資料1−2 ガイドライン「事例編」(素案 ver.2)    障害を理由とする差別のない、共に生きる大阪の社会をめざして     大阪府障害者差別解消ガイドライン    第2版(事例編)  差別をなくすにはどうすればいいのでしょうか  大切なのは理解し合うこと  そのために対話すること  立ち止まらず考えることではないでしょうか  ガイドラインはそのきっかけを提供するものです  障害者への配慮のあるまちは  すべての人にとって暮らしやすいまちといえます  障がいを理由とする差別のない  共に生きる大阪の社会をめざして  平成30年3月 大阪府   目次       はじめに  1 ガイドライン「事例編」の利用にあたって  (1)ガイドライン「事例編」の目的  (2)事例参照上の留意事項  (3)ガイドラインの定期的な見直し  2 対応のポイント     ガイドラインの対象分野とは?  1 対象分野  2 障害のある人に対する情報保障  (1)情報保障の重要性  (2)情報保障の配慮の姿勢   商品・サービス分野  1 不当な差別的取扱い  2 望ましい合理的配慮   福祉サービス分野  1 不当な差別的取扱い  2 合理的配慮   公共交通機関分野  1 不当な差別的取扱い  2 合理的配慮   住宅分野  1 不当な差別的取扱い  2 合理的配慮   教育分野  1 不当な差別的取扱い  2 合理的配慮   医療分野  1 不当な差別的取扱い  2 合理的配慮   環境の整備  環境の整備に関する事例     その他、不適切な行為  不適切な行為に関する事例     参考  国ホームページの参照先    はじめに   1 ガイドライン「事例編」の利用にあたって  (1)ガイドライン「事例編」の目的  障害者差別解消法が施行され、障害がある人とない人が関わり合う機会が増えていくものと思われます。こうした機会を通じて、お互いの理解を深めていくことが、共生社会の実現にとって重要です。  そのための一助として、ガイドライン「事例編」では、「不当な差別的取扱い」と「望ましい合理的配慮」について、具体的事例をとりまとめました。府民がこの事例集を活用することによって、障害を理由とする差別の解消に向けた理解や取組みが広がるとともに、障害者差別解消法の意義や趣旨が、社会全体にさらに浸透していくことをめざしています。    (2)事例参照上の留意事項  ガイドラインでは、日常生活や社会生活に深く関わる場面ごとに具体的な事例を掲載していますが、当該場面や登場する障害種別に限らず、異なる場面や、異なる障害種別に関しても、広く活用できる内容ですので、対応するときのヒントにしてください。  また、障害は多様で、個々人で異なるため、この事例集に掲載されている事例に類似したできごとであっても、そこで求められる対応は、掲載されているものと異なることがあります。このガイドラインを参考にしつつも、実際の事案においては柔軟な対応が求められますので、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断して下さい。    「不当な差別的取扱い」について  不当な差別的取扱いとなりうる事例に記載されていないものは差別ではないということではありません。また、記載されている事例であっても、差別に当たるかどうかは、個別の事案ごとに判断する必要があります。  「望ましい合理的配慮」について  合理的配慮は障害の特性や配慮が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様で個別性の高いものです。合理的配慮の内容には、「物理的環境への配慮(車いす利用者のために段差に携帯スロープを渡すなど)」、「意思疎通の配慮(筆談や読み上げ、手話などによるコミュニケーション、わかりやすい表現を使って説明をするなど)」、「柔軟なルール・慣行の変更の配慮(休憩時間の延長など)」などが挙げられます。  ガイドラインでは望ましい合理的配慮の事例を記載していますが、一律に必ず実施することを求めるものではありません。また、望ましい合理的配慮として記載されている事例以外の合理的配慮もあります。    「環境の整備」について  環境の整備は、個別の場面において、個々の障害のある人に対して行なわれる合理的配慮を的確に行うための事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化など)として位置づけられています。ガイドラインでは環境の整備の事例を記載していますが、一律に必ず実施することを求めるものではありません。また、環境の整備として記載されている事例以外の環境の整備もあります。  「不適切な行為」について  大阪府では、障害のある人に対する不適切な発言や差別的な態度に関して、サービスの拒否等といった法上の差別の類型には該当しないと考えられる内容の事例については、「不適切な行為」として整理しています。  不適切な行為として事例に記載されていないものは、不適切ではないということではありません。また、記載されている事例であっても、不適切な行為かどうかは、個別の事案ごとに考えていく必要があります。    (3)ガイドラインの定期的な見直し  今後、ガイドラインは、国の動向等を含め、状況の変化等に応じて適切に見直しを行います。また、ガイドラインに記載する事例についても、実際の相談における対応事例を積み上げて、よりわかりやすいガイドラインとなるように、充実を図っていきます。   2 対応のポイント  障害を理由とする差別をなくすためには、次のことが対応のポイントになります。    望ましくない対応例  事業者等が「何の説明や検討もせず、対応しない」という対応は望ましくありません。  障害の特性や求める内容は様々ですので、まずは、障がいのある人が求めている内容を聞いて、何ができるのか、考えてください。  もし、求めている内容がすぐには対応できない場合は、代替手段がないか、検討してください。  対応できない場合でも、その理由を説明し、理解を得るように努めることが求められます。  障害のある人の求める内容が明らかな場合には、適切と思われる配慮を提案するなど自主的に対応することが望まれます。  障害のある人が「言わなくても察してほしい。何としてもやってほしい。」という対応は望ましくありません。  障害の特性や求める内容は様々ですので、障害のある人(家族等を含む)から、具体的に求めている内容を伝えてください。   また、正当な理由や過重な負担があるため、対応できないこともあります。  望ましい対応例  話し合い、何ができるのか、お互いに考えましょう。  建設的な対話を行うためには、それぞれが持っている情報(障害の状態や提供できるサービス内容等)や意見を相手方に示すことが重要です。  その上で、相手方の意見を否定するのではなく、理解し合えるように話し合い、何ができるのか、お互いに考えていくことが望まれます。  申出があった際の建設的な対話のためには、初期対応が大切です。コミュニケーションの不足や、傾聴しない姿勢が、障害を理由とする差別につながることも考えられます。  差別解消を可能な限り迅速で円滑に図る観点から、障害のある人に寄り添う姿勢を持つなど、特に初期対応を丁寧に行うことが求められます。      