府民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、がん対策基本法(平成十八年法律第九十八号)の趣旨を踏まえ、がん対策に関し、府、保健医療関係者及び府民の責務を明らかにし、がんの予防及び早期発見に資するとともに科学的な知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を提供する体制の整備を促進することにより、総合的ながん対策を府民とともに推進することを目的とする。
(府の責務)
第二条 府は、国、市町村、医療機関、医療関係団体、がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体並びに民間企業と連携を図りつつ、がん対策基本法第十二条第一項の規定により府が策定するがん対策推進計画(第十七条において「計画」という。)に従い、府の特性に応じた施策を実施する責務を有する。
(平二九条例三〇・平三〇条例三三・一部改正)
(保健医療関係者の責務)
第三条 保健医療関係者(がんの予防及び早期発見の推進やがん医療に携わる者をいう。以下同じ。)は、府のがん対策に協力するよう努めなければならない。
(平三〇条例三三・一部改正)
(府民の責務)
第四条 府民は、喫煙、食生活、飲酒、運動などの生活習慣が健康に及ぼす影響等がんにかかりやすくなる要因を排除するための正しい知識を学び、がんの予防に努めるとともに、定期的にがん検診を受けるよう努めなければならない。
(がん情報の収集と提供)
第五条 府は、がんの罹患、死亡等、がん対策に資する情報を収集し、分析するための取組等必要な施策を講ずるものとする。
2 府は、府民に対して、がんの予防及び早期発見、がん医療並びに患者支援に関する適切な情報を提供するものとする。
(がんの予防の推進)
第六条 府は、関係機関と協力し、がんの予防に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 喫煙、食生活、飲酒、運動などの生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響など、がんの予防のための普及啓発
二 受動喫煙の防止のための学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設における禁煙の推進
三 健康診断又はがん検診の実施機関における喫煙者に対する禁煙支援、生活習慣の改善のための指導及びこれらについての研修の実施
四 学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進
五 前各号に掲げるもののほか、がんの予防のための必要な施策
(平三〇条例三三・平三〇条例九三・一部改正)
(早期発見の推進)
第七条 府は、関係機関と協力し、がんの早期発見に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 がん検診の内容及び精度管理体制の充実並びに精度管理指標の公表
二 がん検診精密検査の体制の確立
三 がん検診の受診率の向上のための、計画組織化されたがん検診の実施
四 がん検診に携わる医療従事者の資質の向上を図るための研修の機会の確保
五 市町村、医療保険者及び事業主と協力した府民のがん検診受診率の向上のための施策
六 前各号に掲げるもののほか、がんの早期発見のために必要な施策
(平三〇条例三三・一部改正)
(がん医療の充実)
第八条 府は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた適切な医療を受けることができるようにするとともに、府民に質の高いがん医療を提供するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 がん診療連携拠点病院の整備
二 がん診療連携拠点病院に準ずる病院の整備
三 前二号に掲げる病院とその他の医療機関等との役割分担及び連携の強化
四 放射線療法、化学療法及びゲノム医療の推進
五 がん患者の意向を踏まえ、住み慣れた家庭や地域での療養を選択するための在宅医療及び介護の提供体制の整備
六 手術、放射線治療、化学療法、緩和ケア、リハビリテーションその他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成及び確保
七 前各号に掲げるもののほか、がん医療の向上のために必要な施策
(平三〇条例三三・一部改正)
(緩和ケアの推進)
第九条 府は、がん患者の身体症状の緩和や家族を含めた精神心理的問題の援助を治療の初期段階から行う緩和ケアの充実を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
一 緩和ケア病棟、緩和ケアチーム及び緩和ケア外来の整備の促進
二 緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成
三 がん患者の状況に応じた治療の初期段階からの緩和ケアの推進
四 在宅で緩和ケアを受けることができる体制整備の支援
五 緩和ケアに関する関係機関及び関係団体との連携の強化
