ヘルシーおおさか21(点字広報)第59号 音声読上げ用

更新日:2020年2月19日

ヘルシーおおさか21(点字広報)第59号【令和2年2月発行】

テーマ それって依存症?」

はじめに

 依存症が病気であるという認識は、書籍やメディアを通じて広がっています。みなさんもお聞きになったことがあるのではないでしょうか。依存症は適切な治療と支援により回復が十分可能な病気ですが、依存症であるという認識を持ちにくい、病気の理解不足などにより、治療や支援に結びついていない現状にあります。
 
大阪府では、「ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定や、依存症についての正しい知識の普及などに取り組んでおり、今回は「依存症」についてご紹介させていただきます。

1.依存症について

 人が「依存」する対象は様々ですが、代表的なものに、アルコール・薬物・ギャンブルなどがあります。このような特定の物質や行為・過程に対して、やめたくてもやめられない、ほどほどにできない状態をいわゆる依存症といいます。依存症は大きく分けて2種類あり、「物質への依存」と「プロセスへの依存」です。

(1)「物質への依存」について
 精神に依存する物質を原因とする依存症状のことです。物質とは、アルコールや違法薬物(覚せい剤、危険ドラッグ、大麻など)、処方薬(睡眠薬、抗不安薬など)や市販薬(咳止めなど)などです。
 
依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなります。そして、次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます(一部の物質依存では使う量が増えないこともあります)。

(2)「プロセスへの依存」について
 
物質ではなく、特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことです。特定の行為とは、ギャンブルやインターネット、買い物、万引きなどです。

 どちらにも共通していることは、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられない、いつも頭から離れないなどの特徴がだんだんと出てくることです。
 
依存症のことを考えるときに最も大事なのは、そのことによって本人や家族などが苦痛を感じているかどうか、生活に困りごとが生じているかどうかということです。
 
依存症と診断がつく状態でなくても、「誰かが困っている」ことはしばしばあります。そのため、本人や家族が苦しんでいるのであれば、それは改善が必要な状態です。依存症に関する正しい知識を身に付け、状況を改善するために適切な対応をとっていくことが必要といえます。

2.依存症は「なぜやめられないのか」について

 不安や緊張を和らげたり、嫌なことを忘れたりするために、ある特定の行為を繰り返しているうちに脳の回路が変化して、自分の意思ではやめられない状態になってしまうためです。周囲がいくら責めても、本人がいくら反省や後悔をしても、また繰り返してしまうのは脳の問題で、決して「根性がない」とか「意思が弱いから」ではありません。依存症は、条件さえ揃えば、誰でもなる可能性があり、特別な人だけがなるのではないのです。

  ここで、依存症における脳の仕組みについて説明します。
 
アルコールや薬物などの物質を摂取すると、脳内ではドパミンという快楽物質が分泌されます。この快楽物質により中枢神経が興奮し、快感・喜びにつながります。この感覚を、脳が報酬(ごほうび)というふうに認識すると、その報酬(ごほうび)を求める回路が脳内にできあがります。
 
脳内に報酬を求める回路ができあがり、アルコールや薬物を体に取り込む行動が習慣化されると、次第に喜びを感じる中枢神経の機能が低下していきます。快感・喜びを感じにくくなるにつれ、以前のような強い快感や喜びを得ようと、ますますアルコールや薬物の量や頻度が増えていきます。すると、ますます快感・喜びは感じにくくなり、焦燥感や不安、物足りなさばかりが増していくという悪循環に陥っていきます。
 
いったんこのような状態に陥ると、自分の意志でコントロールすることは非常に困難になります。脳が報酬(ごほうび)を求めてエスカレートしているため、本人がやめたいと思ってもどうにもならないのです。アルコールや薬物を例にしましたが、ギャンブルなどで味わうスリルや興奮といった行動でも、同じように脳の中で報酬を求める回路が働いているのではないかと言われています。

