資料1−2 平成30年度 大阪府障がい者差別解消条例に関する運用状況について   1 相談及び紛争の防止又は解決のための体制の整備  1。相談員の機能・役割    (1)3か年の取組状況と自己評価  府では、相談事案に的確に対応し解決を図るため、平成28年4月より、高度な相談・調整技術と専門性を有する人材として相談員を配置し、市町村における相談事案の解決支援のための助言・調査・調整等や、障がい者等及び事業者から相談員に寄せられた相談への対応等を行っている。  相談員は、条例上の対応の対象範囲外の相談(障がい者差別につながりかねない不適切な行為や、障がい者等が不快・不満に感じるような行為等)にも、当事者の思いに寄り添いながら丁寧に対応してきた。また、相談事案に関し、組織内で情報の共有化を図るための日報の作成や、定期的なミーティングによる事例検討など、相談員間の連携強化により、円滑な相談対応と対応力の向上に努めてきた。 条例施行後3年が経過し、このような取組みや事例の蓄積、合議体からの助言(※(2)に詳述)により、相談員の対応力は向上しつつある。  今後、相談事案の増加と複雑化・多様化に伴い、より高度な専門性や調整力を有する人材の確保と育成を図っていく必要がある。  (2)ワーキングの意見のポイント  市町村の相談体制の質を向上させるという相談員の役割と効果は大きい。  行政(相談員)が紛争解決を図ることの限界は存在。  事業者への制裁を設ける場合、合議体によるあっせんとの2層構造の意味合いが失われる。  事業者の協力義務を条例で規定することも一つだが、第5条との整理が必要。  (3)ワーキングでの意見概要  相談員は、直接相談を受ける経験から、相談における心構え・ノウハウを市町村に示すことで、府全体の相談体制の質を向上させるという役割を果たしている。また、民間の相談窓口では対応できない部分で、相談事案の調整機能を果たしており、その役割と効果が大きいことは、相談件数が年々増加していることからも伺える。  法は、行政指導等で差別事案の解決を図ることを予定しており、判決によって権利の回復を図る裁判所とは解決方法が異なる。相談員は指導的調整も含めた紛争解決の役割を担っているが、行政が紛争解決を図ることの限界は存在する。その「限界」があるなかで、事業者が相談員の提示した解決案を受け入れたのであれば、事業者側の受入姿勢に関係なく、相談員は十分に機能していると評価してよい。  相談対応では、相談員が相談者に対して選択肢を示し、相談者自身が次の方法を決定するというプロセスを踏むことが大切である。  事業者は、相談員の調整に対して当初は消極的姿勢であっても、障がい理解がすすむなかで、対応の改善が図られていくことがある。  事業者に対して指導監督権限のある機関がない場合や、当該機関が「民・民の問題にまで立ち入って指導ができない」とした場合に、法及び条例には、自治体による調査権限を定める規定がないことから、現状では、相談員が事業者に対し調査を十分に行うことができない可能性がある。条例で相談員に実効性のある調査権限を付与することや、法的意味合いは有さないとしても事業者に対する協力義務規定を設けることは、それによって相談員が活動しやすくなるのであれば、意味がある。  条例に調査協力義務を規定する方法ではなくても、第5条の規定の解釈として、協力義務があることを「大阪府障がい者差別解消ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)で明確にし、周知する手法も考えられる。  相談員の活動に実効性を担保するためには、事業者が相談員の調査等に頑なに協力しない場合に、最終的に府知事名による勧告・公表を行う仕組みを設け、制裁を与えるという選択肢がある。しかし、その場合、勧告・公表までに至る手続きを定めることにより、相談員の有する裁量がある程度失われることを考慮する必要があることと、現在、2段階構成での仕組み(相談員による対応と、合議体によるあっせん・府知事名での勧告・公表)を設けている意味合いが失われるため、現行の仕組みを維持するだけでいいのではないか。  2。合議体の機能・役割  (1)3か年の取組状況と自己評価  府では、平成28年4月の条例施行に合わせて、解消協委員及び専門委員から選任される合議体を組織し、法第8条第1項に規定する事項(事業者における不当な差別的取扱い)に係る紛争事案を解決するためのあっせん及び相談員が幅広い相談事案に的確に対応できるよう助言を実施することとしている。  合議体における委員の多様な議論の積み重ねと個々の事例を深く掘り下げた分析は、府の障がい者差別解消の取組みの推進に向けた貴重な財産となっている。  一方で、相談事案の複雑化・多様化などを背景に、相談員が相談対応に当たって合議体からの即時助言を求めるケースの増加が想定される。 今後、相談員の対応力の強化に向け、合議体による助言や検証の取組みを継続しつつ、相談員への助言を一層有効に機能させていくための手法の検討が必要である。       (2)ワーキングの意見のポイント  合議体による助言や分析は、相談員の対応力向上につながっており、継続すべき。  合議体には、裁判所のような実効的な紛争解決の権限がなく、限界がある。  即時助言の手法としては、合議体の構成人数を減らし、機動的に開催する方法がある。  専門家の非常勤雇用は、個人からの助言であり、透明性の確保や明確な責任の所在、合議体が有する助言機能との整理が課題。  (3)ワーキングでの意見概要  「助言・検証型」の合議体は、様々な立場の委員が集まり意見交換をすることで全体的な見識が深まり、その結果、日常の相談現場での対応力向上や将来のあっせん事例に備えることができ、有意義な取組みである。