資料2−1 令和5年度 障がい者差別解消に向けた大阪府の活動報告書(概要)  令和5年度に大阪府に寄せられた相談事例について整理・分類した。  助言型合議体を開催し、広域支援相談員が対応した相談事例について、助言を得た。  府内市町村への支援や啓発活動も含めた障がい者差別解消の取組みと課題について取りまとめた。    1 広域支援相談員の体制等と相談対応   1.広域支援相談員の体制と役割  広域支援相談員の職務  丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、市町村との情報共有を細やかに行い連携強化を図る。  (日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討)  また、様々な専門性を有する委員から構成される合議体から広域支援相談員の職務に関する助言を得ることができる仕組みとなっており、相談員の対応力向上を図っている。  法や条例の周知が進むことに伴う相談事例の複雑化・多様化に加え、府外など広域にまたがる事例もあり、さらなる専門性や調整力、対応力が必要。   ⇒広域支援相談員の人材育成や確保、市町村に対する幅広い支援を行うための事例蓄積等が課題。   2.広域支援相談員の対応実績(令和5年4月1日から令和6年3月31日)  新規相談件数は148件(令和4年度からの継続件数3件と合わせ実相談件数151件、前年度は新規相談件数166件)。  面接、電話等の対応回数は1,348回(前年度は1,750回)、実相談件数1件あたりの平均対応回数は約9回。  不当な差別的取扱いは8件(前年度5件)、合理的配慮の不提供は19件(前年度20件)であり、法上の差別2類型に該当する相談件数の合計は27件と、前年度の25件より2件増加した。   3.広域支援相談員の対応した相談事例等  広域支援相談員の対応した相談のうち「不当な差別的取扱い(8件)」、「合理的配慮の不提供(19件)」、「不適切な行為(6件)」、「不快・不満(11件)」、「環境の整備(5件)」に該当すると考えられる事例の概要と対応要旨を紹介。    2 合議体における助言   1.広域支援相談員の相談対応  「合議体での主な意見」  広域支援相談員は事業者の窓口レベルで解決できる話なのかを検討し、解決が難しいと考えられる場合は、本社から回答を得る働きかけを繰り返し行うことも必要ではないか。  広域支援相談員は、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供であるか否かの判断により、相談対応を行うのではなく、相談者に困りごとがあったら、その話を聴き、現場に関わって可能な限り調整してみるということを対応の原則にするべき。  「府における整理と課題」  事業者のどの部署と話合いを行えば解決を図ることができそうか、個別の事例ごとに判断し対応を行う。  広域支援相談員は障がいを理由とする差別の有無を判断する役割ではないと合議体を通じ改めて認識した。公平・中立な立場で社会的障壁の除去を目的として、これまで蓄積した相談事例等を基に、代替手段の検討を含めた建設的対話を当事者や事業者に促す助言や調整を行うことで、障がいを理由とする差別の解消に今後も努める。   2.相談の分類と整理  「合議体での主な意見」  合理的配慮の提供における過重な負担の判断は、第一義的には、その提供が求められる事業者や行政機関が個別に判断すること。ただし、それだけではブラックボックスみたいな話になってしまうので、その判断が合理的なものであることが必要。そうすると、過重な負担であると判断した理由を障がい者に対して説明することができないと駄目だという話になるので、過重な負担の内容について、障がい者への説明が求められている。  「府における整理と課題」  事業者が過重な負担を理由に合理的配慮の提供を断る事例があった場合、当事者が納得する程度の説明が求められていることを、事業者に伝えていく。  広域支援相談員は、事業者に過重な負担があり対応できないと言われた際、当事者がそのサービスを実質的に享受できる状況を、代替手段の提案をするなどを通じ、解決の糸口を一緒に考えていく姿勢が求められているため、当事者・事業者間の調整を今後も図っていく。   3.今後の課題  事業者が事業を行うにあたって、事業に関係する当事者に対し、合理的配慮の提供をどの範囲まで義務付けられているか等、平成28年の法及び条例の施行以降、事例を蓄積してきているが、なお考え方等に悩むことは少なくない。今後も合議体による助言を参考に、所管課も含めた定期的な会議等で考え方の整理・共有等を行っていく必要がある。    3 合議体によるあっせんの実施  令和5年度、あっせんの申立てはなかった。    4 府内市町村に対する支援の取組み   1.府内市町村支援における課題  まずは住民に身近な相談窓口である市町村が対応し、それでも解決の困難な事例について府が市町村に対して情報提供や技術的助言等の支援を行うというように、広域・基礎自治体の役割に応じた機能を発揮することが想定されているが、市町村からの相談割合は例年相談全体の2割程度となっており、役割に応じた機能が発揮されているとは言い難い状況。   2.府内市町村に対する支援の取組み  (1)府は府内市町村に対し、相談への対応等についての助言を積極的に行うとともに、相談対応力の向上を目的に意見交換の場を設定し、研修も開催する等の支援に関する取組みを実施。  (2)府内市町村の障がい者差別解消に関する担当職員とのオンライン情報交換会を実施。  a.情報交換や事例の共有だけでなく、情報交換会内で提供のあった好事例や先進的な取組み等について、未参加の市町村も含め、府内全市町村に共有。  b.支援地域協議会設置・運営促進の取組みとして、オンライン情報交換会で、設置済みの自治体から運営形態等を紹介いただき、未設置自治体とのイメージの共有を図った。  (3)その他、内閣府主催の障害者差別解消支援地域協議会に係る体制整備・強化ブロック研修会への参加を呼びかけたほか、府でも研修会を実施。    5 障がい理解に関する啓発の取組み  大阪ふれあいキャンペーン、共に生きる障がい者展、心の輪を広げる障がい者理解促進事業、大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度、ヘルプマークの周知・普及、心のバリアフリー推進事業、事業者団体等への研修の実施、大阪府が作成した啓発物の配布  令和5年度は、令和6年4月の改正法施行を見据え、内閣府の作成した改正法施行を周知するリーフレット等を用いて、事業者団体等や府内市町村を通じ、事業者に啓発を実施。    6 まとめ  令和5年3月には、改正法の施行日が令和6年4月1日と政令で定められ、法改正に基づく基本方針の変更も閣議決定された。改正法の大きな変更点は、事業者による合理的配慮の提供が全国的に法的義務となることだが、加えて、地方公共団体には差別を解消するための支援措置の強化として、相談や紛争の防止等のための体制整備や事例等の収集に努めることが求められたが、本書はその趣旨に適うものと考える。  府は今後も、障がいを理由とする差別の解消の取組みを推進し、障がいの有無によって分け隔てられることなく全ての府民が暮らしやすい共生社会の実現に寄与していくため、相談事例の蓄積及び分析、評価等を行うことで相談体制の強化を図るとともに、法の趣旨の普及や障がい理解を促進する啓発活動の充実に取り組んでいく。