3.依存症の悪影響について

(1)本人の身体や心への悪影響
 
私たちは、生活の中でいろいろなことを選択しながら生きています。例えば、私たちは毎日、無意識に食べること、寝ることや大切な人と楽しく過ごすことを選択して生きています。なぜなら、人間が健康に生きていくために必要なことだからです。
 
しかし、依存症になり、脳が報酬(ごほうび)を求めてエスカレートした状態になると、正しい選択ができなくなり、生活の中の優先順位が変わってきます。睡眠や食事をおろそかにしたり、家族との大切な時間を削るようになったり、仕事を休んだりと、飲酒や薬物使用、ギャンブルなどを優先してしまい、その結果、本人の身体や心に悪影響を及ぼします。

(2)周りの人の生活への悪影響
 
依存症は、適切な治療をしないと、量や頻度がだんだんと増えていく進行性の病気です。依存状態が進んでいくと、家族や周りの人を巻き込んでいきます。家族や周囲の人との人間関係よりも、飲酒や薬物使用、ギャンブルなどを優先してしまうために、家族に嘘をついたり、借金をしたり、飲酒や薬物使用、ギャンブルなどをしていることを隠したりする行為は、よくある依存症の症状です。
 
依存症は病気であるため、専門の相談機関や医療機関に相談することで解決に向かう問題でもあります。しかし、本人は病気という自覚がない(または認めない)ことが多く、家族も正しい知識がないままに、自分の家族がこんな状態で恥ずかしい、世間にバレたらどうしようという思いから、誰にも相談できず、隠そうとしてしまいます。そのような生活を続けているうちに、家族もだんだんと、本来望んでいた生活、健康的な生活を送ることが難しくなっていってしまいます。

4.「依存症は治るのか」について

 様々な助けを借りながら、やめ続けることで、飲酒や薬物使用、ギャンブルなどに頼らない生き方をしていくことができます。依存症は糖尿病や高血圧のような慢性疾患と言われています。そのため、しっかりとした付き合い方が大切です。
 
やめ続けるには、飲酒や薬物使用、ギャンブルをしたいときにどのように避けるか、飲酒や薬物使用、ギャンブルなど以外のことをする時間をどのように増やすかが大切になります。もし、やめ続けることに失敗した時は、そこからまたやめ続けることを再開することも重要なことです。やめ続けるためには、正直に自分の気持ちを言える場所があることや、孤立しないことが必要です。
 
対応方法としては、専門医療機関や近くの保健所、精神保健福祉センターなどの行政機関に相談し、専門家から適切なアドバイスを得ながら回復に向かう方法があります。また、依存症の問題を抱えた人同士で情報交換を行いながら、回復をめざしていく自助グループに参加するという方法や、リハビリ施設を利用する方法もあります。
 
本人や家族だけで抱え込まないで、早めに専門の機関に相談しましょう。

おわりに

 依存症は欲求をコントロールできなくなる病気です。しかし、本人は自覚がなく気づかないため、何度も気持ちだけでコントロールしようとして失敗します。そのため、周囲がいくら根性論で本人を責めても、問題は解決しません。
 
周りに「依存症かも…」という人がいたら、まずは、周囲の方が専門の機関に相談して、適切なサポートの仕方を知ることから始めましょう。

ここで相談先について3つ紹介します。

(1)大阪府こころの健康総合センターの「依存症専門相談」について

対 象 :大阪府内にお住まいの方(大阪市・堺市を除く)
相談日時:月曜日から金曜日(祝日・年末年始を除く)
午前9時から午後5時45分まで
電話番号:06−6691−2818

(2)「おおさか依存症土日ホットライン」について

対 象 :大阪府内にお住まいの方(大阪市・堺市を含む)
相談日時:毎週土曜日、日曜日 午後1時から午後5時まで
電話番号:0570ー061ー999

(3)お住まいの地域の保健所など
詳細については、各相談窓口へ直接お問い合わせください。


<引用・参考資料>
厚生労働省ホームページ 「依存症についてもっと知りたい方へ」

 

このページの作成所属
健康医療部 健康医療総務課 保健所・事業推進グループ

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