ガイドラインの対象分野とは?    このガイドラインでは、府民が具体的なイメージで理解できるよう、「不当な差別的取扱い」と「望ましい合理的配慮」の事例について、日常生活や社会生活に深く関わる場面を、6つの分野に整理して記しています。  また、あらゆる分野の共通事項として、障害のある人への情報保障について記載しています。  ただし、これらの分野はあくまでも例示であり、すべてではありません。  あくまで、具体的にイメージしてもらえるように設定したものです。  なお、各分野の事例等の記載は、障害のある人と事業者間のやりとりを想定しています。  (行政機関である府の対応は、別途「職員対応要領」で定めています。)      1 対象分野  商品・サービス分野  商品を購入したり、サービス提供を受けたりする場面  ここでのサービスには、有償無償を問わず、他の5分野におけるサービスを除く、日常生活にかかわるあらゆるサービスが含まれます。  たとえば、スーパー、デパート、飲食店、宿泊施設、銀行、遊戯施設、理容・美容、イベント会社などです。  福祉サービス分野  福祉サービスを利用する場面  社会福祉法第2条第1項に規定する社会福祉事業(第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業)にかかわるサービス等が、福祉サービスに当たります。  たとえば、障害福祉サービス、介護保険サービスや保育サービスなどです。  公共交通機関分野  公共交通機関を利用する場面  高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第2条第4項に規定する公共交通事業者等が、公共交通機関の事業者に当たります。  たとえば、鉄道事業者、路線バス事業者、航空事業者、旅客船事業者、タクシー事業者などです。  教育分野  教育を受ける場面  学校教育法第1条に規定する学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校)及び第124条第1項に規定する専修学校における教育が当たります。  なお、ガイドラインにおける教育分野は、私立学校を想定しています。  (行政機関である国公立学校の対応は、教育委員会等における職員対応要領にて定めています。)  住宅分野  居住用の不動産の取引を行う場面  不動産の売買や賃貸、貸借権の譲渡や貸借物の転貸が、不動産の取引に当たります。  医療分野  医療を受ける場面  医療法第1条の2に規定する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手が行う医療が当たります。   2 障害のある人に対する情報保障  (1)情報保障の重要性  すべての人にとって、商品を選択したり、公共サービスを受けたりする場合など、日常生活のあらゆる場面で、情報を得ることは日々の暮らしに必要不可欠です。  特に、障害の特性により、コミュニケーションが難しい場合の情報保障は重要です。  障害のある人がサービスを利用する際には、手話を含む言語だけでなく、点字、音声、拡大文字、筆談、実物の提示や身振り、触覚など、情報提供やコミュニケーションに関する配慮が求められます。そのため、ガイドラインでは、「情報提供やコミュニケーションに関する」配慮を、具体的な場面に即してイメージできるように、それぞれの分野における望ましい合理的配慮の事例として記載しています。  (2)情報保障の配慮の姿勢  情報の重要性を認識し、障害のある人が障害のない人と同じように情報提供が受けられるよう工夫します。  障害のある人の意向を尊重し、できる限りの配慮をします。  障害は個々人で違うため、このガイドラインを参考にしつつも柔軟に対応し、どのような配慮が必要か考えて行動します。  障害のある人の立場に立って、わかりやすく、丁寧に情報提供します。    商品・サービス分野   1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、商品の販売もしくはサービスの提供を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  障害を理由として、窓口対応を拒否したり、障害を理由として、資料の送付や商品の提供、パンフレットの提供等を拒む。  身体障害者補助犬を連れていることや、車いすを利用していることを理由に、入店を拒否する。  障害を理由として、入店時間や入店場所に条件を付ける。  保護者や支援者の同伴をサービスの利用条件にする。  本人を無視して、支援者や付添者のみに話しかける。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  施設の構造上問題がないにもかかわらず、何の理由の説明もなく、車いす利用者の入場を断る。  飲食店等で、身体障害者補助犬の同伴を拒否する。  「危ないのではないか」という理由のみで、具体的な検討をせず、視覚障害のある人に対して観光船の乗船を断る。  聴覚障害のある親子に対して、聞こえないことを理由に遊戯施設のアトラクションの利用を拒否する。  講習会で、聴覚障害のある人から要約筆記の申出があった際、具体的な検討をせず受講を拒否する。  盲ろう者がジムの利用を申込みした際に、聞こえる人の同伴がいないことを理由に申込みを拒否する。  理容店において、障害のある人の入店を拒否する。  車いす利用者のイベント参加の申込みに対し、事前申込みの際は参加可能と回答していたにも関わらず、イベント直前に主催者側のスタッフ不足を理由に、参加を断る。  スーパーでの買い物の際、「電動車いすは危ない」という思い込みから、手動車いすに乗り換えるよう条件をつける。  混雑している理美容院で、車いす利用者に対し「車いすが入る待ちスペースがない」という理由から、車いす利用者のみサービスを拒否する。  感覚過敏がある自閉症の人に対し、スイミングキャップが被れないことを理由に、プールの利用を拒否する。  スーパーにて、自閉症の人に対して「店舗にいると迷惑である」という理由から、店舗への出入りを拒否する。  障害のある人に対し、旅行会社での飛行機搭乗手続きをする際、航空旅行に関して特段の支障がないにもかかわらず、医師許可書の提出を求める。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   参考 身体障害者補助犬法  (定義)  第二条  この法律において「身体障害者補助犬」とは、盲導犬、介助犬及び聴導犬をいう。  (不特定かつ多数の者が利用する施設における身体障害者補助犬の同伴)  第九条  前二条に定めるもののほか、不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。   2 合理的配慮  障害のある人が商品を購入したり、サービスの提供を受けたりする場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  車いす利用者に対して、段差がある場合に補助する(キャスター上げ、携帯スロープなど)。  高い所にある商品を取って渡す。  筆談、読み上げ等によるコミュニケーションや、分かりやすい表現で説明する。  