・東ロンドングリーングリッド(East London Green Grid)は、2008年に大ロンドン行政庁が策定した大ロンドン東部300平方キロメートル規模の公共空間整備の計画で、幹線道路や工業地帯等により分断された自然や公共空間、流域圏、生物の生息地をネットワーク化する構想である。
・この計画の主要部分として、2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックの主会場となったクイーンエリザベスオリンピックパーク(QEOP)がある。
・この東ロンドングリーングリッドは、対象を大ロンドン全域に広げた全ロンドングリーングリッド(All London Green Grid)に統合された。
・グリーングリッドとは、「オープンスペース、河川、その他のコリドーからなるネットワークで、都市域とテムズ川、グリーンベルトをつなぎ、さらには魅力的で多様なランドスケープ、人々と生物のために高水準に管理されたグリーンインフラを提供するもの」と説明されている。(ELGG)
・また、グリーングリッドとは、「都市域・都市縁辺部・田園内の公開された環境で、結合された上質で多機能なオープンスペース、コリドーとその間をつないで多様な利益を人々と生物に提供するネットワーク」と定義されている。
・持続可能な交通接続
歩道や自転車道を戦略的にネットワーク化することにより、グリーンインフラをつないだり、歩道や自転車道自体がグリーンインフラのネットワークを構成する。
・気候変動への対応
洪水、乾燥、暑熱の軽減に貢献するグリーンインフラの役割を果たす。
例えば、洪水抑制の観点では、グリーンインフラにより、雨水浸透や一時貯留することで雨水の流出を抑制したり、流出を遅らせることが可能となる。
・持続可能な食料生産
都市内の空き地等を活用してコミュニティーガーデンや菜園をつくり、安全で廉価な食料生産と地産地消、健康増進を図る。
参考文献
木下剛:ロンドングリーングリッド計画、「決定版!グリーンインフラ」日経BP社
関谷進吾、前田英寿、出口敦:職能訓練と諮問機関による都市デザイン行政の能力開発−アーバンデザイン・ロンドンおよびデザイン・フォーロンドンー、日本建築学会技術報告集,第18巻,第40号,pp.1077から1082,2012.10
・横浜市グランモール公園は、平成3年に開設された約2.3ヘクタールの近隣公園で、設備の老朽化や公園の魅力向上の要請などから公園の再整備が行われ、そのうち「美術の広場地区」が平成27年度に完成した。グリーンインフラ技術を導入して、大きな水循環の仕組みを実現し、「環境未来都市」にふさわしい公園に仕上がっている。
・具体的には、舗装の下部に雨水貯留機能を持つ砕石層を設け、植栽への水の供給と、保水性レンガ舗装と連動した打ち水効果により、夏の涼しさを実感できるような仕組みを導入しており、緑陰だけでなく、地下からの雨水のしみ上がりによる蒸発や旺盛に生育する樹木からの蒸散作用を活用して、「夏でも涼しい」空間が創出されている。
グランモール公園の断面模式図
側溝および保水性レンガから入った雨水は、雨水貯留浸透基盤を介して地表までしみ上がり、保水性レンガに供給される。保水性レンガからの蒸発、樹木の蒸散作用を通じて、気温低減効果が発揮される。
水資源のダイアグラム
雨水は浸透側溝を通じて雨水貯留浸透基盤に進入、雨水の吸い上げ機能を通じて保水性舗装に供給される。また、雨水貯留浸透基盤内に伸長したケヤキの根により、吸い上げられた雨水は、葉からの蒸散作用で気温を低減される。まさに、地下からの打ち水効果が発揮されている。
【出典:グリーンインフラ総研・「GREEN+INFRASTRUCTURE REPORT」】
・ライン河岸を市民の憩いの場に取り戻す
・公共空間のより豊かな活用
・川沿いの連邦道路を地下化
・その上を長さ約2キロメートル、幅約40メートルの散策路として整備
・歩道、並木、サイクリングロードがプロムナードにつくられる
・整備期間:1989年から1993年
・芝生公園(読書、ランニング、サイクリング)
・ビーチバー
・ライン川のクルーズ
・水辺のカフェ
・イベント広場 など
【出典:「第6回首都高速の再生に関する有識者会議 配布資料」(国土交通省)を加工して作成】
・河川を復活させる都市再開発事業は世界で初めて
・環状道路の支線部分(約5.8キロメートル)を撤去し、覆蓋された川を復元する事業
・整備期間:2003年から2005年
・親水性向上の取組みとして、アクセススロープや飛び石を設置。映像の演出も行う
・高架道路の老朽化
・交通混雑時による都市環境の悪化
・歴史と文化の回復
・市民が憩える休息空間としての活用
・アート作品の展示
・噴水
・ライトアップ
・美しい景観の造成など
【出典:「第6回首都高速の再生に関する有識者会議 配布資料」(国土交通省)を加工して作成】
・規 模
450ヘクタール以上(エメラルドネックレスにある、9つの公園の総面積) 徒歩11キロメートル以上(公園の端から端、ボストンコモンからフランクリンパークまで)
・年間来場者 100万人以上
・利用者の様子 セーリング・ハイキング・ゴルフ・サイクリングなど
・整備期間 2009年から2012年
・ボストンのパークシステム
・緑地(park way)と水路でつながった連続した都市公園
・市街地中心部の広場であるボストンコモンからフランクリン公園まで、大きな公園や河川、池、緑豊かな街路空間がつながれたみどりのネットワーク
・車幅を減少しつつ、停車スペースや緊急車両が通行するスペースを設ける事により、スムーズな通行を実現
・2001年に京都市基本計画で、「歩くまち・京都」を掲げ、その後10年かけて改修工事を行う
・整備期間:2005年から2015年
・歩道の拡幅 【3.5mから6.5m】
・車道の減少 【4車線から2車線】
・車両の停車スペースの設置 【15箇所32台分】
・テラス型バス停の導入 【16箇所のバス停を4箇所に集約】
・タクシー乗り場の整備
・中央にゼブラゾーンの設置 【両側の車線に車があっても緊急車両が通行できるスペース】
・歩行者の増加 【前年比で12.5%増加(2015年12月の歩行者量)】
・渋滞の緩和
・バスを待つ利用者の空間が実現
・歩行者の増加と街路空間の活用のために行われた事業
・整備期間2008年から2013年
・車の進入を減らし、歩行者は全幅員通行可能とする
・歩道柵、段差等を除去
・パーキング帯の撤去
・歩行者は全幅員通行可能とする
・カフェや屋外活用空間拡大
・周辺に代わりのルートを確保 ⇒ 自動車の進入を減らす
・歩行者が54%増加
・消費(購買)額が47%増加
・交通事故の減少
・自動車交通量が25%減少
・メルボルン市のアクセスの強化
・安全な公共空間の実現
・人が集まり、会うことができるスペースを創出
・歩行者、自転車、トラムだけの空間に再編
・歩道の拡幅
・自転車専用通路の設置
・タクシーを含む、自動車は排除(サービス車、緊急車を除く)
・歩行者交通量が24%増加
・商業部分の面積が5%増加
・アートやイベントのためのスペースを確保
このページの作成所属
大阪都市計画局 計画推進室計画調整課 グランドデザイン推進グループ
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