事例や考え方の蓄積のため、今後も「助言・検証型」合議体の継続が必要である。  相談事案を踏まえた障がい者差別解消施策のあり方検討を行う会議体として、解消協と合議体のいずれが適切かは、障がい当事者の意見をより反映させるという観点から整理する必要がある。政策課題への対応に関しては、合議体は構成人数が限定されるため、障がい当事者の意見を施策に反映させるという点での限界がある。  事例の背景にある制度的な問題や相談に共通する課題が見えてくる。合議体の機能・役割として行政施策の検討に繋げていくことが必要である。  合議体の特徴の一つに、当事者同士が一堂に会することと、あっせん案を提示し、事業者が従わない場合に知事による勧告や公表という事実上の制裁が発生することがあり、合議体は、相談員が行う調整に比べ、踏み込んだ解決策の提示が可能である。ただし、法上、行政は裁判所のような実効的な紛争解決の権限を有していないため、行政が行うことには限界がある。  解消協の下に合議体を設置し、合議体に相談員に対する助言・検証機能を担わせている条例上の仕組みを考えると、相談員への助言は、第三者で構成する組織が合議によって透明性を確保しながら行うことが必要である。解消協委員や専門委員は附属機関の構成員であることから、個々から意見を聴取するのではなく、府は、解消協や合議体という会議を通じてしか助言を求めることができない。合議体とは異なる仕組みを構築することは難しく、相談員に対する即時助言の手法としては、合議体の構成人数を減らすことで機動性を高めるといった運用上の工夫を検討すべきではないか。  弁護士等の専門家を非常勤で個別に雇用する手法も考えられるが、個人からの助言に基づき相談対応の方針を決定することは、意思決定の透明性の確保や責任の所在の不明確さという課題や、類似機能の重複を避けるためにも合議体が有する助言機能との整理が必要である。  ((3。省略))  4。府による市町村への助言等の機能・役割  (1)3か年の取組状況と自己評価  条例では、府は市町村との適切な役割分担のもとで相談体制を整備するものと規定し、市町村との連携で実施することとしている。府は市町村に対し、情報の提供、技術的な助言や必要な支援を行い、住民に身近な相談窓口である市町村において相談事案の解決が図られることを基本としている。  府は、市町村に対し、相談への対応姿勢等についての情報伝達を積極的に行うとともに、相談対応力の向上に向け、市町村の個々の状況を踏まえた意見交換の場を設定するなど支援に取り組んできたが、事例や対応ノウハウの蓄積が十分とは言えないのが現状である。  市町村には、相談事例のキャッチ力や対応力の向上が求められており、府としては、ガイドラインをはじめ、市町村との意見交換の場などを通じて、さらに多くの事例を発信していくことが必要である。 また、これらの支援を進めることにより、市町村で受理する相談事案の増加が想定され、相談員の活動は、これまでに比べて市町村への後方支援にシフトするものと考えられる。市町村との関係を構築しながら、助言や広域的な調整、具体的な情報提供により、困難な相談事例への対応を支援することが必要となる。 さらに、障がい者差別解消を効果的に推進するために、より多くの市町村で支援地域協議会が設置されるよう、今後も広域自治体として、市町村での取組状況の把握や情報発信が必要である。【設置済19団体(平成30年4月1日現在)】  (2)ワーキングの意見のポイント  市町村の権限に関する条例規定は困難で、市町村との連携や支援のあり方を検討すべき。  府の役割は、勉強会などの場を通じて、市町村に差別事案の「気づき」の視点や観点を示すことにある。  府は、相談機能が有効な市町村の事例の周知や、積極的な助言など具体的な働きかけが必要。  府は、機能している支援地域協議会の取組内容や成果を周知し、設置促進と充実を支援すべき。  (3)ワーキングでの意見概要  府と市町村は対等な関係にあることから、条例に市町村の権限に関する規定を設けることは困難である。現行条例の規定に基づき、条例運用の中で、市町村との連携や支援のあり方を検討すべきである。  身近な相談窓口となる市町村が相談に対応すべきで、そのために、相談員の有する相談の心構え・ノウハウをどう市町村に伝えていくかが大事である。  相談件数が少ない市町村は、相談窓口の周知が不十分なのか、窓口が十分に機能していないのかといった課題があるはずであり、その分析を行わなければならない。府としては、相談機能が有効に働いている市町村の取組事例の周知や積極的な助言など具体的な働きかけを行う必要がある。  市町村職員の資質向上は市町村で対応するには難しいことから、府と市町村が連携して行うことや、市町村との事例の検討会議の開催や研修の実施、検証報告書の活用の働きかけという形で相談力を高めていくことが必要である。  埋もれている差別事案をすくい上げ、事例を積み上げるなどにより、地域の資源(地域の相談員などの人材)を活用していくことが大事である。  府が、障がい者の生活上の困りごとに関わるのは限界があり、そこはまさに市町村が関わっていくものである。府の役割は、勉強会などの場を通じて、市町村が相談事例に対応するなかで、これは差別事案ではないかという「気づき」の視点や観点を示すことにある。  府は、支援地域協議会としてのネットワークを活用しながら事例検討を行うなど、支援地域協議会をうまく機能させながら差別解消に取り組んでいる市町村について、その取組内容や成果を各市町村に周知することで、市町村における支援地域協議会の設置促進とその充実に向けた取組みを支援すべきである。  府は市町村の相談体制の整備状況を確認すべきである。