自筆が困難な人からの申出を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆する。  注文や問合せ等に際し、インターネット画面への入力によるものだけでなく電話等でも対応する。   といったものが挙げられます。   望ましい合理的配慮の事例  主に物理的環境への配慮に関すること  入口にあるインターホンの呼び出しによって、視覚障害のある人等への介添えを行う。  車いす利用者が飲食店に行った際、車いすのまま利用できるテーブルは他の客が使用していたため、店員がその客に了解をとった上で、配席を変更する。  宿泊施設にて、バスルームで使えるシャワーチェアが備えられておらず、「代用できるパイプいすでも構わない」という申出であったため、事務用のパイプいすを貸して、シャワーチェアとして利用してもらう。  ATM等のタッチパネルの操作が困難な顧客に声かけし、操作を代行するなどの適切な対応を取る。  主に意思疎通への配慮に関すること  視覚障害のある人への情報提供として、講演会等で、スライドだけでなく音声で補足説明をする。  聴覚障害のある人への情報提供として、講演会等で、手話通訳と要約筆記を用意する。  視覚障害のある人に、飲食店にて、定食など複数の食器に分かれて出される料理ではどこに何があるのかわかりにくいため、店員が配膳する際に、食器の位置や料理内容について説明する。  聴覚障害のある人に対し、飲食店での食事の注文において、筆談ボードを使用することによって、料理に関する質問や細かい注文をできるようにする。  イベント開催にあたり手話通訳を配置した際、暗い会場内でも手話が見えやすいよう、スポットラ  イトを調整し、手話通訳者の立ち位置を明るくする。  精算時に金額を示す際は、金額が分かるようにレジスターまたは電卓の表示板を見やすいように向ける、紙等に書く、絵カードを活用する等により示すようにする。  主にルール・慣行の柔軟な変更に関すること  盲導犬を連れた客の来店時、他の客が犬アレルギーであるという申出があったため、双方が了解した上で、互いに離れた位置になるよう配席を変更する。  通常の盛り付けでは食べづらい料理がある方に対し、料理を食べやすい大きさにカットし、取りやすさと見栄えに考慮して盛り付けをする。  申込書類に自筆することができず、同行者もいない人に対し、本人の意向を確認した上で、店員が代筆する。その際、記入内容について後で見解の相違が生じないよう、複数の店員が立ち会う。  知的障害のある子どもが買い物の会計で待つことができず、動き回ったり騒いだりしてしまう場合に、会計場所に椅子を持っていき、「ここで座って待っていようか」と声をかけ、親の会計が終わるまで話し相手をする。  展示会等開催時の入退場に支障が生じるような場合には、一般入場口とは別のルートを設ける。  旅行ツアーについて相談を受ける際、利用する交通機関等におけるバリアフリーの状況について情報を提供する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。    福祉サービス分野   1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、福祉サービスの提供を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることや、本人の意に反して福祉サービスの提供を行うことは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、医療的ケアの必要な人、重度の障害のある人、多動な障害のある人について、福祉サービスの利用を拒否する。  正当な理由なく、対応の後回しや、サービス提供時間を変更または限定する。  正当な理由なく、他の者とは別室での対応を行うなど、サービス提供場所が限定される。  保護者や支援者、介助者の同伴をサービスの利用条件にする。  サービスの利用にあたって、仮利用期間を設ける、他の利用者の同意を求めるなど、他の利用者と異なる手順を課す。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  ろうの子どもを保育園に入れたいとの申請に対して、責任を持てないという理由から、入園を拒否する。  事業所にホームヘルパーの派遣依頼があった際、発達障害であることを理由に派遣を断る。  保育所において、障害のある子どもを担当している先生がいるにもかかわらず、危険であることを理由に校外学習への参加を断る。  施設において、本人の意思に反して自宅に帰ることを反対する。  障害福祉サービス事業所が、多動な障害のある人に対して、一律にサービスの利用を拒否する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   2 合理的配慮  障害のある人が福祉サービスを利用する場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  車いす利用者が移動しやすいように、施設内の段差にスロープを渡す。  説明文書の点字や拡大文字を準備する、文書を読み上げて丁寧に説明する、手話や要約筆記を用意する等、本人が希望する方法で説明を行う。  色の組み合わせによる見にくさを解消するため、表示物や案内図等の配色を工夫する。  障害特性に応じた休憩時間の調整など、ルールを柔軟に変更する。  といったものが挙げられます。   望ましい合理的配慮の事例  主に物理的配慮の配慮に関すること  視覚障害のある人等に配慮して、事業所内の物の配置をなるべく変えないようにする。  車いす利用者に対し、机を車いすが入れる高さにしたり、作業が行いやすくなるように使用する物品を手の届く範囲に置く。  主に意思疎通の配慮に関すること  契約書、しおり等書類や掲示物に、ルビ打ちや分かち書きをする。  視覚障害のある人に説明する際、「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」といった指示語で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」といった具体的な表現で話す。  スマートフォンなどのアプリで、音声を文字に変換するものを活用して、筆談を補う。  説明がわからないときに提示するカードを活用したり、本人を良く知る支援者が同席するなど、本人が理解しやすくなる工夫をする。  補聴器や人工内耳を装用している人に対し、残響や反響のある音を聴き取ることが困難な場合に、磁気誘導ループを使用するなど、代替する対応を行う。  主にルール・慣行の柔軟な変更に関すること  脊髄損傷があり体温調整障害を伴っている人に対し、部屋の温度管理に配慮する。  通所施設で作業を行う際、片手や筋力低下した人でもできるような作業を用意したり、作業しやすいような工夫をする。  感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整をする。