六 前各号に掲げるもののほか、緩和ケアの充実のために必要な施策
(肝炎肝がん対策の推進)
第十条 府は、肝炎肝がん対策に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 肝炎ウイルス検診の受診率の向上のための、計画組織化された肝炎ウイルス検診の実施
二 肝炎ウイルス陽性者に対する相談支援・診療体制の充実
三 前二号に掲げるもののほか、肝炎肝がん対策を推進するために必要な施策
(女性に特有のがん対策の促進)
第十一条 府は、女性に特有のがん対策に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 がんにかかりやすい年齢を考慮したがんの予防に関する正しい知識の普及啓発
二 女性に特有のがんに係る検診の受診率の向上のための施策
三 前二号に掲げるもののほか、女性に特有のがん対策を推進するために必要な施策
(小児及び若年世代のがん対策の充実)
第十二条 府は、小児及び若年世代のがん対策を充実するため、次に掲げる施策を推進するものとする。
一 小児及び若年世代のがんの実態把握の強化及び支援体制の整備
二 小児及び若年世代のがん診療に関わる医療関係機関間の連携及び協力の促進
三 前二号に掲げるもののほか、小児及び若年世代のがん医療の向上のために必要な施策
(平三〇条例三三・一部改正)
(骨髄移植及び臍帯血移植の促進)
第十三条 府は、白血病等の血液がんに対し有効な治療法である骨髄移植及び臍帯血移植を促進するため、保健医療関係者と連携して骨髄バンク事業及び臍帯血バンク事業の普及啓発等必要な施策を講ずるものとする。
(平三〇条例三三・一部改正)
(がん登録の推進)
第十四条 府は、効果的かつ総合的ながん対策の実現に向けて、がん登録の推進のため、次に掲げる施策を講ずるものとする。
一 人口動態情報、住民基本台帳等を活用したがん登録事業を推進するための施策
二 がん登録への医療機関の連携の強化
三 がん登録に関する府民への情報提供、広報等の強化
四 前三号に掲げるもののほか、がん登録の推進のために必要な施策
2 前項各号に掲げる施策を講ずるに当たっては、登録された情報がその利用目的の達成に必要な範囲を超えて用いられることがないようにする等、がん患者に係る個人情報の保護が適切に講じられるようにしなければならない。
(平三〇条例三三・一部改正)
(研究の推進)
第十五条 府は、希少がん、難治性がん等の本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他の先進的な医療の導入に向けた研究について情報収集するとともに、その研究を促進するため必要な施策を講ずるものとする。
2 知事は、がんに係る調査研究を行う者からがん登録等の推進に関する法律(平成二十五年法律第百十一号。以下「法」という。)第二十二条第一項第一号の情報(以下「地域がん登録情報」という。)又はその匿名化(法第二条第九項の匿名化をいう。以下同じ。)が行われた情報の提供の求めを受けた場合において、当該がんに係る調査研究に必要な限度で、法第二十二条第一項の規定により整備されるデータベース(情報の集合物であって、当該情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)を用いて、地域がん登録情報の提供並びにその匿名化及び当該匿名化を行った情報の提供を行うことができる。
3 前項の提供及び匿名化を行うに当たっては、がん患者に係る個人情報の保護が適切に講じられるようにしなければならない。
4 知事は、がん医療について科学的知見を有する者として知事が指定するものに、第二項の提供及び匿名化に係る事務(当該提供の決定を除く。)を行わせることができる。
5 知事は、第二項の提供及び匿名化を行おうとするときは、あらかじめ、大阪府がん対策推進委員会の意見を聴くものとする。
(平三〇条例三三・平三〇条例九三・一部改正)
(患者等の支援)
第十六条 府は、がん患者の生活の質の向上及びがん患者の身体的又は精神的な苦痛、社会生活上の不安その他のがんに伴う負担の軽減に資するため、医療機関等と連携し、次に掲げる施策を講ずるものとする。
一 がん患者及びその家族等に対するセカンドオピニオン(診断又は治療に関して担当医師以外の医師の意見を聴くことをいう。)を含めた相談体制の充実強化
二 がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体が行うがん患者の生活及びその家族に対する活動の支援
三 がん患者及びその家族等の就労に関し必要な支援
四 前三号に掲げるもののほか、がん患者の生活の質の維持向上及びがんに伴う経済的負担の軽減に関し必要な施策
(平三〇条例三三・一部改正)
(意見の聴取)
第十七条 知事は、計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、大阪府がん対策推進委員会の意見を聴くものとする。
(平三〇条例三三・全改)
(府民運動の推進)
第十八条 府は、保健医療関係者、がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体並びに民間企業と幅広く連携し、がん対策に対する府民の理解と関心を深めるための取組を推進するものとする。
