参考資料1 第12回大阪府障がい者差別解消協議会 「大阪府障がい者差別解消条例施行状況の検討について」の主な委員意見   【論点1】事業者による法等の理解に向けた取組みや合理的配慮の実施状況、現行の規定(努力義務)に基づく取組み  1合理的配慮の概念の事業者への浸透状況  事業者だけではなく、障がい当事者に対して、合理的配慮の概念等の法理解に関する啓発が必要である。    2事業者に対する啓発の取組みへの評価と今後求められる取組み  意見なし   【論点2】合理的配慮の義務化の検討について  1意義・効果及び事業者等に与える影響  (1)合理的配慮の義務化の意義や社会的・法的効果  団体アンケートの結果から、事業者は、義務化により、障がい者から配慮の申し出があった場合に、それが過重な申し出であっても、すべて提供しなければならないのかといった点や、配慮できない場合に罰則が適用されるのかといった点を懸念している。  一方、障がい者は、努力義務のままでは配慮が提供されない場合があると考えている。社会的にみると、障がい者は差別を受け、社会参加ができていないという状況があり、それを解消するために障害者差別解消法と大阪府障がい者差別解消条例が制定されたことを考えると、障がい者の意見を十分に踏まえた法や条例にしていく必要がある。  大阪府が実施した団体アンケートの回答のなかには、義務化について国の動向を踏まえた慎重な対応を求める意見がある。しかし、事業者の姿勢から建設的対話がすすまなかった事例が現にあることを踏まえると、国の動向を待たずして義務化し、建設的対話をすすめるための取組みを具体的に検討していくことが求められる。  慎重に検討すべきとの意見があるが、努力義務のままでは実効性が担保されない。義務化しても過重な負担のない範囲での対応であり、大きな影響が生じるものではなく、むしろ義務化により様々な支援策を講じることで、事業者での取組みがすすむと考えられ、障がい者差別解消に向けた効果は大きい。  大阪府障がい者差別解消条例は、障害者差別解消法を補完する条例として合理的配慮を努力義務とした以上、「現行条例が抱える課題を解決するために義務化が必要である」というような、法的義務化する立法趣旨を明確化し、府民に説明することが求められる。  (2)義務化によって事業者や、事業者と障がい者の関係に与える影響  大阪府が実施した1,000事業者や団体アンケートの結果から、合理的配慮と、不特定多数の障がい者を主な対象として行われる事前的改善措置(環境の整備)とを混在して捉え、義務化に慎重な意見を述べている事業者がいる。  合理的配慮と、法で「実施に努めること」とされている環境の整備は異なる概念であることを、事業者により一層、啓発していくことが必要である。  ※事前的改善措置…いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等  大阪府では、条例施行から3年が経過し、事例を積み重ねてきたことから、義務化やそれに伴う相談体制の充実に取り組むことが求められる。また、義務化にあたっては、事業者が抱える懸念を解消するとともに、事業者や障がい者に法の正しい理解を促す取組みが欠かせない。  団体アンケートでは、合理的配慮の義務化に対して賛成が多いが、過重な負担を具体的にどうするかが課題という回答である。過重な負担の基準や安全性、公平性といった義務化に伴う事業者の懸念を解消していくことが必要であり、ガイドラインなどで明らかにしていくことを通じて義務化を進めていくことが求められる。  義務化により、事業者が「これだけをやっておけばいい」「これさえすればいい」と考え、建設的対話が逆にすすまなくなるのではないかとの懸念がある。  事業者が自主的に合理的配慮を考え、建設的対話がすすむような取組みが必要である。     2広域支援相談員や合議体等、条例上の仕組み  (1)事業者に対する罰則規定  現段階では、社会に法の理念を周知し、行政の介入で建設的対話を促し、調整等により差別解消をすすめていくべきで、事業者に対する罰則規定は不要である。ただし、今後、行政罰を規定する必要性が生じた場合は、再度検討する余地がある。    (2)その他  グループホームなどの障がい者施設建設への地域住民からの反対運動など、地域には、障がい者への差別意識や偏見など依然存在している。障がい者にとって身近な市町村で障害者差別解消支援地域協議会の設置がすすまないといった現状があるなかで、市町村が義務化に対応しきれるか懸念する。  