(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所に衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるよう配慮するなど)  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。    公共交通機関分野   1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、公共交通機関の利用を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  障害があることのみをもって、乗車を拒否する。  障害があることのみをもって、乗車できる場所や時間帯を制限し、または障害のない人に対して付けない条件を付ける。  身体障害者補助犬を同伴していることを理由に、乗車を拒否する。  航空旅行に関して、特段の支障等がない利用者に対し、診断書の提出を求める。  同伴者がいないことを理由に、軽度な歩行困難な利用者の搭乗を拒否する。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  車いす利用者であることを理由にタクシーの乗車を拒否する。  バスの運転手が、知的障害のある人の乗車を拒否する。  フェリー乗船を予約していた車いす利用者に対し、当日、単独での乗船を拒否する。  複数名の盲導犬利用者の飛行機搭乗を拒否する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   2 合理的配慮  障害のある人が公共交通機関を利用する場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  車いす利用者が列車に乗降する際に手伝う、段差がある場所で職員が補助する。  窓口等で、筆談や読み上げなど、障害の特性に応じたコミュニケーションで対応する。  利用者の希望があれば、代筆や代読等の対応を行う。  券売機の利用が難しい場合、操作を手伝ったり、窓口で対応したりする。  といったものが挙げられます。   望ましい合理的配慮の事例  主に物理的環境の配慮に関すること  職員が、車いす利用者に対し、乗降口とホームの間に介助用スロープ板を渡し、乗降の介助を行う。  障害のある人のタクシーへの乗降時の補助や、車いす等の大きな荷物のトランクへの収納の手助け等を行う。  券売機の利用が難しい場合、障害の特性に応じ、窓口での発売や券売機操作を手伝う。  航空機の利用にあたって、視覚障害のある利用者や握力の弱い人に対して、機内食の包装の開封を手伝う。  主に意思疎通の配慮に関すること  視覚障害のある人のために、肉声による車内案内をこまめに行う。  安全に関する案内について、視覚障害のある人に対し、個別に口頭にて案内を実施する、もしくは点字によるパンフレットを用意する。  聴覚障害や言語障害のある人に対して、その障害の特性に応じたコミュニケーション手段(メモや筆談ボードなど)を用いて対応する。  普段と異なる場面が苦手でパニックになることのある人が、電車やバスなどを利用している際に、事故発生で止まったり遅れたりするなどの異変が生じた場合、状況が理解できるよう、わかりやすく丁寧にアナウンスする。  ルール・慣行の柔軟な変更に関すること  旅客船のタラップが階段状のため、車いすでは乗り込めないことから、本人の了解を得た上で、平らになっている貨物用搬入口から、乗船してもらう。  人ごみが苦手でパニックになるため、必ず介助者の隣に座りたいという申出に対し、ほぼ満席で空席がなかったが、他の乗客の了解を得て座席を変更し、隣り合って座れるよう調整する。  定期的にバスを利用する車いす利用者の利用時間に合わせ、路線を指定してバリアフリー対応の車両を配車する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。    住宅分野    1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、住宅の賃貸等を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  物件一覧表に「障害者不可」と記載する、あるいは物件広告に「障害者お断り」として入居者募集を行う。  宅建業者が、障害のある人に対して「当社は障害者向け物件は取り扱っていない」として話も聞かずに門前払いする。  宅建業者が、賃貸物件への入居を希望する障害のある人に対して、障害があることを理由に、賃貸人や家賃債務保証会社への交渉等、必要な調整を行うことなく仲介を断る。  宅建業者が、車いすで物件の内覧を希望する障害のある人に対して、車いすでの入室が可能かどうか等、賃貸人との調整を行わずに内覧を断る。  家賃保証会社が、障害のある人に対し、正当な理由なく保証しない。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  親と同居していた障害のある人が、単身となったことを理由に、不動産会社が賃貸住宅の退去を促す。  契約時に、精神障害があると判明すると、大家が入居を断る。  火事などのトラブルがあっては困るという理由から、視覚障害のある人のアパートの入居を断る。  入居のための審査の際、障害であることを理由に、保証人の数を増やすよう求める。  筆談によるコミュニケーションができるにもかかわらず、契約手続きができないとして、不動産物件の売買等の契約を拒否する。  手術の痕が残っている障害のある人に対し、賃貸契約の条件として外出時の恰好等に条件をつける。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   2 合理的配慮  障害のある人が居住用の不動産の契約を行う場面等で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  最寄駅から一緒に歩いて確認したり、中の様子を手を添えて案内する。  障害のある人の求めに応じて、バリアフリー物件等があるかを確認する。  障害の状態や求めに応じて、ゆっくり話す、筆談を行う、分かりやすい表現に置き換える等、相手に合わせた方法での会話を行う。  種々の手続きにおいて、障害のある人の求めに応じて、文章を読み上げたり、書類の作成時に書きやすいように手を添える。  といったものが挙げられます。   望ましい合理的配慮の事例  主に物理的環境の配慮に関すること  住んでいるマンションの駐車場において、車いすの乗降に適さない場所があるため、車いすを利用されている方に対しては、車いすの乗降に適切な場所となる駐車場を別途設ける。  物件案内時に携帯スロープを用意したり、車いすを押して案内する。  主に意思疎通の配慮に関すること  障害のある人から退去の申出があった際に、手続き等について、事前に書面や口頭で十分な説明をしたり、筆談等で相談等に応じたり、必要に応じて親族や支援者等の関係者に連絡したりする。  視覚障害のある人や聴覚障害のある人と契約手続きをすすめるにあたって、契約書や重要事項説明書等について、読み上げや筆談等を積極的に活用する。  物件の案内や契約条件等の各種書類をテキストデータで提供する、ルビをふる、書類の作成時に大きな文字が書きやすいように記入欄を広く設ける等、必要な調整を行う。  