(平三〇条例三三・一部改正)
(財政上の措置)
第十九条 府は、がん対策に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(手数料)
第二十条 法第二十一条第八項又は第九項及びこの条例第十五条第二項に基づく事務に関し、次の表の中欄に掲げる者は、それぞれ同表の下欄に定める金額の手数料を納付しなければならない。
項 | 区分 | 金額 |
一 | 法第二十一条第八項又は第九項の規定による都道府県がん情報又はその匿名化が行われた情報の提供を受けようとする者 | 次に掲げる額を合算した額 イ 法第二十一条第八項の規定による都道府県がん情報の提供並びに同条第九項の規定による都道府県がん情報の匿名化及び当該匿名化が行われた情報の提供(提供の求めを受けた情報が都道府県がん情報に係る法第二十二条第三項の規定により匿名化が行われた情報である場合にあっては、その提供)に要する時間一時間までごとに五千八百円 ロ 都道府県がん情報又は匿名化情報(法第二十一条第九項又は第二十二条第三項の規定により都道府県がん情報の匿名化が行われた情報をいう。以下同じ。)の提供に関する次の(1)又は(2)に掲げる方法の区分に応じ、それぞれ(1)又は(2)に定める額 (1) 光ディスク(日本産業規格X〇六〇六及びX六二八一に適合する直径百二十ミリメートルの光ディスクの再生装置で再生することが可能なものに限る。)に記録したものの交付 一枚につき百円 (2) 光ディスク(日本産業規格X六二四一に適合する直径百二十ミリメートルの光ディスクの再生装置で再生することが可能なものに限る。)に記録したものの交付 一枚につき百二十円 ハ 都道府県がん情報又は匿名化情報を記録したロ(1)又は(2)の光ディスクの送付に要する費用の額(情報の提供を受けようとする者が当該光ディスクの送付を求める場合に限る。) |
二 | 第十五条第二項の規定による地域がん登録情報又はその匿名化が行われた情報の提供を受けようとする者 | 次に掲げる額を合算した額 イ 第十五条第二項の規定による地域がん登録情報の提供並びにその匿名化及び当該匿名化が行われた情報の提供に要する時間一時間までごとに五千八百円 ロ 地域がん登録情報又はその匿名化が行われた情報の提供に関する次の(1)又は(2)に掲げる方法の区分に応じ、それぞれ(1)又は(2)に定める額 (1) 光ディスク(日本産業規格X〇六〇六及びX六二八一に適合する直径百二十ミリメートルの光ディスクの再生装置で再生することが可能なものに限る。)に記録したものの交付 一枚につき百円 (2) 光ディスク(日本産業規格X六二四一に適合する直径百二十ミリメートルの光ディスクの再生装置で再生することが可能なものに限る。)に記録したものの交付 一枚につき百二十円 ハ 地域がん登録情報又はその匿名化が行われた情報を記録したロ(1)又は(2)の光ディスクの送付に要する費用の額(情報の提供を受けようとする者が当該光ディスクの送付を求める場合に限る。) |
2 法第二十四条第一項第二号又はこの条例第十五条第四項の規定により知事が都道府県がん情報若しくは匿名化情報又は地域がん登録情報若しくはその匿名化が行われた情報の提供に係る事務を行わせることとした者(以下「指定機関」という。)から当該都道府県がん情報若しくは匿名化情報又は地域がん登録情報若しくはその匿名化が行われた情報の提供を受けようとする者は、前項に定める金額の手数料を当該指定機関に納付しなければならない。
3 前項の規定により指定機関に納付された手数料は、当該指定機関の収入とする。
(平三〇条例九三・追加、令元条例八・一部改正)
(還付)
第二十一条 既納の手数料は、還付しない。ただし、知事は、特別の理由があると認めるときは、その全部又は一部を還付することができる。
(平三〇条例九三・追加)
(委任)
第二十二条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が定める。
(平三〇条例三三・一部改正、平三〇条例九三・旧第二十条繰下)
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成二十三年四月一日から施行する。
(この条例の見直し)
2 知事は、この条例の施行後二年を目途として、この条例の規定内容について検討を加え、その結果に基づいてこの条例の見直しを行うものとする。
附則(平成二九年条例第三〇号)
この条例は、公布の日から施行する。
附則(平成三〇年条例第三三号)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(大阪府附属機関条例の一部改正)
2 大阪府附属機関条例(昭和二十七年大阪府条例第三十九号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
附則(平成三〇年条例第九三号)
この条例は、平成三十一年一月一日から施行する。ただし、第二条の規定は、公布の日から施行する。
附則(令和元年条例第八号)
この条例は、令和元年七月一日から施行する。