義務化を意義あるものにするためには、この現状をどうするかを検討しなければならない。  <論点2の結論として、事業者による合理的配慮の提供の義務化に対する明確な反対意見はなく、解消協議会としては、義務化の方向で検討をすすめるべきである、ということで一致した。>   【論点3】広域支援相談員の権限強化(実効性の確保)  (第12回大阪府障がい者差別解消協議会)  障がい者、事業者双方が建設的対話をするために、広域支援相談員が事業者に対し事実確認等がしやすい手法を検討すべきである。事業者に指導したり、調査に協力しない場合に罰則を適用するものではないことを明確にしたうえで調査協力義務規定を設けることは、その手法の一つである。  これまでの事例から、事業者の「構え」や「頑な」な態度により相談対応がすすまないことがあった。その点を踏まえると、条例第5条に規定する府の取組みへの協力に関する努力義務だけでは対応しきれないため、広域支援相談員の調査協力義務を新たに規定することが必要である。  ただし、事業者に過度な負担が及ばないよう、調査対象等を明確に規定することも必要である。  広域支援相談員が、専門性を発揮し、双方の建設的対話を促しながら、事業者の自主的な対応の検討に向けた調整や法の理念等の浸透という職務を円滑に行うために、相談体制をどう強化するかを検討すべきである。協力義務規定がそれに資するものかを検討する必要がある。  障がい者・事業者双方が共生社会づくりに向けて話し合う場を持つことが大事であり、そのためには調査協力義務規定が必要である。差別を受けている障がい者の権利利益を救済するためには、事業者が正当な理由なく調査に応じない場合、事業者名の公表も検討すべきではないか。  障害者差別解消法は、建設的対話を通じて共生社会を築くことを目的としたものであり、共生社会を築くことは府民の義務として考えられることから、対話を促すための調査協力を義務規定とすることは必要である。  ただし、茨木市条例のように「正当な理由がある場合を除き」と規定することは必要であり、協力いただけないことが直ちに罰則につながるものではない。  広域支援相談員が活動しやすくなるために調査協力義務を規定することは一つの手法であるが、規定には法的効果はなく、府知事による勧告・公表といった実効性を担保するものではない。  調査協力義務規定を設ける必要性やその意義を十分に検討することが必要である。  (参考:第7回大阪府障がい者差別解消協議会)  相談員の活動に実効性を担保する手法として、一つに、事業者が相談員の活動に正当な理由なく協力しない場合に府知事名による勧告・公表という仕組みを設けるということが考えられるが、これは事実上の制裁措置であるため、相談対応について条例で細かに規定するといった手続きの明確化が求められる。このことにより、相談員が裁量の範囲で行っている柔軟な対応が困難となる懸念があることを認識しておく必要がある。  条例施行後3か年の間に、事業者が、広域支援相談員が行う調査に非協力的である事例もあったことを踏まえると、相談員の活動に実効性を担保する手法として、事業者に対する協力義務を新たに条例に規定することが考えられる。条例第5条では、事業者には府施策への協力に係る努力義務が課せられているが、これは極めて一般的・理念的で原則的なルールを規定したものなので、「茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」第9条のように、紛争解決に向けて有効に機能し得る規定を定めるべきではないか。  行政法的アプローチを採用していることから、行政が紛争解決を行うことには限界があることは事実であるが、だからこそ、広域支援相談員が円滑に調整等の活動を進めることができるための枠組みを設けることは必要である。  事業者が広域支援相談員の活動に非協力的であるがために解決が見込めない場合でも、あっせんでの紛争解決の仕組みを条例に規定していることから、事業者の協力義務規定は不要ではないか。  条例の2段階構成での仕組みは、条例施行後3か年の間にあっせんに至った事案がないことから、必ずしもうまく機能しているとは言えず、また、合理的配慮の不提供はあっせんの対象外である。紛争解決の機能が果たされるよう、事業者に対する広域支援相談員の相談活動に対する協力義務規定を設けることは必要ではないか。  相談員が活動しやすいよう、事業者の協力義務規定を設けることは一つであるが、規定には法的効果はないということも踏まえたうえで検討すべきである。