物件のバリアフリー対応状況がわかるよう、写真を提供する。  主にルール・慣行の柔軟な変更に関すること  車いす利用者が住宅を購入する際、住宅購入者の費用負担で間取りや引き戸の工夫、手すりの設置、バスやトイレの間口や広さ変更、車いす用洗面台への交換等を行うにあたって、必要な調整を行う。  物件案内の際、肢体不自由で移動が困難な人に対し、事務所と物件の間を車で送迎する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。    教育分野  ガイドラインにおける「学校」は、私立学校を想定しています。  (行政機関である国公立学校の対応は、教育委員会等における職員対応要領にて定めています。)   1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、教育の機会の提供を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  学校、社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等において、窓口対応を拒否し、または対応の順序を後回しにする。  資料の送付、パンフレットの提供、説明会やシンポジウムへの出席等を拒む。  社会教育施設、スポーツ施設、文化施設等を利用させない。  学校への入学の出願の受理、受験、入学、授業等の受講や研究指導、実習等校外教育活動、入寮、式典参加を拒む。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  何の説明や検討も無く、障害のある子どもの入学や受験を拒否する。もしくは拒否しない代わりとして、正当な理由のない条件を付ける。  障害の特性に応じた代替案の検討等も無く、障害のある子どもの体育や実習科目の参加を拒否する。  学校行事や授業において保護者の付添いがないという理由から、学校行事や授業への参加を拒否する。  試験等において、合理的配慮の提供を受けたことを理由に、その試験等の結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりする。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   2 合理的配慮  障害のある人が教育を受ける場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  聴覚過敏の児童生徒のために、机やいすの脚に緩衝材をつけて教室の雑音を軽減する。  支援員等の教室への入室や、授業でのパソコン入力支援等を許可する。  意思疎通のために絵や写真カード、タブレット端末等を活用する。  入学試験において、別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可する。  といったものが挙げられます。     望ましい合理的配慮の事例  主に物理的環境の配慮に関すること  修学旅行に他生徒と一緒に参加できるよう、移動時間や休憩場所、ホテルの部屋割りなどを検討し、できるだけ他生徒と一緒に行動できるようにする。  授業中に情緒不安定になる生徒に対し、落ち着くまで一人になれる場所を用意し、その場所で休むことができるようにする。  車いすを利用している保護者に対し、運動会の見学の際に、車いすでも見学しやすいスペースを別途設ける。  主に意思疎通の配慮に関すること  黒板に赤色のチョークで書かれるとわからなくなる、という色覚障害のある生徒に対し、強調したい部分は他の見やすい色のチョークを用いたり、カラーチョークではなく下線をひいて強調するなど、黒板の書き方を工夫する。  聴覚障害のある子どもに対し、授業では常に板書を行うとともに、教員ができるだけ大きく口を開いて話し、その動きでできるだけ理解できるよう工夫する。  難聴があるため、授業を聞くこととノートを書くことの両立が難しい生徒に対し、黒板の撮影を認める。  試験の際、弱視で小さな文字が見えない生徒に対し、拡大文字で試験用紙を作成し、また拡大鏡などの補助具を使用できることとする。  学習活動の内容や流れを理解することが難しく、何をやるのか、いつ終わるのかがわからないと不安定になる生徒に対し、本人の理解度に合わせて、実物や写真、絵などで活動の予定を示す。  主にルール・慣行の柔軟な変更に関すること  多くの人が集まる場が苦手で、集会や行事に参加することが難しい生徒に対し、集団から少し離れた場所で、本人に負担がないような場所に席を用意したり、聴覚過敏があるのであれば、イヤーマフを用いたりする。  障害の特性に応じて、前の席や明るい席等を配慮する、照明器具を用意する、持参する私用の拡大鏡、補聴器、松葉杖等に対応する。  文字の読み書きに時間がかかるため、最後まで黒板を書き写すことが難しい生徒に対し、デジタルカメラやタブレット型端末等により、黒板の写真を撮影できることとする。  周囲に多数の人がいる環境だと集中できない生徒に対し、大人数のいる授業の場合は別室で受けられるよう、その授業についてはモニター等を利用して別室で受講できるようにする。  その他  運動会や卒業式等各行事に参加できる工夫を障害のある本人や保護者とともに検討して実行する。  発達障害等の特性に応じて、配慮事項をわかりやすく示すとともに、かかわる教職員と配慮事項を共有する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。   参考  教育分野における合理的配慮の具体例については、下記を参考にすることが効果的です。  インクルーシブ教育システム構築支援データベース (独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)  「合理的配慮」実践事例データベース(文部科学省の「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」において取り組まれている実践事例について検索するシステム)等を掲載しています。  http://inclusive.nise.go.jp/    特別支援教育教材ポータルサイト (独立行政法人国立特別支援教育総合研究所)  特別支援教育の教材や支援機器、 学校での実践事例を紹介しています。  http://kyozai.nise.go.jp/    大学等における障害のある学生への支援・配慮事例 (独立行政法人日本学生支援機構)  障害のある学生に対し、全国の大学等が比較的最近実施した、支援・配慮事例を紹介しています。大学等の規模、設備、組織体制や実施支援・配慮ならびに実際の支援に至るまでの手続きなどの面で多様な事例を提供しています。  http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/jirei/index.html    教職員のための障害学生就学支援ガイド (独立行政法人日本学生支援機構)  障害のある学生の支援にあたり、支援の基本的な考え方や参考となる情報を掲載しており、障害者差別解消法の合理的配慮規定等が施行されることも考慮した内容となっています。  