泉州普及だより 令和元年7月発行 第93号 ●夢ある農業経営の実現を目指して!「経営強化コンサルプロジェクト事業」 大阪府では、平成28年度から農の成長産業化推進事業を実施して、農業者の経営管理能力の向上を支援しています。その中で、農業ビジネスコンサルタントと普及指導員が連携して経営指導を行う「経営強化コンサルプロジェクト事業」を、管内で計18名の農業者等が活用しています。 堺市の軟弱野菜専作農家であるAさんの課題は、両親の高齢化による雇用労働の導入、老朽化した施設の更新費用をどうするかでした。そのため、コンサルタントとして税理士に収支、借入金、減価償却等についての経営分析を依頼し、2年目には会計ソフトを導入し、自らで経営を把握する手法を習得しました。3年目は、中小企業診断士にコンサルタントを依頼し、収益を上げるための手段として、栽培している野菜のブランド化を進めるため、Aさんの「こだわり」「強み」などを見える化したFCP展示会・商談会シート(注1)の作成に取り組むとともに商談会にも挑戦しました。 果菜類を中心とした経営を行っている和泉市のBさんは、栽培技術の向上とブランド化による有利販売が課題でした。そこで、1〜2年目にはコンサルタントとともにBさんの過去の販売データを分析し、販売先に応じて最も収益が上がる等級と単価を設定しました。また、Lサイズの収益性が高いこともわかったのですが、Lサイズの生産については、生育中盤に樹勢が衰えてしまい、収量が落ちるという技術的な課題があったため、3年目には農の普及課が肥培・かん水管理について助言し、Lサイズの収量が増加しました。また、農園自体のブランド化を図るため、SWOT分析(注2)を行い、その結果をもとにPRチラシの作成やSNSを活用した情報発信に取り組みました。 泉佐野市で花壇苗の生産販売に取り組むCさんは、生産品目の絞り込みや無駄な経費の削減等により、経営規模の縮小と増益が同時に実現ができないかと考えていました。そこで、1年目は、税理士のコンサルタントとともに、現状での生産規模と経費のバランスを再評価し、経費削減を課題として改善に取り組んだところ、2年目には「人件費」「種苗費」「諸材料費」の削減に成功しました。3年目は、さらに経費の見直し等を進めるとともに、これまでの経費削減効果を検証し、減収増益の経営を実現する予定です。 その他にも事業を活用しコンサルティングを受けた方からは、「経営の基礎データが得られた」、「年間の作付け計画だけでなく収量計画や雇用計画などが総合的に把握できた」、「経営者としての意識が変わった」、「HACCP(注3)やGAP(注4)の重要性が理解できた」など、本事業を受けて良かったとの声が多く聞かれます。本事業をきっかけに、みなさんも、将来を見据え、自分の経営を見つめ直してはどうでしょうか。 (注1)FCP展示会・商談会シート:商談会において効率的に商談を進めることを可能にした統一シート (注2)SWOT分析:その組織の内部環境と外部環境を4区分し、分析する手法 (注3)HACCP:食品等事業者に求められる衛生管理の手法 (注4)GAP:農業において、食品安全等を確保するための生産工程管理の取組のこと ●農業者と食品事業者との交流会を実施しました! 泉州管内では、6次産業化や新たな販路開拓に取り組む農業者が増えています。加工品開発や販路開拓には消費者ニーズの把握が重要なポイントですが、それが十分にできておらず、取り組んでから行き詰まる事例もあります。農の普及課では、農業者がニーズに対応した商品開発や新たな販路開拓に取り組めるよう、南河内農と緑の総合事務所と共同で「食品事業者との交流会」を平成31年2月7日に開催しました。 交流会には農業者18者(泉州13者、南河内5者)、食品事業者29社が参加。第1部では、参加者が15名程度の4つのグループに分かれ、進行役の司会のもと、自らの農産物の特徴、規格外農産物の活用状況、契約生産・販売への対応状況等について意見交換を行いました。第2部では、農業者が設置したブースを食品事業者が自由に見て回るフリー商談を行い、食品事業者は農業者PRシートを手に、熱心に質問を行っていました。 交流会の後行ったアンケートでは、「さまざまな業種の方の考え、要望を知ることができ、参考になった」、「商談につながりそうな話があった」、「農業者の声を直に聞くことができ、理解が広がった。新しい品目を知ることができた」との声が聞かれ、加工業者との取引や、電鉄会社が行う体験農園の受け入れ・イベント出店に向けた交渉など、新たな取引も生まれています。 今年度も食品事業者との交流会を開催しますので、食品事業者と情報交換を行いたい方の参加をお待ちしています。詳細は、農の普及課までお問い合わせください。 ●おめでとうございます!令和元年度憲法記念日知事表彰 芝尾 健さん(堺市) 北野 清治さん(貝塚市) 岸和田4Hクラブ ●あなたは大丈夫?『農薬の適正使用』 農薬を使う時に「慣れ」から、農薬のラベルを確認せずに「つい、うっかり」使用する可能性があります。もし、あなたの農産物から基準値を超える農薬が検出された場合、あなた自身だけでなく地域の方々にも多大な影響を与えてしまうことになりかねません。農薬の使用に際しては「ラベルを確認する」、「使用履歴を記録する」、「散布後は噴霧器を洗浄する」、「周辺への飛散に注意する」など当たり前のことですが、あらためて確認しましょう。