http://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/guide_kyouzai/guide/index.html  なお、これらに示されているもの以外は提供する必要がないということではなく、1人ひとりの障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望まれます。    医療分野    1 不当な差別的取扱い  障害を理由として、正当な理由なく、医療の提供を拒み、もしくは制限し、またはこれらに条件をつけることは、不当な差別的取扱いにあたります。  例えば、  医療機関や薬局において、人的体制、設備体制が整っており、対応可能であるにもかかわらず、障害があることを理由に、診療、入院、調剤等を拒否する。  正当な理由なく、診察などを後回しにしたり、サービス提供時間を変更したり限定したりする。  医療の提供に際して、必要な情報提供を行わない。  正当な理由なく、本人の意思またはその家族等の意思に反して、医療の提供を行う、または意思に沿った医療の提供を行わない。  診療等にあたって、わずらわしそうな態度を取ったり、大人であるにも関わらず子ども扱いをしたり、患者の身体への丁寧な扱いを怠ったりする。  といったものが挙げられます。   不当な差別的取扱いとなりうる事例  ベッドの上に1人で乗ることができないことを理由に、診察を断る。  パニックを起こすことがある知的障害のある人に対して、対応の工夫をすることなく、十分な説明もないまま、次回以降の診療を断る。  院内が土足禁止であることを理由に、車いす利用者の診療を拒否する。  視覚障害のある人に対し、受診の際に付き添いを求める。  電動車いす利用者に対し、十分な説明をせずに、院内で手動車いすに乗り換えるよう条件を付ける。  身体障害者補助犬を伴った利用者に対して受診を拒否する。  病院が、十分な説明をしないまま、難病の人の受診を拒否する。  入浴介助を行うにあたり、人員体制が整っているにもかかわらず、重度の知的障害のある成人女性にのみ、事前に十分な説明をしないまま、異性介助をする。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、客観的に見て、正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに該当しないものがあると考えられます。   2 合理的配慮  障害のある人が医療を受ける場面で、何らかの配慮を求める意思の表明があったときは、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮を提供することが求められます。  例えば、  車いす利用者が利用しやすいよう、カウンターの高さに配慮する。  説明文書の点字版や拡大文字版、テキストデータ、音声データ等の提供や、必要に応じて代読や代筆を行う。  診察等で待つ場合に、障害の特性に応じて、患者が待ちやすい場所を用意するなど、ルールを柔軟に変更する。  パニック等を起こした際に、静かに休憩できる場所を設ける。  といったものが挙げられます。     望ましい合理的配慮の事例  主に物理的環境の配慮に関すること  バリアフリー化に努めているが、建物が古く完全ではないため、段差のある箇所については、職員が介助を行う。  肢体不自由の人、視覚障害のある人には検診ルートに職員が付き添う。  パニック等を起こした際に静かに休憩できる場所を設ける。  主に意思疎通の配慮に関すること  筆談による受付や診察を行う。  身振り、手話、要約筆記、筆談、図解、ルビ付き文書、絵カードを使用するなど、本人が希望する方法でわかりやすい説明を行う。  声がよく聞こえるように、また、口の動きや表情を読めるようにマスクを外して話をする。  精神障害のある人の診療の際、時間をかけて丁寧に説明し、不安を与えないようにする。  障害のある人に配慮したナースコールの設置を行う(息でナースコールができるマルチケアコールや、機能障害者用押しボタンなど)。  主にルール・慣行の柔軟な変更に関すること  診察等で待つ際に、順番が来たら電話で呼び込む等、障害の特性に応じてルールや慣行を柔軟に変更する。  その他  診察の予約時に、患者から申出があった障害特性などの情報を、スタッフ間で事前に共有する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。また、実施を求められた側に無制限の負担を求めるものではなく、過重な負担が求められる場合には、合理的配慮の不提供に該当しません。   参考 実際の取組み例(※環境の整備も含む)  院内における電光表示  診察室の隣に、電光表示版を設置して、番号で診察の順番がわかるようにしています。  視覚障害のある人には、診察室の担当職員が声をかけて、案内するようにしています。  院内における重要情報の文字表示  順番を変更する場合がある等の患者にとっての重要情報は、文字情報でも掲示しています。  診察室ごとに補聴器(骨伝導型)を準備しています。   参考   支援ツールの例  医療サポート絵カード  知的障害などがあり言いたいことが言えない人、医師や看護師の話を聞き取ることが苦手な人のために、「医療サポート絵カード」があります。安心して診察や検査を受けられるように絵などを使って、見てわかるように工夫しています。「医療サポート絵カード」を使うことで、不安の軽減にもつながります。  (使い方の例)  診察や検査の前にカードを見せながら、診察の流れを説明する。  家族・支援者にカードを渡しておき、次の診察時までに本人に見せておいてもらう。  大阪府のホームページ「障害福祉 各種刊行物」からダウンロードできます。  http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/kankou/   参考   医療機関等における障害者配慮ガイドブック  身近な地域の医療機関等において安心して受診できるよう、障害の特性及びその状況に応じたケアや配慮について記載したガイドブックです。視覚障害のある人、ろうあ者、中途失聴・難聴者、知的障害のある人についてそれぞれ記載されています。  大阪府のホームページ「障害福祉 各種刊行物」からダウンロードできます。  http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/kankou/     参考   発達障害のある人が安心して診療を受けるために  発達障害のある人が地域で安心して医療機関を受診できることを目的に作成したリーフレットです。発達障害の特性や医療機関における基本的な対応のポイント、受診の際の配慮・工夫の例等について記載しています。  大阪府のホームページ「医療機関向けリーフレット「発達障害のある人が安心して診療を受けるために」を作成しました」からダウンロードできます。  http://www.pref.osaka.lg.jp/chiikiseikatsu/hattatsusyogai_osaka/2703hp_leaflet.html    環境の整備   環境の整備に関する事例  障害者差別解消法(第5条)では、行政機関等および事業者は、合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしています。環境の整備とは、不特定多数の障害のある人を主な対象とした、いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス、介助者などの人的支援、障害のある人による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上などのことです。     環境の整備となりうる事例  視覚障害のある人が飲食店を利用する際、これまでは店員がメニューを読み上げていたが、ゆっくり好みのメニューを選んで注文できるよう、点字のメニューを用意する。  視覚障害のある人が、点字ブロックの近くにある商品にぶつかってしまわないよう、点字ブロックと商品の間が十分に空け、陳列位置に柵を設置するなど、店舗レイアウトを変更する。  聴覚障害のある人について、受付の順番で呼ばれてもわからないため、順番が来たら振動してお知らせする機器を導入する。  聴覚障害のある人がテレビショッピングで購入したい商品があった際、電話受付のオペレーターだけでなく、FAXや電子メールによる受付をする。  補助犬を連れて入店しようとしたところ、「ペットは不可ですから」と店員からの入店拒否があったことを受け、店員の研修に補助犬に関する事項を追加し、今後の再発を防ぐこととする。  契約書類の作成の際に、同行者が代筆する場合および店舗スタッフが代筆する場合のそれぞれについて、店舗スタッフがどのように対応するのか具体的にマニュアルを定め、研修を実施する。  障害福祉サービス事業所において、利用者の障害特性に合わせ作業工程をマニュアル化する。  駅に列車案内装置や点字案内板、触知図を設置する。  障害のある人への誘導のため、気配りヘルパーや病院ボランティア等を配置している。  医療的ケアの必要な生徒が、本人および保護者の希望に沿って通学できるようにするために、看護師の巡回などの体制や設備の整備を行う。  エレベーターの規格が小さく、重症心身障害児者の使用するストレッチャータイプの車いすでは利用できない場合に、ストレッチャータイプでの車いすでも利用できるエレベーターを設置する。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。    その他、不適切な行為等   不適切な行為に関する事例  大阪府では、障害のある人に対する不適切な発言や差別的な態度に関して、サービスの拒否等といった法上の差別の類型には該当しないと考えられる内容の事例については、「不適切な行為」として整理しています。  差別につながる事業者側の「不適切な行為」は、法の趣旨を損なう行為であり、紛争の防止の観点から、適切に是正するなどの対応をすることが重要です。     不適切な行為となりうる事例  バス乗車時に、知的障害のある人が運転手にぶつかってしまった際、運転手が暴言を浴びせる。  電動車いす利用者がタクシーに乗車する際、運転手が電動車いす使用について「電動車いすを乗せるのは迷惑だ」等の差別的発言をする。  補助犬を連れた障害のある人が家族と買い物をしている際に、店員が「同伴者がいるから補助犬は不要ではないか」と言う。  身体障害者補助犬を連れた人がビルに入ろうとした際、警備員は身体障害者補助犬について知らなかったため、ビルの警備員が「犬は入れない」と注意をする。  上記の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されたものではありません。    参考 障害者差別解消法に係る裁判例        障害を理由とする差別の解消の推進に係る裁判例に関する調査結果について  (平成28年度内閣府障害者施策担当)  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/h28houritsu/index-w.html  本冊子は、平成28年度に内閣府で実施した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律に係る裁判例に関する調査」の結果を取りまとめ、判例集として整理したものです。  以下には、その一部を引用して紹介します。   商品・サービス分野   1 ネットカフェにおいて精神障害者の入店を拒否したことにつき、入店拒否をした店長の不法行為及びネットカフェを運営する会社の使用者責任があるとして、慰謝料請求が認容された事例(東京地判 平成24年11月2日)  訴訟に至る概略/請求の概要  当事者Xは、精神障がいのある者(精神障がい等級2級)。  Xは、過去にインターネットカフェ(本件店舗)を10数回利用したことがあったが、ある日、本件店舗の利用後、本件店舗に精神障がい者保健福祉手帳を忘れてきたのではないかと考え、本件店舗に電話をかけて問い合わせた。  翌日、Xは会員証を提示して本件店舗に入店しようとしたが、店長は「過去に別の障がい者による無銭飲食事件が発生したが、障がいを理由に起訴もされず、代金の回収もできなかったことがあったため、それ以後障がい者による利用は断っている」という趣旨のことを述べて、入店を拒否した。X は、店長に対して、代金を前払いする用意がある旨を告げたが、店長がなおもX の入店を拒否したため、X は本件店舗への入店をあきらめた。  Xは、(1)会員登録を行なったことにより、本件店舗の継続的な利用契約が成立したから、入店拒否は、同契約に基づくネットカフェ経営会社らの債務の不履行に当たること、(2)入店拒否は、障がい者への違法な差別行為であり、X の人格権を侵害するものであって、不法行為を構成すること、(3)X は、本件店舗を日頃の疲れを癒すことができる場所として利用していたのに、入店拒否により多大な精神的苦痛を被ったことを理由として、当該会社らに対しては債務不履行等に基づき、店長に対しては不法行為等に基づき、提訴した。    判決(決定)の要旨  当該会社は、X が本件店舗で騒ぎ、暴れたことが本件入店拒否の理由である旨主張するが、X が以前に本件店舗で騒ぎ、暴れたことを認めるに足りる証拠はなく、それによりX が入店を拒否されたような形跡もないから、その主張は推認できない。  店長は、専らX が精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けたことを理由として入店拒否に及んだのであるから、入店拒否は、公序良俗に反する違法な差別行為であり、不法行為を構成するものというべきである。  入店拒否はその理由が不当ではあるものの暴行や脅迫を伴うものであったとは認められないこと、本件店舗の営業に高度の公共性があるとまではいえないこと、X が利用できる同種業態の他の店舗がないとは認められないことなどの事情も考慮して、X が受けた精神的苦痛に対する慰謝料額を算定する。   2 事業者による車いすのままの入浴拒否と車いす利用者への入浴配慮の不提供が不法行為を構成しないとされた事例(東京地判 平成25年4月22日)  訴訟に至る概略/請求の概要  当事者X1及びX2は、両下肢機能全廃により車いす生活を送っている者(普段は介助を受けず一人で入浴)。  X1及びX2 は、スーパー銭湯Yの従業員により、それぞれ車いすのまま浴場に入ることは禁止されていることを告げられ、以後、車いすのまま入浴することを拒否された。  X1らは、Yが、X1らが車いすのまま浴場に入ることを合理的な理由なく拒否し、その後も、X1らが浴場に入ることができるよう配慮をしなかったことなどを主張して、Y に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料の支払を求めた。  判決(決定)の要旨  Yは、銭湯を利用する全ての顧客の安全面及び衛生面に配慮すべき義務を有するのであるから、Yが、車いすのまま浴場内に入ることを拒否したことはやむを得ないといわざるを得ず、不法行為を構成しないというべきである。  現時点では、車いす利用者の浴場への入場について、事業者側が採るべき措置について定まったものがあると認めるに足りる証拠はなく、Yが特段の配慮的な措置を採らなかったからといって、直ちに不法行為責任を負うとまでは認め難い。  もっとも、こうした状況が看過されることが好ましくないことはいうまでもなく、諸法令の規定や趣旨等に鑑み、公衆浴場を経営する事業者等の関係者が、公衆浴場を利用する車いす利用者に対する配慮的な措置の策定に努めていくことが求められる。   公共交通分野   3 航空会社が身体障がい者の単独での航空機搭乗を拒否したことにつき、会社側の債務不履行責及び不法行為責任が認められなかった事例(大阪高判 平成20年5月29日)  訴訟に至る概略/請求の概要  当事者Xは、脳性麻痺、両上肢及び両下肢に著しい機能障がいがある者(身体障がい者等級1級)。  Xは、午前10時に出発する国際便に搭乗するため、同日7 時45 分ころ、見送りの友人であるA、B、C とともに空港に到着した。Bは、Xの搭乗手続に際し、Xに身体障がいがあること、出国ゲートから現地の到着ロビーまでは介助者が同行せず、Xが単独で搭乗することを航空会社Y社の受付担当者Dに伝えるとともに、機内食及びトイレに関して介助を依頼した。  同日午前8時50分ころ、Y社空港カスタマーサービス部長Eは、XとBらに対し、介助者の同行がなければXは搭乗できない旨告げるとともに、その理由として、Xに言語障がいがあり、意思疎通がスムーズにできないこと、上肢及び下肢に障がいがあることを挙げた。  BらはEに対し、搭乗拒否の理由について具体的説明を求めるとともに、X の状態を説明するなどして単独搭乗を認めるよう要望したものの、EはXの単独搭乗を認めず、結局、Xは搭乗することができなかった。  Xは、「航空運送人による特別な援助を必要とする場合は搭乗拒否できる」とするY社の航空運送約款が無効であること、A本件搭乗拒否は、合理的な裁量の範囲を逸脱し、旅客運送契約における解約権行使として無効であること、B本件搭乗拒否は公序良俗に反し、Y社は不法行為責任を負うことを理由に、Y社に損害賠償を求め提訴した。  判決(決定)の要旨  Y 社の航空運送約款にある「特別な援助」は、航空運送人が対応困難又は対応できない援助と解することが合理的であり、かかる解釈によって本件規定が無効になるものではない。  Eは、出発2 時間前にDから報告を受けたほか、X に関する情報を事前に一切知らされていなかったため、搭乗手続直前の段階におけるDからの情報に基づいて検討した結果、Xに対する介助や緊急時におけるX に対する援助態勢について不安を持ち、介助者の同行を求めるという極めて慎重な態度をとったものであるが、限られた情報と時間的余裕のない中で、Eの取った対応が、航空会社として不合理に過ぎる判断であったとまでは言い難い。  Eは、Xの身体の状況や外観によりXを差別的に取り扱ったものではなく、限られた情報と時間的余裕のない中、X には「特別の援助」が必要との判断に基づき搭乗拒否に及んだものであって、このことが公序良俗に反するとまでは言えず、本件搭乗拒否について、Y社に不法行為責任を問うことはできない。   教育分野   4 公立中学校の特別支援学級への入級と在級の継続などが違法な差別的取扱いに当たらないとされた事例(富山地判 平成28年9月21日)  訴訟に至る概略/請求の概要  当事者Xは、軽度の知的障がいや自閉症のある者(小学校1 年生から特別支援学級に入級)。  X は、B 校長の入級処分により特別支援学級に入級した。本件入級処分は、本件中学校に設置された校内の就学指導委員会の判断に基づいている。  X は、卒業するまでの間、本件中学校の特別支援学級に在級していた。Xの在学期間中、A町教育委員会に設置されたA 町心身障害児就学指導委員会による検討会が毎年度当たり4 回開催されており、その検討結果に基づき、本件中学校の校長は、X の特別支援学級在級を継続させることにした。  Xは、Yに対して、(1)本件中学校の校長がXを本件中学校の特別支援学級に入級させ、卒業時まで在級させたことは、憲法14 条1項が禁止する違法な差別的取扱いに当たる、(2)本件中学校の校長が普通学級の生徒と特別支援学級の生徒との間で教材の配付などについて異なる取扱いをしたことは、違法な差別的取扱いに当たる、(3)本件中学校の校長が平成21 年度に教育計画を変更し、教諭の配置が各教科2 名ずつから1 名ずつになり、指導を受けられる時間が半分になったことは、裁量の逸脱・濫用に当たると主張して、国家賠償請求として、慰謝料の支払を求めた。  判決(決定)の要旨  入級処分は校務をつかさどり、教育の専門家である校長の広範な裁量に委ねられていると解するのが相当であり、Xの入級処分は裁量権の限界を超えたものとはいえず、在級継続の判断についても裁量の逸脱又は濫用を認めることはできない。  教育内容・方法の決定は、教育の専門家である校長や教諭の広範な裁量に委ねられるべきであり、教材の配付についても、その効果的な活用という観点から、その時期を異にすることが必要となるものであって、配付時期を普通学級の生徒と特別支援学級の生徒とで別異にすることは、それ自体をもって違法な差別的取扱いとみることはできない。  教育計画の立案・遂行は校長の広範な裁量に委ねられる。また、教諭の配置は校長の担う校務に含まれると解され、かつ、高度に専門的な事項で校長の広範な裁量に委ねられるべきものといえる。このため、1教科につき2名の教諭を配置することが望ましいとはいえ、これを減じることは著しく妥当性を欠くものということはできない。   参考  国ホームページの参照先  合理的配慮等具体例データ集  内閣府ホームページ「合理的配慮サーチ」を参照ください。  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html  障害者差別解消法「合理的配慮の提供等事例集」(平成29年4月)  内閣府ホームページ「合理的配慮の提供等事例集」を参照ください。   http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html   12月3日〜9日は「障害者週間」です。  大阪府福祉部障害福祉室  〒540-8570 大阪市中央区大手前2丁目  電話 06-6941-0351 ファックス 06-6942-7215